次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
人口2万人のA市において運動習慣の有無と総死亡数との関連に注目し、施策に反映させるために疫学調査を行うこととした。特定健康診査の際に運動習慣に関する聞き取り調査を行った。運動習慣ありを「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」と定義し、その後年間の死亡の有無を確認した。
51 調査を行った年度に特定健康診査を受診した住民は1万人であった。運動習慣の有無と5年間の死亡数について全員を追跡した調査結果を表に示す。
運動習慣「なし」に対する運動習慣「あり」の累積死亡率比を求めよ。
ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。(不適切問題:解なし)
解答:①.②%
①:0~9
②:0~9
解答(※解なし:採点対象外)
理由:選択肢に正解がないため。
解説
【累積死亡率=一定期間内の死亡者数÷観察開始時点での人数】
①「運動なし」の累積死亡率を求める。
600 ÷ 7000
=0.085…
②「運動あり」の累積死亡率を求める。
200 ÷ 3000
= 0.0666…
③運動習慣「なし」に対する運動習慣「あり」の累積死亡率比を求める。
→②「運動あり」の累積死亡率 ÷ ①「運動なし」の累積死亡率
0.066 ÷ 0.085
=0.77…
≒0.8(小数点以下第2位を四捨五入)
累積死亡率「比」を求める問題に対し、解答:①.②「%」と単位に%がついていたためと考えられる。
次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
人口2万人のA市において運動習慣の有無と総死亡数との関連に注目し、施策に反映させるために疫学調査を行うこととした。特定健康診査の際に運動習慣に関する聞き取り調査を行った。運動習慣ありを「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」と定義し、その後年間の死亡の有無を確認した。
52 A市は全国と比較して、住民の平均年齢が高いと推測した。得られた死亡率を解釈する際に、年齢構成を考慮するために間接法による年齢調整を行うこととし、標準化死亡比<SMR>を求めることとした。
その際に必要な情報はどれか。
1.基準集団の総人口
2.観察集団の総死亡数
3.基準集団の総死亡数
4.基準集団の年齢別人口
5.観察集団の年齢別死亡数
解答2
解説
直接法:①観察集団の年齢別死亡率が、基準集団の人口構成で起きた場合、全体の死亡率がどうなるかを求める。②観察集団の年齢調整死亡率を用いて計算するため、都道府県等の年齢階級別死亡率がわかる大規模な集団で適用される。
間接法:①標準化死亡比(SMR)を用いる。②市町村等の年齢階級別死亡率がわからない小規模な集団に適用される。
1.3~5.× 基準集団の総人口/基準集団の総死亡数/基準集団の年齢別人口/観察集団の年齢別死亡数は不要である。
2.〇 正しい。観察集団の総死亡数は、標準化死亡比<SMR>を求める際に必要な情報である。求め方は、【観察集団の総死亡数 ÷ (基準集団の年齢階級別死亡率 × 観察集団の年齢階級別人口)の各年齢階級の合計 ×100】である。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
A君(中学3年生)は中学1年生のときに筋委縮性側索硬化症<ALS>を発症した。病状の進行によって、自力での呼吸が難しくなったため入院し、気管切開をして人工呼吸器を装着した。退院後に復学する予定である。
53 学校における医療的ケアに係る関係者とその役割分担の組合せで正しいのはどれか。
1.学校長:A君の医療的ケアを担当する看護師の配置の決定
2.介護職員:痰の吸引の研修の開催
3.教育委員会:医療的ケアの指導医の委嘱
4.A君の保護者:個別の教育支援計画の立案
解答3
解説
1.× :A君の医療的ケアを担当する看護師の配置は、「学校長」ではなく「教育委員会」が決定する。学校長の主な職務は、①学校保健計画および学校安全計画の指導、助言、決定。②定期・臨時健康診断の実施。③感染症、その疑いのある児童生徒等の出席停止などである。一方、教育委員会の主な職務は、①学校その他の教育財産の管理に関すること。②教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。③学齢児童生徒の就学並びに児童生徒及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。④学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関することなどがあげられる。
2.× 痰の吸引の研修の開催は、「介護職員」ではなく「学校医」が行う。学校医の主な職務は、①学校保健計画・学校安全計画立案への参与。②必要に応じ、保健管理に関する専門的事項の指導。③健康相談。④保健指導。⑤健康診断(定期・臨時・就学時)、職員の健康診断。⑥疾病予防処置。⑦感染症の予防に関する指導・助言、感染症および食中毒予防処置。⑧救急処置。⑨学校の環境衛生の維持および改善の指導・助言などである。
3.〇 正しい。医療的ケアの指導医の委嘱(いしょく:特定の仕事を(部外の)ひとにまかせ頼むこと)は、教育委員会が行う。教育委員会の主な職務は、①学校その他の教育財産の管理に関すること。②教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。③学齢児童生徒の就学並びに児童生徒及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。④学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関することなどがあげられる。
4.× 個別の教育支援計画の立案は、「A君の保護者」ではなく、就学段階においては、盲・聾・養護学校又は小・中学校、若しくは高等学校が中心となって作成する。学級担任や学校内及び他機関との連絡調整役となるコーディネーター的役割を有する者が中心となって具体的な内容を確定する。「個別の教育支援計画」とは、障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な教育的支援を行うことを目的とする。また、この教育的支援は、教育のみならず、福祉、医療、労働等の様々な側面からの取組が必要であり、関係機関、関係部局の密接な連携協力を確保することが不可欠である。他分野で同様の視点から個別の支援計画が作成される場合は、教育的支援を行うに当たり同計画を活用することを含め教育と他分野との一体となった対応が確保されることが重要である。
(参考:「個別の教育支援計画について」文部科学省様HPより)
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
A君(中学3年生)は中学1年生のときに筋委縮性側索硬化症<ALS>を発症した。病状の進行によって、自力での呼吸が難しくなったため入院し、気管切開をして人工呼吸器を装着した。退院後に復学する予定である。
54 A君の退院が決まった。
A君の学校生活のために養護教諭が行うことで最も優先度が高いのはどれか。
1.A君に参加したい学校行事を聞く。
2.A君のクラスの避難訓練を計画する。
3.教職員に対してA君の状態を説明する。
4.A君の医療的ケアを担当する看護師と役割分担を相談する。
解答3
解説
養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。
①保健管理:救急処置、健康診断(実施計画立案、準備、指導、評価)、感染症予防、経過観察・配慮を必要とする子どもの支援、環境管理。
②保健教育:授業への参画、保健指導(個別の児童・生徒と保護者への指導・助言、集団への指導)
③健康相談:心身の健康問題への対応・支援
④保健室経営:保健室経営計画の作成、備品の管理
⑤保健組織活動学校保健委員会 等
⑥学校保健計画・学校安全計画策定への参画
1.× A君に参加したい学校行事を聞く/A君のクラスの避難訓練を計画する優先度は低い。なぜなら、本症例は、A君の退院が決まったばかりであり、A君の学校生活を円滑に送るための話し合いが優先されるため。
3.〇 正しい。教職員に対してA君の状態を説明する。養護教諭の主な職務の①保健管理と②保健教育に該当する。教職員に対してA君の状態を説明することで、A君の学校生活を円滑に送るための話し合いが行え、柔軟な連携を促すことができる。
4.× A君の医療的ケアを担当する看護師と役割分担を相談することより選択肢の中でより優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例は、A君の退院が決まったばかりであり、A君の学校生活を円滑に送るための話し合いが優先されるため。もし仮に先に、看護師と役割分担をした場合は、教職員や担任との孤立感を生みかねない。
次の文を読み55の問いに答えよ。
A市在住のBさん(45歳、女性)は夫と長男(14歳)、長女(9歳)との4人暮らし。週に4日間のパート勤務をしている。これまで職場で健康診査を受けたことはなかった。A市から届いた受診案内をみて、初めて市の特定健康診査を受診した。結果は、身長160cm、体重70kg、腹囲90cm、血圧140/90mmHg、HbA1c5.0%、中性脂肪300mg/dL、LDLコレステロール120mg/dL、HDLコレステロール73mg/dL、血清尿酸値5.5mg/dL、血清クレアチニン1.0mg/dL、推定糸球体濾過量<eGFR>48.1mL/分/1.73m2、尿蛋白(+)であった。
A市の保健センターの結果説明会に参加したBさんは「検査結果がこんなに悪いとは思っていなかった。食べ盛りの子どもたちに合わせた食生活が悪かったのだと思う。これからどのような食事をすればよいのか知りたい」と話した。
55 摂取量についてBさんに指導する必要があるのはどれか。2つ選べ。
1.塩分
2.水分
3.蛋白質
4.カリウム
5.プリン体
解答1・3
解説
①HbA1c5.0%(基準値:<5.6%)
:1~2か月の平均的な血糖値を表す。糖尿病の診断などに用いる。
②中性脂肪300mg/dL(基準値:30~149mg/dL)
③LDLコレステロール120mg/dL(基準値:<120mg/dL)
:コレステロールを動脈壁の細胞に運搬するリポタンパク。
④HDLコレステロール73mg/dL(基準値:40~100mg/dL)
:コレステロールを末梢組織から肝臓へ運搬するリポタンパク。
⑤血清尿酸値5.5mg/dL(基準値:2.5~6.0mg/dL)
:プリン体代謝の最終産物。腎機能などの指標となる。
⑥血清クレアチニン1.0mg/dL(基準値:0.4~0.8 mg/dL)
:筋細胞膜破裂後に血中に遊出される物質。糸球体の濾過機能の指標となる。
⑦推定糸球体濾過量<eGFR>48.1mL/分/1.73m2(基準値:90mL/分/1.73m2以上)
:年齢や性別を考慮に入れて推算された糸球体濾過量
→本症例は、推定糸球体濾過量<eGFR>48.1mL/分/1.73m2のデータからも、慢性腎臓病(CKD)が疑える。慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の障害(蛋白尿等)や腎機能の低下(GFRの低下)が3か月以上持続する状態を指す。慢性腎臓病の発症には、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病が強く関連している。慢性腎臓病は重症化により透析療法や腎移植が必要となるため、早期に発見・診断し、良質で適切な治療を早期から実施・継続することが重要である。
慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。
1.3.〇 正しい。塩分/蛋白質は腎臓に負担がかかるため控える。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。本症例は、血圧140/90mrnHg、推定糸球体濾過量<eGFR>48.1mL/分/1.73m2(基準値:90mL/分/1.73m2以上)、尿蛋白(+)であるため、慢性腎臓病(CKD)が疑える。腎臓に負担がかからない食事の指導が必要である。
2.× 水分の指導の優先度は低い。尿を濃縮させて排泄する働きが低下した腎臓では、たくさん老廃物を排泄するのにたくさんの尿が必要になるため、たくさん水分を摂る必要がある。ただし、本症例の場合の特定健康診査の結果から水分の指導まで判断できない。
4.× カリウムの指導の優先度は低い。腎機能が低下すると、電解質の1つであるカリウムの排泄も減少し、「高カリウム血症」が認められる。したがって、カリウム制限が必要となる。ただし、本症例の場合の特定健康診査の結果から水分の指導まで判断できない。
5.× プリン体の指導の優先度は低い。プリン体の制限は、痛風患者(血漿尿酸値が高値)に行う。本症例の血清尿酸値は、5.5mg/dL(基準値:2.5~6.0mg/dL)と基準値内である。