次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aさん(85歳、女性)は息子のBさん(50歳、無職)と2人暮らし。Bさんは大学卒業後に就職したが、1年前に失職して以来、自宅で過ごしている。Aさんは2週前に自宅で転倒し腰椎圧迫骨折で入院した。入院を機に要介護認定申請を行ったところ、認定結果は要介護1であった。Aさんは自宅への退院を希望しており、Aさんが入院している病院のソーシャルワーカーから、退院に向けた話し合いをしたいと地域包括支援センターの保健師に連絡があった。Aさんの入院前は、家事はAさんが行っていた。
51 Aさんは自宅へ退院し、Bさんとの生活が再開した。在宅サービスを利用しながら、地域包括支援センター保健師、民生委員の協力も得て、AさんとBさんの生活を見守ることができていた。退院から2か月後、民生委員より「Bさんがいらいらしている様子だ。AさんはBさんに叩かれたと話していた」と地域包括支援センターの保健師に連絡があった。翌日、地域包括支援センターの保健師と社会福祉士の2名がAさん宅へ家庭訪問を行った。
保健師と社会福祉士によるBさんへの対応で適切なのはどれか。
1.民生委員から虐待の通報があったことを知らせる。
2.負担になっていることがないかを確認する。
3.Aさんを叩くことは虐待であると伝える。
4.Aさんの施設入所を勧める。
解答2
解説
・Aさん:自宅退院(在宅サービス利用)
・地域包括支援センター保健師、民生委員の協力もあり。
・退院から2か月後:民生委員より「AさんはBさんに叩かれたと話していた」と地域包括支援センターの保健師に連絡があった。
・翌日:保健師と社会福祉士の2名がAさん宅へ家庭訪問を行った。
→息子Bさんから家庭内暴力へと発展しているが、一方的に「息子Bさんが悪い」と決めつけてはならない。お互いの精神面も含め、何が原因でどういった経緯でそのようなことが起こったのか家庭訪問前からしっかり準備して臨む。
1.× あえて民生委員から虐待の通報があったことを知らせる優先度は低い。なぜなら、Aさんの自宅退院生活は地域包括支援センター保健師、民生委員の協力もあり成り立っていたため。民生委員に対し不信感や拒否感を抱きやすく、今後の関係性にも影響しかねない。
2.〇 正しい。負担になっていることがないかを確認する。息子Bさんから家庭内暴力へと発展しているが、一方的に「息子Bさんが悪い」と決めつけてはならない。お互いの精神面も含め、何が原因でどういった経緯でそのようなことが起こったのか家庭訪問前からしっかり準備して臨む。まずは虐待されていたAさんの健康面や状態を確認する必要があるが、Bさんの介護負担なども把握する必要がある。本症例は、在宅サービス利用を利用していたが、適切なサービス量であったか?もう少し増やすべきなのか?検討していく必要がある。
3.× あえてAさんを叩くことは虐待であると伝える優先度は低い。なぜなら、一般的に「虐待である」と伝えて虐待がなくなれば何も問題に発展しないため。伝えたところで具体的な解決にならない。虐待に至った理由を解決する必要がある。
4.× Aさんの施設入所を勧めるのは時期尚早である。なぜなら、Aさんが施設入所を望んでいるのか不明であるため。入院時のAさんの希望は「自宅退院」であり、息子さんやサービスを利用してその希望が叶っている。再度、Aさんや息子さんに希望を聞くことは大切であるが、全く聞いていない現在、施設入所を勧める段階ではない。
民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
Aさん(45歳、女性、正社員)は店舗で販売の仕事をしている。乳癌の手術後に転移がわかり、3週ごと6クールの予定で化学療法を受けることになった。会社には1年間の休職制度があるが、Aさんは化学療法中も休職せずに働くことを希望している。Aさんは主治医から悪心など体調不良になることはあるが、軽作業可能と説明されていた。上司の店長は、「Aさんの仕事はチームで分担するので、しばらく休職してもらったほうが良いのではないか」と人事部に伝えた。人事部からの連絡を受け、本社の保健師がAさんと店長とそれぞれ面談を行うこととなった。
52 Aさんの就業の可否および適正な配置の判断に必要な情報として、最も優先度が高いのはどれか。
1.術式
2.経済状況
3.仕事内容
4.職場の人間関係
5.予定している抗癌薬名
解答3
解説
・Aさん(45歳、女性、正社員、乳癌の手術後)
・転移:3週ごと6クールの予定で化学療法を受ける。
・Aさんの希望:化学療法中も休職せずに働く。
・Aさんは主治医:軽作業可能。
・上司の店長:「しばらく休職してもらったほうが良い」。
→本症例の仕事は「店舗で販売の仕事」である。主治医から「治療中は悪心など体調不良になることはある」。店長は「Aさんの仕事はチームで分担する」と言っている。大事なところでもある具体的な仕事内容までは触れられておらず、どんな内容なのか、体調不良時でも行える内容なのかはすぐにでも確認したい。
1.× 術式の優先度は低い。なぜなら、本症例は、術後に主治医の先生から「(術式や薬の影響を踏まえ)悪心など体調不良になることはあるが、軽作業可能」と説明されていると考えられるため。術後が今後、Aさんの就業の可否および適正な配置の判断とはなりにくい。
2.× 経済状況の優先度は低い。なぜなら、本症例は、経済状況が理由で化学療法中も休職せずに働くことを希望しているといった記載はないため。経済状況が問題であれば、店長との面談を優先するのではなく、支援制度の情報収集が優先されることが多い。
3.〇 正しい。仕事内容は、Aさんの就業の可否および適正な配置の判断に必要な情報である。主治医から「治療中は悪心など体調不良になることはあるが軽作業可能」。店長は「Aさんの仕事はチームで分担する」と言っている。Aさんの希望は、化学療法中も休職せずに働くことであるため、治療と仕事が両立できるよう仕事はどんな内容なのか?、体調不良時でも行える内容なのか?確認する必要がある。
4.× 職場の人間関係の優先度は低い。なぜなら、本症例は、職場の人間関係が理由で化学療法中も休職せずに働くことを希望しているといった記載はないため。むしろ、職場の人間関係が問題であれば、化学療法中は休業する方向になることが自然である。
5.× 予定している抗癌薬名よりも優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例は、術後に主治医の先生から「(術式や薬の影響を踏まえ)悪心など体調不良になることはあるが、軽作業可能」と説明されていると考えられるため。ただし抗がん薬名は、治療による身体への影響(副作用など)を配慮するうえで必要な情報であり、体調が悪くなりやすい時間帯などを知ることができ、就労が決まり必要があれば上司に伝えておく必要がある。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
Aさん(45歳、女性、正社員)は店舗で販売の仕事をしている。乳癌の手術後に転移がわかり、3週ごと6クールの予定で化学療法を受けることになった。会社には1年間の休職制度があるが、Aさんは化学療法中も休職せずに働くことを希望している。Aさんは主治医から悪心など体調不良になることはあるが、軽作業可能と説明されていた。上司の店長は、「Aさんの仕事はチームで分担するので、しばらく休職してもらったほうが良いのではないか」と人事部に伝えた。人事部からの連絡を受け、本社の保健師がAさんと店長とそれぞれ面談を行うこととなった。
53 店長は、「生活もあるから働きたい気持ちはわかるし、きちんと仕事をしてもらえるなら働いてもらったほうが良いが、体調が悪くなった時が不安だ。管理者としての責任を問われても困る。主治医から軽作業可能と言われても安心して仕事を任せられない」と保健師に話した。
保健師の対応で正しいのはどれか。
1.Aさんに休職することを提案する。
2.就業可能という主治医の意見に従うよう店長に伝える。
3.職場で必要な配慮を主治医に確認するようAさんに伝える。
4.体調の悪化に対して管理者の責任がないことを店長に伝える。
解答3
解説
・Aさん(45歳、女性、正社員、乳癌の手術後)
・転移:3週ごと6クールの予定で化学療法を受ける。
・Aさんの希望:化学療法中も休職せずに働く。
・Aさんは主治医:軽作業可能。
・上司の店長:「しばらく休職してもらったほうが良い」
→上司の店長:「体調が悪くなった時が不安だ。管理者としての責任を問われても困る。主治医から軽作業可能と言われても安心して仕事を任せられない」と保健師に話した。
→上司の不安にも共感・対応が必要である。漠然とした「軽作業」は、男性・女性としても、若年者・高齢者としても基準が変わってくる。まずは具体的な負荷量の設定が上司の不安を軽減できる方法である。
1.× Aさんに「休職すること」を提案するのは時期尚早である。なぜなら、Aさんも上司の店長も「休職すること」を希望しているわけではない。店長は、「きちんと仕事をしてもらえるなら働いてもらったほうが良い」と明言しているが、①体調が悪くなった時、②仕事の振った時の責任、③仕事の負荷量の基準において不安を呈している。
2.× 「就業可能」という主治医の意見に従うよう店長に伝える必要はない。なぜなら、店長は、「きちんと仕事をしてもらえるなら働いてもらったほうが良い」と明言しているため。店長の不安は、①体調が悪くなった時、②仕事の振った時の責任、③仕事の負荷量の基準であり、それらを明確にすることで店長の不安は軽減し、Aさんが働くことは可能である。
3.〇 正しい。職場で必要な配慮を主治医に確認するようAさんに伝える。店長の不安は、①体調が悪くなった時、②仕事の振った時の責任、③仕事の負荷量の基準であり、それらを明確にすることで店長の不安は軽減し、Aさんが働くことは可能である。職場で必要な配慮は、それら店長の不安を軽減できると考えられる。
4.× 体調の悪化に対して「管理者の責任がない」ことを店長に伝える必要はない。なぜなら、保健師の無責任な発言であるとともに、安全配慮義務を無視した対応であるため。企業には労働者に対する安全配慮義務があり、適切な職場環境の整備や配慮や配置をを行う必要がある。
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(55歳、男性)は、妻(48歳、パート勤務)と長女(16歳、高校生)の3人暮らしである。Aさんは会社員として勤務していたが、3年前に記憶力の低下を感じ医療機関を受診したところ若年性認知症と診断された。今は退職し、就労支援事業所に通っているが、最近になり外出して道に迷い近所の住民に保護されたり、周囲に暴言を吐いたりするようになっていた。妻は、Aさんの変化に不安を感じ地域包括支援センターへ相談に訪れた。
54 地域包括支援センターの保健師の対応で最も適切なのはどれか。
1.Aさんの要介護認定の申請を勧める。
2.若年性認知症の症状への理解を促す。
3.認知症初期集中支援チームへの支援依頼を提案する。
4.認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>の入所を提案する。
解答3
解説
・3人暮らし:Aさん(55歳、男性)、妻(48歳、パート勤務)、長女(16歳、高校生)
・Aさん(会社員だったが3年前に若年性認知症)
・現在:退職、就労支援事業所に通っている。
・最近:道に迷い近所の住民に保護、周囲に暴言を吐く。
・妻:Aさんの変化に不安を感じ地域包括支援センターへ相談に訪れた。
→地域包括支援センターとは、介護保険法に基づき各市町村によって設置されており、地域の高齢者の医療・福祉・介護・虐待など様々な事柄に関する相談窓口となっている。地域包括支援センターの人員基準は、「第1号被保険者(65歳以上の高齢者)3000人~6000人ごとに、保健師、社会福祉士及び主任介護支援専門員(準ずる者を含む)を最低限それぞれ各1人」である。
1.× Aさんの要介護認定の申請を勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は道に迷い近所の住民に保護、周囲に暴言を吐くことはあるものの日常生活への支障は少ないと考えられるため。介護保険制度とは、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができる。
2.× 若年性認知症の症状への理解を促す優先度は低い。文章からは、「誰に」若年性認知症の症状への理解を促すのか記載されていない。仮に、「Aさん自身への場合」は若年性認知症の理解を促しても、それが刺激となりより暴言などを引き起こす可能性が考えられる。また、「妻への場合」は、「Aさんの変化に不安」を抱いているものの「若年性認知症への知識不足」である記載はない。一方的に「若年性認知症の知識不足」と決めつけて「若年性認知症の症状への理解を促す」よりも「なぜ不安になっているのか」を傾聴・共感することが望ましい。
3.〇 正しい。認知症初期集中支援チームへの支援依頼を提案する。認知症初期集中支援チームとは、認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問し、複数の専門職でアセスメントや自立生活の支援を行うチームのことを指す。対象者の自宅を訪問・評価し、そのうえで、家族支援などの初期の支援を包括的、集中的(おおむね6か月)に行う。チームのメンバーには、保健師・看護師・社会福祉士・介護福祉士などの専門職と専門医が含まれる。各専門家が評価し支援してくれるため、Aさんへの対応と妻の不安を軽減することができる。
4.× 認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>の入所を提案する優先度は低い。なぜなら、本症例は介護保険を取得していないため。認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>は、要支援2から利用できる。また、家族は入所を望んでいるのか記載されていないため提案は時期尚早である。
介護保険制度とは、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができる。
【目標】
予防とリハビリテーションの重視
高齢者による選択
在宅ケアの推進
利用者本位のサービスの提供
社会連帯による支え合い
介護基盤の整備
重層的で効率的なシステム
【基本理念】
自己決定の尊重
生活の継続
自己支援(残存能力の活用)
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(55歳、男性)は、妻(48歳、パート勤務)と長女(16歳、高校生)の3人暮らしである。Aさんは会社員として勤務していたが、3年前に記憶力の低下を感じ医療機関を受診したところ若年性認知症と診断された。今は退職し、就労支援事業所に通っているが、最近になり外出して道に迷い近所の住民に保護されたり、周囲に暴言を吐いたりするようになっていた。妻は、Aさんの変化に不安を感じ地域包括支援センターへ相談に訪れた。
55 2年後、Aさんの妻はAさんの症状に落ち着いて対応できるようになり、若年性認知症の家族会に定期的に参加するようになっていた。Aさんの妻は「家族会で体験を共有するだけでなく、地域の人々に若年性認知症とその家族について理解してもらえるような取り組みがしたい」と話した。地域包括支援センターの保健師と市の高齢福祉課の保健師は、若年性認知症の人とその家族への理解が広まるよう、Aさんの妻が体験を発信できる機会を検討することにした。
Aさんの妻が体験を発信する場として最も適切なのはどれか。
1.家族介護教室
2.認知症予防教室
3.高齢者の認知症の家族会
4.民生委員を対象とした研修会
解答4
解説
・2年後:妻は落ち着き、若年性認知症の家族会に定期的に参加。
・妻:「地域の人々に若年性認知症とその家族について理解してもらえるような取り組みがしたい」。
・地域包括支援センターと市の高齢福祉課の保健師:若年性認知症の人とその家族への理解が広まるよう、Aさんの妻が体験を発信できる機会を検討することにした。
→Aさんの妻が体験を発信する目的は、「地域への若年性認知症の人とその家族への理解」である。介護技術の向上や予防といった目的ではない。
1.× 家族介護教室の優先度は低い。家族介護教室とは、在宅で高齢者を介護している家族等に、高齢者の介護技術や介護者の健康づくり、要介護状態にならないための予防方法等についての知識、技術の習得、介護負担感の軽減を目的している。
2.× 認知症予防教室の優先度は低い。認知症予防教室とは、その名の通り認知症予防に関する情報や活動について学ぶ場であり、「食事」「運動」「脳」の3分野から生活習慣に体系的アプローチを行い、認知症発症の予防・改善・遅延を目指すプログラムメソッドである。
3.× 高齢者の認知症の家族会の優先度は低い。家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。一方的に講談するのではなく、それぞれが相互的に話し合う会である。
4.〇 正しい。民生委員を対象とした研修会がAさんの妻が体験を発信する場として最も適切である。民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。研修会(講演会)は、テーマについて専門性の高い話ができる講師や、テーマに沿った体験をもつ有名人を講師として招き、開催することができる。さらに民生委員を対象にすることで、地域へ波及する効果も期待できる。
問題の引用:第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。