第108回(R4)保健師国家試験 解説【午後6~10】

 

6 A市では高齢者を対象とした実態調査をもとに、「要介護状態となっても住み慣れたところで安心して暮らせるまち」を柱とした老人福祉計画を作成することとなった。
 計画の策定に向けてまず保健師が行う取り組みで最も適切なのはどれか。

1.評価指標に健康寿命を組み入れる。
2.インフォーマルサービスの情報を集める。
3.学識経験者で構成する委員会で施策の内容を決定する。
4.人口規模が同程度の市町村の事業をもとに優先度を決定する。

解答

解説

老人保健福祉計画とは?

老人保健福祉計画は、長寿社会にふさわしい高齢者保健福祉をいかに構築するかという極めて重要な課題に対して、それぞれの市町村及び都道府県が、目指すべき基本的な政策目標を定め、その実現に向かって取り組むべき施策を明らかにすることを主な趣旨とする計画である。

1.× 評価指標に健康寿命を組み入れる優先度は低い。なぜなら、「要介護状態となっても住み慣れたところで安心して暮らせるまち」を柱とした老人福祉計画を作成するため。健康寿命とは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指す。要介護状態になっている高齢者は該当しない。
2.〇 正しい。インフォーマルサービスの情報を集めることは、計画の策定に向けてまず保健師が行う取り組みである。インフォーマルサービスとは、法律や制度に基づいて自治体や医療機関、介護事業所が提供するサービス(フォーマルサービス)ではなく、家族や友人、地域住民、NPO、ボランティアなどによって有償・無償を問わず提供されるサービスを指す。「要介護状態となっても住み慣れたところで安心して暮らせるまち」にするためには、介護保険サービスなどの公的支援だけでは限界がある。
3.× 学識経験者で構成する委員会で施策の内容を決定する優先度は低い。なぜなら、「学識経験者で構成する委員会」だけでは、一般住民や地区組織の実態やニーズに即した施策内容を反映しにくいと考えられるため。地域の人々の参画が求められる。
4.× 人口規模が同程度の市町村の事業をもとに優先度を決定する優先度は低い。なぜなら、「人口規模が同程度」だけでは、その他の要素(人口構成や地域の現状、特徴、高齢者のニーズなど)が異なる可能性が高いため。また、設問では、「A市では高齢者を対象とした実態調査」も行っている。

 

 

 

 

 

 

7 平成29年(2017年)の患者調査に基づく全国の傷病小分類別の年齢階級別外来受療率のグラフで2型糖尿病を示すのはどれか。

解答

解説

患者調査とは?

目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかにする。
調査頻度:3年に1回、医療施設静態調査と同時期に実施している。
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為により抽出した医療施設の患者)
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。

(参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)

参考に「平成29年(2017)患者調査の概況」厚生労働省HP様から探してみましたが、「全国の傷病小分類別の年齢階級別外来受療率のグラフで2型糖尿病」は見つけることができませんでした。もし、分かる方や調べられた方いらしたら、コメント欄にて教えてください。

 

 

 




 

 

 

8 難病対策で正しいのはどれか。

1.市町村は難病対策地域協議会の設置に努める。
2.診断基準が未確立である疾病が医療費助成の対象となる。
3.日常生活用具の給付には身体障害者手帳の取得が必要である。
4.指定医療機関による訪問看護の費用は医療費助成の対象となる。

解答

解説

難病対策

難病対策には主に2つの法がある。

①難病法:難病の患者に対する医療などに関する施策を定め、良質・適切な医療の確保、療養生活の質の維持向上を図ることを目的としている。

②障害者総合支援法:障害者に対するサービス・給付を定めるものである。

難病対策地域協議会とは?

難病対策地域協議会は「難病法」に目的や協議の内容が定められている。

定義:難病法上、関係機関等が相互の連絡を図ることにより、地域における難病の患者への支援体制に関する課題について情報 を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行う組織として規定されている。その設置については、都道府県、保健所を設置する市及び特別区に対し、努力義務が課されている。

(※参考:「難病対策地域協議会について」難病情報センター様HPより)

1.× 難病対策地域協議会の設置に努めるのは、「市町村」ではなく「都道府県、保健所を設置する市及び特別区」である。「難病法」において、「都道府県、保健所を設置する市及び特別区は難病の患者への支援の体制の整備を図るため難病対策地域協議会を置くように努める(32条)」ことが示され、難病施策においてあらためて難病保健活動と保健所の役割が提示された。難病対策地域協議会は「難病法」に目的や協議の内容が定められている。難病対策地域協議会は、地域における難病の患者への支援体制に関する課題について情報を共有し関係機関などの連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行うものである。都道府県、保健所を設置する市および特別区は、単独または共同で、難病対策地域協議会を設置する「努力義務」がある。
2.× 医療費助成の対象となるのは、「診断基準が未確立である疾病」ではなく「指定難病に罹患し、重症度分類等による病状の程度が一定以上であるとして認定を受けた者」である。なお、重症度分類等の基準を満たさない軽症者でも、高額な医療を継続する必要がある場合は医療費助成の対象となる。
3.× 日常生活用具の給付には身体障害者手帳の取得は必要ない。『障害者総合支援法』の対象に指定されている難病患者であれば、身体障害者手帳の取得の有無にかかわらず、必要と認められた支援が受けられる。
4.〇 正しい。指定医療機関による訪問看護の費用は医療費助成の対象となる。医療費助成は、都道府県・指定都市が指定する指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。訪問看護も支給の対象となる。特定医療とは、指定難病の患者に対し、指定医療機関が行う医療であって、指定難病及び当該指定難病に付随して発生する傷病に関する医療をいう。

『難病法』とは?

『難病法』とは、難病の患者に対する医療などに関する施策を定め、良質・適切な医療の確保、療養生活の質の維持向上を図ることを目的としている。この目的に沿って定められている8つの基本方針は以下のとおりである。

【難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針】
①医療等の推進の基本的な方向
②医療を提供する体制の確保に関する事項
③医療に関する人材の養成に関する事項
④調査及び研究に関する事項
⑤医療のための医薬品及び医療機器に関する研究開発の推進に関する事項
⑥療養生活の環境整備に関する事項
⑦医療等と福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
⑧その他、医療等の推進に関する重要事項

【難病と指定難病の定義】
・発病の機構が明らかでない。
・治療方法が確立していない。
・希少な疾病である。
・長期の療養を必要する。
【指定難病】
・患者数が一定の人数に達しない。
・客観的な診断基準が確立してない。

【医療費助成制度について】
都道府県・指定都市の窓口に申請する。
②医療費助成の対象者:指定難病に罹患し、重症度分類等による病状の程度が一定以上であるとして認定を受けた者。
③患者の自己負担は2割で、自己負担上限額(月額)が設定されている。
④自己負担上限額は、応能負担(世帯の所得に応じて設定)されている。
⑤医療費助成は、都道府県・指定都市が指定する指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。
⑥特定医療費の支給に要する費用は、都道府県と国が50%ずつ負担している。
(※参考「指定難病の要件について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

 

9 Aさん(83歳、女性)は1人暮らし。要介護1の認定を受け、訪問介護を利用している。Aさんは2か月前から持続する咳に加えて、倦怠感が出現したため内科を受診し肺結核と診断され入院した。2か月後、外来治療が可能となり自宅に戻ることになった。
 退院に向けて服薬支援を検討するための会議の参加を依頼する者として最も適切なのはどれか。

1.自治会長
2.民生委員
3.老人クラブの会長
4.訪問介護事業所の訪問介護員

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(83歳、女性、1人暮らし、要介護1)
・訪問介護を利用。
・肺結核の治療、2か月後退院。
→退院に向けて服薬支援を検討するための会議の参加を依頼する。

1.× 自治会長の優先度は低い。なぜなら、設問文からは自治会長とAさんとの接点は読み取れないため。また、自治会長とは、住民がよりよい生活を送るためにその地域で暮らす人々で結成された任意の団体(自治会、町内会、区など)の代表者をいう。服薬支援や生活支援に関する知識を有する人は少ない。
2.× 民生委員の優先度は低い。なぜなら、民生委員に服薬支援を頼むより、訪問介護を利用しており適任がほかにあるため。民生委員とは、『民生委員法』に基づく、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進を目的として、高齢者世帯の見守りなどを担っている。
3.× 老人クラブの会長の優先度は低い。なぜなら、設問文からは自治会長とAさんとの接点は読み取れないため。老人会(老人クラブ、シニアクラブ、敬老会)とは、地域を基盤とする高齢者団体である。町内会に付随、又は、連携し、高齢者への福祉に取り組んでいる。服薬支援や生活支援に関する知識を有する人は少ない。
4.〇 正しい。訪問介護事業所の訪問介護員は、会議の参加を依頼する者として最も適切である。なぜなら、本症例は入院前から「要介護1の認定を受け、訪問介護を利用」していたため。入院前の服薬の様子にも熟知している可能性が高く、また、介護・生活支援に関する知識を有する職種である。

民生委員とは?

民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

 

 




 

 

 

10 各発達段階と歯科口腔保健の特徴との組合せで正しいのはどれか。

1.乳児期:歯の形成
2.幼児期:乳歯から永久歯への生え代わり
3.学童期:不正咬合の発生
4.成人期:第3大臼歯萌出

解答

解説
1.× 乳児期は、「歯の形成」ではなく「乳歯が生え始める」時期である。ちなみに、歯の形成は胎生期である。
2.× 幼児期は、「乳歯から永久歯への生え代わり」ではなく「乳歯列が完成する」時期である。ちなみに、乳歯から永久歯への生え代わりは、学童期である。
3.〇 正しい。学童期は、「不正咬合の発生」である。永久歯が生え始める学童期から思春期にかけて発生しやすい。
4.× 成人期は、「第3大臼歯萌出(親知らず)」ではなく、「歯周組織が脆弱になり始める」時期である。ちなみに、第3大臼歯萌出(親知らず)は、思春期(12~18歳頃)である。

ライフステージごとの歯科口腔保健の特徴

①乳幼児(6か月~):乳歯が生え始める。
②乳児期(2~3歳):乳歯列が完成する。
③学童期(6~7歳):永久歯が生え始める。
④思春期(12~18歳):①永久歯列が完成する。②第三歯列(親知らず)が生え始める。
⑤成人期:歯周組織が脆弱になり始める。
⑥妊産婦:妊娠に伴う生理的変化。
⑦40歳:歯の喪失が始まる。
⑧高齢期:歯の喪失が急増する。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)