第108回(R7) 助産師国家試験 解説【午後26~30】

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26 A助産師は、3年前に助産所を開設し、セミオープンシステムを導入している。半年前から、妊婦と子育て中の母親が交流できる子育てサロンを新たに開始した。
 A助産師は、妊産婦に助産所をより広く周知するためにホームページを見直すことにした。
 助産所のホームページに掲載が禁止されているのはどれか。

1.A助産師がサロンに参加した母親に依頼した体験談の記事
2.セミオープンシステムの説明
3.子育てサロンの開催日時
4.助産所の分娩費用
5.嘱託医師の氏名

解答

解説

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

第二節 医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告
第六条の五 何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。
2 前項に規定する場合には、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害することがないよう、広告の内容及び方法が、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
一 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。
二 誇大な広告をしないこと。
三 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。
四 その他医療に関する適切な選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定める基準(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)

1.〇 正しい。A助産師がサロンに参加した母親に依頼した体験談の記事は、助産所のホームページに掲載が禁止されている。主に、体験談は、治療やサービスの絶対的な効果や誤認を招く可能性があるため、原則として広告に掲載することが禁止されている。助産所は医療機関(助産師が医療行為を行う場所)に該当するため、医療広告規制の対象となる。
根拠:「第一条の九:広告の内容及び方法の基準は、次のとおりとする。 一 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと。 二 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと」と記載されている(※引用:「医療法施行規則」e-GOV法令検索様HPより)。

2~5.× セミオープンシステムの説明/子育てサロンの開催日時/助産所の分娩費用/嘱託医師の氏名は、ホームページに掲載できる。これらの情報は、客観的かつ誤解が招きにくい情報であるため。利用者への信頼性を示す上で役立つ。

 

 

 

 

 

27 閉経以降の女性に生じる身体変化の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.骨吸収は低下する。
2.骨形成は低下する。
3.中性脂肪は上昇する。
4.HDLコレステロールは上昇する。
5.LDLコレステロールは上昇する。

解答3・5

解説

閉経後の変化

閉経は、加齢とともに卵胞が枯渇するため、卵巣からの卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで起こる。12か月以上の無月経を確認するか、黄体ホルモン剤を投与しても消退出血を認めないことにより診断する。閉経後も女性の体は変化し続け、①黄色のおりもの、②外陰部の乾燥感、③掻痒感を伴う萎縮性腟炎、④尿失禁、⑤心血管疾患(動脈硬化、高血圧、脳卒中)、⑥骨粗鬆症が出現する。特に萎縮性腟炎は繰り返し出現し、女性に不快感を与え、性交痛の原因にもなる。

1.× 骨吸収は、「低下」ではなく増加する。なぜなら、卵胞ホルモン(エストロゲン)は、骨形成を促進し、骨吸収を抑制する重要な作用があるため。
・骨吸収とは、その名の通り骨組織の吸収であり、つまり、破骨細胞が骨の組織を分解してミネラルを放出し、骨組織から血液にカルシウムが移動するプロセスである。

2.× 骨形成は、「低下」ではなく増加する。なぜなら、閉経直後は、骨代謝回転が全体として亢進するため。ただし、骨吸収の増加のほうが優位であるため、骨量は減少する。

3.〇 正しい。中性脂肪は上昇する。なぜなら、エストロゲンは脂質代謝にも影響を与え、中性脂肪の合成を抑制し、分解を促進する作用があるため。閉経によるエストロゲン減少は、この働きが弱まるため、血液中の中性脂肪値が上昇する。

4.× HDLコレステロールは、「上昇」ではなく低下する。なぜなら、エストロゲンには、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を高く保つ作用があるため。したがって、閉経によりエストロゲンが減少すると、その作用が失われ、HDLコレステロール値が低下しやすくなる。

5.〇 正しい。LDLコレステロールは上昇する。なぜなら、エストロゲンには、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値を低く保つ作用があるため。したがって、閉経によるエストロゲン減少は、この働きが失われ、LDLコレステロール値が上昇する傾向にある。
・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とは、全身の末梢血管にコレステロールを運ぶ作用を持つ。肝臓で主に代謝され、140mg/dL以上あると脂質異常症と診断される。

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

28 性染色体の数の異常を示すのはどれか。2つ選べ。

1.アンドロゲン不応症
2.Turner〈ターナー〉症候群
3.Sheehan〈シーハン〉症候群
4.Rokitansky〈ロキタンスキー〉症候群
5.Klinefelter〈クラインフェルター〉症候群

解答2・5

解説
1.× アンドロゲン不応症(以前は精巣性女性化症候群とも)とは、通常、染色体が46,XYで精巣を持つが、表現型(外見に現れた形態・生理的な性質)が女性である病態のことである。つまり、外性器は完全に女性型であるが、精巣は存在しテストステロンやアンチミューラリアンホルモン(または抗ミュラー管ホルモン)は分泌されるため、ミューラー管から分化する子宮・卵巣・卵管は欠如する。したがって、外見的には女性であり、腟も存在し女性として養育され原発性無月経で初めて診断されることが多い。連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)で起こる。

2.〇 正しい。Turner〈ターナー〉症候群は、性染色体の数の異常を示す。
・Turner<ターナー>症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。完全欠損例では、卵巣は策状に萎縮するために性腺ホルモンの分泌はなく、第2次性徴の欠如をきたす。

3.× Sheehan〈シーハン〉症候群とは、分娩時に大量出血してショックに陥り、脳にある下垂体に血液が行き届かなくなり、下垂体の組織が障害(変性や壊死)されて働きが下がること(下垂体機能不全)によって起こる一連の症状である。ちなみに、下垂体とは、脳の直下にあって、さまざまホルモンを分泌する内分泌器官である。下垂体の前葉からは、副腎皮質刺激ホルモン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモン、性腺刺激ホルモンが、下垂体の後葉からは抗利尿ホルモンが分泌される。

4.× Rokitansky〈ロキタンスキー〉症候群とは、子宮と腟の一部もしくは全部が欠損して生まれる先天性疾患である。原因は不明であるが、何らかの理由で胎児期における女性内性器へと発達する「ミューラー管」の分化異常によって生じる。卵巣・卵管は正常であるため、女性ホルモンの分泌や排卵などは一般の女性と同様である。ただし、子宮がないために月経は起こらず、中高生になって初潮がこない。合併症として、約30%に腎欠損、馬蹄腎、椎体異常、多指症、直腸肛門奇形などが起こる。

5.〇 正しい。Klinefelter〈クラインフェルター〉症候群は、性染色体の数の異常を示す。
Klinefelter〈クラインフェルター〉症候群とは、性染色体異常により生じる先天異常で、高身長・精子形成不全・無精子症などの性腺機能不全、言語発達遅延、女性化乳房が特徴である。X染色体がXXYであり、Y染色体をもつため性腺は精巣へと分化し、内性器・外性器とも男性型に分化するが、精巣は正常な機能は示さない。

 

 

 

 

 

29 尖圭コンジローマについて正しいのはどれか。2つ選べ。

1.リンパ節腫脹を生じる。
2.血液検査によって診断する。
3.治療には抗菌薬を内服する。
4.予防法としてワクチン接種がある。
5.外陰部の病変には外用薬を塗布する。

解答4・5

解説

尖圭コンジローマとは?

尖圭コンジローマとは、性病の一種で、性器にイボのようなぶつぶつができる病気で、主に性行為や性行為に似た行為によって感染する。粘膜が接触することで、傷口などからヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入する。粘膜だけではなく皮膚に傷があれば、そこから感染することもある。

1.× リンパ節腫脹は「生じない」。なぜなら、尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる皮膚や粘膜の病変であるため。
・リンパ節腫脹とは、1つまたは複数のリンパ節が増大して触知できるようになった状態である。ウィルス、細菌、結核菌、梅毒、トキソプラズマなどによって起こる。体表から触知できるリンパ節は、①頭頸部、②腋窩、③肘関節上部、③腹部、④鼠径部(大腿部)、⑤膝窩部である。リンパ節は皮下に存在するため、皮膚を動かしても皮膚と一緒に動くことはないため、示指から環指の指腹を皮膚に軽く密着させ、皮膚を動かすことにより触診する。

2.× 「血液検査」ではなく主に視診によって診断する。視診によって、特徴的な病変(乳頭状、鶏冠状、カリフラワー状の隆起)を確認する。確定診断のためには、病変の一部を採取して病理組織学的検査を行う。

3.× 治療には、「抗菌薬」ではなく免疫賦活作用のある外用薬(イミキモド)を内服する。なぜなら、尖圭コンジローマの原因はウイルス(HPV)であり、細菌ではないため。ほかの治療は、病変の除去(外科的切除、レーザー蒸散、電気焼灼、液体窒素療法など)である。
・抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。抗菌薬の不適正使用により、薬剤耐性菌の出現が問題となっている。適正に感染症診断を行なったうえで必要時に内服を行う。

4.〇 正しい。予防法としてワクチン接種がある。尖圭コンジローマの主な原因は、HPV(特に6型、11型)である。したがって、尖圭コンジローマの予防には、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)が有効である。

5.〇 正しい。外陰部の病変には外用薬を塗布する。治療には、免疫賦活作用のある外用薬(イミキモド)を内服する。患者自身の免疫力を高めることでウイルスを排除し、病変を消失させる効果が期待される。

 

 

 

 

 

30 羊膜で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.血管がない。
2.羊水を分泌する。
3.胎生42日目に形成される。
4.エストロゲンが分泌される。
5.子宮内膜から分化したものである。

解答1・2

解説

(※図引用:「羊膜のご提供をお考えのお母さまへ」東京歯科大学HPより)

羊膜とは

羊膜は、細胞とコラーゲンやラミニン等のタンパクからなる基底膜や緻密層からなり、血管を含まない半透明の薄い袋状の膜である。子宮の中で赤ちゃんを包む卵膜の最内層を覆う厚さ約100~150μmの半透明の膜であり、母体からの胎盤組織への拒絶反応の抑制等、赤ちゃんを保護したり、羊水を分泌する役割があると考えられている。 赤ちゃん由来の組織であるため、拒絶反応が起こりにくく、炎症を抑える働きがある。薄くて伸縮性に富むため、昔から様々な医療用途に用いられている。

1.〇 正しい。血管がない。羊膜はコラーゲンに富む血管を含まず、羊水を保持している膜であるため血管がない。血管構造を持たないことで、膜の柔軟性が保たれ、胎児の動きを妨げにくく、また破れにくくする機能があると考えられている。

2.〇 正しい。羊水を分泌する。羊膜は胎盤および臍帯の胎児面を包むように形成され、羊水の一部を分泌する。

3.× 形成されるのは、「胎生42日目」ではなく胎生7日目である。胎児外肺葉および中胚葉が伸展して形成される。

4.× エストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されるのは、卵巣から分泌される。ちなみに、卵胞の発育、排卵を起こさせる作用がある。また、羊膜は機械的な伸展刺激によりサイトカインやコラゲナーゼなどを産生する。サイトカインとは、主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質である。コラゲナーゼとは、タンパク質の一種であるコラーゲンを分解する酵素のことである。

5.× 子宮内膜から分化したもの「ではない」。羊膜は、赤ちゃん由来の組織であるため、拒絶反応が起こりにくく、炎症を抑える働きがある。薄くて伸縮性に富む。ちなみに、子宮内膜から分化したものは、脱落膜で母体側の組織である。卵膜は母体側から①脱落膜、②絨毛膜、③羊膜の3層構造になっている。また、胎児側の組織は絨毛膜と羊膜である。

胎児由来

胎児は受精卵から作られるが、胎児付属物(胎盤や臍帯、羊膜)も受精卵の一部から形成される。これらは、胎児が子宮内で母体から栄養や酸素を得て老廃物を母体血に引き渡すために必要な、いわば胎児の生命維持装置である。そのやり取りのために、胎盤、臍帯には母児の血液が多量に潅流しており、その異常の発生は胎児の生命だけでなく、母児の各種トラブルや後遺症と深く関連する。胎児だけでなく、妊娠中の胎児付属物に対する超音波診断も重要である。

 

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