第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前106~110】

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次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(34歳、初産婦)は、夫(37歳、会社員)と2人暮らし。事務の仕事をしている。身長157cm、非妊時体重54kg。妊娠24週4日の妊婦健康診査時の体重58kgで4週前から1.5kg増加している。血圧128/88mmHg。尿蛋白(±)、尿糖(-)。浮腫(±)。Hb 10g/dL、Ht 30%。子宮底長22.5cm、腹囲84cm。胎児推定体重700g。非妊時より白色の腟分泌物は多いが、搔痒感はない。

106 Aさんの妊婦健康診査時のアセスメントで適切なのはどれか。

1.妊娠性貧血
2.腟カンジダ症
3.胎児発育不全(FGR)
4.妊娠高血圧症候群(HDP)

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(34歳、初産婦、事務)
・2人暮らし:夫(37歳、会社員)
・身長157cm、非妊時体重54kg。
妊娠24週4日:体重58kg(4週前から1.5kg増加)
血圧128/88mmHg、尿蛋白(±)、尿糖(-)、浮腫(±)。
Hb 10g/dLHt 30%、子宮底長22.5cm、腹囲84cm。
胎児推定体重700g
・非妊時より白色の腟分泌物は多いが、搔痒感はない
→Aさんは、妊娠性貧血が疑われる。妊娠性貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称であり、ヘモグロビン濃度(Hb値)が11g/dL未満、あるいはヘマトクリット値(Ht値)が33%未満で診断される。妊娠性貧血は、全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。

1.〇 正しい。妊娠性貧血である。なぜなら、AさんはHb 10g/dL、Ht 30%であるため。妊娠性貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称であり、ヘモグロビン濃度(Hb値)が11g/dL未満、あるいはヘマトクリット値(Ht値)が33%未満で診断される。妊娠性貧血は、全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。
2.× 腟カンジダ症とは、カンジダと呼ばれる真菌に感染することで腟に炎症が起きた状態である。腟カンジダになると、かゆみやおりものの変化など、さまざまな症状が出る。症状は性行為をしている時に強くなるといわれており、腟や腟の入り口部分に出る症状として、①強いかゆみ、②赤くなる、③皮膚が熱っぽいなどがあげられる。また、おりものの変化として、①量が増える、②白色でおかゆやチーズ、ヨーグルトのような見た目になるなどがあげられる。
3.× 胎児発育不全(FGR)とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。各妊娠週数の胎児体重基準によると、妊娠24週0日の平均値が660g、「-1.5SD」が511gである。また妊娠25週0日の平均値が771g、「-1.5SD」が602gである。Aさんの場合では妊娠24週4日で、胎児推定体重は700gである。
4.× 妊娠高血圧症候群(HDP)とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。Aさんの血圧は、128/88mmHgであるため、妊娠高血圧症候群と断言できない。

 

 

 

 

 

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(34歳、初産婦)は、夫(37歳、会社員)と2人暮らし。事務の仕事をしている。身長157cm、非妊時体重54kg。妊娠24週4日の妊婦健康診査時の体重58kgで4週前から1.5kg増加している。血圧128/88mmHg。尿蛋白(±)、尿糖(-)。浮腫(±)。Hb 10g/dL、Ht 30%。子宮底長22.5cm、腹囲84cm。胎児推定体重700g。非妊時より白色の腟分泌物は多いが、搔痒感はない。

107 妊婦健康診査後、Aさんは看護師に「毎朝30分、電車内で立ち続けているので職場までの通勤がとても疲れます」と話した。看護師はAさんに、就労する妊娠中の女性に関する制度について説明した。
 Aさんがこの時点で取得できるのはどれか。

1.産前休業
2.時差出勤
3.就業の制限
4.所定労働時間の短縮

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん「毎朝30分、電車内で立ち続けているので職場までの通勤がとても疲れます」と。
・看護師は「就労する妊娠中の女性に関する制度について」説明した。
→Aさんは、毎朝電車内で立ち続けている。これは満員列車に乗らざる負えない状況であると考えられるため、時差出勤が必要である。これは、『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)』の「妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置」に規定されている。

1.× 産前休業とは、女性労働者が母体保護のため出産の前後においてとる休業の期間である。産休とも称され、『労働基準法』に定められている。産前休業は、産前6週間と定められており、Aさんは、24週4日であるため適応外である。ちなみに、妊娠週数として、①妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)、②妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)、③妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)と分けられる。
2.〇 正しい。時差出勤は、『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)』の「妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置」に規定されている。具体的には、妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等)が定められている。妊娠週数に関係なく、妊娠している女性が対象となり、通勤ラッシュを避けるなど身体への負担を減らすことが目的である(※参考:「⑵  妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置」厚生労働省HPより)。
3.× 就業の制限は、『労働基準法の第64条、第66条』に定められている。妊産婦の坑内業務(下にある鉱物を採掘する場所、当該場所に達するために作られる地下の通路等をいい、坑内労働には、鉱山におけるものとずい道工事等鉱山以外におけるもの)、危険有害業務の禁止、妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限を指す(参考:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
4.× 所定労働時間の短縮は、『育児・介護休業法』で定められている。育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、育児・介護に携わる労働者について定めた日本の法律である。①労働者の育児休業、②介護休業、③子の看護休暇、④介護休暇などが規定されている。小学校就学までの子のいる労働者が対象である。

男女雇用機会均等法

(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)
第 12条 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健
法(昭和40年法律第141号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間
を確保することができるようにしなければならない。
第 13条 事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項
を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなけ
ればならない。
2  厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効
な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。

(※一部引用:「⑵  妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(34歳、初産婦)は、夫(37歳、会社員)と2人暮らし。事務の仕事をしている。身長157cm、非妊時体重54kg。妊娠24週4日の妊婦健康診査時の体重58kgで4週前から1.5kg増加している。血圧128/88mmHg。尿蛋白(±)、尿糖(-)。浮腫(±)。Hb 10g/dL、Ht 30%。子宮底長22.5cm、腹囲84cm。胎児推定体重700g。非妊時より白色の腟分泌物は多いが、搔痒感はない。

108 Aさんは夫に付き添われ、妊娠35週4日に妊婦健康診査を受けた。体重62kg、血圧126/76mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。浮腫(±)。子宮底長30cm、腹囲88cm。Aさんは看護師に「膝の裏の血管が膨らんで、青く浮き出てきました。夕方になると足がだるくなり、夕食の準備のため立っているとつらくなります」と言う。
 Aさんへの指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「水分を控えましょう」
2.「体重を減らしましょう」
3.「ガードルを着用しましょう」
4.「弾性ストッキングを着用しましょう」
5.「寝るときは足を高くして横になりましょう」

解答4・5

解説

本症例のポイント

・妊娠35週4日:妊婦健康診査を受けた。
・体重62kg、血圧126/76mmHg。
・尿蛋白(-)、尿糖(-)、浮腫(±)
・子宮底長30cm、腹囲88cm。
・Aさん「膝の裏の血管が膨らんで、青く浮き出てきました。夕方になると足がだるくなり、夕食の準備のため立っているとつらくなります」と。
→Aさんは、マイナートラブルである静脈瘤が疑われる。マイナートラブル(minor trouble)とは、小さな問題という意味で、妊娠に伴って生ずる不快症状を指す。妊娠による生理的変化や心理的な要因によって引き起こされる種々の不快症状で、重篤な器質的疾患を伴わないものをいう。不快感の程度は個人差が大きく、妊娠の経過に伴い自然に軽快・回復したり、新たな症状が自覚されたりすることもある。マイナートラブルは、妊娠によって生ずる体の生理的変動が、また精神的変化が不定愁訴の原因となっている場合が多いが、そのほか、妊娠による心理的葛藤や不安などが自律神経症状やその他の精神的および身体的症状を起こしやすくしている。主に、つわり、めまい、立ちくらみ、便秘、腰背痛、下肢のけいれん、静脈瘤、痔、頻尿、浮腫、胸やけ、帯下、瘙痒感などがあげられる。

1.× 水分を「控える」のではなく促す。Aさんの「膝の裏の血管が膨らんで、青く浮き出てくる」という主張から、Aさんには下肢静脈瘤が生じている可能性が高い。妊娠中は、深部静脈血栓症のリスクが高く、この時に水分摂取を控えると、血栓ができやすくなる。そのため、水分摂取を促す。静脈瘤に対する治療として、大多数は出産後速やかに改善すること、また妊娠中の手術や薬の投与はおなかの赤ちゃんへの影響が心配されることから、通常は行われない。静脈瘤を悪化させずに静脈のうっ滞を取り除く(静脈瘤がふくれないようにする)ために、弾性ストッキングを着用したり、マッサージやあしを高くして寝るなどの対処を行う。
2.× 体重を減らす必要はない。なぜなら、Aさんの場合は、非妊娠時のBMIは約22で、体重増加も非妊娠時より+8kgであり、妊娠全期間を通しての推奨体重増加量の範囲であるため。妊婦の体重の変化として、基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている。これ以上、体重が増加した場合、早産や切迫早産、胎児の発育の遅れによる影響、成人後の生活習慣病などのリスクがあげられる。ちなみに、非妊娠時の静脈癌であれば体重コントロール(有酸素運動など)は有効である。
3.× ガードル(腹帯)の着用は不要である。なぜなら、妊娠中のガードルの適応は、妊娠の腰背痛の治療法であるため。妊婦帯(腹帯・マタニティガードル)とは、①大きくなるお腹の重みを支える、②負担のかかる腰をサポートする、③赤ちゃんをはぐくむお腹と腰が冷えないようにするといった役割を持つ。
4.〇 正しい。弾性ストッキングを着用する。弾性ストッキングを使用することで、静脈を周囲から他動的に圧迫し、静脈血流を改善する。
5.〇 正しい。寝るときは足を高くして横になる。なぜなら、寝るときに足を高くして横になることによって、下肢の静脈血還流量を改善できるため。

 

 

 

 

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦、会社員)は、夫と2人暮らし。妊娠38週6日で3,200g の児を正常分娩した。分娩後から母児同室を開始しており、母乳育児を希望している。

109 産褥2日。乳房の緊満はなく、熱感がある。初乳から移行乳へと変化している。Aさんの児の抱き方はぎこちなく、乳頭をくわえさせるのに時間がかかっている。産褥1日から2日にかけた24時間で、14回の直接授乳をしている。児の体重は3,060gで、体重減少率は4.4 %、排尿は3回/日、排便は2回/日である。Aさんは「あまり母乳が出ていないようですが、人工乳を足した方がよいですか」と看護師に相談した。
 この時、看護師がアセスメントする項目で最も重要なのはどれか。

1.直接授乳の回数
2.母乳の分泌状態
3.児の体重減少率
4.児の排泄状況

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、初産婦、会社員)
・妊娠38週6日:正常分娩(3,200gの児)
・産褥2日:乳房緊満なく、熱感あり。
・産褥1日から2日(24時間):14回の直接授乳
・児の体重:3,060g、体重減少率:4.4%
・排尿:3回/日、排便:2回/日。
・Aさん「あまり母乳が出ていないようですが、人工乳を足した方がよいですか」と
→Aさんは「人工乳を足した方がよいですか」と質問している。人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。

1.× 直接授乳の回数より優先度が高いものが他にある。なぜなら、直接授乳の回数が、直接、児がどれだけの量の母乳を飲めているかの判断はできないため。分泌量や児の体重の変化の評価が優先される。また、Aさんは産褥1日から2日(24時間)で14回の直接授乳(正常範囲内)できているため。ちなみに、およそ2日目~4日目(出産当日を含む)の母乳が出始めるときまでに、赤ちゃんは夜中も含めて24時間に8~12回は飲む。
2.× 母乳の分泌状態より優先度が高いものが他にある。なぜなら、母乳の分泌状態が、直接、児がどれだけの量の母乳を飲めているかの判断はできないため。分泌量や児の体重の変化の評価が優先される。また、Aさんは初乳から移行乳へと変化している。ちなみに、移行乳とは、初乳と成乳の間に出る母乳で、産後5日目頃から2週間ほどの間に出る母乳である。通常、産後72時間以上経っても乳汁分泌が活性化しない場合、乳汁分泌遅延を疑う。
3.〇 正しい。児の体重減少率は、看護師がアセスメントする項目で最も重要である。Aさんは「あまり母乳が出ていないようですが、人工乳を足した方がよいですか」と質問している。人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。ちなみに、Aさんの児の場合では、生後2日で体重減少率4.4%なので生理的体重減少の範囲内(5〜6%ほど)である。したがって、現時点では人工乳を追加する必要はないと考えられる。
4.× 児の排泄状況より優先度が高いものが他にある。なぜなら、排便回数は個人差が大きく、1日に10回以上排便することもあるが、1〜2日に1回程度の場合もあるため。一応、目安としては、母乳栄養児の場合、20~30ℊ/日を7~10回する。一方、人工栄養児の場合、40~60ℊ/日を7~10回する。

 

 

 

 

 

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦、会社員)は、夫と2人暮らし。妊娠38週6日で3,200g の児を正常分娩した。分娩後から母児同室を開始しており、母乳育児を希望している。

110 産褥3日。Aさんの子宮底は臍下3横指、硬度は硬い。悪露は血性少量であった。乳房は左右とも全体的に硬く触れ、熱感と発赤があり痛みを訴えている。乳汁分泌状態は、乳管口は開口数左右5本ずつ、移行乳の分泌を認める。Aさんのバイタルサインは体温37.9 ℃、脈拍72/分、血圧108/60mmHgであった。
 Aさんの状態として最も考えられるのはどれか。(※不適切問題:解答2つ)

1.産褥熱
2.子宮復古不全
3.乳腺炎
4.乳房緊満

解答3・4

解説

本症例のポイント

・産褥3日
・子宮底:臍下3横指、硬度:硬い。
・悪露:血性少量
・乳房:左右とも全体的に硬い(熱感、発赤、痛みあり)。
・乳汁分泌状態:乳管口は開口数左右5本ずつ、移行乳の分泌あり。
・バイタルサイン:体温37.9℃、脈拍72/分、血圧108/60mmHg。
→子宮復古状態の目安は、3日目:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)である。ちなみに、子宮復古とは、妊娠・分娩によって生じたこれらの変化が、分娩後、徐々に妊娠前の状態に戻ることである。子宮復古状態は、腹壁上から触知する子宮の位置や硬さ、子宮底長、悪露の色と量、後陣痛の強さの訴えなどから判断できる。特に、直接子宮の状態を観察できる触診、子宮底長の情報は重要である。

1.× 産褥熱とは、骨盤内感染によって分娩後24時間~産褥10日目に、2日以上にわたって38℃以上の発熱が続くことである。産褥子宮内膜炎では子宮に圧痛を認め、悪露は膿汁様で悪臭がある。 悪露滞留では子宮に圧痛はなく、悪露は減少する。
2.× 子宮復古不全とは、妊娠によって大きくなった子宮が出産を終えて元に戻る過程である子宮復古に異常が起き、通常の子宮収縮が認められない病態である。 原因は、①子宮内に胎盤の一部が残っている場合(子宮内残留)や、②母体疲労によるもの、③胎盤や卵膜の子宮内感染など原因は多岐に渡る。子宮復古不全では子宮の収縮が悪いため、悪露の量が多く、子宮底が高く柔らかく触れる。子宮復古状態の目安は、3日目:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)である。Aさんは正常範囲内である。
3.〇 正しい。乳腺炎(うっ滞性乳腺炎)は、Aさんの状態として最も考えられる。乳腺炎とは、乳汁を分泌する乳腺で炎症を起こす病気である。産後1週間以内にみられることが多く、うっ滞した乳汁が乳管内で炎症を起こすことで生じる。通常、症状は片側の乳房に生じることが多い。症状として乳房の熱感痛み腫れ発熱や倦怠感が見られる。Aさんの場合は、症状が両側性であるが、乳房の炎症所見や発熱が認められることから、うっ滞性乳腺炎を発症している可能性が考えられる。
4.〇 正しい。乳房緊満は、Aさんの状態として最も考えられる。乳房緊満とは、産褥1~5日目頃、生理的な乳房の腫脹と痛みを自覚することである。原因として、母乳分泌が多すぎることや、乳房のうっ血、浮腫などがあげられる。両側乳房が発赤、腫脹し、疼痛や軽度の発熱を伴うことがある。Aさんの場合、乳房に左右とも全体的に硬い(熱感、発赤、痛みあり)ことから、乳房緊満を発症している可能性が考えられる。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

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