第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後36~40】

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36 母子保健統計の算出方法で出生数を分母としているのはどれか。

1.妊娠満22週以後の死産率
2.周産期死亡率
3.乳児死亡率
4.死産率

解答3

解説

1.× 妊娠満22週以後の死産率の求め方は、年間の妊娠満22週以後の死産数(総数・自然・人工)÷ (年間出生数+妊娠満22週以後の死産数)である。
2.× 周産期死亡率の求め方は、年間周産期死亡数÷ (年間出生数+妊娠満22週以後の死産数)である。ちなみに、周産期とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間をいい、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間である。
3.〇 正しい。乳児死亡率は、母子保健統計の算出方法で出生数を分母としている。乳児死亡率の求め方は、年間新生児死亡数(生後1年未満の死亡数)÷ 年間出生数である。
4.× 死産率の求め方は、年間死産数(妊娠12週以後の死児の出産数)÷ (年間出産数:出生数+死産数)である

※細かい計算方法を知りたい方はこちらを参照してください↓
参考元:厚生労働省HP「厚生労働統計に用いる主な比率及び用語の解説

「※図引用:「比率の解説」厚生労働省HPより」

 

 

 

 

 

37 健康増進法に基づき実施されるのはどれか。

1.受療行動調査
2.特定保健指導
3.アレルギー疾患対策
4.受動喫煙の防止対策

解答4

解説

健康増進法とは?

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。

【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。

【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。

1.× 受療行動調査は、『統計法』に基づく調査である。ちなみに、受療行動調査とは、厚生労働省が3年おきに実施している調査で、全国の医療施設を利用する患者さんに診療等の状況や受けた医療に対する満足度等を聞き、患者視点にたった今後の医療のあり方を検討し、これからの医療をより良くするための基礎資料とするため調査である。また、統計法とは、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とした法律である。
2.× 特定保健指導は、『高齢者医療確保法』に基づき実施される。特定保健指導とは、予備群や軽症でまだ薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。特定保健指導と特定健康診査は、『高齢者医療確保法』に基づき医療保険者が実施する。
3.× アレルギー疾患対策は、『アレルギー疾患対策基本法』に基づいて実施される。アレルギー疾患対策基本法とは、アレルギー疾患に対する対策の必要性を法的にサポートしていく役割を果たす法律である。この法律があることで、アレルギー対策の目的を明文し、国民の理解と協力とともに、行政のサポートが得られやすくなる。
4.〇 正しい。受動喫煙の防止対策は、『健康増進法』に基づいて実施される。学校・病院・駅など、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙防止措置(分煙の徹底など)をとる努力義務を規定している。

高齢者医療確保法とは?

国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もって国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とした法律である。

 

 

 

 

38 判断能力のある成人患者へのインフォームド・コンセントにおける看護師の対応で適切なのはどれか。

1.患者の疑問には専門用語を用いて回答する。
2.今後の治療に関しては医療者に任せるように話す。
3.治療方針への同意は撤回できないことを説明する。
4.納得ができるまで医師からの説明が受けられることを伝える。

解答4

解説

インフォームド・コンセントとは?

インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。

1.× 患者の疑問には、「専門用語を用いず」わかりやすい言葉で回答する。なぜなら、判断能力のある成人患者といっても専門用語まで正しく理解できないため。
2.× 今後の治療に関しては、医療者に任せるように話すのは不適切である。なぜなら、インフォームド・コンセントとは、医療従事者から十分な情報提供と選択肢についての適切な説明を受けたうえで、示された選択肢のなかから患者自身が医療行為を自発的・非強制的に選択し決定できるよう支援することであるため。
3.× 治療方針への同意は、「撤回できない」のではなく、いつでも撤回できることを説明する。これは、患者には医療や医療サービスを自由に選択する権利、自由にセカンドオピニオンを受けることができる権利を有している。
4.〇 正しい。納得ができるまで医師からの説明が受けられることを伝える。インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。当然、納得ができるまで説明を聞くことができる。

 

 

 

 

 

39 看護過程における情報の分析はどれか。

1.脱水状態である。
2.尿比重は1.030である。
3.痛みは1〜10の尺度で8である。
4.左腓骨骨折によるシーネ固定をしている。

解答1

解説

MEMO

看護過程は、根拠を持った看護を実践するための思考過程である。根拠を持つためには、科学的根拠に基づいて情報の分析を行う必要がある。看護における問題解決過程とは、看護過程の流れ(①対象の全体像の把握(アセスメント)→②看護診断→③目標設定→④計画→⑤実施→⑥評価)を指す。また、クリティカル・シンキングとは、看護過程を展開するうえで重要な考え方のひとつである。批判的な思考能力・問題解決能力・創造的思考・意思決定能力などをいう。

1.〇 正しい。脱水状態であることは、看護過程における情報の分析である。なぜなら、「脱水状態」と判断できたのは、その他の情報を分析した結果であるため。情報の分析とは、情報の収集(客観的情報・主観的情報含め)を行い、看護アセスメントをすることである。
2.× 尿比重は1.030であるというのは、客観的情報である。
3.× 痛みは1〜10の尺度で8であるのは、主観的情報である。痛みの尺度(ペインスケール)の点数は、患者が感じた痛みを数値という手段で表したものである。
4.× 左腓骨骨折によるシーネ固定をしているのは、客観的情報である。

問題志向型医療記録とは?

問題志向型医療記録とは、患者の抱える問題に目を向け、患者の問題を中心に行う医療(POM:problem oriented medical)の考え方に合わせた記録方法のことをいう。問題(プロブレム) 毎に情報を整理し、問題毎にSOAP(subjective, objective, assessment, plan)に分けて記載する方法のこと。記載内容は以下のように整理する。

①S(Subjective):主観的情報
②O(Objective):客観的情報
③A(Assessment):評価
④P(Plan):計画

 

 

 

 

40 第2〜第4腰髄の障害を確認する方法で適切なのはどれか。

1.輻輳反射
2.膝蓋腱反射
3.Barré(バレー)徴候
4.Trendelenburg(トレンデレンブルグ)徴候

解答2

解説

1.× 輻輳反射とは、瞳孔反射の一つで、近くの物を見る時に両眼が内転(輻輳運動)し、あわせて瞳孔が収縮する反射のことをいう。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。患者の正面、約50cmのところに示指を立てて見つめてもらい、その指を15cmくらいまで近づけると両方の目が寄り目になる(左右の目がそれぞれ内転する)反射のことであり、動眼神経の障害を検査する。
2.〇 正しい。膝蓋腱反射は、第2〜第4腰髄の障害を確認する方法である。膝蓋腱反射の方法は、①患者を背臥位にし両膝を軽く屈曲し立てる。②検者は前腕をその膝の下に入れて下肢を支える。または、一側の下肢を膝立て位にして、その膝の上に他側の膝を乗せる。③膝蓋腱部を触知してその腱部を叩打する。反射が消失した場合、第2~第4腰髄に障害を疑う。一方、第2~第4腰髄よりも上位(頭側の脊髄や脳)の運動経路に障害があると下肢の伸展は亢進する。
3.× Barré徴候:バレー徴候とは、脳血管障害など(軽度麻痺)によって起こる。上位運動ニューロン障害による片側性の軽い運動麻痺を評価するための方法である。上肢の筋力が低下する(麻痺がある)と、両腕を水平に維持することが困難となるため、麻痺側がゆっくりと回内しながら下降してくる。錐体路の障害を疑う。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。
4.× Trendelenburg(トレンデレンブルグ)徴候とは、中殿筋が麻痺や筋力低下などの機能不全が生じているときに、患側での立脚期において健側の骨盤が下がる現象である。

 

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