第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前106~110】

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次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初妊婦)は、夫(32歳、会社員)と2人暮らし。身長は160cm、非妊時体重60kgである。妊娠8週の妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。嘔吐はないが、時々嘔気があると訴え、対処法について質問があった。

106 Aさんへの説明で適切なのはどれか。

1.「空腹を避けましょう」
2.「塩味を濃くしましょう」
3.「規則正しく3食摂りましょう」
4.「市販の調理済みの食品は控えましょう」

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、初妊婦、身長160cm、非妊時体重60kg)
・2人暮らし:夫(32歳、会社員)。
妊娠8週:順調な経過と診断。
・「嘔吐なし、時々嘔気がある」と訴え、対処法について質問があった。
→Aさんは、「嘔吐なし、時々嘔気がある」と訴えている。これは妊娠初期によくみられるつわり症状と考えられる。つわりは、妊婦のおよそ50~80%にみられる消化器症状を主とした不快症状である。つわり症状(悪心・嘔吐、唾液分泌亢進など)は、妊娠5~6週頃から出現し、通常は妊娠12~16週頃に軽快する。主な対処法として、①ムカムカ対策にアメやタブレットを食べる。②ごはんの食べ方を工夫する、③適度な運動でリフレッシュする、④軽くつまめる食べ物を常備しておく、⑤水分補給で脱水症状を防止する、⑥歯みがき時の吐き気を対策する。

1.〇 正しい。「空腹を避けましょう」と指導する。なぜなら、空腹になると吐き気がしやすい(食べつわり)ため。Aさんの症状はつわりと考えられる。胃が空になると胃酸が出て、むかつきを感じやすくなる。空腹を避けるようにして食べられる時に食べたいものを食べるようにする。また、空腹を感じる前に少しずつ食べて、空腹を避けることが望ましい。
2.× 塩味を濃くする必要はない。なぜなら、人によってつわりは様々であり、一概に塩味を濃くすることで嘔気が軽減するとは限らない。一般的に酸味がある食材や料理が好まれる傾向にあり、味付けの工夫として勧めることがある。ちなみに、妊娠中の塩分の推奨摂取量は非妊時と変わらないため、あえて多く摂取する必要もない。
3.× 規則正しく3食摂る必要はない。なぜなら、つわりの際は食べられるときに食べられるものを食べるのが望ましいため。主な対処法として、①ムカムカ対策にアメやタブレットを食べる。②ごはんの食べ方を工夫する、③適度な運動でリフレッシュする、④軽くつまめる食べ物を常備しておく、⑤水分補給で脱水症状を防止する、⑥歯みがき時の吐き気を対策する。
4.× 市販の調理済みの食品は控える必要はない。なぜなら、つわりの際は食べられるときに食べられるものを食べるのが望ましいため。むしろ、ひとによって調理中のにおいがつわりを誘発する場合がある。また、料理にあまり時間をかけず、人につくってもらったり外食にしたりする工夫は勧められる。

妊娠悪阻とは?

妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初妊婦)は、夫(32歳、会社員)と2人暮らし。身長は160cm、非妊時体重60kgである。妊娠8週の妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。嘔吐はないが、時々嘔気があると訴え、対処法について質問があった。

107 妊娠12週の妊婦健康診査の際、「つわりが少し楽になってきて、ついつい食べてしまいます。あまり太らない方がよいですよね」と話す。
 Aさんの妊娠期間中の理想体重増加量の範囲について、下限と上限の組合せで正しいのはどれか。

1.7kg:10kg
2.7kg:12kg
3.9kg:10kg
4.9kg:12kg

解答2(※)

解説

本症例のポイント

・身長160cm、非妊時体重60kg(BMI23.4
・BMIの計算方法は、BMI(kg/㎡)=体重(kg)÷ 身長(m)の2乗で求められる。
→基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている(厚生労働省「『妊産婦のための食生活指針』の改定について(令和3年3月 31 日)」)

これまでの「妊娠全期間を通しての推奨体重増加量」

①BMI18.5以下:9~12㎏
②BMI18.5~25:7~12
③BMI25以上:個別対応

現在のAさんのBMIは、23.4である。普通(18.5以上25.0未満)の範囲にある。
体重増加量は、7~12kgの範囲に収まるのが望ましい。

したがって、選択肢2.7kg:12kgがAさんの妊娠期間中の理想体重増加量の範囲について、下限と上限の組合せで正しい。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初妊婦)は、夫(32歳、会社員)と2人暮らし。身長は160cm、非妊時体重60kgである。妊娠8週の妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。嘔吐はないが、時々嘔気があると訴え、対処法について質問があった。

108 Aさんは、妊娠34週4日の妊婦健康診査を受けた。Aさんの母は祖母の介護をしており、産後の支援を期待できない。妊婦健康診査後、「産後は夫と2人で子育てをしていきます。子育てのために何か利用できる制度はありますか」と相談があった。
 産後、Aさんの夫が適用となる制度はどれか。

1.育児休業
2.育児時間
3.休日労働の制限
4.勤務時間の変更

解答1

解説

本症例のポイント

・妊娠34週4日:妊婦健康診査を受けた。
・Aさんの母は祖母の介護:産後の支援を期待できない。
・「産後は夫と2人で子育てをしていきます。子育てのために何か利用できる制度はありますか」と。
→本症例は、「産後」に利用できる制度を聞いている。

1.〇 正しい。育児休業は、産後、Aさんの夫が適用となる制度である。育児休業とは、子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことであり、男性も取得可能である。育児休業は『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)』に規定されている。育児休業は、子の父母のいずれもが対象となり、父母本人の申し出により適用される。育児休業の対象者は、育児・介護休業法第1条により育児休業は出産日から起算して2年まで取得できる。子どもが1歳になっても保育園などに入れない場合は、1歳6ヶ月~2歳まで延長可能になっている。
2.× 育児時間は、『労働基準法(第67条)』に規定されている。「第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。②使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない(※引用:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)」。Aさんの夫が適用となる制度ではない。
3.× 休日労働の制限は、『労働基準法(第66条)』に規定されている。「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない(※引用:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)」。産後に適応となる制度ではない。
4.× 勤務時間の変更は、『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第13条』に規定されている。「事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない(※引用:「男女雇用機会均等法」e-GOV法令検索様HPより)」。Aさんの夫が適用となる制度ではない。

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(29歳、初産婦)は、妊娠37週0日で2.780gの男児を正常分娩で出産した。出生後5分の児の状態は、心拍数150/分、四肢を屈曲させて啼泣している。顔面を清拭されると激しく啼泣し、全身はピンク色である。

109 このときの児のApgar〈アプガー〉スコアは何点か。

1.10点
2.8点
3.6点
4.4点

解答1

解説

(※画像引用:ナース専科様HPより)

本症例のポイント

・Aさん(29歳、初産婦)
・妊娠37週0日:2.780gの男児(正常分娩)
・【出生後5分の児の状態】
①心拍数150/分(2点
②四肢を屈曲(2点
③呼吸:啼泣(2点
④反応:顔面を清拭されると激しく啼泣(2点
⑤全身はピンク色(2点
2点×5項目=10点
→アプガースコアとは、出生直後の新生児の状態を評価するスコアであり、①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。10~8点は正常、7~4点は軽症仮死、3~0点は重症仮死と判定する。

1.〇 正しい。10点がこのときの児のアプガースコアの点数である。今回は全ての項目で2点なので10点である。
2~4.8~4点ではない。なぜなら、減点項目がないため。ちなみに、アプガースコアが10~8点は正常、7~4点は軽症仮死、3~0点は重症仮死と判定する。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(29歳、初産婦)は、妊娠37週0日で2.780gの男児を正常分娩で出産した。出生後5分の児の状態は、心拍数150/分、四肢を屈曲させて啼泣している。顔面を清拭されると激しく啼泣し、全身はピンク色である。

110 出生後1時間。児の状態は、直腸温37.0℃、呼吸数40/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%(room air)、四肢冷感やチアノーゼを認めない。哺乳は開始していない。Aさんの経過は順調である。
 このときの児への看護で適切なのはどれか。

1.ビタミンK2シロップを経口投与する。
2.風通しの良いところに児を寝かせる。
3.先天性代謝異常検査を行う。
4.早期母子接触を行う。

解答4

解説

本症例のポイント

出生後1時間:直腸温37.0℃、呼吸数40/分、心拍数120/分、SpO2:96%、四肢冷感やチアノーゼを認めない。
・哺乳:開始していない。
・Aさんの経過:順調
→Aさんも児も問題なく順調である。したがって、早期母子接触が実施できる。早期母子接触とは、「正期産新生児を対象として出生直後に実施する皮膚接触」のことである。主な利点として、赤ちゃんへの愛情が深まり、母としての実感が持てるようになる。また、赤ちゃんの呼吸が規則的になり穏やかになる。そして、親子の絆が深まり、スムーズな育児のスタートができる。

1.× ビタミンK2シロップを経口投与するには時期尚早である。なぜなら、設問より「哺乳は開始していない」という情報が読み取れるため。通常、出生後、哺乳が確立したことを確かめてからビタミンK2シロップを経口投与する。ちなみに、ビタミンK2シロップを経口投与は、ビタミンK欠乏による新生児頭蓋内出血や消化管出血を予防するため実施する。ビタミンK欠乏性出血症の予防には、出生直後および生後1週間(産科退院時)ならびに生後1か月の3回、ビタミンK2シロップ1mL(2mg)をすべての合併症のない成熟新生児に投与する方式が普及している。
2.× 風通しの良いところに児を寝かせる必要はない。なぜなら、新生児は体温調節機能が未熟であるため。温度と湿度が保たれた清潔な場所(保育器)に寝かせる。また、体温が奪われると熱を産生するためにエネルギー消費が進み、低血糖症状などを招くリスクもある。
3.× 先天性代謝異常検査を行う必要はない。なぜなら、生後4日目より以前には行わないため。先天性代謝異常検査は、通常生後5日前後に採血して先天性代謝異常の有無を調べるスクリーニング検査である。日齢4~6日(誕生日を0日)頃に少量の血液で検査する。
4.〇 正しい。早期母子接触を行うことは、このときの児への看護で適切である。なぜなら、Aさんも児も問題なく順調であるため。早期母子接触とは、「正期産新生児を対象として出生直後に実施する皮膚接触」のことである。主な利点として、赤ちゃんへの愛情が深まり、母としての実感が持てるようになる。また、赤ちゃんの呼吸が規則的になり穏やかになる。そして、親子の絆が深まり、スムーズな育児のスタートができる。

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

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