第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後71~75】

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71 災害時のトリアージで正しいのはどれか。

1.トリアージタッグは衣服に装着する。
2.治療優先度の高さはトリアージ区分のⅠ、Ⅱ、Ⅲの順である。
3.トリアージの判定は患者の到着時および到着後30分の2回行う。
4.最優先に治療を必要とする者には、黄色のトリアージタッグを装着する。

解答2

解説

(※引用:医師会の災害時医療救護体制「トリアージの区分」)

トリアージとは

トリアージとは、災害時などの制約があるなかで、治療・搬送の優先順位を決めることである。災害時においては医療スタッフや医薬品などの医療資源が限られるため、より効果的に傷病者の治療を行うために、治療や搬送の優先順位を決定するものである。

1.× トリアージタッグは、「衣服」ではなく体(右手首)に直接に装着する。なぜなら、外れることがないようにするため。基本的に右手関節に装着し、右手に装着できない場合は、「左手→右足→左足→頚部」の順で装着する。
2.〇 正しい。治療優先度の高さはトリアージ区分のⅠ、Ⅱ、Ⅲの順である。トリアージタッグの色(区分)では、赤(Ⅰ)、黄(Ⅱ)、緑(Ⅲ)の順に治療の優先度が高い。ちなみに、黒(0)は治療対象外である。黒(0)は直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能なもの又は既に死亡しているものにつけられる。
3.× トリアージの判定は、「患者の到着時および到着後30分の2回行う」といった規定はない。トリアージの判定は、まず現場で行われる。その後、治療が開始されるまで、繰り返しトリアージの判定を行う。災害時におけるトリアージではきわめて早い判断が要求されるため、 1人の患者につきおよそ30秒以内に、搬送・治療優先順位決定のための評価を行うよう求められる。 
4.× 最優先に治療を必要とする者には、「黄色」ではなく赤色のトリアージタッグを装着する。ちなみに、黄色は準緊急治療群で「①多少治療の時間が遅れても生命には危険がないもの、②基本的にはバイタルサインが安定しているもの」である。

 

 

 

 

 

 

72 国際機関と事業内容の組合せで正しいのはどれか。

1.国際労働機関〈ILO〉:難民の帰還支援
2.世界保健機関〈WHO〉:保健分野における研究の促進
3.国連人口基金〈UNFPA〉:平和維持活動
4.国連世界食糧計画〈WFP〉:二国間の国際保健医療協力

解答2

解説
1.× 国際労働機関〈ILO:Inter national Labour Organization〉は、「難民の帰還支援」ではなく、世界の労働者の労働条件生活水準の改善を目的とする国連の専門機関である。ちなみに、「難民の帰還支援」は、国連難民高等弁務官事務所<UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees>が主に行っている。
2.〇 正しい。世界保健機関〈WHO:World Health Organization〉は、「保健分野における研究の促進」も活動の一つである。世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。
3.× 国連人口基金〈UNFPA:United Nations Population Fund〉は、「平和維持活動」ではなく、地球的規模の人口問題に取り組んでいる。すべての妊娠が望まれ、すべての出産が安全に行われ、そしてすべての若者の可能性が満たされる世界を目指す機関である。人口問題の観点から、家族計画を含むリプロダクティブ・ヘルスや開発問題などだけでなく、性と生殖に関する健康・権利の保障とその推進、ジェンダー不平等の是正などの活動を行う。ちなみに、「平和維持活動」は、国連平和維持活動<PKO:Peacekeeping Operations>が主に行っている。
4.× 国連世界食糧計画〈WFP:World Food Programme〉は、「二国間の国際保健医療協力」ではなく、飢餓のない世界を目指して活動する国連の人道支援機関である。紛争や武力衝突のほか、干ばつ、洪水や農作物被害といった自然災害の緊急事態の際に、必要とされる場所に速やかに食糧支援を届けるなどの活動をしている。食糧支援の形式のひとつとして学校給食プログラムを実施している。ちなみに、「二国間の国際保健医療協力」は国際協力機構〈JICA:Japan International Cooperation Agency〉が主に行っている。二国間援助の形態である技術協力・有償資金協力・無償資金協力を行う。

世界保健機関(WHO:World Health Organization)とは?

世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。

設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、国際疾病分類(ICD)の作成
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋)あり、日本は西太平洋に所属している。②194か国加盟 (2018年4月時点)、③たばこ規制枠組み条約:たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について規定。

(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

73 血漿蛋白質の大部分を合成しているのはどれか。

1.肺
2.肝臓
3.腎臓
4.膵臓
5.脾臓

解答2

解説

血漿タンパク質とは?

血漿タンパク質とは、血液から血球を除いた体液部分(血漿)に含まれるタンパク質のことである。アルブミン、抗体、血液凝固因子など、多数のタンパク質が含まれる。肝臓は、血漿中の代表的な蛋白質であるアルブミンや血液凝固因子を含め、多くの蛋白質が合成される。

1.× 肺は、空気中の酸素をからだに取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出す働きをしている。つまり、呼吸で取り込んだ酸素と体内で発生した二酸化炭素のガス交換を担っている。
2.〇 正しい。肝臓は、血漿蛋白質の大部分を合成している。小腸で吸収されたアミノ酸は肝臓に運ばれ、肝臓にて蛋白質に合成され、血液によって各組織に運ばれる。そのほかにも肝臓には、①代謝、②解毒、③胆汁の生成・排泄、④生体防御の働きを持つ。
3.× 腎臓は、老廃物や余分な水分、塩分などを尿として排泄することで、体の中の水分量やナトリウムやカリウムといったイオンバランスを適正に保ったり、血液の酸性・アルカリ性を調節したり、体内を常に最適な環境にする機能がある。
4.× 膵臓は、①食べ物を消化する消化酵素(膵酵素)を作る、②血糖値を下げるホルモン(インスリン)や血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)などのホルモンを作る働きを持つ。
5.× 脾臓は、①古くなった血球(白血球、赤血球、血小板)の処理や、②感染に対する防御など免疫に関係する働きを担う。

 

 

 

 

 

 

74 胸膜腔に存在するのはどれか。

1.滑液
2.空気
3.血液
4.漿液
5.粘液

解答4

解説

(画像引用:小野薬品工業株式会社Webサイト「治療ガイド 胸膜の位置と構造」)

胸膜腔とは?

胸膜腔とは、肺表面を覆う臓側胸膜と胸壁内面を覆う壁側胸膜に囲まれた空間のことである。

1.× 滑液は、胸膜腔内に存在しない。滑液とは、関節腔内にある液体で、関節腔を囲む滑膜で産生される。滑液は、①クッション作用、②潤滑油として働く。
2.× 空気は、胸膜腔内に存在しない。胸膜腔内に空気が存在する状態は、気胸であり治療を要する。 症状としては胸痛や呼吸困難、咳がある。
3.× 血液は、胸膜腔内に存在しない。胸膜腔内に血液が存在する状態は、血胸であり治療を要する。症状としては ふらつきや息切れ、胸痛を感じたり、皮膚が汗ばみ、青く冷たくなる。
4.〇 正しい。漿液は、胸膜腔内に存在する。胸膜腔に約5mL程度の漿液が存在し、呼吸運動による臓側胸膜と壁側胸膜の摩擦を緩和している。胸膜では常に毛細血管から間質液がしみ出すことによって漿液が産生され、同時にリンパ管に吸収されている。肺や胸膜に炎症が起こった際には滲出液が出て、これが胸膜腔に溜まったものを胸水という。
5.× 粘液は、胸膜腔内に存在しない。粘液(粘性の高い液体)は消化管などの粘膜から分泌されるものである。

気胸とは?

【原発性自然気胸】
原発性自然気胸とは、肺疾患のない人に明らかな原因なく起こる気胸のこと。通常、肺のややもろくなった部分(ブラ)が破裂した際に発生する。特徴として、40歳未満で背が高い男性の喫煙者に最もよくみられる。ほとんどの人が完全に回復するが、最大で50%の人に再発がみられる。

【続発性自然気胸】
続発性自然気胸とは、基礎に肺疾患がある人に発生する気胸のこと。最も多いものは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある高齢者である。他にも、嚢胞性線維症、喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシス、肺膿瘍、結核、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎など、その他の肺疾患の患者でもみられる。特徴として、基礎に肺疾患があるため、原発性自然気胸に比べて症状や治療成績は一般に悪くなる。再発率は、原発性自然気胸と同程度である。

 

 

 

 

75 正常な性周期である健常女性の10週間の基礎体温を図に示す。
 直近の排卵日はどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答4

解説

体温変化のポイント

①月経が始まると体温が下がり、約2週間低温期が続く。
②排卵すると体温は上昇し、次の月経までの約2週間高温期が続く。
③2週間たっても高温期が続き月経にならなければ、妊娠の可能性あり。(※参考:「基礎体温の基礎知識」OMRON様HPより)

1.× ①は、高温期(=黄体期)の最後である。高温期とは、排卵後に12~14日程度続く時期である。排卵後の卵胞から変化した黄体から分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)によって維持される。
2.× ②は、低温期の開始時期である。妊娠に至らなかった場合、黄体が役目を終えるとともにプロゲステロンの分泌が減少するため、体温が下がり月経が起こる。月経とは、「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」 であり、周期的に腟を通って出血し、数日で止まるという現象と定義されている。
3.× ③は、低温期(=卵胞期)の中間期である。高温期に比べ0.3~0.5℃程度低い状態が続き排卵に向けて卵胞の発育と成熟が進む。
4.〇 正しい。④(低温期から高温期に移行する直前)が、直近の排卵日である。体温陥入日(わずかに低温期より体温が下がった日)が排卵日の可能性が高いとされている。
5.× ⑤は、高温期の開始時期である。排卵後に低温期から移行し、0.3~0.5℃程度高い状態となる。ちなみに、卵胞は排卵した後に黄体に変化する。

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。

 

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