第111回(R7)保健師国家試験 解説【午後26~30】

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26 次の指標で相対危険はどれか。

1.死亡率
2.寄与危険
3.相対頻度
4.罹患率比
5.有病率(有病割合)

解答

解説

相対危険とは?

相対危険とは、ある危険因子に曝露した集団と、曝露していない集団の罹患率の比を表す指標である。

1.× 死亡率は、「頻度の絶対的な大きさ」を示す。
・死亡率とは、単位人口を一定期間(通常1年)観察したときの死亡発生率である。死亡率=【死亡数 ÷ 人口 × 1000】で求められる。

2.× 寄与危険は、リスクの「」を示す。
寄与危険とは、曝露群非曝露群の疾病発症リスクの差のことである。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。
・例えば、喫煙者の肺がん発生率が10%、非喫煙者が1%の場合、寄与危険は 10% – 1% = 9%である。

3.× 相対頻度は「全体の中である事象が占める割合」である。
・相対頻度とは、いくつかのカテゴリーにおけるそれぞれの度数(データ数)が全体に占める割合の大きさを示すものである。統計で、各階級の度数を全体数で割ったものとなる。

4.〇 正しい。罹患率比は、相対危険である。
・罹患率比とは、2つの群の罹患率の比のことである。罹患率は、一定の観察期間において観察集団のなかで新たに疾病を有した人の率で、分母は人年法による観察人年を用いる。

5.× 有病率(有病割合)は、「頻度の絶対的な大きさ」を示す。
・有病率とは、ある一時点において、観察集団のなかで疾病を有している人の割合である。

 

 

 

 

 

27 母集団の平均値を区間推定して算出される95%信頼区間で正しいのはどれか。

1.標準誤差を用いて算出される。
2.信頼区間は95%以外の信頼度では算出できない。
3.有意水準5%の仮説検定で有意かどうかとは関係がない。
4.区間推定に用いる標本数が大きいほど信頼区間の幅は広くなる。
5.1回の調査で母集団の平均値を含む確率が95%となる区間である。

解答

解説

MEMO

「母集団の平均値を区間推定して算出される95%信頼区間」とは、母集団の真の平均がどこにあるかを推測するために、標本から計算した平均値の周りに“だいたいこの範囲に入るだろう”という幅を持たせた区間のことである。95%というのは、同じ調査を繰り返したとき、その区間が母平均を含む割合が95%になることを意味する。

1.〇 正しい。95%信頼区間は、標準誤差を用いて算出される。なぜなら、信頼区間は、「母集団の平均値(真の値)が、ある区間にどのくらいの確率で存在するか」を推定する目的のものであるため。
・標準誤差とは、標本平均(真の値の推定値)のばらつきの幅を示したもので、標本の精度がどの程度かを表す。

2.× 信頼区間は95%以外の信頼度で「も算出できる」。なぜなら、信頼区間は任意の信頼度(90%・99%など)で算出できるため。一般的に95%がよく用いられるが、より厳密な推定が必要な場合は99%も使用されることがある。

3.× (95%信頼区間と)有意水準5%の仮説検定で有意かどうか「密接な関係がある(基本的に対応している)」。例えば「母平均の差が0か」を検定するとき、95%信頼区間に0が含まれなければ、帰無仮説を5%水準で棄却(有意差あり)と判断できる。

4.× 区間推定に用いる標本数が大きいほど、信頼区間の幅は「狭くなる」。なぜなら、標本数が多いほど、標本平均値は母集団の平均値により近い値を取ると期待できるため。これにより、標準誤差が小さくなり、その結果、算出される信頼区間の幅も狭くなる。

5.× (95%信頼区間は、)1回の調査で母集団の平均値を含む確率が95%となる区間「とはいえない」。1回の調査で算出された信頼区間は、母集団の平均値を含むか含まないかのどちらかであり、確率的に判断することはできない。信頼区間における「95%」という数字は、「同じ調査を100回繰り返した場合、そのうち95回は算出された信頼区間に母集団の平均値が含まれる」という意味である。
・信頼区間は「多数の標本を取った場合、その95%が真の母平均を含む」という意味。1回の区間推定において「母平均を含むかどうか」は事実として決まっている。

 

 

 

 

 

28 1000人分の定期健康診断データを用いて収縮期血圧と空腹時血糖の関連を評価する際に、両者の関係を示すグラフで適切なのはどれか。

1.散布図
2.箱ひげ図
3.棒グラフ
4.折れ線グラフ
5.ヒストグラム

解答

解説
1.〇 正しい。散布図が1000人分の定期健康診断データを用いて収縮期血圧と空腹時血糖の関連を評価する際に、両者の関係を示すグラフである。なぜなら、収縮期血圧と空腹時血糖のような「連続量的データ同士の関連」を示すため。
・散布図とは、2つの変数間の関連をみるために両分布を図に表したものであり、一方の変数を横座標に他方の変数を縦座標にとる。

2.× 箱ひげ図は、データのばらつきや偏りを把握するのに役立つ。例えば、「性別ごとの収縮期血圧の分布」など、1つの量的データいくつかのグループに分けて比較する場合に用いられる。

3.× 棒グラフは、いくつかの項目の数量を比較するのに適したグラフである。例えば、男女別の肥満者数を比較する、疾患の有無ごとに人数を示すなどである。

4.× 折れ線グラフは、時間経過に伴うデータの変化を示すのに適したグラフである。横軸を時間(例:月、年)として、縦軸のデータの変化を線でつないで表す。例えば、ある個人の1年間の体重の変化や、日本の平均寿命の推移などを表現する際に用いられる。

5.× ヒストグラムは、あるデータの分布を表現するのに適したグラフである。1つの量的データをいくつかの階級に分け、各階級に該当するデータの度数を棒の高さで表す。例えば、1000人分の収縮期血圧の値をいくつかの階級に分け、その分布の形(例:正規分布に近いか)を調べる際に有効である。ちなみに、ヒストグラムは連続的な数値データの分布を表し、棒グラフはカテゴリごとの数値を比較するために使用される。

グラフの種類(初級編)

絵グラフ:同形の絵を並べ、量の大小を比較する。
棒グラフ:棒の高さで、量の大小を比較する。
折れ線グラフ:量が増えているか減っているか、変化の方向をみる。
円グラフ:全体の中での構成比をみる。
帯グラフ:構成比を比較する。
ヒストグラム:データの散らばり具合をみる。
箱ひげ図:データの散らばり具合をみる。

(一部引用:「グラフの種類(初級編)」総務省統計局HPより)

 

 

 

 

 

29 医療費適正化計画の説明で正しいのはどれか。

1.市町村が策定する。
2.根拠法令は医療法である。
3.計画は3年ごとに策定する。
4.健康の保持の推進に関する目標を設定している。
5.医療提供体制の確保に関する基本方針に即して策定する。

解答

解説

医療費適正化計画とは?

医療費適正化計画とは、持続可能な医療制度と提供体制の確保を目指し、国と都道府県が保険者および医療従事者などの協力のもと進める、住民の健康増進と医療費適正化のための取り組みであり『高齢者医療確保法』に基づいている。

1.× 「市町村」ではなく都道府県が策定する。

2.× 根拠法令は、「医療法」ではなく高齢者医療確保法である。
・高齢者医療確保法とは、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もって国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とした法律である。

3.× 計画は、「3年ごと」ではなく6年ごとに策定する。これは、高齢者医療確保法の第8条(医療費適正化基本方針及び全国医療費適正化計画)に「厚生労働大臣は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から、医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため、医療費適正化基本方針を定めるとともに、六年ごとに、六年を一期として、全国医療費適正化計画を定めるものとする」と規定されている(※引用:「高齢者医療確保法」e-GOV法令検索様HPより)

4.〇 正しい。健康の保持の推進に関する目標を設定している。なぜなら、医療費を適正化は、病気になった後の医療費を抑えるだけでなく、住民が病気にならないように予防することが重要であるため。したがって、計画では、生活習慣病の予防や健康増進に関する具体的な目標(例:特定健診の受診率向上、メタボリックシンドローム該当者・予備群の減少)を定めている。

5.× 医療提供体制の確保に関する基本方針に即して策定するのは、「医療計画の策定指針」である。
・医療計画とは、地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。

 

 

 

 

 

30 蚊が媒介する感染症はどれか。2つ選べ。

1.炭疽
2.デング熱
3.日本脳炎
4.ジフテリア
5.パラチフス

解答2・3

解説
1.× 炭疽とは、炭疽菌という細菌によって引き起こされる感染症である。主な感染経路は、炭疽菌の芽胞(耐久性のある胞子)を吸入したり、傷口から入ったり、汚染された肉などを食べたりすることである。主に、動物(特に草食動物)から人への感染である。

2.〇 正しい。デング熱は、蚊が媒介する感染症である。デング熱は、接触感染で、症状として、急激な発熱で発症し、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などがみられる。通常、発症後2~7日で解熱し、発疹は解熱時期に出現する。

3.〇 正しい。日本脳炎は、蚊が媒介する感染症である。日本脳炎は、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。

4.× ジフテリアとは、ジフテリア菌により発生する疾病で、主に気道の分泌物によってうつり、喉などに感染して毒素を放出する。最後に報告されたのが1999年であるが、かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた。通常の治療法である抗生物質に対しては耐性を持つことはほとんどない。

5.× パラチフスとは、パラチフス菌という細菌によって引き起こされる感染症である。主な感染経路は、菌に汚染された水や食物を摂取することによる経口感染である。症状は発熱、下痢、バラ疹などで腸チフスに類似している。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

 

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