第111回(R7)保健師国家試験 解説【午後36~40】

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次の文を読み36~38の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、女性、会社員)。特定健康診査の結果は、身長156cm、体重72kg、BMI29.6、腹囲91cm、血圧140/90mmHg、空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL、喫煙歴はない。この結果から、特定保健指導の対象となり、保健師が初回面接をすることになった。

36 初回面接で最初にAさんにかける言葉で適切なのはどれか。

1.「あなたには生活習慣の改善が必要です」
2.「どんな目標を設定して来られましたか」
3.「これまでの生活を振り返ってみましょう」
4.「この結果をどのように受け止めていますか」

解答

解説

特定保健指導とは?

特定保健指導とは、予備群や軽症でまだお薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。

1.× 「あなたには生活習慣の改善が必要です」と伝える必要はない。なぜなら、特定保健指導の対象となった時点で自覚でき、相手を非難するような一方的な言い方であるため。関係構築の妨げになる。

2.× 「どんな目標を設定して来られましたか」と伝えるのは時期尚早である。なぜなら、初回面接の段階で、まだ本人は生活習慣の課題や動機づけを整理できていないことが多いため。目標設定は、専門家と一緒に、まず現状を振り返り、問題点を共有した上で、本人が「こうしたい」という気持ちになった後に行うべきである。

3.× 「これまでの生活を振り返ってみましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、初回面接の最初の言葉としては唐突すぎる可能性があるため。「振り返る」という発言は、相手に「反省・改善」を促す一方的な発言になりかねない。

4.〇 正しい。「この結果をどのように受け止めていますか」と初回面接で最初にAさんにかける言葉である。なぜなら、Aさんが自分の健康状態についてどう感じているのか、何に不安を感じているのかを把握することができるため。

 

 

 

 

 

次の文を読み36~38の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、女性、会社員)。特定健康診査の結果は、身長156cm、体重72kg、BMI29.6、腹囲91cm、血圧140/90mmHg、空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL、喫煙歴はない。この結果から、特定保健指導の対象となり、保健師が初回面接をすることになった。

37 初回面接で、Aさんから「1か月に1kgの体重減少を目標に、食事と運動の改善に取り組んでみたい」という発言が聞かれ、間食を減らすこと、毎日8,000歩を歩くことを目標とした。
 初回面接から2週後に電話連絡したところ、Aさんは「間食はしていないし、ご飯は小さなお茶碗に変えて1杯だけに減らしている。なかなか毎日8,000歩は歩けない。体重はあまり変わらない。こんな自分はだめだ」と話した。
 Aさんが始めた行動の継続を支援する保健師の対応で最も適切なのはどれか。

1.「体重は増えていませんね」
2.「目標値を6000歩に下げてみましょうか」
3.「運動もすることで病気の予防やストレスの解消にも有効です」
4.「ご自身で考えてご飯の量を減らすことができていてすばらしいです」

解答

解説

ポイント

・Aさん(40歳、女性、会社員、特定保健指導の対象)。
・初回面接で、Aさんから「1か月に1kgの体重減少を目標に、食事と運動の改善に取り組んでみたい」と。
・目標:間食を減らすこと、毎日8,000歩を歩くこと。
・2週後、Aさん「間食はしていないし、ご飯は小さなお茶碗に変えて1杯だけに減らしている。なかなか毎日8,000歩は歩けない。体重はあまり変わらない。こんな自分はだめだ」と話した。
→ほかの選択肢の消去理由もあげられるようにしよう。

1.× 「体重は増えていませんね」と伝えるより優先されるものが他にある。なぜなら、自己肯定感を高めることにはつながりにくいため。対象者は「体重があまり変わらない」と落ち込んでおり、「こんな自分はだめだ」と自己否定をしている。ここで「体重は増えていない」と事実を伝えるだけでは、本人の努力や達成感を強めることにはつながりにくい。

2.× 「目標値を6000歩に下げてみましょうか」と伝えるより必要はない。なぜなら、「できないから目標を下げる」という支援は、落ち込みを助長し自己効力感を下げるどころか「妥協」と受け取られかねない。まずは、達成できている部分(間食をやめた、ご飯量を減らした)を評価し、達成感を感じてもらう。

3.× 「運動もすることで病気の予防やストレスの解消にも有効です」と伝えるより優先されるものが他にある。なぜなら、「なかなか毎日8,000歩は歩けない」理由が、一般的な健康情報の不足によるものとは限らないため。Aさんはすでに目標達成に苦労し、自己否定的な気持ちになっているなかで、一般的な健康情報を一方的に提供しても、Aさんの心の状態には響きにくい。

4.〇 正しい。「ご自身で考えてご飯の量を減らすことができていてすばらしいです」とAさんが始めた行動の継続を支援する保健師の対応である。なぜなら、目標より多くの行動を能動的に動けているため。Aさんが自発的に行った行動を肯定的に評価することで、自己効力感を高め、次の行動へと繋げていく。

 

 

 

 

 

次の文を読み36~38の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、女性、会社員)。特定健康診査の結果は、身長156cm、体重72kg、BMI29.6、腹囲91cm、血圧140/90mmHg、空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL、喫煙歴はない。この結果から、特定保健指導の対象となり、保健師が初回面接をすることになった。

38 6か月後の最終評価面接では、体重66kg、腹囲85cmであり、Aさんは「何度もやめたくなったが、なんとか続けられた」と話した。
Aさんは、翌年の特定健康診査を受診し、身長156cm、体重67kg、BMI27.9、腹囲86cm、血圧135/85mmHg、空腹時血糖90mg/dL、HDLコレステロール45mg/dL、中性脂肪142mg/dLという結果であった。
 このときのAさんに行う保健指導はどれか。

1.情報提供
2.動機づけ支援
3.積極的支援
4.医療機関への受診勧奨

解答

解説

ポイント

・Aさん(40歳、女性、会社員)。
・初期評価:身長156cm、体重72kg、BMI29.6、腹囲91cm、血圧140/90mmHg、空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL、
・6か月後:体重66kg腹囲85cmであり、Aさんは「何度もやめたくなったが、なんとか続けられた」と話した。
・翌年:身長156cm、体重67kg、BMI27.9、腹囲86cm、血圧135/85mmHg、空腹時血糖90mg/dL、HDLコレステロール45mg/dL、中性脂肪142mg/dL。
→ほかの選択肢の消去理由もおさえておこう。

1.× 情報提供より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんはすでに健康行動を実践し、一定の成果を上げているため。情報提供は、対象者が自分の健康課題を認識していない初期段階で行われることが多い。

2.〇 正しい。動機づけ支援をAさんに行う保健指導である。なぜなら、おおむね初期評価から結果が出ており、継続的に生活していく必要があるため。現時点では、積極的な支援は必要ないと考え、Aさんのこれまでの努力・成果を褒め、行動を継続する意欲を高める。

3.× 積極的支援より優先されるものが他にある。なぜなら、おおむね初期評価から結果が出ているため。また、積極的支援は、腹囲やBMI、血圧、血糖、脂質のうち2つ以上が基準値を超えている場合に行われることが多い。
・「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」において、第8条(積極的支援) 積極的支援とは、積極的支援対象者が自らの健康状態を自覚し、生活習慣の改善に係る自主的な取組の継続的な実施に資することを目的として、次に掲げる要件のいずれも満たすものであって、厚生労働大臣が定める方法により行う保健指導をいう。
一 積極的支援対象者が、医師、保健師又は管理栄養士の面接による指導の下に行動計画を策定すること。
二 医師、保健師、管理栄養士又は食生活の改善指導若しくは運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者として厚生労働大臣が定めるものが、積極的支援対象者に対し、生活習慣の改善のための取組に資する働きかけに関する支援を相当な期間継続して行うこと。
三 積極的支援対象者及び第1号の規定により面接による指導を行った者が、行動計画の進捗状況に関する評価を行うこと。
四 積極的支援対象者及び第1号の規定により面接による指導を行った者が、行動計画の策定の日から6月以上経過後において、当該行動計画の実績に関する評価を行うこと(※参考:「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」厚生労働省様HPより)。

4.× 医療機関への受診勧奨より優先されるものが他にある。なぜなら、おおむね初期評価から結果が出ており、正常範囲から逸脱しているとはいえないため。受診勧奨は、健康診断の結果が基準値を大幅に超え、すぐにでも医療的な治療が必要と判断される場合に行われる。

メタボリックシンドローム症候群とは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。

【診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上) 
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)

 

 

 

 

 

次の文を読み39~41の問いに答えよ。
 A市の保健師は、4か月児健康診査未受診者の家庭訪問を行った。母親のBさん(40歳)は「近隣に2人で住む私の両親の介護があり、子どもの健診に行けなかった。父は要介護4、母は要支援2で、育児と介護で忙しい」と話した。保健師は、Bさんと同様の人が他にもいるかもしれないと考え、育児と介護の両方をしている人の実態把握のために、アンケート調査を行うこととした。

39 実態把握のための調査対象者で優先度が高いのはどれか。

1.乳幼児健康診査の対象児の保護者
2.家族介護者の会の参加者
3.育児サークルの参加者
4.民生・児童委員

解答

解説

ポイント

4か月児健康診査未受診者の家庭訪問。
・Bさん(40歳)「育児と介護で忙しい」と。
・保健師:「同様の人が他にもいるかもしれない」と。
・目的:育児と介護の両方をしている人の実態把握。
・方法:アンケート調査を行う。

1.〇 正しい。乳幼児健康診査の対象児の保護者は、実態把握のための調査対象者で優先度が高い。なぜなら、今回、4か月児健康診査未受診者の家庭訪問で、保健師は「育児と介護の同様の人が他にもいるかもしれない」と考えたため。まず乳幼児の保護者の中にどれだけ介護を同時に担っている人がいるかを把握する必要がある。
・乳幼児健康診査とは、母子保健法第12条及び第13条の規定により市町村が乳幼児に対して行う健康診査である。乳幼児健診は、身長、体重、胸囲、頭囲を測定し、成長曲線と照らし合わせながら、成長度合いを確認する。身体的な健診に限らず、粗大運動・微細運動・精神面を含めた発達、疾患の有無に関しても確認する。また、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の有無を診るため、股関節開排制限や大腿皮膚溝、鼠径皮膚溝の非対称を確認する。

2.× 家族介護者の会の参加者より優先されるものが他にある。なぜなら、育児をしているとは限らないため。家族介護者の会の参加者は、すでに介護の課題を認識している層である。

3.× 育児サークルの参加者より優先されるものが他にある。なぜなら、育児サークルは、育児を主な目的としているため。したがって、介護の課題を抱えている人が少ない可能性がある。

4.× 民生・児童委員より優先されるものが他にある。なぜなら、民生委員や児童委員は、実態把握の「対象者」ではないため。また、民生・児童委員は、地域の見守り活動を行うが、個々の家庭の詳しい状況をすべて把握しているわけではない。
・民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
・児童委員は、地域の子どもたちが元気に安心して暮らせるように、子どもたちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談・支援等を行う。また、一部の児童委員は児童に関することを専門的に担当する「主任児童委員」の指名を受けている。

 

 

 

 

 

次の文を読み39~41の問いに答えよ。
 A市の保健師は、4か月児健康診査未受診者の家庭訪問を行った。母親のBさん(40歳)は「近隣に2人で住む私の両親の介護があり、子どもの健診に行けなかった。父は要介護4、母は要支援2で、育児と介護で忙しい」と話した。保健師は、Bさんと同様の人が他にもいるかもしれないと考え、育児と介護の両方をしている人の実態把握のために、アンケート調査を行うこととした。

40 アンケート調査の結果、育児と介護の両方をしている人は、同じ立場の人とつながる機会がないため孤立感を感じており、同じ立場の人と交流し育児と介護の両方を行うつらさや両立の工夫点を共有する場を望んでいること、外出しづらい人が多いことが分かった。保健師は育児と介護の両方をしている人の集いの場づくりを行うことにした。
 この集いの場づくりで最も適切なのはどれか。

1.休日の開催
2.駐車場の確保
3.オンラインでの開催
4.保育と介護のスタッフの確保

解答

解説

ポイント

・保健師:「同様の人が他にもいるかもしれない」と。
・目的:育児と介護の両方をしている人の実態把握。
【アンケート結果】
・育児と介護の両方をしている人は、同じ立場の人とつながる機会がないため孤立感を感じている。
・同じ立場の人と交流し育児と介護の両方を行うつらさや両立の工夫点を共有する場を望んでいる。
外出しづらい人が多い

1.× 休日の開催より優先されるものが他にある。なぜなら、休日も育児や介護から解放されるわけではないため。「外出しづらい人が多い」という具体的理由や、「外出しなくても参加できる工夫」が重要である。

2.× 駐車場の確保より優先されるものが他にある。なぜなら、「外出しにくい」根本的な原因が、物理的問題ではなく「介護や育児で家を離れられない」ということも考えられるため。また、車を持たない世帯にも配慮する必要がある。

3.〇 正しい。オンラインでの開催が、この集いの場づくりで優先される。なぜなら、オンライン開催は、孤立感を軽減し、同じ立場の人との交流を可能にするため。

4.× 保育と介護のスタッフの確保より優先されるものが他にある。なぜなら、集いの場の内容を充実させる目的のアプローチであるため。今回は、「外出しづらい人が多い」という問題点に着目する必要がある。

 

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