第111回(R7)保健師国家試験 解説【午前6~10】

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6 高齢化が進むA市では、介護予防の充実を重点課題としており、住民が自主的に行う体操の場を地区ごとに設けることにした。
 誰もが参加しやすい体操の場とするために優先度が高いのはどれか。

1.ボランティアの活用
2.健康運動指導士の活用
3.バリアフリーの会場の確保
4.インターネットを用いた広報の利用

解答

解説
1.× ボランティアの活用より優先されるものが他にある。なぜなら、ボランティアがいても、会場に物理的な障壁があれば、参加したくてもできない人が出てしまうため。ただし、ボランティアは、活動の運営を円滑にし、参加者への声かけや見守り、個別支援を行う上で非常に貴重な存在である。参加者が継続して活動に参加するモチベーションを高めることにもつながる。

2.× 健康運動指導士の活用より優先されるものが他にある。なぜなら、健康運動指導士がいても、会場に物理的な障壁があれば、参加したくてもできない人が出てしまうため。ただし、健康運動指導士の活用により、質の高い体操を提供するために有効である。
・健康運動指導士とは、参加者の身体状況に合わせた適切な運動指導を行い、効果的かつ安全な体操プログラムを提供することができる。これにより、参加者の健康効果を高め、運動継続を促すことが期待できる。

3.〇 正しい。バリアフリーの会場の確保は、誰もが参加しやすい体操の場とするために優先度が高い。なぜなら、高齢化が進むA市において、運動機能の低下や身体に障害を持つ高齢者も多く存在していることが予想されるため。
・バリアフリーの会場とは、段差がない、手すりがある、車椅子でも利用しやすいトイレがあるなど、身体的な制約がある人でも安全かつ容易にアクセスし、活動できる環境を指す。

4.× インターネットを用いた広報の利用より優先されるものが他にある。なぜなら、インターネットを扱えない高齢者にはアプローチできないため。インターネット広報だけでは情報が届かず、結果として参加機会を逃してしまう人が出てしまう。

 

 

 

 

 

7 A市では20歳以上の女性を対象に骨粗鬆症検診を実施している。骨粗鬆症の効果的な早期発見のために、検診の受診を案内する通知のターゲットを絞り、個別に送付することとした。
 通知を送付する対象で優先度が高いのはどれか。

1.大学生
2.骨粗鬆症の治療中断者
3.当該年度に50歳を迎える者
4.特定健康診査の結果でBMIが25以上の者

解答

解説

ポイント

・対象:20歳以上の女性
骨粗鬆症検診を実施。
・目的:骨粗鬆症の効果的な早期発見
・検診の受診を案内する通知のターゲットを絞り、個別に送付する。
→骨粗鬆症の特徴をおさえておこう。骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。

1.× 大学生より優先されるものが他にある。なぜなら、大学生(通常18歳〜20代前半)は、骨密度がピークに達しているか、あるいは増加している時期であるため、骨粗鬆症のリスクは極めて低いため。

2.× 骨粗鬆症の治療中断者より優先されるものが他にある。なぜなら、今回の目的は、骨粗鬆症の効果的な早期発見であるため。骨粗鬆症の治療中断者は、すでに骨粗鬆症と診断されており、治療が必要な状態にあると判断されている。

3.〇 正しい。当該年度に50歳を迎える者は、通知を送付する対象で優先度が高い。なぜなら、女性は、閉経を迎える50歳前後から、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少し、骨密度の低下が加速するため。

4.× 特定健康診査の結果でBMIが25以上の者より優先されるものが他にある。なぜなら、BMIが25以上の「肥満」は、骨粗鬆症の直接的なリスク要因ではないため。むしろ、体重による骨への負荷(荷重)となり、骨密度を維持する上で有利に働くことが多い。
・BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

 

 

 

 

 

8 日本の精神保健医療施策の変遷と関係する法律の組合せで正しいのはどれか。

1.私宅監置の廃止:精神衛生法
2.ライシャワー事件を契機に制定:精神病者監護法
3.精神医療に関する日本の最初の法律:精神保健法
4.精神障害者を「障害者」として位置付け:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉

解答

解説
1.〇 正しい。私宅監置の廃止は、精神衛生法と関連する。私宅監置の廃止は、昭和25(1950)年の『精神衛生法』で制定された。
・精神衛生法とは、精神障害者の医療や保護、発生の予防などを行うことで、国民の精神的健康を保持・向上させることを目的とした法律である。1950年(昭和25年)に制定され、精神病者監護法や精神病院法が廃止された。
・私宅監置とは、精神疾患を持つ人を、家族や私人が自宅などの施設外で監禁することを指する。かつて日本で行われていた人権侵害ともいえる慣習でであった。

2.× ライシャワー事件を契機に制定は、「精神病者監護法」ではなく精神衛生法(改正)である。
ライシャワー事件とは、1964年に起き、当時の駐日アメリカ大使エドウィン・O・ライシャワーが精神疾患を持つ日本人によって襲撃された事件である。この事件により、精神医療体制の改善が強く求められ、精神衛生法の改正につながった。

3.× 精神医療に関する日本の最初の法律は、「精神保健法」ではなく精神病者監護法である。
・精神病者監護法とは、 1900年に日本における精神障害者に関しての初めての法律である。精神病者を地方長官の許可を得て、監護の責任者(主に精神障害者の家族)が精神障害者を私宅などに監置できるという法律であった。

4.× 精神障害者を「障害者」として位置付けは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉」ではなく障害者基本法(第二条の定義)である。
・障害者基本法とは、障害者施策について基本事項を定め、障害者の自立と参加を総合的かつ計画的に推進することを目的としている法律である。
・精神保健福祉法とは、①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

9 精神障害者に対する偏見の解消に向けた取り組みで正しいのはどれか。

1.患者会の立ち上げ
2.ピアサポーターによる相談
3.精神障害に関する市民講座の開催
4.病院受診時のホームヘルパーの同行

解答

解説
1.× 患者会の立ち上げは、「精神障害者に対する偏見の解消に向けた取り組み」とはいえない
・患者会とは、共通の目的をもつ当事者や家族によって自主的に形成されるグループである。当事者同士が支え合い、情報交換を行うことで、孤立感を解消し、主体的な生活を送るための力を高める場である。

2.× ピアサポーターによる相談は、「精神障害者に対する偏見の解消に向けた取り組み」とはいえない
・ピアサポーターとは、障害や疾病など同じような境遇にある人が、自身の体験をもとに相談や同じ仲間として社会参加や地域交流など問題の解決を支援する活動を行う。同じ立場の当事者同士が体験を語り合うことで支え合うことをいいその当事者のことである。

3.〇 正しい。精神障害に関する市民講座の開催は、精神障害者に対する偏見の解消に向けた取り組みである。なぜなら、偏見は、多くの場合、無知や誤解、あるいは間違った情報に基づいているため。精神疾患の正しい知識をもつ専門家が、市民講座を通じて、正しい知識を一般市民に直接伝えることで、誤解を解きほぐすことでできる。

4.× 病院受診時のホームヘルパーの同行は、「精神障害者に対する偏見の解消に向けた取り組み」とはいえない。なぜなら、ホームヘルパーの同行は、精神障害者が医療機関に安全かつスムーズに受診できるよう支援することを目的としているため。例えば、精神障害者が、外出が苦手だったり、複雑な手続きが困難であったりする場合に、ヘルパーが病院への移動や受付の手助けをする。

 

 

 

 

 

10 難病対策地域協議会の運営で適切なのはどれか。

1.医療費助成の支給認定を決定する。
2.市町村が把握する社会資源を共有する。
3.難病の病態に詳しい医療専門職で構成する。
4.在宅生活を希望する患者の個別の支援方針を検討する。

解答

解説

難病対策地域協議会とは?

難病対策地域協議会は「難病法」に目的や協議の内容が定められている。

定義:難病法上、関係機関等が相互の連絡を図ることにより、地域における難病の患者への支援体制に関する課題について情報 を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行う組織として規定されている。その設置については、都道府県、保健所を設置する市及び特別区に対し、努力義務が課されている。

(※参考:「難病対策地域協議会について」難病情報センター様HPより)

1.× 医療費助成の支給認定を決定するのは、都道府県(指定難病審査会の審査など)が行う。難病患者に対する医療費助成の支給認定は、都道府県(または指定都市)の難病担当部局が、申請に基づき、専門医の意見や審査会の判断を経て行う。

2.〇 正しい。市町村が把握する社会資源を共有する。なぜなら、難病患者の支援には、医療だけでなく、介護、福祉、就労支援、生活支援など、多岐にわたる社会資源の活用が必要であるため。例えば、ある難病患者が自宅での生活を希望しているが、どのような訪問介護サービスが利用できるか、地域の送迎サービスはあるか、といった情報が必要な場合、市町村が把握している社会資源の情報が協議会で共有されていれば、担当者がスムーズに適切な支援機関と連携できるようになる。

3.× 必ずしも、難病の病態に詳しい医療専門職で構成する必要はない多職種・多機関の者で構成されるべきである。なぜなら、難病患者の支援は、医療的な側面だけでなく、生活、福祉、就労、心理社会的な側面など、非常に多岐にわたるため。

4.× 「在宅生活を希望する患者の個別の支援方針」ではなく地域全体の支援体制や課題解決策を検討する。一方、個別の患者の支援方針(ケアプラン)は、担当の保健師や医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどが、患者本人や家族と相談し、多職種連携会議などを通じて具体的に作成・調整するものである。
・難病対策地域協議会は、地域全体の難病患者支援のあり方を協議し、制度の改善や地域資源の確保、連携強化といった大きな枠組みを検討する役割を担う。

 

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