第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前116~120】

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次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aちゃん(6歳、男児) は父親(50歳、会社員)、母親(48歳)、姉(11歳) と4人で暮らしている。デュシェンヌ型筋ジストロフィーで身体障害者手帳 (肢体不自由1級)が交付されている。喀痰吸引、胃瘻による経管栄養が必要で、訪問看護を週に2回利用している。まばたきの回数で「はい」と「いいえ」の意思表示はできるが、視線や上肢の動きには誤動作もあり、構音障害もあるため家族以外では意思の判断が難しい。また、手指での細かい操作はできない。Aちゃんは次年度から姉と同じ小学校の特別支援学級に通い、通常の学級の児童と交流の予定がある。

問題116 Aちゃんが小学校に入学して6か月が経過した。 小学校への送迎は母親が行っており、学内での喀痰吸引や経管栄養の注入は小学校に配置されている看護師が行っている。Aちゃんは体調も安定しており、小学校での生活にも慣れてきた。Aちゃんの母親は「夫は朝早く出勤し、長女もまだ小さく、Aを小学校に連れて行くまで忙しくて大変です」と訪問看護師に話した。訪問看護師は保健所の保健師に相談し、Aちゃん宅で家族も含めてAちゃんが利用できる支援サービスを検討することにした。
 Aちゃんと家族に利用を勧める支援サービスで適切なのはどれか。

1.児童発達支援
2.重度訪問介護
3.放課後等デイサービス
4.短期入所〈ショートステイ〉

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(6歳、男児、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)
・4人暮らし:父親(50歳、会社員)、母親(48歳)、姉(11歳) 。
・身体障害者手帳 (肢体不自由1級)交付。
・喀痰吸引、胃瘻による経管栄養(訪問看護を週に2回)。
・小学校6か月が経過:母親(小学校への送迎)、看護師(学内での喀痰吸引や経管栄養の注入)
・体調安定、生活にも慣れてきた。
・母親「夫は朝早く出勤し、長女もまだ小さく、Aを小学校に連れて行くまで忙しくて大変です」と。
・訪問看護師:保健所の保健師に相談し、Aちゃん宅で家族も含めてAちゃんが利用できる支援サービスを検討する。
→母親が行っている送迎の負担量を軽減できるサービスが望ましい。

1.× 児童発達支援とは、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。
2.〇 正しい。重度訪問介護が、Aちゃんと家族に利用を勧める支援サービスである。重度訪問介護とは、重度の肢体不自由または知的障害もしくは精神障害があり常に介護を必要とする方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行う『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』の障害福祉サービスである。重度の肢体不自由者で常時介護を必要とする人を対象とした居宅介護である。
3.× 放課後等デイサービスとは、『学校教育法』1条に規定する学校に就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センター等の施設に通わせ、①生活能力の向上のために必要な訓練、②社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。
4.× 短期入所〈ショートステイ〉とは、利用者が可能な限り自己の生活している居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、利用者に短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスである。

 

 

 

 

 

次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aちゃん(6歳、男児) は父親(50歳、会社員)、母親(48歳)、姉(11歳) と4人で暮らしている。デュシェンヌ型筋ジストロフィーで身体障害者手帳 (肢体不自由1級)が交付されている。喀痰吸引、胃瘻による経管栄養が必要で、訪問看護を週に2回利用している。まばたきの回数で「はい」と「いいえ」の意思表示はできるが、視線や上肢の動きには誤動作もあり、構音障害もあるため家族以外では意思の判断が難しい。また、手指での細かい操作はできない。Aちゃんは次年度から姉と同じ小学校の特別支援学級に通い、通常の学級の児童と交流の予定がある。

問題117 Aちゃんは入学して1度も入院することなく2年生になった。Aちゃんの母親はケアに必要な物品を学校の看護師に渡す際に「Aは学校に通うようになり、お友達が増えて本当によかったと思います。それに比べて私は仕事をしていないし、Aに友達ができた喜びや日々の苦労を理解してもらえる友達がいません。Aの同級生の親には年齢が近くて話しやすい人がいません」と話した。
 Aちゃんの母親への提案で最も適切なのはどれか。

1.「学校の行事に参加してみませんか」
2.「短時間でも仕事を始めてはいかがですか」
3.「お姉ちゃんのお友達の親に話しかけてみませんか」
4.「障害のある子どもを持つ家族の会に参加してみませんか」

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(6歳、男児、デュシェンヌ型筋ジストロフィー
・母親:ケアに必要な物品を学校の看護師に渡す際に「Aは学校に通うようになり、お友達が増えて本当によかったと思います。それに比べて私は仕事をしていないし、Aに友達ができた喜びや日々の苦労を理解してもらえる友達がいません。Aの同級生の親には年齢が近くて話しやすい人がいません」と話した。
→母親は、日々の苦労を理解してもらえる友達や話しやすい友達を欲している。どこの活動をすれば、そのような人と出会えるか選択する。

1.× 「学校の行事に参加してみませんか」と伝える優先度は低い。なぜなら、設問文からは、学校の行事に参加していないという記載はないため。Aに友達ができた喜びや日々の苦労を理解しあえる友達を希望しているが、学校行事は1日限りであることも多く、そのような話をする場面は少ない。また、学校行事を通して周りの子たちを比べてしまう場面も多い。
2.× 「短時間でも仕事を始めてはいかがですか」と伝える優先度は低い。なぜなら、Aに友達ができた喜びや日々の苦労を理解しあえる友達を希望しているため。職種にもよるだろうが、職場に、そのような話ができる友達が作れる確率は低いと考えられる。
3.× 「お姉ちゃんのお友達の親に話しかけてみませんか」と伝える優先度は低い。なぜなら、お姉ちゃんのお友達の親に話しかけたくても、その場がないことが問題であるため。具体的にどのような場に行けば、友達ができるのか?解決策を提案することが望ましい。
4.〇 正しい。「障害のある子どもを持つ家族の会に参加してみませんか」と提案する。家族会とは、精神障害者など(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。それぞれが相互的に話し合う会である。

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120 の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性、無職)は妻(55歳、会社員)と2人で暮らしている。Aさんは、飲酒が原因で仕事での遅刻や無断欠勤が続いたため1年前に職場を解雇された。その後も朝から自宅で飲酒する生活が続き、体調が悪化したため受診し、アルコール性肝硬変とアルコール依存症と診断された。医師から断酒を指導されていたが実行できず通院していなかった。
 Aさんは最近、倦怠感が強く食欲がなく、1週前から飲酒もできなくなった。 妻に付き添われて受診した際、外来のトイレで吐血し倒れ食道静脈瘤破裂と診断され入院した。
 【身体所見】呼びかけに応じるが反応が遅い。腹水や浮腫はない。手指の振戦はない。体温:37.0℃、呼吸数:22/分、脈拍:98/分、整、血圧:92/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度:98%(room air)。

問題118 入院時、Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.上半身を挙上する。
2.身体を側臥位にする。
3.頭部の冷罨法を行う。
4.酸素療法の準備をする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん (57歳、男性、無職、アルコール性肝硬変とアルコール依存症)
・2人暮らし:妻 (55歳、会社員)
・1年前:職場を解雇(原因:飲酒による遅刻や無断欠勤)
・医師:断酒を指導、実行できず通院できず。
・最近:倦怠感が強く、食欲がなく、1週前から飲酒できず。
・外来受診:吐血食道静脈瘤破裂と診断され入院。
・呼びかけに応じるが反応が遅い。
・腹水、浮腫、手指の振戦:なし。
・体温:37.0℃、呼吸数:22/分、脈拍:98/分、整、血圧:92/50mmHg、SPO2:98%。
→静脈瘤自体は無症状であるが、原因となる肝硬変の症状(手のひらが赤くなる、胸のあたりに血管が浮き出る、疲労感、倦怠感、黄疸 など)がでる。静脈瘤が破裂した場合に吐血や下血などがおこり、出血量に応じて、出血性ショックの病態(頻呼吸・低血圧・顔面蒼白・冷汗)も起こる。

1.× 「上半身」ではなく下半身を挙上する。ショック時の下肢挙上は、脳血流を保持するため最優先に行う。脳血流が低下すると、脳が虚血状態になり不可逆的な障害を残す。
2.〇 正しい。身体を側臥位にする。なぜなら、吐血による誤嚥を防ぐため。
3.× 頭部の冷罨法を行う優先度は低い。なぜなら、冷罨法は、主に炎症や疼痛軽減に用いるため。寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)
4.× 酸素療法の準備をする必要はない。なぜなら、本症例のSPO2:98%であるため。酸素療法とは、室内空気より高い濃度の酸素を投与することである。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120 の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性、無職)は妻(55歳、会社員)と2人で暮らしている。Aさんは、飲酒が原因で仕事での遅刻や無断欠勤が続いたため1年前に職場を解雇された。その後も朝から自宅で飲酒する生活が続き、体調が悪化したため受診し、アルコール性肝硬変とアルコール依存症と診断された。医師から断酒を指導されていたが実行できず通院していなかった。
 Aさんは最近、倦怠感が強く食欲がなく、1週前から飲酒もできなくなった。 妻に付き添われて受診した際、外来のトイレで吐血し倒れ食道静脈瘤破裂と診断され入院した。
 【身体所見】呼びかけに応じるが反応が遅い。腹水や浮腫はない。手指の振戦はない。体温:37.0℃、呼吸数:22/分、脈拍:98/分、整、血圧:92/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度:98%(room air)。

問題119 入院当日、Aさんは緊急に内視鏡的治療を受けた。 入院7日、Aさんは食道静脈瘤の治療のため、食道静脈瘤硬化療法を受けることになった。 治療前のバイタルサインは、 体温 36.7℃、呼吸数16/分、脈拍72/分、整、血圧 126/70mmHgである。検査所見は、血小板15万/μL、プロトロンビン時間〈PT〉10秒85%である。入院後は吐血していない。
 Aさんが食道静脈瘤硬化療法を受けた直後に注意すべき症状はどれか。

1.下血
2.胸部痛
3.皮下出血
4.手指の振戦

解答

解説

食道静脈瘤硬化療法とは?

食道静脈瘤硬化療法とは、食道静脈瘤に対して、内視鏡的に血管(静脈瘤)の内外に小さな針を刺して、そこから界面活性剤(硬化剤)を注入し、静脈瘤の出血(破裂)を防止する方法をいう。つまり、血管内に血栓を作り、食道静脈瘤や供給路を閉塞させる。食道静脈瘤硬化療法は局所麻酔で行われる。検査当日の朝食から食事を止める。治療後問題がなければ翌日の昼食から流動食が開始され、安静が解除される。合併症として、胸部痛、発熱、食道穿孔、腎不全、肺梗塞、食道狭窄などが考えられる。

1.× 下血の原因は、胃や十二指腸といった上部消化管からの出血である。本症例の場合、入院後は吐血していない。また、下血が発生するまで時間がかかるため、食道静脈瘤硬化療法を受けた直後に注意すべき症状とはいえない。
2.〇 正しい。胸部痛は、食道静脈瘤硬化療法を受けた直後に注意すべき症状である。通常の内視鏡検査より内視鏡を長く挿入されるため、苦痛やストレスを感じる。したがって、硬化剤注入後、それが刺激となり胸部痛が出現することがある。他の合併症として、発熱、食道穿孔、腎不全、肺梗塞、食道狭窄などが考えられる。
3.× 皮下出血とは、血管から流れ出た血が皮膚の中にたまり皮膚が紫色や青黒いあざになる状態をいう。 紫斑とも呼ぶ。捻挫や打ち身が原因であることが多い。
4.× 手指の振戦の原因は様々であり、Parkinson病や原因不明のものもある。

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120 の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性、無職)は妻(55歳、会社員)と2人で暮らしている。Aさんは、飲酒が原因で仕事での遅刻や無断欠勤が続いたため1年前に職場を解雇された。その後も朝から自宅で飲酒する生活が続き、体調が悪化したため受診し、アルコール性肝硬変とアルコール依存症と診断された。医師から断酒を指導されていたが実行できず通院していなかった。
 Aさんは最近、倦怠感が強く食欲がなく、1週前から飲酒もできなくなった。 妻に付き添われて受診した際、外来のトイレで吐血し倒れ食道静脈瘤破裂と診断され入院した。
 【身体所見】呼びかけに応じるが反応が遅い。腹水や浮腫はない。手指の振戦はない。体温:37.0℃、呼吸数:22/分、脈拍:98/分、整、血圧:92/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度:98%(room air)。

問題120 Aさんは食道静脈瘤硬化療法を終えて、アルコール依存症の治療を受けるために精神科病院に転院した。転院して2か月、病棟ではAさんの退院に向けた話し合いが進められている。Aさんは「退院した後にお酒をやめられるか自信がない。体力が落ちており、何もしていないとお酒を飲んでしまいそうです」と悩みを打ち明けた。
 Aさんへの看護師の声かけで適切なのはどれか。

1.「断酒をする意思を強く持ちましょう」
2.「肝硬変があるので、 今は安静が必要です」
3.「入院中も飲酒をやめられているので大丈夫です」
4.「アルコールの問題で悩んでいる人たちとの話し合いに参加してみましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん (57歳、男性、無職、アルコール性肝硬変とアルコール依存症)
・2人暮らし:妻 (55歳、会社員)
・1年前:職場を解雇(原因:飲酒による遅刻や無断欠勤)
・医師:断酒を指導、実行できず通院できず。
・食道静脈瘤硬化療法後:アルコール依存症のため精神科病院転院
・転院2か月:退院に向けた話し合い。
・Aさん「退院した後にお酒をやめられるか自信がない。体力が落ちており、何もしていないとお酒を飲んでしまいそうです」と悩みを打ち明けた。
→アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。【合併しやすい病状】①離脱症状、②アルコール幻覚症、③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)、④健忘症候群(Korsakoff症候群)、⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など。

1.× 「断酒をする意思を強く持ちましょう」と伝えても効果は薄い。なぜなら、アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことであるため。つまり、意思どうこうの問題ではない。
2.× 「肝硬変があるので、 今は安静が必要です」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、食道静脈瘤硬化療法後で、アルコール依存症のため精神科病院転院した段階であるため。一通り、内科的疾患に対する治療は終了したと考えてよい。
3.× 「入院中も飲酒をやめられているので大丈夫です」と伝える必要はない。なぜなら、入院中と自宅での生活は、まったく異なるものであるため。根拠のない発言は、失敗したときに大ごとになりかねない。
4.〇 正しい。「アルコールの問題で悩んでいる人たちとの話し合いに参加してみましょう」と声かけする。アルコール依存症に対する治療として、集団精神療法があげられる。

アルコール依存症の治療

 アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。

 

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