第114回（R7）看護師国家試験解説【午前106～110】

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次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
　Aちゃん（1歳4か月、女児）は、午前9時ころ、ポータブル型のゲーム機用の直径10mmのボタン型電池を誤飲し、午前10時に両親に付き添われ外来を受診した。看護師がAちゃんを観察すると、機嫌は良くバイタルサインも安定していた。Aちゃんに成長や発達の遅れはない。
待合室にはAちゃんの他に3人の患児が診察を待っていた。それぞれは以下のとおりである。
　B君（1歳3か月、男児）：今朝、カーペットの敷かれたフロアで歩行中に転倒。バイタルサインは正常、顔色良好。母親に抱っこされて遊んでいる。
　Cちゃん（3歳、女児）：体温39.5℃、呼吸数23/分、脈拍100/分、鼻汁多量、機嫌良好、顔色良好。
　D君（9か月、男児）：自宅で痙攣したため受診。初めての痙攣で、5分間継続したが、受診時には止まっている。待合室にて3回の嘔吐。体温38.7℃。声かけで開眼するが、すぐにうとうとする。

106　このときの看護師のトリアージで診察を受ける優先度が高いのはどれか。

1．Aちゃん
2．B君
3．Cちゃん
4．D君

解答・解説

解答４

解説

本症例のポイント

・Aちゃん（1歳4か月、女児）：午前9時に直径10mmのボタン型電池を誤飲、現在機嫌良くバイタルサインも安定（成長や発達の遅れなし）。
・B君（1歳3か月、男児）：歩行中に転倒。バイタルサインは正常、顔色良好。母親に抱っこされて遊んでいる。
・Cちゃん（3歳、女児）：体温39.5℃、呼吸数23/分、脈拍100/分、鼻汁多量、機嫌良好、顔色良好。
・D君（9か月、男児）：自宅で痙攣したため受診。初めての痙攣で、5分間継続したが、受診時には止まっている。待合室にて3回の嘔吐。体温38.7℃。声かけで開眼するが、すぐにうとうとする。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。トリアージとは、災害時などの制約があるなかで、治療・搬送の優先順位を決めることである。災害時においては医療スタッフや医薬品などの医療資源が限られるため、より効果的に傷病者の治療を行うために、治療や搬送の優先順位を決定するものである。

1．×　Aちゃんより優先されるものが他にある。なぜなら、ボタン型電池は消化管に停留して粘膜を損傷することが最も懸念されるが、現時点では全身状態に緊急性がある兆候はないため。ただし、ボタン型電池の誤飲は、放置すれば食道穿孔などの重篤な合併症を引き起こす。飲み込んでから約1時間程度で起こることが多いとされている。

2．×　B君より優先されるものが他にある。なぜなら、バイタルサインは正常、顔色良好。母親に抱っこされて遊んでいるため。したがって、意識状態も良好で、大きな外傷（頭部外傷や脳損傷）を示唆する兆候はないため。

3．×　Cちゃんより優先されるものが他にある。なぜなら、Cちゃんは発熱と鼻汁があり、一般的な感冒症状と考えられるため。成人の場合「体温39.5℃、呼吸数23/分、脈拍100/分」というバイタルサインは、高いと判断されるが、Cちゃんは３歳で年齢を考慮すると一般的な感冒症状の許容範囲内といえる。

4．〇　正しい。D君は、看護師のトリアージで診察を受ける優先度が高い。なぜなら、D君は「初めての痙攣」であり、発作が止まっているとはいえ、原因検索と再発予防が重要であるため。加えて、「待合室にて3回の嘔吐」と「声かけで開眼するが、すぐにうとうとする」という症状は、意識レベルの低下傾向がみられている。これは重篤な疾患（髄膜炎、脳炎、頭蓋内病変、代謝性疾患など）を強く疑われる。

107　Aちゃんは、腹部エックス線撮影で胃内にボタン型電池が認められ、全身麻酔下での内視鏡でボタン型電池を摘出し、消化管粘膜に大きな問題はなかった。摘出後、小児病棟に1泊入院した。小児病棟に入院1時間後、看護師が訪室するとAちゃんは覚醒しており、下図のように｢ママー、ママー｣と言いながら大声で泣き、ベッドから両親の方に手を伸ばしている。両親は戸惑った様子で、ベッドの傍に立っている。
　このときの看護師による安全な療養環境の整備で適切なのはどれか。2つ選べ。

1．ぬいぐるみを取り除く。
2．毛布をベッド柵にかける。
3．柵を半分の高さまで降ろす。
4．点滴ルートの長さを延長する。
5．点滴スタンドをAちゃんの手が届くところまで近づける。

解答・解説

解答１・４

解説

本症例のポイント

・Aちゃん（1歳4か月、女児）
・小児病棟に入院1時間後：Aちゃんは覚醒し｢ママー、ママー｣と言いながら大声で泣き、ベッドから両親の方に手を伸ばしている。
・両親は戸惑った様子で、ベッドの傍に立っている。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。

1．〇　正しい。ぬいぐるみを取り除く。なぜなら、術後直後で点滴ラインがある中、ぬいぐるみが絡まって事故の原因になる恐れがあるため。また、覚醒し興奮して泣いている状態では、不意な動作によって点滴が抜けたり、転倒リスクが高まる。

2．×　毛布をベッド柵にかける必要はない。なぜなら、毛布をベッド柵にかけると看護師や両親から、死角になり対応が遅れる可能性があるため。またAちゃんが登ろうとして転落する危険が高まる。

3．×　柵を半分の高さまで降ろす必要はない。なぜなら、Aちゃんは覚醒し｢ママー、ママー｣と言いながら大声で泣きしていることから、柵をよじ登ったり、転落リスクが高いと考えられるため。

4．〇　正しい。点滴ルートの長さを延長する。なぜなら、Aちゃんは泣いて立ち上がっている状態で、ルートが短いと引っ張られてルートが抜ける危険があるため。

5．×　点滴スタンドをAちゃんの手が届くところまで近づける必要はない。なぜなら、Aちゃんがスタンドを引っ張ったり倒したりする危険があるため。したがって、手が届かない位置に置くのが原則である。

108　翌日、Aちゃんは退院することになった。看護師は、Aちゃんの誤飲予防のための教育的支援を両親に行うことにした。
　両親に伝える内容で最も適切なのはどれか。

1．Aちゃんから目を離さないこと
2．Aちゃんにやってはいけないことを教えること
3．家の中でのAちゃんの行動範囲を柵で区切ること
4．大きさが4cmよりも小さいものはAちゃんの手が届かないところに置くこと

解答・解説

解答４

解説

本症例のポイント

・Aちゃん（1歳4か月、女児）
・午前9時：直径10mmのボタン型電池を誤飲。
・全身麻酔下での内視鏡：ボタン型電池を摘出。
・消化管粘膜に大きな問題はなかった。
・翌日：Aちゃんは退院することになった。
・看護師は、Aちゃんの誤飲予防のための教育的支援を両親に行う。
→ボタン電池は、誤飲時に食道にとどまり、放電の影響によって短時間（僅か１時間）でも潰瘍ができて穴が開いてしまうなどの重篤な症状を生じることがあり、場合によっては死に至るなど大変危険である。他にも医療品、タバコ、洗濯用パック型液体洗剤などの誤飲に注意する必要がある。

1．×　Aちゃんから目を離さないことより優先されるものが他にある。なぜなら、日常生活において24時間体制で、子どもから目を離さないでいることは現実的に不可能であるため。

2．×　Aちゃんにやってはいけないことを教えることより優先されるものが他にある。なぜなら、Aちゃん（1歳4か月、女児）は、言葉の意味の理解、危険を判断する能力ともに不十分であるため。

3．×　家の中でのAちゃんの行動範囲を柵で区切ることより優先されるものが他にある。なぜなら、家全体のすべての空間を柵で区切ることは現実的ではないため。行動範囲を柵で区切ることは、危険な場所（特にキッチンや階段など）への侵入を防ぐには有効である。

4．〇　正しい。大きさが4cmよりも小さいものはAちゃんの手が届かないところに置くことは、両親に伝える内容である。なぜなら、乳幼児の誤飲事故を予防するための最も基本的かつ重要な環境整備であるため。乳幼児は、何でも口に入れて確かめる行動特性がある。したがって、口に入るサイズのものは全て子どもの手の届かない、あるいは開けられない場所に保管することが推奨される。

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
　Aさん（41歳、初妊婦、会社員）は夫（42歳、会社員）と2人で暮らしている。身長は158cm、非妊時体重55kgである。Aさんは妊娠16週3日に妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。妊婦健康診査後｢夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています｣とAさんが看護師に話した。

109　Aさんへの活動に関する助言で適切なのはどれか。

1．｢仕事は辞めましょう｣
2．｢ウォーキングを再開しましょう｣
3．｢週1回バスケットボールをやりましょう｣
4．｢ご家族の言うように安静にしていましょう｣

解答・解説

解答２

解説

本症例のポイント

・Aさん（41歳、初妊婦、会社員）
・2人暮らし：夫（42歳、会社員）。
・身長：158cm、非妊時体重55kg。
・妊娠16週3日：妊婦健康診査を受診（順調な経過）。
・妊婦健康診査後｢夫から、高齢妊娠だから安静にするよう言われ、夫が家事をしてくれています。妊娠前はバスケットボールを週に3回、毎日夕方に夫とウォーキングをしていました。今は仕事に行く以外は、家でなるべく動かないようにしています｣と。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。

1．×　｢仕事は辞めましょう｣と伝える必要はない。なぜなら、仕事を辞めるという助言は、Aさんの生活状況や経済面、精神面を考慮できていない発言であるため。

2．〇　正しい。｢ウォーキングを再開しましょう｣と助言する。なぜなら、Aさんは妊娠16週3日で経過は順調であり、妊娠前は毎日ウォーキングをしていたという習慣があるため。ウォーキングは妊娠中でも行える適度な運動負荷量であり、健康維持やストレス軽減に適した運動である。妊娠中の適度な運動は、体重管理、精神的安定、便秘予防、分娩への体力維持など、多くのメリットがあげられる。

3．×　｢週1回バスケットボールをやりましょう｣と伝える必要はない。なぜなら、妊娠中のバスケットボールは負荷量が大きすぎるため。また、バスケットボールは、転倒、接触、急激な方向転換、ジャンプなど、運動の負荷量だけなく、腹部への衝撃のリスクがある。

4．×　｢ご家族の言うように安静にしていましょう｣と伝える必要はない。なぜなら、Aさんの妊娠経過は順調であるため。夫の言う「高齢妊娠」という理由だけで、医学的根拠のない安静を続けることは、Aさんの心身の健康にとってマイナスに作用する恐れがある。また、運動不足による筋力低下、体重増加、便秘、ストレス蓄積などのリスクが高まる可能性が高い。

110　Aさんは妊娠24週0日に妊婦健康診査を受けた。体重60kg（妊娠20週の体重は58kg）。血圧138/88mmHg、Hb10.1g/dL、Ht31%、尿蛋白（－）、尿糖（±）であった。Aさんは｢足が重い気がします｣と話すが、脛骨上の圧痕は認めなかった。
　このときのアセスメントで適切なのはどれか。

1．体重増加が過剰である。
2．妊娠性貧血である。
3．高血圧である。
4．浮腫がある。

解答・解説

解答２

解説

本症例のポイント

・Aさん（41歳、初妊婦、会社員）
・2人暮らし：夫（42歳、会社員）。
・身長：158cm、非妊時体重55kg。
・妊娠16週3日：妊婦健康診査を受診（順調な経過）。
・妊娠24週0日：妊婦健康診査。
・体重60kg（妊娠20週：58kg）。
・血圧138/88mmHg、Hb10.1g/dL、Ht31%、尿蛋白（－）、尿糖（±）。
・Aさん｢足が重い気がします｣と話すが、脛骨上の圧痕は認めなかった。

→BMIの計算方法は、BMI（kg/㎡）＝体重（kg）÷ 身長（m）の2乗で求められる。
→基準として、①低体重（やせ）の場合：12～15kg、②標準（ふつう）の場合：10～13kg、③肥満（1度）の場合：7～10kg、④肥満（2度以上）：個別対応（上限5kgまでが目安）とされている（厚生労働省「『妊産婦のための食生活指針』の改定について（令和３年３月 31 日）」）

改定前に使用されていた「妊娠全期間を通しての推奨体重増加量」
①BMI18.5以下：9～12㎏
②BMI18.5～25：7～12㎏
③BMI25以上：個別対応

1．×　体重増加が「過剰」ではなく少なめである。なぜなら、Aさんの非妊時体重は55kgで、身長158cmなので、BMIは22.0（標準体重）であるため。したがって、10～13kgの増加は許容範囲である。

2．〇　正しい。妊娠性貧血である。なぜなら、Aさんのヘモグロビン（Hb）値は10.1g/dL、ヘマトクリット（Ht）値は31%であるため。
・妊娠性貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称であり、ヘモグロビン濃度（Hb値）が11g/dL未満、あるいはヘマトクリット値（Ht値）が33％未満で診断される。妊娠性貧血は、全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。

3．×　高血圧「とはいえない」。なぜなら、 Aさんの血圧は138/88mmHgであるため。
・妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧（収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上）を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

4．×　浮腫がある「とはいえない」。なぜなら、「脛骨上の圧痕は認めなかった」と記載されているため。浮腫の客観的な評価として、脛骨上を指で圧迫して圧痕が残るかどうか（圧痕性浮腫）が重要な指標となる。

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