第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前116~120】

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次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、男性)は統合失調症で内服治療をしていた。最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出しなくなった。ある日、母親がAさんの部屋で大量の薬を見つけ、確認すると「薬は飲みたくない」と話した。受診に付き添った母親は「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かって『悪口を言うな』『監視するな』と大声で怒鳴る」と主治医に話した。Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始された。
 入院3日、夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。他の患者と話すことはあるがトラブルはない。歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う。

116 入院14日、Aさんは他の患者や看護師と話をする機会が増えた。「B看護師に私の悪口を言うのをやめるように言ってほしい」と訴え、受け持ち看護師が話を聞いていると興奮して声が大きくなることがあった。
 受け持ち看護師のAさんへの対応で適切なのはどれか。

1.「悪口を言うのはB看護師ですか」
2.「悪いことは考えないほうがいいですよ」
3.「B看護師はAさんの悪口は言っていません」
4.「悪口を言われるとAさんはどんな気持ちになりますか」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、男性、統合失調症で内服治療)
・入院14日:Aさんは他の患者や看護師と話をする機会が増えた。
・「B看護師に私の悪口を言うのをやめるように言ってほしい」と訴える。
・受け持ち看護師が話を聞いていると興奮して声が大きくなることがあった。
→本症例は、統合失調症の急性期~消耗期である。

1.× 「悪口を言うのはB看護師ですか」と伝える優先度は低い。なぜなら、悪口を話している前提となるため。また、統合失調症の被害妄想を持つ患者に対して、妄想の内容を現実であるかのように確認することは、患者の妄想を肯定し、妄想世界への没入を助長しかない。

2.× 「悪いことは考えないほうがいいですよ」と伝える優先度は低い。なぜなら、統合失調症の妄想を「悪いこと」と決めつけているため。また、「考えないほうがいい」と指示することで、妄想がなくなるものでもない。

3.× 「B看護師はAさんの悪口は言っていません」と伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんの妄想を一方的に否定するものでるため。統合失調症の妄想は、患者にとっては揺るぎない確信であり、論理的な説明での訂正は困難である。患者は納得せず、「看護師もグルだ」と不信感を強めることもある。

4.〇 正しい。「悪口を言われるとAさんはどんな気持ちになりますか」と対応する。なぜなら、Aさんの妄想の内容そのものではなく、妄想によってAさんが体験している感情や苦痛に焦点を当てることができているため。どのような感情的影響を与えているかを傾聴し、共感を示すことが重要である。こうすることで、看護師はAさんの苦痛を理解しようとする姿勢を示せ、信頼関係を築きやすくなる。

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、男性)は統合失調症で内服治療をしていた。最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出しなくなった。ある日、母親がAさんの部屋で大量の薬を見つけ、確認すると「薬は飲みたくない」と話した。受診に付き添った母親は「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かって『悪口を言うな』『監視するな』と大声で怒鳴る」と主治医に話した。Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始された。
 入院3日、夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。他の患者と話すことはあるがトラブルはない。歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う。

117 入院1か月、Aさんは夜間、眠れるようになり、妄想や幻聴の症状が軽減した。看護師がAさんに薬を自己中断した理由を尋ねたところ「いろいろとストレスが溜まると何もしたくなくなり、薬を飲むことも面倒でした。今回の入院で飲み続けたら嫌な症状もなくなってきました。薬は飲んだほうがよいですね。これからはストレスを感じても乗り越えていけそうです」と話した。
 Aさんの考えに当てはまる概念はどれか。

1.カタルシス
2.レジリエンス
3.コンコーダンス
4.コンプライアンス

解答

解説

 

本症例のポイント

・Aさん(30歳、男性、統合失調症で内服治療)
・入院1か月:夜間、眠れるようになり、妄想や幻聴の症状が軽減。
・Aさんに薬を自己中断した理由「いろいろとストレスが溜まると何もしたくなくなり、薬を飲むことも面倒でした。今回の入院で飲み続けたら嫌な症状もなくなってきました。薬は飲んだほうがよいですね。これからはストレスを感じても乗り越えていけそうです」と。
→Aさんの言葉の核心は、「ストレスを感じても乗り越えていけそう」という、困難な状況に直面した際の自身の回復力や適応能力の獲得に向けた前向きな姿勢にある。

1.× カタルシスとは、心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されることである。
→本症例は、「感情の解放」というよりも、「困難を乗り越える力や適応能力の向上」を示す。

2.〇 正しい。レジリエンスは、Aさんの考えに当てはまる概念である。
・レジリエンスとは、精神障害者が逆境の中で能動的に鼓舞し、再び自己コントロール感を獲得したり、社会に適応していく過程を表す概念であることである。(直訳:立ち直る力

3.× コンコーダンスとは、患者と医療従事者が、治療の目標や方法について対等な立場で話し合い、合意形成していくプロセスを指す。患者の自己決定を尊重し、共同で治療に取り組むことを重視する概念である。

4.× コンプライアンスとは、患者が医師や医療従事者の指示(特に服薬指示)にどれだけ従っているか、という意味で使われることが多い概念である。指示への「遵守」を強調する傾向がある。

 

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。
 Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。

118 病状について医師から説明を受けることになったが、娘から「夫はしばらく帰ってこないし、私は難しいことは分からないのでどうしたらいいですか」と質問を受けた。
 看護師の助言で適切なのはどれか。

1.「ご主人に帰国してもらいましょう」
2.「医療通訳の方に同席してもらいましょう」
3.「娘さんからAさんにお話しされてはいかがですか」
4.「通訳できる知人を探して、同席してもらいましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、男性、外国籍肺癌、1年前:日本に移住)
3人家族:娘(36歳、会社員)、娘の夫(42歳、会社員、日本人
・娘の夫:海外に長期出張中
・娘:日本語での簡単な日常会話はできる
・Aさん:ほとんど日本語が理解できない
・病状について医師から説明を受けることになった。
・娘から「夫はしばらく帰ってこないし、私は難しいことは分からないのでどうしたらいいですか」と質問を受けた。
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。

1.× 「ご主人に帰国してもらいましょう」と伝える必要はない。なぜなら、海外に長期出張中であるため。帰国を促すことは、夫の仕事や家庭に大きな負担をかけることになるため。緊急性のある場合、電話などの通話手段を用いる。

2.〇 正しい。「医療通訳の方に同席してもらいましょう」と助言する。なぜなら、医療従事者は、なるべく専門用語を使わず分かりやすい日本語での説明を意識的に行うが、今回のケースでは、娘は日本語での簡単な日常会話はできる程度で、正確に伝わり切れるか疑問であるため。また、娘から「私は難しいことは分からないのでどうしたらいいですか」と質問と不安が聞こえる。したがって、医療通訳に依頼することが優先されると考えられる。
・医療通訳とは、医療機関や医療関連サービスにおいて、日本語を母国語としない患者と医療従事者(医師、看護師、薬剤師など)の間のコミュニケーションを円滑にする役割を担う人のことである。言葉の障壁を取り除き、患者が適切な医療を受けられるようにサポートできる。

3.× 「娘さんからAさんにお話しされてはいかがですか」と伝える必要はない。なぜなら、娘さんは「私は難しいことは分からない」とのことで、医療情報を正確に理解し、伝えられるとは保証できないため。情報の伝言は、さらなる誤解を生みやすい。

4.× 「通訳できる知人を探して、同席してもらいましょう」と伝える必要はない。なぜなら、知人は中立性な通訳が行えるか疑問が残るため。知人関係であるため、感情的な配慮や、家族間の力関係などが情報伝達に影響を与える可能性がある。また、知人は、医療用語や概念を正確に理解し、伝える専門知識を持てるかのリスクもあげられる。誤訳や解釈の誤りが生じるリスクが高い。

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。
 Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。

119 入院後、医療従事者との日常会話は、電子端末による翻訳を活用している。疼痛に対しては、モルヒネ徐放製剤の内服が開始され、レスキュードーズとして、モルヒネ速放製剤の内服が指示されている。激しい腰痛が1日に数回あるが、レスキュードーズを使いたくないと話し痛みを我慢している。
 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。

1.レスキュードーズを無理に使う必要はないことを伝える。
2.レスキュードーズを使いたくない理由を確認する。
3.レスキュードーズの使い方を説明する。
4.疼痛スケールの記載を勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、男性、外国籍肺癌、1年前:日本に移住)
・Aさん:ほとんど日本語が理解できない。
・肺癌:胸膜と腰椎への転移あり、疼痛コントロールの目的で入院。
・入院後の日常会話:電子端末による翻訳。
・疼痛:モルヒネ徐放製剤の内服が開始。
・レスキュードーズ:モルヒネ速放製剤の内服が指示。
・激しい腰痛が1日に数回あるが、レスキュードーズを使いたくないと話し痛みを我慢。
→レスキュードーズとは、がん治療などで、普段飲んでいる鎮痛薬だけでは痛みが抑えきれない時に、一時的に追加で飲む速効性のある鎮痛薬のことである。急に強くなった痛み(突出痛)を和らげることを目的とし、定時薬の不足を補う役割がある。痛みを感じたら我慢せず、速やかに使用することが重要とされている。

1.× レスキュードーズを無理に使う必要はないことを伝える必要はない。なぜなら、単に「無理に使う必要はない」と伝えるだけでは、痛みの緩和につながらず、患者の苦痛を放置することになるため。また、レスキュードーズは、痛みを感じたら我慢せず、速やかに使用することが重要とされている。

2.〇 正しい。レスキュードーズを使いたくない理由を確認する。なぜなら、Aさんは激しい腰痛があるにもかかわらず、痛みを我慢しているため。したがって、患者の具体的な懸念や誤解を把握することが、最も優先すべきである。

3.× レスキュードーズの使い方を説明することより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは「レスキュードーズを使いたくない」と話しているため。使い方が分からない状態とはいえない状況で、一方的に使い方を説明するだけでは、その理由が解決されない限り、使用にはつながらない可能性が高い。まずは使いたくない理由を理解し、その誤解を解くことが先決である。

4.× 疼痛スケール(NRSやVASなど)の記載を勧めることより優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんはすでに「激しい腰痛が1日に数回ある」と具体的に痛みを訴えており、その痛みの程度は把握できているため。現在の問題は、痛みの評価そのものよりも、「薬を使いたくない」という患者の意思に起因する痛みの我慢である。
・NRS(numerical rating scale:数字評価スケール)は、成人のがん患者が痛みの程度を数値で回答するスケールである。0(痛みなし)~10(想像できる最大の痛み)の数字で11段階に区分し、現在の痛みの程度を示してもらう。
・VAS(Visual Analogue Scale:視覚的アナロクスケール)で痛みの強さを評価する。まったく痛くない状態を0cm、予想されるなかで最も痛い状態を10cmとしたときに今どのくらい痛いかを指さしてもらい、何cmかを測ることで痛みの程度を定量化する。

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。
 Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。

120 入院8日、疼痛がコントロールされてきたAさんは「家に帰りたい」と希望しているが、娘は「仕事もあるし、もう少し病院にいてほしい」と話している。そこで、看護師の提案によりAさんのアドバンス・ケア・プランニングが行われることになった。
 Aさんのアドバンス・ケア・プランニングで適切なのはどれか。

1.退院調整看護師に退院の手続きを進めてもらう。
2.Aさんの発言内容の記録は施設外の人には提供しない。
3.娘の思いや不安に思っていることの解決が優先される。
4.Aさんが大切にしていることや生きがいについて話してもらう。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、男性、外国籍肺癌、1年前:日本に移住)
・3人家族:娘(36歳、会社員)、娘の夫(42歳、会社員、日本人)
・娘の夫:海外に長期出張中。
・入院8日:疼痛がコントロールされてきた。
・Aさん「家に帰りたい」と希望している。
・娘「仕事もあるし、もう少し病院にいてほしい」と話している。
→アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのことである。患者さんの人生観や価値観、希望に沿った、将来の医療及びケアを具体化することを目標にしている。

1.× 退院調整看護師に退院の手続きを進めてもらうことはアドバンス・ケア・プランニングとはいえない。また、この判断は時期尚早である。なぜなら、Aさんの「家に帰りたい」という希望と娘さんの「もう少し病院にいてほしい」という意見の相違があるため。退院手続きを進める前に、まずAさん自身の希望を明確にし、家族との意見の調整を図る必要がある。

2.× Aさんの発言内容の記録は、施設外の人には提供しないことはアドバンス・ケア・プランニングとはいえない。この選択肢の内容は守秘義務であり、医療情報全般にわたる普遍的な原則である。

3.× 娘の思いや不安に思っていることの解決が優先されることはアドバンス・ケア・プランニングとはいえない。なぜなら、娘の思いや不安が主体となっているため。アドバンス・ケア・プランニングは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのことである。

4.〇 正しい。Aさんが大切にしていることや生きがいについて話してもらう。なぜなら、Aさんは「家に帰りたい」と希望していますが、娘さんは「もう少し病院にいてほしい」と意見が異なっているため。この状況で、Aさんの「家に帰りたい」という希望は、背景にあるAさんの理由、趣味、価値観、人生観、生きがいなどに配慮して決定していく必要がある。

 

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