第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前16~20】

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16 前立腺肥大症患者の頻尿の原因はどれか。

1.多尿
2.残尿量の増加
3.膀胱刺激症状
4.器質的膀胱容量の減少

解答

解説

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは、男性の膀胱の隣にある前立腺という臓器が大きくなっている状態で、排尿症状や蓄尿症状、排尿後症状などが現れる。原因ははっきりと断定できていないが、男性ホルモンの関与が指摘されている。また、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症なども関係があるといわれている。

1.× 多尿は、前立腺肥大症患者の頻尿の直接的な原因ではない。なぜなら、多尿は、尿の生成量が増加することを指し、糖尿病や尿崩症、または利尿作用のある薬剤の使用などが原因で起こるため。ちなみに、多尿とは、3,000 mL/日以上である。

2.〇 正しい。残尿量の増加は、前立腺肥大症患者の頻尿の原因である。なぜなら、前立腺が肥大すると、尿道が圧迫されて狭くなるため。したがって、排尿時に膀胱が完全に空にならず、尿が残ってしまう(残尿)状態となる。

3.× 膀胱刺激症状は、前立腺肥大症患者の頻尿の直接的な原因とはいいにくい。なぜなら、前立腺が肥大することが、直接的に膀胱を刺激するとは言い難いため(直接的な関連性は低い)。前立腺肥大症によって、尿道が狭くなると、膀胱は尿を押し出すために過剰に収縮しようとする。この結果、膀胱の筋肉が厚くなったり、過敏になったりして、尿が少量しか溜まっていないのに強い尿意を感じやすくなる。これは、膀胱の機能的な変化によるもので、残尿量の増加が背景にあることが多い。

4.× 器質的膀胱容量の減少は、前立腺肥大症患者の頻尿の直接的な原因ではない。なぜなら、前立腺が肥大することが、直接的に器質的に膀胱容量の減少するとは言い難いため(直接的な関連性は低い)。
・器質的膀胱容量の減少とは、膀胱自体が物理的に小さくなってしまうことを指す。膀胱がんや間質性膀胱炎などによって膀胱の壁が硬化・収縮した場合に起こる。

 

 

 

 

 

17 尿中ケトン体が陽性になる疾患はどれか。

1.痛風
2.肝硬変
3.糖尿病
4.ネフローゼ症候群

解答

解説

ケトン体の検査とは?

ケトン体の検査は、ケトーシスやケトアシドーシスの診断に用いられる。通常、尿ケトン体は陰性である。インスリン依存状態(主に1型糖尿病)の人は、空腹時血糖値の高さに比例してケトン体が増える(ケトン体:陽性)

1.× 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。尿酸は難溶性の物質で、血清尿酸値7mg/dlを超えると析出しやすくなり急性関節炎の原因になる。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生される。プリン体が多く含む食材として、豚や牛のレバー、アジやさんまの干物などがあげられる。一般的には、透析治療によって尿酸が除去されるため、透析患者の血清尿酸は透析前よりも透析後に低下することが期待される。しかし、この低下の程度は患者や透析条件によって異なり、必ずしも正常値より大きく低下するとは限らない。

2.× 肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

3.〇 正しい。糖尿病は、尿中ケトン体が陽性になる疾患である。糖尿病(特にインスリンが不足している状態の糖尿病性ケトアシドーシス)では、尿中ケトン体が陽性になる。なぜなら、糖尿病(インスリン作用が極度に不足)の場合、体は糖をエネルギー源として利用できなくなるため。代わりに脂肪を分解してエネルギーを得ようとし、脂肪の分解によってケトン体が過剰に産生され、血液中に蓄積する。これが尿中にも排泄されるため、尿中ケトン体が陽性となる。
・糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病患者において起こる代謝異常の症状の総称である。これは、インスリンの欠乏や抵抗により、身体は脂質を燃焼してエネルギーを生み出す代わりに、脂肪酸を代謝産物のケトン体に変えるようになる。これによって、血中に過剰なケトン体が溜まり、酸性バランスが崩れる。糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病が長期にわたって不適切に管理される場合によく見られ、重篤な代謝異常を引き起こす。症状には、嘔吐、下痢、渇き、呼吸困難、疲労、(特に小児で)腹痛がみられる。また、インスリン不足による脂質分解が亢進しており、ケトアシドーシスとなっていることが考えられ、意識障害を起こす可能性が高い。

4.× ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

 

 

 

 

 

18 抗癌薬の副作用(有害事象)で骨髄抑制によるものはどれか。

1.嘔吐
2.脱毛
3.血球減少
4.神経障害

解答

解説

骨髄抑制とは?

骨髄抑制とは、抗がん剤や放射線治療に伴う副作用のひとつである。骨髄機能の抑制により、末梢血中の白血球・赤血球・血小板の数が減少することで生じる。初期症状として、発熱、寒気、喉の痛み、鼻血、歯ぐきの出血、息切れ、あおあざができる、出血が止まりにくい、頭が重い、動悸などである。

1.× 嘔吐は、抗癌薬の副作用ではあるが、骨髄抑制が直接の原因ではない。抗癌薬による嘔吐は、主に消化管粘膜への直接的な刺激、あるいは脳の嘔吐中枢への影響によって引き起こされる。

2.× 脱毛は、抗癌薬の副作用ではあるが、骨髄抑制が直接の原因ではない。抗癌薬による脱毛は、薬剤が毛母細胞(毛髪の成長に関わる細胞)の増殖を阻害することで起こる。

3.〇 正しい。血球減少は、抗癌薬の副作用(有害事象)で骨髄抑制によるものである。なぜなら、抗癌薬は、がん細胞だけでなく、骨髄にある造血幹細胞など、活発に分裂する正常細胞にもダメージを与えるため。
・骨髄抑制とは、骨髄の造血機能が低下し、血液中の細胞(赤血球、白血球、血小板)の産生が減少することである。

4.× 神経障害は、抗癌薬の副作用ではあるが、骨髄抑制が直接の原因ではない。抗癌薬による神経障害(末梢神経障害など)は、薬剤が神経細胞そのものやその周囲の組織に直接ダメージを与えることによって引き起こされる。

 

 

 

 

 

19 骨盤底筋訓練が有効な尿失禁はどれか。

1.溢流性尿失禁
2.機能性尿失禁
3.切迫性尿失禁
4.腹圧性尿失禁

解答

解説

尿失禁とは?

尿失禁とは、【定義】自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことであり、大きく2種類に大別される。①器質性尿失禁:排尿機構の障害に起因する。そこから①腹圧性、②切迫性、③溢流性、④反射性などがある。②機能性尿失禁:排尿動作の遅れなどに起因する。

1.× 溢流性尿失禁とは、尿道が狭くなったり、膀胱から尿を出す力が弱くなったりすることで、尿意はあるが自分では尿を出せず、膀胱に大量の尿が溜まったときに少しずつ溢れるように出てしまうことである。前立腺肥大症の男性に多い。神経因性膀胱や重症の前立腺肥大症で、尿の排出がうまくできず、残尿が貯留し溢れることにより起こる。尿道留置カテーテルを挿入し、その後は自己導尿などの残尿を減らす治療が有効である。

2.× 機能性尿失禁とは、尿の膀胱内保持可能で正常な排尿も可能であるが、傷病者や高齢者など体動が不自由な人が尿意を感じてからトイレにたどり着くのが間に合わずに失禁してしまう状態である。対応策は、ポータブルトイレの設置などの環境調整、衣類の変更などで対応することが多い。

3.× 切迫性尿失禁とは、膀胱が自身の意思に反して収縮することで、急に排尿したくなりトイレに行くまでに我慢できずに漏れてしまう失禁である。原因として膀胱にうまく尿がためられなくなる過活動膀胱が多く、脳血管障害など排尿にかかわる神経の障害で起きることもある。過活動性膀胱に対して、電気刺激療法や磁気刺激療法が有効とされる。薬物療法も用いられる。

4.〇 正しい。腹圧性尿失禁は、骨盤底筋訓練が有効な尿失禁である。
・腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。

膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

 

 

 

 

 

20 看護師のボディメカニクスで正しいのはどれか。

1.動作時の重心は高い位置に置く。
2.立位では支持基底面を広くとる。
3.重心線は支持基底面の外側に置く。
4.足底と床の間の摩擦力を小さくする。

解答

解説

ボディメカニクス

ボディメカニクスとは、「body=身体」と「mechanics=機械学」の造語で、人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したものである。介護を行うときには、介護者の負担の軽減のためにも身につけておきたい。

①重心の高さは、低い方が安定する。
②支持基底面の広さは、広い方が安定する。
③摩擦抵抗の有無は、有った方が踏ん張りが効き安定する。
④支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。

1.× 動作時の重心は、「高い」ではなく低い位置に置く。腰を落として重心を低くすることで、腕や背中への負担が減り、安定して動作を行える。

2.〇 正しい。立位では支持基底面を広くとる。支持基底面が広いほど、重心がその範囲内に収まりやすくなり、バランスを保ちやすくなる。
・支持基底面とは、身体を支えている部分の面積のことである。

3.× 重心線は支持基底面の「外側」ではなく内側に置く。重心線が支持基底面の外側にあると、身体のバランスが崩れ、転倒する。片足立ちなどがイメージしやすい。

4.× 足底と床の間の摩擦力を「小さく」ではなく大きくする。摩擦力が小さいと、滑りやすくなり、転倒のリスクが増大する。「摩擦力が大きい=滑りにくい」とイメージする。

 

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