第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前76~80】

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76 ワーク・ライフ・バランスの取り組みで正しいのはどれか。

1.働き方の標準化を図る取り組みである。
2.女性のライフサイクルに特化した取り組みである。
3.自己啓発や社会活動にも適応される取り組みである。
4.キャリアを主体的に設計し実現していく取り組みである。

解答

解説

ワーク・ライフ・バランスとは?

平成19年(2007年)に内閣府が定めた「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」によると、ワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定められている。

1.× 働き方の「標準化」ではなく多様化(柔軟化)を図る取り組みである。多様な働き方や生活様式を尊重し、仕事と個人の生活(家庭生活、自己啓発、地域活動など)の調和を図ることを目指す。

2.× 「女性」だけでなく国民一人ひとりのライフサイクルに特化した取り組みである。性別に関わらず、すべての労働者が仕事と私生活を調和させ、豊かに生きることを目指す。

3.〇 正しい。自己啓発や社会活動にも適応される取り組みである。仕事以外の活動に時間を充てられることで、個人の充実感が高まり、結果として仕事の生産性向上にもつながると考えられている。

4.× キャリアを主体的に設計し実現していく取り組みであるのは、「キャリアデザイン」である。
・キャリアデザインとは、自己理解を深め、将来の目標や希望する働き方などを主体的に考え、計画を立てることである。

 

 

 

 

 

77 避難所生活において、身体活動が低下し続けている高齢者に最も起こりやすいのはどれか。

1.感染
2.脱水
3.せん妄
4.生活不活発病

解答

解説
1.× 感染より優先されるものが他にある。なぜなら、身体活動の低下そのものが直接の原因として考えにくいため。避難所における感染の原因は、集団生活による密接な接触、不十分な換気、手洗いの機会の不足、衛生環境の悪化などがあげられる。

2.× 脱水より優先されるものが他にある。なぜなら、身体活動の低下そのものが直接の原因として考えにくいため。避難所における脱水の原因は、水分補給が不十分になる(飲み水が不足する、トイレが不便で水分摂取を控えるなど)、暑さによる発汗量の増加、食事摂取量の減少などがあげられる。

3.× せん妄より優先されるものが他にある。なぜなら、身体活動の低下そのものが直接の原因として考えにくいため。せん妄は、意識障害を伴う急性の精神機能障害で、環境の変化、睡眠不足、脱水、栄養不足、感染症、投薬の変化、認知症の悪化など、様々な要因が複合的に絡み合って発症する。

4.〇 正しい。生活不活発病は、避難所生活において、身体活動が低下し続けている高齢者に最も起こりやすい。
・生活不活発病とは、廃用症候群とも呼ばれる。「廃用」という表現があまりよくないという理由から、生活不活発病という呼び方に変わりつつある。廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

 

78 急性の化膿性炎症で最初に血管外に遊走し炎症の中心となるのはどれか。

1.血小板
2.好酸球
3.好中球
4.赤血球
5.リンパ球

解答

解説

化膿性炎症とは?

化膿性炎症とは、滲出物に多量の好中球を含む炎症で、漿液に混ざっているものを漿液化膿性炎、線維素が混ざっているものを線維素化膿性炎という。膿性カタルや蜂窩織炎があてはまる。

1.× 血小板とは、出血の際の一次止血や血液凝固機能に関与する。血液中の細胞成分である。したがって、血小板の数が少なすぎたり、機能に異常があると出血傾向となる。

2.× 好酸球とは、主に寄生虫に対する免疫反応が役割である。ほかにも、アトピー性皮膚炎や薬剤アレルギー、気管支喘息などでも増加する。末梢血白血球の1~6%を占め、呼吸器や腸管などに存在する。

3.〇 正しい。好中球は、急性の化膿性炎症で最初に血管外に遊走し炎症の中心となる。
・好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。細菌感染による急性炎症で最初に反応する。

4.× 赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。ちなみに、ヘモグロビンのヘム鉄が、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。

5.× リンパ球とは、白血球の一種であり、核をもつ。ウイルスに対する免疫反応に関与する。リンパ球とは、脊椎動物の免疫系における白血球のサブタイプの一つである。リンパ球には①ナチュラルキラー細胞、②T細胞、③B細胞がある。B細胞は体液性免疫を担当し、B細胞から活性化して形質細胞となり抗体を産生する。

 

 

 

 

 

79 過剰に摂取すると試験紙法による尿潜血検査が偽陰性となるのはどれか。

1.葉酸
2.ビタミンA
3.ビタミンB1
4.パントテン酸
5.アスコルビン酸

解答

解説

尿潜血検査とは?

尿潜血検査とは、目には見えないごく微量の血液が尿に混じっていないかを調べる検査である。試験紙を尿に浸して反応を見ることで、腎臓や尿路(尿管、膀胱、尿道)からの出血の有無をスクリーニングする。腎炎、尿路結石、膀胱炎、がんなど、様々な病気の早期発見の手がかりとなる。

試験紙法による尿潜血検査が偽陰性となる主な原因として、アスコルビン酸(ビタミンC)の過剰摂取が挙げられる。これは、ビタミンCは還元作用を持つためである。

1.× 葉酸とは、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンである。

2.× ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、目や皮膚の粘膜を健康に保ち、抵抗力を強める役割があり、暗いところでの視力を保つ働きがある。

3.× ビタミンB1とは、チアミンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、解糖系やクエン酸回路のエネルギー代謝の一部で補酵素として関わる。

4.× パントテン酸(ビタミンB5)は、エネルギー代謝や副腎皮質ホルモン生成などに関わる水溶性ビタミンである。

5.〇 正しい。アスコルビン酸は、過剰に摂取すると試験紙法による尿潜血検査が偽陰性となる。
・アスコルビン酸(ビタミンC)は、強力な還元剤であり、このペルオキシダーゼ様活性による酸化反応を阻害してしまうため、尿中に多量に存在すると、本当は潜血があるにもかかわらず発色せず、偽陰性(本来陽性であるべきなのに陰性となる)の結果を示すことがある。

覚えておきたい用語

・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。

・検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
・検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。

・疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合を「偽陽性率」という。
・疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合を「偽陰性率」という。

 

 

 

 

 

80 Ⅱ型アレルギーで起こる疾患はどれか。

1.糸球体腎炎
2.関節リウマチ
3.アトピー性皮膚炎
4.アレルギー性結膜炎
5.特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉

解答

解説

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

1.× 糸球体腎炎は、Ⅲ型アレルギーである。
・糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

2.× 関節リウマチは、Ⅳ型アレルギーである。
・関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

3.× アトピー性皮膚炎は、主にⅠ型アレルギー(加えてⅣ型アレルギーも関与)である。
・アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気のことである。子どもの頃に発症することが多く、一般的には成長とともに症状は改善していきますが、一部の患者は成人になってからもかゆみや湿疹などの症状が続く。原因は不明、アレルギーを起こしやすい体質や遺伝などが発症に関与していると考えられている。

4.× アレルギー性結膜炎は、Ⅰ型アレルギーである。
・アレルギー性結膜炎とは、アレルギー反応によって結膜に炎症が起こる病気で、目の充血、かゆみ、腫れ、涙目、目やになどの症状が現れる。

5.〇 正しい。特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉は、Ⅱ型アレルギーで起こる疾患である。
・特発性血小板減少性紫斑病とは、血液中の血小板が減少することにより出血しやすくなる病気である。原因は不明であるが、体の中の免疫反応が過剰になり、自分の血小板を攻撃してしまうために、血小板が減少するといわれている。

 

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