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次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(56歳、女性、主婦)は、食後に冷汗を伴う腹痛があり外来を受診した。腹部超音波検査の結果、胆石症と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術の目的で入院した。
看護師は手術オリエンテーションで、術後の入院期間は2日と説明した。Aさんは、同じ手術を受けた妹が合併症で3週間以上食事もできなかったので、自分も同じ合併症を発症するかもしれないと心配そうに話した。
96 Aさんの術後の経過は良好で、退院した。その後の外来受診で「下痢をすることが多いです」という訴えがあった。
下痢を予防するために控えるもので正しいのはどれか。
1.塩分
2.脂質
3.糖質
4.蛋白質
解答2
解説
・Aさん(56歳、女性、主婦、胆石症)
・腹腔鏡下胆囊摘出術(全身麻酔下で気腹法)。
・術後の経過:良好。
・外来受診時「下痢をすることが多いです」という訴え。
→腹腔鏡下胆嚢摘出術後、つまり、胆嚢がなくなることで胆汁が貯められなくなり、常に胆汁が少量ずつ十二指腸へ流れ込むようになる。したがって、特に、脂肪分の多い食事を摂ると、消化しきれない胆汁酸が大腸を刺激して下痢を引き起こしやすくなる。多くの場合、術後1〜2ヶ月で症状は落ち着くが、個人差がある。
→胆嚢とは、胆汁を貯蔵し、必要に応じて腸に放出する役割を持つ臓器である。肝臓の右葉の下に位置し、長さは10cm、幅は4cm程度で、50〜60mlの胆汁を貯えることができる。
→胆汁とは、肝臓で合成されるアルカリ性の物質で、胆嚢で濃縮されたうえ、貯蔵される。胆汁中には消化酵素は存在しない。しかし、胆汁中に含まれる胆汁酸は乳化作用とミセル形成作用を有するため、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。胆汁はビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質からなり、消化酵素は含まれない。
1.× 塩分より優先されるものが他にある。なぜなら、腹腔鏡下胆嚢摘出術後との関連性は低いため。
・塩分は、高血圧や腎臓病の管理において摂取制限が推奨されることがある、
2.〇 正しい。脂質は、下痢を予防するために控える。なぜなら、胆嚢を摘出すると、胆汁の貯蔵機能が失われ、継続的に少量ずつ胆汁が十二指腸に流れ込むようになるため。したがって、一度に大量の脂質を摂取すると、それを消化するための胆汁が不足し、未消化の脂質が大腸に流れ込み、浸透圧性の下痢を引き起こすことがある。
3.× 糖質より優先されるものが他にある。なぜなら、腹腔鏡下胆嚢摘出術後との関連性は低いため。
・糖質は、体の主要なエネルギー源であり、過剰な摂取は血糖値の上昇や体重増加につながる可能性がある。重度の糖尿病(血糖コントロール不良)の場合、糖質制限をする医者もいる。
4.× 蛋白質より優先されるものが他にある。なぜなら、腹腔鏡下胆嚢摘出術後との関連性は低いため。
・蛋白質は、筋肉や臓器の構成成分であり、体の機能を維持するために不可欠な栄養素である。腎臓の機能が低下している場合には制限が必要となることもある。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(50歳、女性、会社員)は、職場で激しい頭痛を訴えて倒れ、意識を失って、救急搬送された。救命救急センター到着時のバイタルサインは、体温36.7℃、呼吸数20/分、脈拍88/分、血圧168/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)であった。閉眼していたので、大声で話しかけると開眼したが、すぐに閉眼して眠り込んでしまう。
97 Aさんの意識レベルは、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉で評価するとどれか。
1.Ⅱ-10
2.Ⅱ-20
3.Ⅲ-100
4.Ⅲ-200
解答2
解説
・Aさん(50歳、女性、会社員)
・職場で激しい頭痛を訴えて倒れ、意識を失って、救急搬送された。
・救命救急センター到着時のバイタルサイン:体温36.7℃、呼吸数20/分、脈拍88/分、血圧168/88mmHg、SpO2:98%。
・閉眼していたので、大声で話しかけると開眼したが、すぐに閉眼して眠り込んでしまう。
→JCSをしっかりおさえておこう。
(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)
1.× Ⅱ-10は、「普通の呼びかけで容易に開眼する。合目的的な運動をするし、言葉も出るが間違いが多い」状態である。
2.〇 正しい。Ⅱ-20がAさんの意識レベルに該当する。
本症例は、「閉眼していたので、大声で話しかけると開眼したが、すぐに閉眼して眠り込んでしまう」状態である。。
・Ⅱ-20は、「大きな声または体を揺さぶることにより開眼する」状態である。
3.× Ⅲ-100は、「痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする」状態である。
4.× Ⅲ-200は、「痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる」状態である。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(50歳、女性、会社員)は、職場で激しい頭痛を訴えて倒れ、意識を失って、救急搬送された。救命救急センター到着時のバイタルサインは、体温36.7℃、呼吸数20/分、脈拍88/分、血圧168/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)であった。閉眼していたので、大声で話しかけると開眼したが、すぐに閉眼して眠り込んでしまう。
98 Aさんは、CT検査の結果、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血と診断され、クリッピング術を受けてICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数22/分、脈拍78/分、血圧126/60mmHg、フェイスマスクによる酸素投与下(5L/分)で経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%であった。3時間後、Aさんは開眼して「頭が痛い」と訴えた。バイタルサインに変化はなく、脳槽ドレーンからは淡血性の排液がみられている。
このときの看護師の判断で正しいのはどれか。
1.端座位にする。
2.枕を高くする。
3.鎮痛薬の適応である。
4.ドレーンをクランプする。
解答3
解説
・Aさん(50歳、女性、会社員、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血)
・職場で激しい頭痛を訴えて倒れ、意識を失って、救急搬送された。
・ICU入室:クリッピング術後。
・バイタルサイン:体温36.8℃、呼吸数22/分、脈拍78/分、血圧126/60mmHg、SpO2:98%(酸素投与下5L/分)。
・3時間後、Aさんは開眼して「頭が痛い」と訴えた。
・バイタルサインに変化はなく、脳槽ドレーンからは淡血性の排液。
→本症例の処置を正しく選択できるようにしよう。ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。
1~2.× 端座位にする/枕を高くする必要はない。なぜなら、くも膜下出血術後は、頭蓋内圧の管理が必要であるため。体位や頭位の位置変換は、血圧変動を引き起こし、再出血のリスクを高める。脳槽ドレーンが留置されている状況では、主治医との指示を確認しながら、慎重に判断する必要がある。
3.〇 正しい。鎮痛薬の適応である。なぜなら、本症例は、バイタルサインが安定しており、術後3時間で「頭が痛い」と痛みを訴えているため。術後の痛みは、苦痛を増大させ、交感神経を刺激して血圧上昇や心拍数増加を招く可能性があり、これはくも膜下出血術後の患者にとっては再出血のリスクにもつながりかねない。したがって、痛みを適切に管理することが重要である。
4.× ドレーンをクランプする必要はない。なぜなら、クランプすることは、頭蓋内圧を急激に上昇させる可能性があるため。クランプなどの処置を行う場合は、必ず主治医の指示のもと行う必要がある。ちなみに、脳槽ドレーンは、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後の脳室拡大や水頭症の予防・治療、あるいは脳脊髄液の性状観察のために使用されている。
・クランプとは、医療では「遮断する」といった意味で使用される。したがって、クランプした場合、ドレナージをストップさせることと同じであるためドレナージ効果が得られなくなる。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(50歳、女性、会社員)は、職場で激しい頭痛を訴えて倒れ、意識を失って、救急搬送された。救命救急センター到着時のバイタルサインは、体温36.7℃、呼吸数20/分、脈拍88/分、血圧168/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)であった。閉眼していたので、大声で話しかけると開眼したが、すぐに閉眼して眠り込んでしまう。
99 Aさんの回復は順調で、後遺症なく退院した。退院1か月後の外来で、Aさんに生活状況を聞くと、会話に対する反応は鈍く「この間、尿を漏らしてしまいました」と話した。家族は「最近物忘れが激しく、歩くのも遅くなりました」と話した。看護師がAさんに書類を渡すと、スムーズに受け取り、きれいな文字で名前を書いた。家族は「入院前と変わらない字で書けています」と言った。
Aさんに起こっている可能性が高いのはどれか。
1.脳血管攣縮
2.正常圧水頭症
3.脳動脈瘤の破裂
4.Parkinson〈パーキンソン〉病
解答2
解説
・Aさん(50歳、女性、会社員、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血)
・ICU入室:クリッピング術後。
・回復順調、後遺症なく退院。
・退院1か月後:会話に対する反応は鈍い。
・Aさん「この間、尿を漏らしてしまいました」と(尿失禁)。
・家族「最近物忘れが激しく、歩くのも遅くなりました」と(認知面の低下、歩行障害)。
・スムーズに受け取り、きれいな文字で名前を書く(著明な麻痺無し)。
・家族「入院前と変わらない字で書けています」と。
→上記症状から、最も可能性が高いものを選択しよう。ほかの選択肢も覚えておく。ちなみに、くも膜下出血の合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。
1.× 脳血管攣縮より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例と好発時期がずれていることと、著明な麻痺がないことがあげられるため。
脳血管攣縮は、くも膜下出血発症後、72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く発症するため。脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。脳の血管が何らかの刺激により異常に収縮し、それにより脳への血流が低下し、脳に悪い影響を及ぼすという一連の事象のことである。
2.〇 正しい。正常圧水頭症が、Aさんに起こっている可能性が高い。
・正常圧水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。
3.× 脳動脈瘤の破裂より考えられるものが他にある。なぜなら、再破裂であれば、もっと急激かつ重篤な症状(意識消失、脳ヘルニア症状など)が出現するため。
・脳動脈瘤とは、脳内部の中~小動脈(径1~6mm)に発生する瘤状あるいは紡垂状のふくれた部分のことである。原因として、高血圧や動脈硬化、家族性などが示唆されているが、要因の不明なものが大半を占めている。この拡張部が破裂すると、くも膜下出血が発生する。
4.× Parkinson〈パーキンソン〉病より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の物忘れや尿失禁といった症状が直接関連しないため。
・パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aさん(87歳、女性)は1人で暮らしている。難聴のため補聴器を使用している。自宅で転倒して痛みで起き上がれなくなり、救急搬送され入院した。搬送先の病院で右大腿骨頸部骨折と診断され、全身麻酔下で人工骨頭置換術を受けた。術後は前腕部に点滴静脈内注射と右大腿の創部に吸引式ドレーンが一本挿入されている。
手術直後の検査所見:赤血球410万/μL、白血球7800/μL、Hb12.0g/dL、総蛋白6.5g/dL、アルブミン4.0g/dL、尿素窒素20mg/dL、Na145mEq/L、K3.8mEq/L。
術後のドレーン出血量は少量である。創部痛に対して非ステロイド性抗炎症薬の坐薬と内服が処方され、手術当日の21時に坐薬を使用した。
100 術後1日。朝6時のAさんのバイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、血圧120/82mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)であった。膀胱留置カテーテルが挿入されていて夜間の尿の流出は良好であった。腸蠕動音が確認できたため朝食が開始された。食事時にAさんが顔をしかめていたため、夜勤の看護師が鎮痛薬の内服を勧めたがAさんは「痛みはそれほど強くない」と言った。朝食後に点滴静脈内注射と吸引式ドレーンが抜去された。
午前9時の看護師の観察項目で優先度が高いのはどれか。
1.意識レベル
2.酸素飽和度
3.創部痛
4.血圧
5.尿量
解答3
解説
・Aさん(87歳、女性、1人暮らし、補聴器使用)
・救急搬送:自宅で転倒(右大腿骨頸部骨折)。
・全身麻酔下で人工骨頭置換術を受けた。
・術後:前腕部に点滴静脈内注射、右大腿の創部に吸引式ドレーンが一本挿入。
・術直後所見:赤血球410万/μL、白血球7800/μL、Hb12.0g/dL、総蛋白6.5g/dL、アルブミン4.0g/dL、尿素窒素20mg/dL、Na145mEq/L、K3.8mEq/L。
・術後のドレーン出血量:少量。
・創部痛に対して非ステロイド性抗炎症薬の坐薬と内服が処方。
・手術当日の21時:坐薬を使用。
・術後1日朝6時バイタルサイン:体温36.5℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、血圧120/82mmHg、SpO2:97%。
・膀胱留置カテーテル:夜間の尿の流出良好。
・腸蠕動音が確認:朝食開始。
・食事時:顔をしかめていたため、夜勤の看護師が鎮痛薬の内服を勧めた。
・Aさんは「痛みはそれほど強くない」と。
・朝食後:点滴静脈内注射と吸引式ドレーンが抜去された。
→長文であるが、優先度が高いものを正確に読み取ろう。
1.× 意識レベルより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は術後1日であり、すでに朝食も摂取、会話も良好であるため。したがって、全身麻酔からの覚醒は完了していると推測できる。
2.× 酸素飽和度より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、術後1日朝6時でSpO2:97%であるため。呼吸数も18/分と安定している。
3.〇 正しい。創部痛は、午前9時の看護師の観察項目で優先度が高い。、本症例は、術後1日の食事時に顔をしかめていたため。本症例は「痛みはそれほど強くない」といっているものの、高齢者が我慢しやすい傾向や、鎮痛薬使用への抵抗感を示している可能性がある。術後1日目の整形外科手術において、創部痛は、感染だけでなく、患者のADL(日常生活動作)回復やQOLに大きく影響するため、引き続き観察項目での優先度は高いといえる。
4.× 血圧より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、術後1日朝6時で血圧120/82mmHgであるため。また、術後のドレーン出血量も少量である。定期的な測定は必要であるが、正常範囲内であるため、現時点で緊急性が高いとはいえない。
5.× 尿量より優先されるものが他にある。なぜなら、膀胱留置カテーテルにおいて、夜間の尿の流出良好であるため。ただし、膀胱留置カテーテルが抜去された際は、尿量の観察の優先度が上がることにも配慮する。