第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午後111~115】

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次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来した。その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断され、入院後に分娩した。
 Aさんの分娩経過を以下に示す。
 2時00分:陣痛周期10分
 5時30分:入院
 15時00分:分娩室入室
 15時30分:子宮口全開大
 15時40分:自然破水
 16時20分:児娩出
 16時30分:胎盤娩出
 18時30分:帰室

111 児は出生2時間後、寝衣を着用しコットに収容された。児のバイタルサインは、体温腋窩温(36.4℃)、呼吸数40/分、心拍数120/分であった。また末梢の冷感はあるが、チアノーゼは認めなかった。排尿、排便はない。児の頰を軽く突くと刺激の方向を向き、口を開ける動作がみられる。また、腋窩と鼠径部に胎脂が付着している。
 このときに必要なケアはどれか。

1.掛け物を温めたものに交換する。
2.口腔内吸引をする。
3.肛門刺激をする。
4.沐浴をする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、初産婦、妊娠39週3日で陣痛発来)。
・順調な分娩進行、分娩所要時間:14時間30分。
・児は出生2時間後:寝衣を着用しコットに収容された。
・児のバイタルサイン:体温腋窩温(36.4℃)呼吸数40/分、心拍数120/分。
末梢の冷感はあるが、チアノーゼは認めなかった
・排尿、排便はない。
・児の頰を軽く突くと刺激の方向を向き、口を開ける動作がみられる。
・腋窩と鼠径部に胎脂が付着している。
→上記評価をしっかり把握しよう。

1.〇 正しい。掛け物を温めたものに交換する。なぜなら、児の体温(腋窩温36.4℃)がやや低めの状態であるため。「末梢の冷感はあるが、チアノーゼは認めなかった」という所見からも読み取れる。新生児は体温調節機能が未熟であるため、保温を強化し、体温の維持・上昇を図る。
・新生児の正常体温範囲は、通常36.5℃〜37.5℃である。

2.× 口腔内吸引をする優先度は低い。なぜなら、児は「呼吸数40/分」と正常範囲内(新生児の正常呼吸数は30〜60回/分)であるため。また、気道分泌物の記載もないことから優先度は低いといえる。また、「頰を軽く突くと刺激の方向を向き、口を開ける動作がみられる」ことから、哺乳反射も良好である。
・口腔内吸引とは、口腔内にたまった唾液や、うまく嚥下できずに口腔内に残った食べ物や水分を、吸引装置と吸引カテーテルを用いて体外に吸い出すことである。

3.× 肛門刺激をする優先度は低い。なぜなら、本児は出生2時間であるため。肛門刺激をするほど、切迫した状況ではない。ちなみに、通常、出生後24時間以内に初回排尿があり、48時間以内に初回排便がある。それまでは経過観察が望ましい。

4.× 沐浴をする優先度は低い。なぜなら、本児のように体温が低めな状態で沐浴を行うと、体温がさらに低下する可能性があるため。
・沐浴とは、からだを水で洗うことである(※読み:もくよく)。出産直後は、温かい乾いたタオルで全身を拭き保温することが多い。沫浴は、生後4~5日頃までせず、血液や羊水など汚れた部位のみ拭き取り、胎脂を残しておくドライテクニックを採用している施設が多い。
・胎脂とは、不潔なものではなく、児の肌を細菌や乾燥などから守る効果があり、生まれてからの数日間は沐浴をせず、タオルでふくだけのドライケアなどもある。ドライテクニックとは、産まれた直後に、赤ちゃんの皮膚についた血液などの汚れのみを拭き取り、胎脂はそのまま残しておく保清方法である。胎脂には抗菌作用があるとされていて、細菌から守るだけでなく、保温・保湿効果を有している。さらに、胎脂のにおいが母児の絆を深めるのに役立つとされている。

 

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。

112 Aさんの現在の状態はどれか。

1.急性中毒の状態である。
2.拘禁反応が出現している。
3.有害な使用〈乱用〉である。
4.フラッシュバックが出現している。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、女性、大学生、1人暮らし)。
・友人関係のトラブルでうつ状態(3か月前から通院)。
・頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用。
徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用する。
・最近:指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。
抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。
→上記の評価を正確に読み取れるようにしよう。

1.× 急性中毒の状態「とはいえない」。なぜなら、本症例は、抗不安薬を大量に使用した「翌日は大学を休む」とのことであるため。急性中毒による意識障害や呼吸抑制などの緊急性の高い生命の危険を示唆する記載ではない。
・急性中毒とは、薬を大量に服用することで、服用直後から数時間以内に重篤な症状があらわれる状態をいう。抗不安薬では、強い眠気、ふらつき、錯乱、呼吸抑制などが見られ、重症では昏睡に至ることもある。アルコールとの併用は症状を悪化させるため非常に危険である。

2.× 拘禁反応は、出現「していない」。なぜなら、本症例は、「1人暮らし」の大学生であり、自由を制限される状況ではないため。
・拘禁反応とは、身体の自由や行動が制限される状況(例えば、刑務所や精神科の閉鎖病棟など)に置かれた結果として生じる精神症状(不安、興奮、妄想など)を指す。

3.〇 正しい。有害な使用〈乱用〉である。なぜなら、本症例は、抗不安薬を本来の目的(不安軽減のための頓服)とは異なる目的(「酩酊や陶酔感を得るため」)で服用しているため。薬物に対する耐性の形成と、それに伴う増量傾向を示唆しており、薬物使用が原因で日常生活(学業)に問題が生じている。
・薬物乱用とは、薬物や薬品を本来の医療目的から外れて使用したり、医療目的のない薬物を不正に使用したりすることを指す。薬物の使用によって身体的、精神的、社会的に有害な結果が生じているにもかかわらず、その使用を継続している状態である。

4.× フラッシュバックは、出現「していない」。なぜなら、本症例の設問文から、過去の体験の再現に関する情報はないため。
・フラッシュバックとは、(心的) 外傷的な出来事に関する苦痛な記憶が侵入的に繰り返し想起される現象である。心的外傷後ストレス障害(外傷後ストレス障害:PTSD)で認められる。

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。

113 ある日の夜、Aさんと突然連絡がつかなくなったことを心配した母親が、Aさんのアパートを訪ねると、意識を失っているAさんを発見した。すぐに救急車を呼び、Aさんは救命救急センターへ搬送された。翌朝、同じ病院の精神科病棟に転棟し、器質的検査および生理的検査では異常が認められなかった。救急隊からの情報によると、アパートには抗不安薬を大量に服用した痕跡があった。
 入院後48時間から72時間にかけてAさんに出現する可能性が高い症状はどれか。

1.幻覚
2.感情鈍麻
3.思考途絶
4.妄想気分

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、女性、大学生、1人暮らし)。
・友人関係のトラブルでうつ状態(3か月前から通院)。
・抗不安薬の乱用あり。
・ある日、母親が、意識を失っているAさんを発見。
・救命救急センターへ搬送された。
・翌朝:器質的検査および生理的検査では異常なし
・アパートには抗不安薬を大量に服用した痕跡があった。
→上記の評価を正確に読み取れるようにしよう。

1.〇 正しい。幻覚は、入院後48時間から72時間にかけてAさんに出現する可能性が高い症状である。なぜなら、本症例は、離脱症状がみられると予想されるため。
・離脱症状とは、飲酒(薬の大量服用)の中止後に生じ、精神的、肉体的な症状を呈する。最終飲酒から数時間後から出現し、20時間後にピークを迎える早期離脱症候群(振戦、自律神経症状、発汗、悪心・嘔吐、けいれん、一過性の幻覚)と最終飲酒後72時間頃から生じ数日間持続する後期離脱症候群(早期離脱症状に加え意識変容を呈したもの、振戦せん妄といわれる。小動物幻視や日頃やり慣れた動作、例えば運転動作を繰り返す、夜間に目立つ)に分けられる。

2.× 感情鈍麻とは、感情を引き起こす刺激に対する感受性の低下により、感情やその表出が乏しくなることである。統合失調症の慢性期の症状である。陰性症状で、感情の平板化や意欲の減退、思考の低下など。

3.× 思考途絶とは、思考の流れが突然中断してしまうことである。主に統合失調症にみられる。

4.× 妄想気分とは、周りがいつもと違い、何か不気味で大変なことが起こりそうだという不安に襲われる状態のことである。主に統合失調症にみられる。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。

114 入院後5日、物質使用障害〈依存症〉の診断を受け、治療によって状態が安定したAさんは退院の準備をすることになった。Aさんは1人暮らしを続けながら復学を希望している。
 Aさんに利用を勧める社会資源はどれか。

1.行動援護
2.同行援護
3.セルフヘルプグループ
4.共同生活援助〈グループホーム〉

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、女性、大学生、1人暮らし)。
・友人関係のトラブルでうつ状態(3か月前から通院)。
・抗不安薬の乱用あり。
・入院後5日:物質使用障害〈依存症〉と診断。
治療によって状態が安定した
・退院の準備をすることになった。
・Aさんは1人暮らしを続けながら復学を希望。
→上記の評価を正確に読み取れるようにしよう。

1.× 行動援護より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の希望は、「1人暮らしを続けながらの復学」であるため。ニーズとサービスの内容は合致していない。
・行動援護とは、知的障害または精神障害により行動上かなりの介助を要し、常時介護が必要なものに対して、外出時に同行し援護するサービスである。例えば、外出時の食事や排泄などである。対象は、障害支援区分が区分3以上である。

2.× 同行援護より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は視覚障害の記載がないため。
・同行援護とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等が外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報の提供や、移動の援護等、外出時に必要な援助を行うものである。

3.〇 正しい。セルフヘルプグループは、Aさんに利用を勧める社会資源である。なぜなら、本症例は、一人暮らしで友人関係のトラブルでうつ状態になった経緯があり、社会的なサポートが不足している可能性もあるため。セルフヘルプグループは心の支えとなり、社会復帰への大きな助けとなる。
・自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていくものである。同じ悩みをかかえる人々がコミュニティをつくって交流するもので、例えば、青年期のひきこもり状態にある者の支援として、同じような健康課題への対処能力を高めるために活動するグループをつくることが有効である。

4.× 共同生活援助〈グループホーム〉より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の希望は、「1人暮らしを続けながらの復学」であるため。ニーズとサービスの内容は合致していない。
・グループホームとは、共同生活援助ともいい、『障害者総合支援法』の訓練等給付のひとつである。ひとりで生活できない障害者が共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受けるものである。主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。

 

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。友人の死去後、食事量が減り、1か月前から気分の落ち込みが強くなった。夫が積極的に散歩に誘っても、Aさんは「体がだるい」「何をしても意味がない」と話し、寝つきも悪くなり、日中ほとんどの時間を臥床して過ごすようになった。心配した夫に連れられて精神科外来を受診したところ、うつ病と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉と不眠時の睡眠薬が処方された。夫から精神科外来の看護師に「日常生活で気を付けることはありますか」と質問があった。

115 Aさんと夫に看護師が説明する内容で適切なのはどれか。

1.「毎朝運動をする習慣を作りましょう」
2.「食欲がないときは食事の回数を減らしましょう」
3.「薬の飲み始めは吐き気や下痢に注意してください」
4.「眠れないときは睡眠薬を早朝に飲んで構いません」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、女性、夫と2人暮らし)。
・友人の死去後:食事量が減り、1か月前から気分の落ち込みが強くなった。
・夫が積極的に散歩に誘っても、Aさんは「体がだるい」「何をしても意味がない」と話し、寝つきも悪くなり、日中ほとんどの時間を臥床して過ごすようになった。
うつ病と診断:選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉と不眠時の睡眠薬が処方。
・夫から「日常生活で気を付けることはありますか」と質問があった。
→本症例は、うつ病の急性期と考えられる。ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。

1.× 「毎朝運動をする習慣を作りましょう」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、うつ病の急性期と考えられるため。うつ病の症状が強い時期は、精神的負担をかけず、まずは休息が望ましい。

2.× 「食欲がないときは食事の回数を減らしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、現在のAさんは、すでに食欲不振が認められ、このような状況で「食事の回数を減らす」ことは、必要な栄養やエネルギーの摂取量をさらに減少させ、全身状態の悪化を招く可能性があるため。食欲がない場合でも、少量でも栄養を摂れるように、1回の量を少なくして回数を増やしたり、消化の良いものやAさんが好むものを工夫して提供したりすることが望ましい。

3.〇 正しい。「薬の飲み始めは吐き気や下痢に注意してください」と説明する。なぜなら、処方された「選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉」は、うつ病治療の第一選択薬の一つであるが、内服開始初期に胃腸系の副作用(吐き気、下痢、便秘など)が出現しやすいため。

4.× 「眠れないときは睡眠薬を早朝に飲んで構いません」と伝える必要はない。なぜなら、睡眠薬は、早朝に服用すると、日中の眠気やふらつき、転倒のリスクを高めるため。また、生活リズムをさらに乱し、夜間の不眠を悪化させる可能性もある。したがって、睡眠薬の服用は、就寝前、あるいは医師の指示された時間・用量を厳守する。

 

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