第94回(H23) 助産師国家試験 解説【午前51~55】

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次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 29歳の初産婦。妊娠24週から切迫早産の管理目的で入院し、子宮収縮抑制薬の持続点滴をしていた。未破水で、その他の異常を認めない。

51 午前10時、帝王切開にて児娩出となった。術中出血量は羊水含め800mlであった。術後4時間。褥婦は、体温37.5°C、脈拍82/分、血圧122/78mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%、尿量65ml/時である。腸蠕動音を聴取しない。血性悪露15g/時で、持続出血はない。創部からの出血や滲出液はみられない。
 術後管理で注意すべきデータはどれか。

1.SpO2:95%
2.体温:37.5℃
3.尿量:65ml/時
4.血性悪露:15g/時
5.腸蠕動音が聴取されないこと

解答1

解説

本症例のポイント

・29歳の初産婦(妊娠24週)。
・妊娠24週:切迫早産の管理目的で入院、子宮収縮抑制薬の持続点滴中。
・午前10時:帝王切開にて児娩出となった。
→帝王切開後は、麻酔・鎮痛薬による呼吸器合併症(呼吸抑制、無気肺、肺血栓塞栓症など)に注意する。SpO₂ 95%は著明な低酸素血症ではないが、術後患者としては低下傾向がないか注意して観察すべき値である。

1.〇 正しい。SpO2:95%は、術後管理で注意すべきデータである。なぜなら、帝王切開術後は、麻酔・鎮痛薬による呼吸器合併症(呼吸抑制、無気肺、肺血栓塞栓症など)によって酸素化が低下する可能性があるため。また、妊娠・産褥期はもともと血液が凝固しやすい状態であり、帝王切開は静脈血栓塞栓症のリスクをさらに高める。血栓が肺動脈に飛ぶ肺血栓塞栓症では、SpO₂低下、頻呼吸、胸痛、呼吸困難などがみられるため注意が必要である。

2.× 体温:37.5℃より優先されるものが他にある。なぜなら、術後早期には、手術侵襲に伴う炎症反応などによって軽度の体温上昇を認めることがあるため。ただちに感染症や生命に危険を及ぼすとは判断できない。ただし、産褥2~3日になって、①39℃、②悪臭性悪露、③子宮圧痛があれば、産褥子宮内膜炎などを疑う。

3.× 尿量:65ml/時は、正常範囲である。成人の術後尿量は、一般に0.5mL/kg/時以上が確保されていれば、腎血流が保たれている目安になる。術後に注意すべきなのは、むしろ乏尿(400 mL/日以下)である。乏尿の場合、①出血による循環血液量減少、②脱水、③腎血流低下、④尿道カテーテル閉塞などが疑われる。

4.× 血性悪露:15g/時では、異常な大量出血を示す所見とはいえない。なぜなら、作中に「血性悪露15g/時で、持続出血はない」と記載されているため。また、本症例のバイタルサインも安定しており、産後出血を示唆する状況ではない。

5.× 腸蠕動音が聴取されないことは、術後4時間において必ずしも異常とはいえない。なぜなら、腹部手術や麻酔の直後には、一時的に消化管運動が低下して腸蠕動音が聴取されないことがあるため。

 

 

 

 

 

次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 29歳の初産婦。妊娠24週から切迫早産の管理目的で入院し、子宮収縮抑制薬の持続点滴をしていた。未破水で、その他の異常を認めない。

52 術後24時間、歩行が許可となり、搾乳について指導することとなった。
 褥婦への説明で適切なのはどれか。

1.搾乳器は使用できない。
2.児との面会は乳汁分泌に影響しない。
3.母乳にはビタミンKが豊富に含まれている。
4.母乳は新生児壊死性腸炎の予防に有効である。
5.1日1回の乳頭刺激によってプロラクチン分泌を維持できる。

解答4

解説

本症例のポイント

・29歳の初産婦(妊娠24週)。
・午前10時:帝王切開にて児娩出(推定児体重1200g)。
・術後24時間:歩行が許可となり、搾乳について指導する。
→早産児、とくに極低出生体重児では、壊死性腸炎の発症リスクを低下させる母乳が非常に重要である。一方、母乳中のビタミンKは少なく、母児分離時の乳汁分泌維持には1日1回ではなく頻回の搾乳が必要である。

1.× 搾乳器は使用「できない」のではなく「できる」。むしろ早産によって母児分離している場合、乳汁分泌を確立・維持するために重要である。特に、産後早期には、乳房への刺激と乳汁排出を繰り返すことが、その後の母乳産生量を左右する。

2.× 児との面会は乳汁分泌に「影響しない」ではなく「影響する」。なぜなら、児を見たり触れたりする刺激や心理的な安心感は、オキシトシンを介した射乳反射などに影響するため。母乳分泌には主に、①プロラクチン:乳汁を「作る」、②オキシトシン:乳汁を「出す」=射乳反射が関与する。

3.× 母乳にはビタミンKが、「豊富に含まれている」ではなく少量である。なぜなら、母乳にビタミンKが少ないのは、ビタミンKが母体内で速やかに代謝され、血液中の濃度が低いことなどが関係するため。ただし、母乳中に少ない詳しい仕組みは完全には解明されていない。新生児は体内のビタミンKの蓄えが少なく、腸内細菌による産生も不十分なため、出血予防としてビタミンK製剤の投与が必要である。

4.〇 正しい。母乳は新生児壊死性腸炎の予防に有効である。なぜなら、母乳には、免疫物質である分泌型IgAやラクトフェリン、善玉菌の増殖を助ける母乳オリゴ糖などが含まれているため。これらは有害な細菌の増殖を抑え、腸内環境を整え、腸の粘膜を保護する働きがある。そのため、腸の機能が未熟な早産児などに起こりやすい新生児壊死性腸炎の発症リスクを低下させるのである。
・壊死性腸炎とは、腸への血液の流れの障害に、細菌感染などの因子が加わることにより腸が壊死してしまう病気である。 ほとんどは生まれてから30日未満(特に1週間以内)の赤ちゃんにみられ、時に生後30日目以降にみられることもある。早産児で生まれたか、重篤な病気がある新生児でみられる場合がほとんどである。症状として、腹部が膨れ、便に血液が混じり、新生児は緑色や黄色、さび色をした液体を吐き、非常に具合が悪くなりぐったりする。原因は完全には分かっていないが、血液中の酸素レベルの低下や腸への血流量の低下に伴い、腸が成熟していないことが部分的に関係している。低出生体重児、早産児の場合、経口摂取に必要な機能が成熟しておらず、消化管機能の未熟性があるため起こりやすい。

5.× 1日「1回」ではなく8~10回の乳頭刺激によってプロラクチン分泌を維持できる。なぜなら、プロラクチン分泌と乳汁産生を維持するためには、産後早期から乳頭刺激と乳汁排出を頻回に繰り返す必要があるため。しかし、本症例では28週の早産児であり、児が十分に直接吸啜できない可能性がある。そのため、搾乳を児の授乳回数に近い頻度で行うことが重要である。

 

 

 

 

 

次の文を読み53~55の問いに答えよ。
 病院で10年間の勤務経験をもつ助産師。有床助産所開設に向けて準備をしている。職員として助産師1名、栄養士1名、事務担当者1名を確保した。車で10分の距離にある産婦人科病院の院長に嘱託医を依頼した。

53 助産所の管理者として管理計画を立てることにした。
 管理内容で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.職員の定期健康診断は各自の判断とする。
2.胎盤の処理は自治体の条例に則して行う。
3.嘱託医の診察を1回受けた者を分娩対象者とする。
4.臨時応急手当てに使用する医薬品の包括指示を受ける。
5.助産所内で使用した紙オムツは一般廃棄物として処理する。

解答2・4

解説

本症例のポイント

・助産師(病院で10年間の勤務経験)。
・有床助産所開設に向けて準備。
・職員:助産師1名、栄養士1名、事務担当者1名を確保。
・車で10分の距離にある産婦人科病院の院長に嘱託医を依頼した。
・助産所の管理者として管理計画を立てることにした。
→助産所管理では、①職員の健康管理、②医療廃棄物・胎盤の適正処理、③嘱託医との継続的連携、④緊急時に使用する医薬品について事前に医師の指示を得ておくことが重要である。

1.× 職員の定期健康診断は各自の判断「だけに任せてはならない」。なぜなら、事業者には常時使用する労働者に対して定期健康診断を実施する義務があるため。労働安全衛生法第66条では、「事業者は労働者に医師による健康診断を行わなければならない」とされている。

2.〇 正しい。胎盤の処理は自治体の条例に則して行う。なぜなら、自治体によっては、胞衣・産汚物取締条例などを定めており、胎盤、臍帯、卵膜などについて処理場所・処理業者・処理方法が規定されているため。たとえば、東京都では、胎盤・臍帯・卵膜などを「胞衣」と定義し、条例に基づいて許可を受けた者以外による処理を制限している。※胎盤(法律の世界では「胞衣(えな)」と呼ばれる。

3.× 嘱託医の診察を1回受けた者を分娩対象者とする「判断はできない」。なぜなら、助産所で助産師が管理できる妊婦は、妊娠経過中に継続して正常であり、産婦人科医師の診察を複数回受け、医師・助産師双方が助産所分娩可能と判断する必要があるため。したがって、医師の診察を1回受けただけでは、助産所での分娩対象者とは判断できない。「助産業務ガイドライン2024」では、助産師が管理できる対象者(妊婦管理適応リスト)について、①「妊娠経過が継続して正常」、②「単胎・頭位で経腟分娩可能」、③「妊娠中に複数回、産婦人科医師の診察を受ける」、④「助産師・産婦人科医師双方が助産所等で分娩可能と判断する」という条件が示されている。

4.〇 正しい。臨時応急手当てに使用する医薬品の包括指示を受ける。なぜなら、正常分娩を取り扱う助産所でも急変は起こり得るため。したがって、搬送までに必要となる応急手当を安全・迅速に行えるよう、使用医薬品について医師とあらかじめ取り決めておく。

5.× 助産所内で使用した紙オムツは、「一般廃棄物」ではなく感染性廃棄物として処理する。なぜなら、使用済み紙おむつは、感染症の種類や血液などの付着している可能性があるため。
・感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体(感染性病原体)が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物を言い、廃棄物処理法施行令第1条第1項第8号に定める感染性一般廃棄物と、同法施行令第2条の4第1項第4号に定める感染性産業廃棄物を指す。

 

 

 

 

 

次の文を読み53~55の問いに答えよ。
 病院で10年間の勤務経験をもつ助産師。有床助産所開設に向けて準備をしている。職員として助産師1名、栄養士1名、事務担当者1名を確保した。車で10分の距離にある産婦人科病院の院長に嘱託医を依頼した。

54 助産所開設後、35歳の初妊婦Aさんが病院で分娩予定日を算出されたあと、助産所での出産を希望して来院した。母子健康手帳にはB群溶血性レンサ球菌〈GBS〉が陽性と記載されていた。(※不適切問題:解なし)
 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

1.「産婦人科医と一緒にみていきます」
2.「今後は産婦人科医の診察は必要ありません」
3.「産婦人科医にみてもらうかどうかはあなたの希望次第です」
4.「助産所では対応できないので産婦人科医を受診してください」

解答(※解なし、採点対象外)
理由:設問の状況説明が不適切で正解が得られないため

解説

本症例のポイント

・初妊婦Aさん(35歳):助産所での出産を希望して来院。
・有床助産所開設:車で10分の距離にある産婦人科病院の院長に嘱託医を依頼した。
・母子健康手帳:B群溶血性レンサ球菌が陽性。
→GBS陽性の妊婦は、新生児への感染を防ぐため、分娩時に抗菌薬の投与などが必要となる。原則として産婦人科医による管理が望ましいが、医師の指示や連携体制によっては助産所での分娩も可能である。本問では医師の指示や管理体制が不明なため、選択肢1と4のどちらが適切か判断できず、正答を一つに定められない不適切問題となったと考えられる。

1.〇 正しい。「産婦人科医と一緒にみていきます」と伝える(最も答えに近しい)。なぜなら、GBS陽性妊婦は、助産師だけで完結して管理するのではなく、連携する産婦人科医師と相談したうえで協働管理する対象に位置づけられているため。助産所分娩を行う場合には、抗菌薬投与や緊急時対応、新生児管理を含めた十分な連携体制が必要である。しかし、本問では検査時期や医師の指示、助産所の対応体制が不明であり、共同管理が可能か判断できないため、不適切問題となったと考えられる。

2.× 今後「も」産婦人科医の診察を「必要とする」。なぜなら、GBS〈B群溶血性レンサ球菌〉陽性妊婦では、産婦人科医師との連携・診察が必要であるため。

3.× 産婦人科医にみてもらうかどうか、「希望で決められるものではない」。なぜなら、GBS〈B群溶血性レンサ球菌〉陽性妊婦では、産婦人科医師との連携・診察が必要であるため。したがって、自己決定を尊重しても、医学的に必要な受診・連携が必要である。

4.△ 「助産所では対応できないので産婦人科医を受診してください」と伝えることも場合によっては正しい。なぜなら、本問では検査時期や医師の指示、助産所の対応体制が不明であり、共同管理が可能か判断できないため。ただし、一般的に、必ずしも「助産所では対応できない」と断定するものではない。GBS陽性妊婦は、原則として産婦人科医による管理が望ましい。しかし、医師の指示や適切な医療連携体制があれば、助産所での分娩も可能である。

 

 

 

 

 

次の文を読み53~55の問いに答えよ。
 病院で10年間の勤務経験をもつ助産師。有床助産所開設に向けて準備をしている。職員として助産師1名、栄養士1名、事務担当者1名を確保した。車で10分の距離にある産婦人科病院の院長に嘱託医を依頼した。

55 助産所に通っている初産婦Bさんが妊娠38週に陣痛発来で入院した。体温は36.8℃。破水しており「そういえば、陣痛が始まる1時間前に破水したような気がします」と言う。入院後6時間が経過した。体温38.0℃。子宮口5cm開大、Station±0。陣痛間欠3分、発作30秒。胎児心拍数160bpm。
 分娩時の管理で適切なのはどれか。

1.嘱託医の医療機関に搬送する。
2.3時間後に産婦のバイタルサインを測定する。
3.超音波ドプラ胎児心音計で間欠的に胎児心拍数を観察する。
4.もう1人の助産師に児が娩出するころに到着するよう連絡する。

解答1

解説

本症例のポイント

・有床助産所、助産師(病院で10年間の勤務経験)。
・職員:助産師1名、栄養士1名、事務担当者1名を確保。
・車で10分の距離にある産婦人科病院の院長に嘱託医を依頼した。
・初産婦Bさん(妊娠38週に陣痛発来、体温は36.8℃)。
・破水しており「そういえば、陣痛が始まる1時間前に破水したような気がします」と言う。
・入院後6時間:体温38.0℃。子宮口5cm開大、Station±0。陣痛間欠3分、発作30秒。胎児心拍数160bpm。
→本症例は、破水後約7時間経過で、①38.0℃の発熱、②胎児心拍数160bpmであることから、子宮内感染〈臨床的絨毛膜羊膜炎〉などを疑い、医療機関での管理に移行する必要がある。日本助産師会「助産業務ガイドライン2024」では、分娩中の母体発熱38.0℃以上は緊急に搬送すべき状況に位置づけられ、母体バイタルの継続観察と分娩監視装置による連続胎児心拍モニタリングが求められる。

1.〇 正しい。嘱託医の医療機関に搬送する。なぜなら、本症例は、破水後約7時間経過で、①38.0℃の発熱、②胎児心拍数160bpmであることから、子宮内感染〈臨床的絨毛膜羊膜炎〉などを疑い、医療機関での管理に移行する必要がある。現行の助産業務ガイドラインでは、分娩中の母体発熱38.0℃以上について、破水の有無、子宮圧痛、羊水の状態、胎児心拍などを評価しながら医療機関への搬送対象として扱っている。
・子宮内感染とは、病原菌が腟・ 子宮頸管の病原体が子宮内へと上行(上行感染)、もしくは胎盤を通過(経胎盤感染)し胎児へと感染することである。原因となる細菌は、淋菌、レンサ球菌、ブドウ球菌、大腸菌、結核菌などがある。 月経のとき、不潔なタンポンを膣内にあったり、タンポンを膣の中に長い間おいた場合も、子宮内にまで炎症を起こしてしまうことがある。一般的な症状は、下腹部痛、骨盤痛、発熱(分娩後1~3日以内に起こる場合がほとんど)、蒼白、悪寒、全身のけん怠感や不快感などのほか、しばしば頭痛や食欲減退もみられる。

2.× 3時間後に産婦のバイタルサインを測定するより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、すでに38.0℃の発熱という異常所見があり、母体状態が短時間で悪化する可能性があるため。重症感染では、母体敗血症へ進行する可能性がある。助産業務ガイドライン2024でも、38.0℃以上の母体発熱時には、母体バイタルサインを継続的に観察・記録することが示されている。

3.× 超音波ドプラ胎児心音計で間欠的に胎児心拍数を観察するより優先されるものが他にある。なぜなら、母体発熱は、胎児状態の悪化を伴う可能性があり、胎児心拍数の変化を連続して把握する必要があるため。超音波ドプラ胎児心音計による間欠的聴取は、正常経過の低リスク分娩では有用である。
・超音波ドプラ胎児心音計とは、妊婦のお腹に超音波を当て、胎児の心臓の動きを音として確認する医療機器である。超音波が動いている物体に反射すると周波数が変化する「ドプラ効果」を利用している。胎児の心拍数や心拍リズムを確認でき、胎児の健康状態を評価するために使用される。妊婦や胎児への身体的負担が少なく、妊婦健診などで広く用いられている。

4.× もう1人の助産師に児が娩出するころに到着するよう連絡する「必要はない」。なぜなら、現在の優先事項は、助産所での分娩準備ではなく、医療機関への搬送であるため。本症例は、体温38.0℃(母体発熱)が出現した時点で正常分娩の範囲から外れており、助産所で児娩出まで管理することを前提にした行動はとることができない。

 

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