第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前86~90】

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86 片側性の末梢性顔面神経麻痺の症状はどれか。2つ選べ。

1.眼瞼が下垂する。
2.顔面の知覚が鈍い。
3.口角が垂れ下がる。
4.物が二重に見える。
5.額にできるしわに左右差がある。

解答3・5

解説

(※図引用:「イラストでわかる歯科医学の基礎 第4版 」永未書店HPより)

1.× 眼瞼が下垂することは、「重症筋無力症」や「ホルネル(ホルナー)症候群」で生じる。
・眼瞼下垂(まぶたが垂れ下がる)は、眼瞼挙筋(動眼神経支配)の麻痺によって起こる。

2.× 顔面の知覚が鈍いことは、「三叉神経麻痺」で生じる。三叉神経とは、咀嚼運動にかかわる脳神経である。三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。

3/5.〇 正しい。口角が垂れ下がる額にできるしわに左右差がある
・顔面神経とは、表情筋の運動、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。

4.× 物が二重に見えることは、眼球運動に関わる神経(動眼神経、滑車神経、外転神経)の障害で生じる。
・複視とは、1つの物が二重に見えることをいう。片眼だけを開けているときに起こる片眼複視、両眼を開けているときに起こる両眼複視があげられる。原因として、眼球運動や神経筋接合部の問題、脳幹の異常などがあげられる。例えば、多発性硬化症があげられる(※下参照)。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

87 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉に基づく障害福祉サービスはどれか。2つ選べ。

1.訪問介護
2.訪問看護
3.療養介護
4.重度訪問介護
5.訪問リハビリテーション

解答3・4

解説

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

1.× 訪問介護とは、主に介護保険法に基づいて提供されるサービスで、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を訪問して身体介護や調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスである。

2.× 訪問看護とは、主に医療保険や介護保険法に基づいて提供されるサービスで、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。

3.〇 正しい。療養介護は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスである。
・療養介護とは、病院において機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、日常生活上の世話その他必要な医療を要する障害者であって常時介護を要するものにつき、主として昼間において、病院において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話を行う。また、療養介護のうち医療に係るものを療養介護医療として提供する。【対象者】病院等への長期の入院による医療的ケアに加え、常時の介護を必要とする障害者として次に掲げる者(障害支援区分5~6)とされてる。

4.〇 正しい。重度訪問介護は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスである。
・重度訪問介護とは、重度の肢体不自由または知的障害もしくは精神障害があり常に介護を必要とする方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行う『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』の障害福祉サービスである。重度の肢体不自由者で常時介護を必要とする人を対象とした居宅介護である。

5.× 訪問リハビリテーションとは、主に医療保険や介護保険法に基づいて提供されるサービスで、病院、診療所、介護老人保健施設の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、心身の機能の維持・回復、日常生活の自立を支援するために、理学療法、作業療法等のリハビリテーションを行うサービスである。

 

 

 

 

 

88 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉で、2類感染症に分類されるのはどれか。2つ選べ。

1.ポリオ〈急性灰白髄炎〉
2.細菌性赤痢
3.狂犬病
4.百日咳
5.結核

解答1・5

解説

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

1.〇 正しい。ポリオ〈急性灰白髄炎〉は、2類感染症に分類される。
・ポリオ〈急性灰白髄炎〉は、ポリオウイルスによって引き起こされ、伝播は主に経口(飲食物)を通じて感染するものである。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。

2.× 細菌性赤痢は、3類感染症に分類される。
・赤痢とは、赤痢菌(細菌)に汚染された水や食物を摂取することにより感染する疾患である。潜伏期間は、通常1~3日であり、症状は、発熱とともに腹痛や下痢が初発し、その後しぶり腹(テネスムス)、頻回の膿粘血便、膿性下痢便などがみられる。近年では重症例は少なく、数回の下痢や軽度の発熱で経過する事例が多い。

3.× 狂犬病は、4類感染症に分類される。
・狂犬病とは、狂犬病ウイルスによる感染症である。イヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染する。症状として、発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、疲労感といった風邪のような症状ではじまり、咬まれた部位の痛みや知覚異常を伴う。興奮や不安状態、錯乱・幻覚、攻撃的状態、水を怖がるなどの脳炎症状を呈し、最終的には昏睡から呼吸停止で死亡する。発症するとほぼ100%死亡する危険な病気である。

4.× 百日咳は、5類感染症に分類される。
・百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。百日咳の原因菌は、百日咳菌である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。

5.〇 正しい。結核は、2類感染症に分類される。
・肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

 

 

 

 

 

89 日常生活自立支援事業のサービス内容で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.住民票の届出
2.福祉用具の貸与
3.入院時の身元保証
4.自家用車の売買契約
5.銀行口座から現金の引き出し

解答1・5

解説

日常生活自立支援事業とは?

日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものである。

【主なサービス】
①福祉サービス利用援助
②日常的金銭管理サービス
③日常生活に必要な事務手続きのサポート
④書類等を預かるサービス

1.〇 正しい。住民票の届出は、日常生活自立支援事業のサービス内容である。
これは、③日常生活に必要な事務手続きのサポートに該当する。住民票の届け出などに関する手続きのほか、住宅改修や居住する家屋の賃借に関する情報提供、相談なども行える。

2.× 福祉用具の貸与は、主に介護保険制度障害者総合支援法に基づくサービスである。

3.× 入院時の身元保証は、主に保証人や身元引受人がその役割を担う。一般的に、医療機関が患者の入院費の支払い能力や緊急時の連絡先などを確認するために求める。

4.× 自家用車の売買契約は、日常生活自立支援事業のの範囲を超えると判断されることが多い。なぜなら、自家用車の売買契約のような、金額が大きく、必ずしも「日常生活に必須」とは言えない複雑な財産管理であるため。また、安全な運転が行える保証はない。

5.〇 正しい。銀行口座から現金の引き出しは、日常生活自立支援事業のサービス内容である。
これは、②日常的金銭管理サービスに該当する。ほかにも、福祉サービス利用に関する費用の支払い代行や通院または入院している医療機関への医療費の支払いの手続きなどが含まれる。

 

 

 

 

 

90 ドパミン受容体が遮断されることで出現する症状はどれか。2つ選べ。

1.幻聴
2.口渇
3.妄想
4.筋強剛
5.アカシジア

解答4・5

解説

MEMO

脳内のドパミン神経系は、運動の調節に重要な役割を果た

1.3.× 幻聴/妄想(特に統合失調症でみられる)は、脳内のドパミン系の機能亢進、特に中脳辺縁系ドパミン経路の過活動が原因と考えられている。そのため、幻聴を抑える治療薬(抗精神病薬)は、ドパミンD2受容体を遮断することでその効果を発揮する。

2.× 口渇は、唾液分泌の減少によって起こる症状である。抗精神病薬では、抗コリン作用が主な原因となって口渇が出現する。

4.〇 正しい。筋強剛は、ドパミン受容体が遮断されることで出現する症状である。特に、中脳黒質から線条体へ投射するドパミン経路が機能低下すると、運動調節がうまくいかなくなり、筋肉のこわばり(筋強剛)が生じる(パーキンソン病)。
・筋強剛とは、全身の筋肉がこわばって硬くなり、体を動かそうとする際もスムーズさが無くなるものをさす。他動的に手足の関節を曲げ延ばししたときに、「歯車現象」というカクカクした抵抗がみられる。

5.〇 正しい。アカシジアは、ドパミン受容体が遮断されることで出現する症状である。
・アカシジアとは、統合失調症患者が作業中に立ったり座ったりする、そわそわと落ち着かない行動である。ムズムズした感覚が下肢を中心に起こり、じっと座っていることができないため、鎮座不能症ともいわれる。

 

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