第112回(R8)保健師国家試験 解説【午前1~5】

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1 保健師の歴史に関する事項とその目的の組合せで正しいのはどれか。

1.開拓保健婦制度:入植者の健康管理
2.保健婦駐在制度:健兵健民政策
3.保健婦規則の制定:成人病の予防
4.国民健康保険保健婦の市町村移管:伝染病の予防

解答

解説
1.〇 正しい。開拓保健婦制度:入植者の健康管理
開拓保健婦制度は、開拓地に入植した人々の健康管理を目的とした制度である。なぜなら、開拓地では医療資源が乏しく、入植者の生活環境も厳しかったため。したがって、1947(昭和 22)年、開拓者の保健衛生や生活改善の事業を行う目的で、農林省所管による開拓保健婦制度が開始された。

2.× 健兵健民政策は、「保健婦駐在制度」ではなく保健婦規則の制定である。
・健兵健民政策とは、戦時体制下で「健康な兵士・健康な国民」を育成するという国家政策である。
・保健婦駐在制度とは、保健婦が地域に駐在して住民の日常的な健康指導を行う仕組みである。

3.× 保健婦規則の制定は、「成人病の予防」ではなく成人病の予防は、「住民の日常的な健康指導」である。主に、戦時下の健兵健民政策、母子保健、疾病予防、衛生思想の普及と関係する。
・成人病とは、主に加齢や長年の生活習慣の積み重ねによって発症しやすい病気の総称である。高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中などが含まれる。現在は、生活習慣の改善で予防できる面が重視され、「生活習慣病」と呼ばれることが多い。

4.× 国民健康保険保健婦の市町村移管は、「伝染病の予防」ではなく市町村保健活動の充実・一元化と関係する。
・国保保健婦の市町村移管とは、地域住民の保健ニーズの変化に対応し、市町村で総合的な保健サービスを展開する。昭和50年代には、疾病構造が感染症中心から成人病・高齢化・生活環境問題へと変化し、住民に身近な市町村で保健活動を一体的に行う必要性が高まった。

 

 

 

 

 

2 世界保健機関〈WHO〉が、世界的な感染拡大によって「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態〈PHEIC〉」を宣言した感染症はどれか。

1.結核
2.マラリア
3.ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症
4.新型コロナウイルス感染症〈COVID-19〉

解答

解説

(※引用:「国際保健規則(IHR)に基づく活動について」厚生労働省様HPより)

PHEICとは?

PHEICとは、WHOが国際保健規則に基づき、国境を越えて広がるおそれがあり、各国が協力して対応すべき重大な健康危機と判断した場合に出す宣言である。感染拡大の監視、情報共有、ワクチンや医療体制の強化などを各国に促すものである。

1.× 結核は、WHOがPHEICを宣言した感染症に該当しない。なぜなら、結核は、長期的・慢性的に世界的負荷が大きい感染症であるため。つまり、PHEICが想定する「急性に国際的拡大が懸念され、緊急の国際協調対応を要する事態」とは性質が異なる。

2.× マラリアは、WHOがPHEICを宣言した感染症に該当しない。なぜなら、マラリアは、主に蚊を媒介して流行地域で継続的に発生する風土病的感染症である。つまり、PHEICが想定する「突発的・異常・国際的拡大への緊急対応」とは性質が異なる。

3.× ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症は、WHOがPHEICを宣言した感染症に該当しない。なぜなら、HIV感染症は、長期的な世界的流行を形成している感染症であるため。つまり、PHEICが想定する「急性に国際的拡大が懸念され、緊急の国際協調対応を要する事態」とは性質が異なる。

4.〇 正しい。新型コロナウイルス感染症〈COVID-19〉は、世界保健機関〈WHO〉が、世界的な感染拡大によって「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態〈PHEIC〉」を宣言した感染症である。

 

 

 

 

 

3 予防的保健行動に分類される保健行動はどれか。

1.市で行う肺がん検診を年に1回受診する。
2.処方された降圧薬を毎朝忘れずに服用する。
3.健康に生活するために毎日バランスの良い食事をとる。
4.ストレスを発散するために仕事帰りにジムで運動する。

解答

解説

健康段階別保健行動

保健医療行動とは、「人々がウェルビーイングで自分の人生を全うするために行う行動全般」である。従来の保健医療行動は、キャスルとコブ(Kasl, S. V. and Cobb, S. 1966)が示した 3 分類、すなわち、症状のない状態における病気予防を目的とする保健行動、症状を経験した後の病気対処行動、回復を目指して行われる病者役割行動と考えられてきた。

①健康増進行動:健康な状態にある人が、健康の保持や増進を目的に行う行動のこと。
予防的保健行動:自覚症状はないが、病気につながる行動を避けたり、病気に対する予防措置をとったりする行動のこと。
③病気回避行動:病気の状態ではないものの、放置すると病気になるリスクに気づき、病気にならないように回避しようとする行動のこと。
④病気対処行動:病気の状態に気づき、その解決目指してとる行動のこと。

(※参考:「保健医療行動とは」日本保健医療行動科学会HPより)

1.〇 正しい。市で行う肺がん検診を年に1回受診する。なぜなら、肺がん検診の目的は、症状がない段階で疾患を早期発見するため。

2.× 処方された降圧薬を毎朝忘れずに服用する。これは、病気対処行動に分類される。なぜなら、降圧薬の服用は、すでに高血圧と診断され治療を受けている人が行う行動であるため。

3.× 健康に生活するために毎日バランスの良い食事をとる。これは、健康増進行動に分類される。なぜなら、バランスの良い食事は、健康状態をより良く保つための生活習慣であるため。

4.× ストレスを発散するために仕事帰りにジムで運動する。これは、健康増進行動に分類される。なぜなら、運動は、健康の維持・増進やストレス解消を目的とした生活習慣上の行動であるため。

 

 

 

 

 

4 Aさん(38歳、初産婦、会社員)は夫と2人暮らしで産前休業中である。「最近、隣町から引っ越してきた」母子健康手帳を持って市の保健センターに来所した。保健師が面接したところ、Aさんは妊娠9か月で、妊婦健康診査の結果から妊娠経過は順調である。出産する予定の病院に変更はなく、出産後は1年間の育児休業を取得し、復職を希望していることがわかった。
 このとき、保健師がAさんに確認する内容で優先度が高いのはどれか。

1.両親学級の受講状況
2.勤務先までの所要時間
3.出産後の支援者の有無
4.出産する予定の病院の情報

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(38歳、初産婦、妊娠9か月、会社員、夫と2人暮らし、産前休業中、妊娠経過は順調)。
・「最近、隣町から引っ越してきた」と母子健康手帳を持って市の保健センターに来所した。
出産する予定の病院に変更はなく出産後は1年間の育児休業を取得し、復職を希望している。
→ほかの選択肢が消去される理由をあげられるようにしよう。

1.× 両親学級の受講状況より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは妊娠9か月の初産婦であり、さらに最近転入してきたばかりであるため。地域の支援資源や近隣関係が十分でない可能性があるため。両親学級の受講状況より、Aさんの産後生活を直接支える人的支援の有無を確認することの方が優先される。
・両親学級とは、妊婦さんとパートナーが一緒に妊娠・出産・育児について学んだり、赤ちゃんのお世話を体験したりする場で、自治体、病院や産院、民間企業などが主催している。 医師、助産師、看護師、保健師、管理栄養士といった専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安なことがあれば相談することもできる。

2.× 勤務先までの所要時間より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは、現在産前休業中で、出産後も1年間の育児休業を取得予定であるため。復職希望があるため、将来的に確認する必要がある。

3.〇 正しい。出産後の支援者の有無の確認の優先度が高い。なぜなら、Aさんは妊娠9か月の初産婦であり、さらに最近転入してきたばかりであるため。したがって、産後に孤立するリスクがあり、退院後の育児支援体制を早期に把握する必要がある。

4.× 出産する予定の病院の情報より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは、出産する予定の病院に変更はないとすでに分かっているため。したがって、分娩場所に関する大きな問題は現時点では示されていない。

 

 

 

 

 

5 A市のシニアボランティア講座修了者によるラジオ体操の自主グループのメンバーから、保健師に「10年間、皆で楽しくやってきたが、メンバーが高齢化して、いつまで続けられるか心配」と相談があった。
 活動を継続するための保健師の支援で最も効果的なのはどれか。

1.今後の計画を把握する。
2.骨粗鬆症検診の受診を勧奨する。
3.A市の健康づくり推進員との協働を提案する。
4.ショッピングモールでのラジオ体操を企画する。

解答

解説

のポイント

・A市のシニアボランティア講座修了者によるラジオ体操の自主グループのメンバーから、保健師に「10年間、皆で楽しくやってきたが、メンバーが高齢化して、いつまで続けられるか心配」と相談があった。
→すでに「メンバーが高齢化して、いつまで続けられるか心配」という課題が明確である。したがって、次に必要なのは、活動を支える人材や組織とつなげる支援である。

1.× 今後の計画を把握することより優先されることが他にある。なぜなら、計画を把握するだけでは、メンバーの高齢化による担い手不足や活動継続の不安を解決できないため。すでに「メンバーが高齢化して、いつまで続けられるか心配」という課題が明確である。したがって、次に必要なのは、活動を支える人材や組織とつなげる支援である。

2.× 骨粗鬆症検診の受診を勧奨することより優先されることが他にある。なぜなら、骨粗鬆症検診の受診と自主グループ活動の継続支援は、直接的な関連性は低いため。骨粗鬆症検診は、個人の健康状態を確認するための支援である。

3.〇 正しい。A市の健康づくり推進員との協働を提案する。なぜなら、今回の課題は、メンバーの高齢化による活動継続への不安である。つまり、必要なのは「新しい担い手」「協力者」「地域内での活動の広がり」である。保健師は、住民主体の活動を尊重しながら、他の住民組織や地域資源とつなぎ、活動が継続・発展するよう支援する。
・健康づくり推進員とは、地域の人々が健康に暮らせるよう支援する住民ボランティアである。運動・栄養・休養などの健康情報を学び、自ら実践しながら、健診の受診呼びかけ、健康教室やイベントの協力、地域への情報発信などを行う、市民と行政をつなぐ役割である。

4.× ショッピングモールでのラジオ体操を企画することより優先されることが他にある。なぜなら、保健師が企画を主導すると、住民主体の自主グループ活動の継続支援ではなく、行政主導のイベントになりやすいため。自主グループ支援では、住民自身が継続できるように支えることが重要である。

 

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