第109回(R8) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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1 Aさん(30歳、販売員)は月経不順を主訴に産婦人科を受診した。検査の結果、多囊胞性卵巣症候群〈PCOS〉と診断された。BMI26.5、血圧126/78mmHg、既往歴に特記事項はない。下肢浮腫はないが「夕方に足がむくんでいることがあります」と話す。
 妊娠を希望するAさんに最初に必要な指導はどれか。

1.安静
2.減塩
3.減量
4.水分制限

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、販売員)
・主訴:月経不順。
・診断:多囊胞性卵巣症候群〈PCOS〉。
BMI26.5、血圧126/78mmHg、既往歴に特記事項はない。
・下肢浮腫はないが「夕方に足がむくんでいることがあります」と話す。
→多囊胞性卵巣症候群とは、卵子が入った卵胞の成長に時間がかかり、排卵が起こりにくくなる病気である。長期間にわたってエストロゲンだけが子宮内膜に働きかけ続けることで、子宮体がんのリスクが高くなるといわれている。診断方法は、血液検査や卵巣の超音波検査にて行い、診断基準として1月経異常(月経不順や無月経)、②多嚢胞性卵巣(超音波検査で卵巣に卵胞がたくさん連なってみえること)、③血中男性ホルモン高値または黄体形成ホルモンが高値で、卵胞刺激ホルモンが正常といった3つの項目を満たせば多囊胞性卵巣症候群と診断される。

1.× 安静より優先されるものがほかにある。なぜなら、安静は、多囊胞性卵巣症候群の排卵障害やインスリン抵抗性を改善する指導ではないため。むしろ、安静にすると活動量が低下し、体重増加や代謝悪化につながる可能性がある。

2.× 減塩より優先されるものがほかにある。なぜなら、Aさんには、高血圧や明らかな病的浮腫がないため。また、減塩と多囊胞性卵巣症候群の排卵障害改善に直結する指導ではない。減塩は、高血圧、心不全、腎疾患、妊娠高血圧症候群などの指導で重要である。

3.〇 正しい。減量が妊娠を希望するAさんに最初に必要な指導である。なぜなら、AさんはBMI26.5で肥満Ⅰ度に該当し、多囊胞性卵巣症候群では減量により排卵障害や月経不順の改善が期待できるため。多囊胞性卵巣症候群では、インスリン抵抗性が関与しやすく、体重増加により排卵障害が悪化しやすくなる。したがって、妊娠を希望する場合、排卵が回復・改善することが重要である。
・BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

4.× 水分制限より優先されるものがほかにある。なぜなら、Aさんには、心不全・腎不全・明らかな浮腫など水分制限を必要とする所見がないため。水分制限は、心不全、腎不全、重度の浮腫、低ナトリウム血症などで検討される。

 

 

 

 

 

2 出生した児の特徴として小頭症を示す症候群はどれか。

1.胎児アルコール症候群
2.Down〈ダウン〉症候群
3.Turner〈ターナー〉症候群
4.Marfan〈マルファン〉症候群

解答

解説

胎児アルコール症候群とは?

妊娠中の母親が習慣的に飲酒することで胎児がアルコールの影響を受けることがある。これを胎児性アルコール症候群(FAS:fetal alcohol syndrome)という。こどもに小さな目(短い眼瞼裂)、薄い上唇などの特徴的な顔つきや成長の障害、中枢神経系の障害が見られる。主な先天異常には、①胎児発育不全、②精神発達遅滞や多動などの中枢神経障害、③特異顔貌や小頭症など、④心奇形や関節拘縮などの構造異常がある。(※参考:「胎児性アルコール症候群(FAS)について」横浜市HPより)

1.〇 正しい。胎児アルコール症候群は、出生した児の特徴として小頭症を示す症候群である。
・小頭症とは、先天異常や胎内ウイルス感染などにより脳の大きさが小さいために頭蓋も小さい状態をいう。主な先天異常には、①胎児発育不全、②精神発達遅滞や多動などの中枢神経障害、③特異顔貌や小頭症など、④心奇形や関節拘縮などの構造異常がある。

2.× Down〈ダウン〉症候群とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体以上疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

3.× Turner〈ターナー〉症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。完全欠損例では、卵巣は策状に萎縮するために性腺ホルモンの分泌はなく、第2次性徴の欠如をきたす。

4.× Marfan〈マルファン〉症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。

 

 

 

 

 

3 男性の性反応で正しいのはどれか。

1.勃起中枢は第1仙髄に存在する。
2.射精は副交感神経反射によって起こる。
3.陰茎の体性感覚に関わるのは坐骨神経である。
4.勃起は海綿体が充血し、陰茎が硬化する現象である。

解答

解説
1.× 勃起中枢は、「第1仙髄」ではなく第2〜4仙髄に存在する。副交感神経(骨盤神経)が陰茎の海綿体平滑筋を弛緩させ、血流を増やすことで勃起を起こす。ちなみに、腰髄にあるのは射精中枢(L1〜L2)である。

2.× 射精は、「副交感神経反射」ではなく交感神経(下腹神経)によって起こる。勃起は副交感神経の作用を介して起こる。陰部の刺激が陰部神経を介して、射精中枢を興奮させ、それが一定のレベルを超えると射精中枢から交感神経(下腹神経)に刺激が伝わる。

3.× 陰茎の体性感覚に関わるのは、「坐骨神経」ではなく陰部神経である。なぜなら、陰茎の感覚は、陰部神経の枝である陰茎背神経が伝えるため。陰部神経は、会陰部、外陰部、肛門周囲の感覚や骨盤底筋の運動に関わる神経である。陰茎の感覚は、主に陰部神経から分かれる陰茎背神経によって仙髄へ伝えられる。

4.〇 正しい。勃起は海綿体が充血し、陰茎が硬化する現象である。なぜなら、副交感神経刺激により陰茎海綿体の血管が拡張し、血液流入が増加して海綿体が充血するため。したがって、勃起は、仙髄副交感神経と陰茎血管反応によって成立する現象である。

 

 

 

 

 

4 母体に由来する卵膜の組織はどれか。

1.羊膜
2.栄養膜
3.絨毛膜
4.脱落膜

解答

解説

(※図引用:「羊膜のご提供をお考えのお母さまへ」東京歯科大学HPより)

胎児由来

胎児は受精卵から作られるが、胎児付属物(胎盤や臍帯、羊膜)も受精卵の一部から形成される。これらは、胎児が子宮内で母体から栄養や酸素を得て老廃物を母体血に引き渡すために必要な、いわば胎児の生命維持装置である。そのやり取りのために、胎盤、臍帯には母児の血液が多量に潅流しており、その異常の発生は胎児の生命だけでなく、母児の各種トラブルや後遺症と深く関連する。胎児だけでなく、妊娠中の胎児付属物に対する超音波診断も重要である。

1.× 羊膜は、胎児由来の細胞を主体として構成されている。
・羊膜とは、子宮の中で赤ちゃんを包む卵膜の最内層を覆う厚さ約100~150μmの半透明の膜であり、母体からの胎盤組織への拒絶反応の抑制等、赤ちゃんを保護したり、羊水を分泌する役割があると考えられている。

2.× 栄養膜は、受精卵由来である。
・栄養膜とは、受精卵の外側の細胞層から分化し、胎盤形成に関与する胎児側組織である。受精卵が子宮内膜に着床するときに重要な役割を果たし、のちに絨毛膜や胎盤の胎児側成分の形成に関わる。

3.× 絨毛膜は、胎児由来の細胞を主体として構成されている。
・絨毛とは、器官の内面または外面をおおう膜から突出した微細な突起のことである。腸の粘膜や胎盤などに存在し、これによって表面積が著しく増大し、吸収などが有効に行われるようになる。

4.〇 正しい。脱落膜は、卵膜を構成するもので母体に由来する。
・脱落膜とは、子宮内膜が受精卵の着床により肥大・増殖したもので、受精卵の着床によってこの変化が始まり、後にその一部は胎盤の構成にあずかる。

(※図引用:「25. 胎盤・臍帯の超音波像」日本産婦人科医会様HPより)

 

 

 

 

 

5 妊婦健康診査の未受診者が搬送されて2時間後に正常分娩で出産した。新生児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後9点、5分後10点。身長47cm、体重2,780gであった。
 在胎週数を推定するためにDubowitz法を用いて神経学的所見の評価を行うのに適切な時期はどれか。

1.出生30分後
2.出生2時間後
3.出生12時間後
4.出生36時間後

解答

解説

ポイント

・妊婦健康診査の未受診者が搬送されて2時間後に正常分娩で出産した。
・アプガースコア:1分後9点、5分後10点。
・身長47cm、体重2,780g。
→デュボヴィッツ法とは、姿勢・筋緊張・反射などの検査から新生児の全体的な反応をとらえ、中枢神経系の機能不全に対する早期診断法として有用である評価法である。「脳性麻痺リハビリテーションガイドライン」でも推奨グレードが高い。

1.× 出生30分後後は、胎外生活への適応が始まった直後であり、筋緊張や反射が分娩直後の影響を受けやすい時期である。この時期は、児の啼泣、覚醒状態、疲労、分娩時ストレスなどにより、神経学的所見が安定しない

2.× 出生2時間後は、早期新生児適応の途中であり、神経学的所見がまだ分娩の影響を受けやすい時期である。Dubowitz法の神経学的評価には、児が落ち着き、状態が安定していることが重要である。

3.× 出生12時間後より優先されるものがほかにある。なぜなら、出生12時間後では、児の状態はある程度落ち着くものの、神経学的成熟度評価としては出生36時間後の方がより安定した評価が期待できるため。出生12時間後でも評価できないわけではないが、30〜42時間ごろが信頼性の高い時期とされる。

4.〇 正しい。出生36時間後が、在胎週数を推定するためにDubowitz法を用いて神経学的所見の評価を行うのに適切な時期である。なぜなら、出生36時間後は、新生児の呼吸・循環・体温などが安定し、筋緊張や反射などの神経学的所見をより正確に評価しやすい時期であるため。

(※図引用:「極出生体重児の成熟度判定」)

 

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