第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午後11~15】

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11 少子化社会対策基本法に定められているのはどれか。

1.要保護児童の里親への委託
2.不妊治療に係る情報の提供
3.生後1年未満の育児時間の確保
4.乳幼児に対する栄養摂取の援助

解答

解説

少子化社会対策基本法とは?

少子化社会対策基本法は、少子化の主たる要因であった晩婚化・未婚化に加え、「夫婦の出生力そのものの低下」という新たな現象の把握と急速な少子化の進行を踏まえ、国民や社会の意識変革を迫る目的で制定された、日本の法律である。

少子化社会対策基本法に基づく少子化社会対策大網とは、総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の指針である。基本的な考え方として、①結婚や子育てしやすい環境となるよう、社会全体を見直し、これまで以上に対策を充実、②個々人が結婚や子供についての希望を実現できる社会をつくることを基本的な目標、③「結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じた切れ目のない取組」と「地域・企業など社会全体の取組」を両輪として、きめ細かく対応、④今後5年間を「集中取組期間」と位置づけ、政策を効果的かつ集中的に投入、⑤長期展望に立って、子供への資源配分を大胆に拡充し、継続的かつ総合的な対策を推進があげられている。

1.× 要保護児童の里親への委託は、児童福祉法に定められている。児童福祉法の第27条第1項第3号に「児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること」と記載されている(※引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。
2.〇 正しい。不妊治療に係る情報の提供は、少子化社会対策基本法に定められている。少子化社会対策基本法の第13条2項に「国及び地方公共団体は、不妊治療を望む者に対し良質かつ適切な保健医療サービスが提供されるよう、不妊治療に係る情報の提供、不妊相談、不妊治療に係る研究に対する助成等必要な施策を講ずるものとする」と記載されている(※引用:「少子化社会対策基本法」e-GOV法令検索様HPより)。
3.× 生後1年未満の育児時間の確保は、労働基準法に定められている。労働基準法の第67条に「生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる」と記載されている(※引用:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
4.× 乳幼児に対する栄養摂取の援助は、母子保健法に定められている。母子保健法の第14条に「市町村は、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、栄養の摂取につき必要な援助をするように努めるものとする」と記載されている(※引用:「母子保健法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。

 

 

 

 

 

12 34歳の初妊婦。妊娠20週2日、単胎である。学童期に気管支喘息と診断され、最終発作は1年前である。現在は自宅近くの病院で妊婦健康診査を受けており、妊娠経過は正常である。日常生活に問題はない。自宅から車で4時間のところにある実家に里帰りして出産することを希望している。
 妊婦健康診査の際に、里帰り分娩について相談を受けた助産師が勧める内容で適切なのはどれか。

1.妊娠37週ころに里帰りする。
2.実家近くの助産所で分娩する。
3.車で移動するときは途中で休憩をとる。
4.出産希望の医療機関における分娩受け入れの可否を妊娠後期に確認する。

解答

解説

本症例のポイント

・34歳の初妊婦(妊娠20週2日、単胎)
・学童期:気管支喘息、最終発作:1年前
・現在:妊娠経過は正常。日常生活は問題なし。
・希望:里帰り出産(自宅から車で4時間
→本症例は「気管支喘息」である。最終発作が1年前であっても何らかの対策(薬剤、抗原回避、環境整備、禁煙、心身の安静など)をとって、常に発作を予防して呼吸機能を維持する必要がある。喘息は慢性疾患であり、一見安定しているように思われても、患者さまはいつ発作が起こってもおかしくない素質を有している。本症例のような4時間の運転は身体的にも負担がかかると考えられる。妊娠中から産褥期にかけて継続的に適切な治療(投薬)や生活管理(アレルギー除去や生活リズムを整えるなど)が必要となる。

1.× あえて妊娠37週ころに里帰りする必要はない。産休に入る妊娠34週頃には里帰りしておくのが一般的である。なぜなら、妊娠37週に入ると正産期に入り、赤ちゃんはいつ産まれてもおかしくない時期であるため。また、本症例は「気管支喘息」である。生活環境の変化がストレスの要因となる可能性がある。
2.× 実家近くの助産所で分娩することはできない可能性が高い。なぜなら本症例は「気管支喘息」であるため。気管支喘息の合併症のある妊婦は、助産業務ガイドラインにより「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」であるため、助産所での分娩は適応外である。気管支喘息をもつ妊婦は原則「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」とするが、現在内服薬を必要とせず、妊娠によって悪化が認められない場合は、「B.連携する産婦人科医師と相談の上、協働すべき対象者」とする。(※引用:「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」助産業務ガイドライン 2019より)
3.〇 正しい。車で移動するときは途中で休憩をとる。なぜなら、長時間の運転による疲労は、喘息発作の誘因となる可能性もあるため。本症例は「気管支喘息」である。最終発作が1年前であっても何らかの対策(薬剤、抗原回避、環境整備、禁煙、心身の安静など)をとって、常に発作を予防して呼吸機能を維持する必要がある。喘息は慢性疾患であり、一見安定しているように思われても、患者さまはいつ発作が起こってもおかしくない素質を有している。本症例のような4時間の運転は身体的にも負担がかかると考えられる。
4.× 出産希望の医療機関における分娩受け入れの可否は、「妊娠後期」ではなく「できるだけ早め」に確認する。なぜなら、双胎・骨盤位・前置胎盤・前回帝王切開など産科的リスク、内科疾患など合併症がある場合は、一度受診を依頼されることもあるため。

(※図引用:「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」助産業務ガイドライン 2019より)

 

 

 

 

13 妊婦における食事摂取基準を定める法律はどれか。

1.健康増進法
2.健康保険法
3.地域保健法
4.母子保健法
5.母体保護法

解答

解説

健康増進法とは?

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。

【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。

【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。

1.〇 正しい。健康増進法は、妊婦における食事摂取基準を定めている法律である。健康増進法の第十六条の二(食事摂取基準)に「厚生労働大臣は、生涯にわたる国民の栄養摂取の改善に向けた自主的な努力を促進するため、国民健康・栄養調査その他の健康の保持増進に関する調査及び研究の成果を分析し、その分析の結果を踏まえ、食事による栄養摂取量の基準(以下この条において「食事摂取基準」という。)を定めるものとする」と記載されている(※引用:「健康増進法」e-GOV法令検索様HPより)。
2.× 健康保険法とは、労働者及びその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する医療保険給付等について定めた日本の法律である。
3.× 地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。
4.× 母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
5.× 母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。 

 

 

 

 

 

14 子宮頸癌について正しいのはどれか。

1.組織型は腺癌が多い。
2.ワクチンの接種によって治療できる。
3.若年層での発生数の増加が問題となっている。
4.ヒトパピローマウイルス<HPV>11型の感染によって発生する。
5.平成27年(2015年)の日本における年間の死亡者数は乳癌より多い。

解答

解説

子宮頸癌とは

子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。

1.× 組織型は「腺癌」ではなく「扁平上皮癌」が多い。扁平上皮癌が約75%、腺癌が約23%を占めているが、年々腺がんの割合が上昇している。ちなみに、子宮体癌に腺癌は多い。腺癌が子宮体癌の80%以上を占め、他のがんに比べて予後が比較的良好である。
2.× ワクチンの接種によって「治療」ではなく予防できる。子宮頸癌全体の50~70%の原因とされる2種類(16型・18 型)のヒトパピローマウイルス(HPV)に予防効果があることが報告されている。また、16型HPVと18型HPVの感染や癌になる過程の異常(異形成)を90%以上予防できたとの報告もある。
3.〇 正しい。若年層での発生数の増加が問題となっている。以前は発症のピークが40~50歳代だったが、近年は20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。患者数のピークが若年化している。
4.× ヒトパピローマウイルス<HPV>「11型」ではなく「主に16型、18型」の感染によって発生する。ちなみに、ヒトパピローマウイルス<HPV>6型、11型は、尖圭コンジローマである。ちなみに、尖圭コンジローマとは、性病の一種で、性器にイボのようなぶつぶつができる病気で、主に性行為や性行為に似た行為によって感染する。粘膜が接触することで、傷口などからヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入する。粘膜だけではなく皮膚に傷があれば、そこから感染することもある。ちなみに、電気焼灼法とは、高周波電流のメスで対象物(イボ)を焼く方法である。この治療方法を行うには、手術前に局所麻酔が必要となり、対象物の表面のみを焼杓しても不十分で再発してしまうことが多いため、深く広範囲に焼勺を行う必要がある。そのため、副作用としても腹痛、発熱、出血などがあげられる。
5.× 平成27年(2015年)の日本における年間の死亡者数は乳癌より「多い」のではなく少ない。女性の癌による死亡率の順位では、1位:大腸癌、2位:肺癌、3位:膵癌、4位:乳癌、5位:胃癌、6位:肝癌、7位:子宮癌の順である。ちなみに、女性の部位別の罹患数は、1位:乳がん(22.5%)、2位:大腸癌(15.7%)、3位:肺がん(9.8%)、4位:胃がん(9.0%)、5位:子宮がん(6.7%)の順である。

子宮頸がんとは?

子宮頸がんとは、子宮の入り口である「子宮頸部」に発生するがんである。がんの中では比較的若い世代に発症しやすく、30歳代後半が発症年齢のピークである。子宮頸がんの多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因とされており、予防としては、HPVワクチンの接種が有効である。

【子宮頸がん検査の検体採取】
一般的に子宮頸がんの検査では、ブラシやヘラで子宮頸部をこすり、細胞を採取する「子宮頸部細胞診」と呼ばれる検査を行う。その採取方法として、医師が直接子宮を見ながら頸部の細胞を採取する「医師採取」が一般的であるが、自分自身で子宮入口(頸部)の細胞を採る「自己採取」による検査方法もある。

 

 

 

 

15 母体血清マーカー検査について正しいのはどれか。

1.妊娠9週から行われる。
2.胎児の性別の判定ができる。
3.13トリソミーの確定診断ができる。
4.胎児神経管閉鎖障害の確率が推定できる。
5.単胎より双胎の方が正確性の高い結果が得られる。

解答

解説

母体血清マーカー検査とは?

母体血清マーカー検査とは、母体から採血した血液に含まれる特定の成分を調べることで児に染色体疾患があるかどうかを調べる非確定的検査である。この検査の施行時期は15~20週で、検出できるのは 21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、神経管閉鎖不全などである。利点として、非侵襲的である点と、陰性の場合には、羊水検査を回避できるかもしれない点、胎児二分脊椎の診断につながるかもしれない点があげられる。欠点として、確定診断ではない対象となる染色体異常は、18、21 トリソミー(13 トリソミーは対象でない)ことがあげられる。

1.× 「妊娠9週」ではなく15~20週から行われる。
2.× 胎児の性別の判定は、主に妊娠16週ごろの「エコー検査」で行う。
3.× 13トリソミーの確定診断ができるのは、「母体血を用いた胎児染色体検査」である。10週以降に行われ、陽性的中率が高い。また、検査が陰性の場合には、羊水検査を回避できるかもしれない。ちなみに、13トリソミー(パトウ症候群)とは、余分な13番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種である。重度の知的障害と様々な身体的異常がみられる。典型的には体格が小さく、しばしば脳、眼、顔面、心臓に重大な異常がみられる。
4.〇 正しい。胎児神経管閉鎖障害の確率が推定できる。なぜなら、神経管閉鎖障害(二分脊椎、脳瘤、無脳症など)がみられると、母体血中のトリプルマーカーに異常値が見られるため。二分脊椎とは、神経管閉鎖障害のうち腰仙部の脊髄・脊椎・皮膚などにみられる先天奇形であり、特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。二分脊椎症には①開放性(表面からはっきりわかるもの)と②潜在性(わかりにくいもの)がある。前者には脊髄披裂あるいは脊髄髄膜瘤などが含まれる。
5.× 逆である。「双胎」より「単胎」の方が正確性の高い結果が得られる。母体血清マーカーの場合、検査を受けることはできるが、21トリソミーの場合は推定確率として結果が算出され、精度は単胎妊娠よりもさらに下がる。また、18トリソミーは検査結果に出ない。

(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

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