第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午後46~50】

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次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 望まない妊娠の防止と対応を目的として、助産師6人で「妊娠に関する電話相談」事業を立ち上げた。週に2日、9時から17時の間、電話相談を受けることになった。Aさんは「妊娠に関する電話相談」に匿名で電話をかけた。「今、大学2年生。交際し始めた男性と2週前に避妊せずに性交渉をした。昨日から出血があり、下腹部痛がある。今朝、妊娠検査薬で調べたところ妊娠反応は陰性であったが、本当に妊娠していないか不安になった」と話した。

46 2週後、Aさんから再度電話があり、B助産師が対応した。Aさんは「月経が来て妊娠の不安はなくなった。彼との交際も続いている。今後はちゃんと避妊しようと彼とも話し合った。方法を教えて欲しい」と真剣に話した。Aさんは経血量が多く、月経周期は不規則であった。
 Aさんに勧める方法で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.腟外射精
2.周期的禁欲法
3.低用量ピルの内服
4.コンドームの使用
5.緊急避妊薬の内服

解答3・4

解説

本症例のポイント

・2週後:「月経が来て妊娠の不安はなくなった。彼との交際も続いている。今後はちゃんと避妊しようと彼とも話し合った。方法を教えて欲しい」と真剣に話した。
・経血量:多い、月経周期:不規則

1.× 腟外射精とは、射精直前にペニスを腟内から抜き、外に射精することで避妊する方法である。タイミングが合わずに腟内に射精してしまうこともある。1年間に22%の人が妊娠するといった報告がある。
2.× 周期的禁欲法(オギノ式避妊法)とは、生理(月経)周期から排卵日を予測して避妊する方法である。1年間に25%の人が妊娠するといった報告がある。本症例の場合、月経周期が不規則であるため、周期的禁欲法(オギノ式避妊法)は不適応と考えられる。
3.〇 正しい。低用量ピルの内服がAさんに勧める方法である。低用量ピルの内服とは、排卵を起こさないようにする避妊法である。卵子の成熟が起きなくなる。
ピルはきちんと飲めばほぼ100%の効果があるが、飲み忘れなどにより1年間に9%の人が妊娠する。ちなみに、飲み忘れ等なければ0.3%の人が妊娠するといった報告がある。
4.〇 正しい。コンドームの使用がAさんに勧める方法である。コンドームの使用は、最も多く使用される避妊法であり、きちんと使用すれば1年間に2%の人が妊娠するといった報告がある。性感染症の予防にもつながる。コンドームのデメリットとして、「男性パートナーにほぼ依存している」ことがあげられるが、本症例の場合、今後「ちゃんと避妊しよう」と彼とも話し合っているため、協力を得られやすいと考えられる。
5.× 緊急避妊薬の内服はAさんに勧める方法ではない。なぜなら、現在のA さんは妊娠の可能性はないため。緊急避妊法は妊娠の可能性がある時に、性交後(コンドームの破損や脱落、腟外射精、低用量ピルの飲み忘れ、性暴力被害など)72時間以内にアフターピルを服用することで妊娠を避ける方法である。主な副作用は吐き気、腹痛、頭痛、眠気です。 通常は24時間程度で治まるが、吐き気によって嘔吐をしてしまうと、薬の成分も一緒に吐いてしまうことがある。

 

 

 

 

 

次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 望まない妊娠の防止と対応を目的として、助産師6人で「妊娠に関する電話相談」事業を立ち上げた。週に2日、9時から17時の間、電話相談を受けることになった。Aさんは「妊娠に関する電話相談」に匿名で電話をかけた。「今、大学2年生。交際し始めた男性と2週前に避妊せずに性交渉をした。昨日から出血があり、下腹部痛がある。今朝、妊娠検査薬で調べたところ妊娠反応は陰性であったが、本当に妊娠していないか不安になった」と話した。

47 助産師が行う「妊娠に関する電話相談事業」を開始して1か月が経過した。電話相談を担当する助産師で、これまでの電話相談の各事例を評価するため話し合った。
 Aさんの事例を評価する際に、最も重要な情報はどれか。

1.Aさんと彼の交際が継続したこと
2.Aさんの妊娠不安がなくなったこと
3.Aさんが2回目の電話をかけてきたこと
4.Aさんが自分から避妊方法を知ろうとしたこと

解答

解説

本症例のポイント

・「妊娠に関する電話相談事業」を開始して1か月が経過。
・これまでの電話相談の各事例を評価するため話し合った。
→今回の「妊娠に関する電話相談」事情の目的は、望まない妊娠の防止と対応である。その評価項目で最も重要な情報を選択する。

1~2.× Aさんと彼の交際が継続した/Aさんの妊娠不安がなくなったことは、望まない妊娠の防止と対応には直接的関係は薄い。なぜなら、Aさんと彼の今後の行動の変化や結果が大切であるため。
3.× Aさんが2回目の電話をかけてきたことは、望まない妊娠の防止と対応には直接的関係は薄い。なぜなら、1度目の電話では、「受診の必要性を判断」したものとなった。2度目の電話以降、「望まない妊娠の防止と対応」について具体的な方法(低用量ピルの内服やコンドーム)を指導している。2度目の電話以降のAさんと彼の今後の行動の変化や結果が大切である。
4.〇 正しい。Aさんが自分から避妊方法を知ろうとしたことは、望まない妊娠の防止と対応に最も重要な情報といえる。なぜなら、これまでAさんは「交際し始めた男性と2週前に避妊せずに性交渉」していたものが、電話をきっかけに、Aさんが自分から避妊方法を知ろうと行動の変化が起こっているため。

 

 

 

 

次の文を読み48、49の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。図書館の受付で働いている。妊娠18週2日。身長155cm、非妊時体重54kg。妊娠10週ころからつわりが始まり体重が3kg減少し、現在の体重は51kgである。妊婦健康診査で、血圧100/60mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。胎児の発育は良好で、羊水量は正常であった。

48 この時期のAさんが非妊時よりも追加すべきエネルギー必要量はどれか。

1. 0kcal/日
2. 50kcal/日
3.250kcal/日
4.450kcal/日

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、初妊婦、妊娠18週2日)
・図書館の受付で働いている。
・身長155cm、非妊時体重54kg。
・妊娠10週:つわりが始まり体重が3kg減少。
・現在の体重:51kg。
・妊婦健康診査:血圧100/60mmHg、尿蛋白(-)、尿糖(-)。
・胎児の発育:良好、羊水量:正常。
→付加量は妊娠初期50kcal、中期250kcal、後期450kcal、授乳期350kcalであり、肥満の場合はなしとなる。

(※図引用:「表 1 妊婦の食事摂取基準(再掲)」厚生労働省HPより)

本症例は、BMIは、現在21、非妊時22.5で標準体重範囲内である。標準体重の場合の妊娠中期のエネルギー必要量は250kcal/日である。したがって、選択肢3.250kcal/日が非妊時よりも追加すべきエネルギー必要量である。

1.× 0kcal/日は肥満時の場合である。
2.× 50kcal/日は妊娠初期の場合である。
4.× 450kcal/日は妊娠後期の場合である。

MEMO

BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

 

 

 

 

 

次の文を読み48、49の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。図書館の受付で働いている。妊娠18週2日。身長155cm、非妊時体重54kg。妊娠10週ころからつわりが始まり体重が3kg減少し、現在の体重は51kgである。妊婦健康診査で、血圧100/60mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。胎児の発育は良好で、羊水量は正常であった。

49 妊娠24週4日、妊婦健康診査のため来院した。体重63.5kg。血圧138/78mmHg。尿蛋白(-)、尿糖3+。下腿の浮腫(±)。経腹超音波検査で特に異常はなかった。1週後の再検査でも尿糖3+で、血液検査の結果、妊娠糖尿病と診断された。糖尿病の既往はない。「ショックです。つわりがおさまってから何でもおいしいので、つい食べ過ぎていたかもしれません。今後はなるべく食べないようにします」と話した。
 このときの説明で正しいのはどれか。

1.「帝王切開術の適応となります」
2.「尿糖が陰性になれば心配ありません」
3.「血糖コントロールは内服薬で行います」
4.「赤ちゃんに問題が起こることはありません」
5.「妊娠期に必要な栄養所要量を摂ることが重要です」

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠24週4日:体重63.5kg、血圧138/78mmHg、尿蛋白(-)、尿糖3+、下腿の浮腫(±)。
・経腹超音波検査:異常なし。
・1週後の再検査:尿糖3+
・血液検査:妊娠糖尿病、糖尿病の既往はない。
・「ショックです。つわりがおさまってから何でもおいしいので、つい食べ過ぎていたかもしれません。今後はなるべく食べないようにします」と話した。
→本症例は、妊娠糖尿病である。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。胎盤からインスリンの働きを妨害するホルモンが分泌されるために起こる。ちなみに、糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

1.× 帝王切開術の適応とはならない。帝王切開術の適応として、①母体適応(児頭骨盤不均衡 前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,分娩停止,分娩遷延など)、②胎児適応(胎児機能不全,臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産,前期破水,多胎など)があげられる。
2.× 尿糖が陰性であっても経過観察を継続する。なぜなら、尿中に糖が出るのは、糖尿病の診断基準を超えてからであることが多いため。尿糖が陰性でも、空腹時血糖ヘモグロビンA1cの値が異常なら糖尿病の可能性がある。それら項目を総合的に判断する。
3.× 血糖コントロールは内服薬だけではない。食事療法や運動療法、インスリン療法が組み合わせて行われる。1日の運動時間は30分程度とし、週3~4回を目安に行うよう支援する。妊娠中の運動は血糖コントロールの改善につながる効果があるが、妊娠の状況によっては運動をできない場合があるため、その日の調子に合わせて運動量は調整する必要がある。
4.× 赤ちゃんに問題が起こることがある。児への影響として、先天奇形、巨大児、発育不全、新生児低血糖、呼吸障害など
子供が将来、肥満や糖尿病を発症することも多くなる。また、肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
5.〇 正しい。「妊娠期に必要な栄養所要量を摂ることが重要です」と説明する。妊娠糖尿病と診断されたからといって、過度な食事制限や過剰な運動は行わないようにする。なぜなら、必要な栄養が足りていないと、かえって児の成長にも悪影響を及ぼすため。1日の摂取カロリーのうち、炭水化物が50〜60%、たんぱく質が20%以下、脂質が20〜30%と決められている。1日3回の食事を「主食+主菜+副菜」の組み合わせにし、1日の中で果物や牛乳・乳製品、油を適度に取り入れる。

 

 

 

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、会社員)。両親と妹の4人家族。Aさんは、月経が遅れたため産婦人科外来を受診し、妊娠8週0日と診断された。パートナー(27歳、会社員)とは1年後に結婚する予定であった。4週後、妊婦健康診査のため受診した。
 既往歴: 特記すべきことはない。
 生活歴: 出勤は朝7時、帰宅は21時になる。昼食および夕食は外食が多い。
 家族歴: 母親は高血圧症で内服治療中。
 身体所見: 身長154cm、非妊時体重55kg。今回の体重は54kg。悪心が時々ある。
 検査所見: 血圧120/76mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。下腿の浮腫(-)。超音波検査にて胎児心拍を確認し、頭殿長<CRL>45mm。

50 Aさんは「パートナーと一緒に育てていこうと決めたけれど、まだ親になる実感がわかない。今は2人とも仕事が忙しく同居できないので、この先一緒に赤ちゃんのことを考えていけるか不安がある」と言う。
 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.妊娠に伴う母体の変化を説明する。
2.妊娠初期の食生活について説明する。
3.Aさんに出産のビデオを観てもらう。
4.他の妊婦と交流できるマタニティクラスの参加を勧める。
5.パートナーとともに妊婦健康診査に来院するよう勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、会社員、両親と妹の4人家族、妊娠8週0日
・パートナー(27歳、会社員):1年後に結婚する予定。
・Aさん「パートナーと一緒に育てていこうと決めたけれど、まだ親になる実感がわかない。今は2人とも仕事が忙しく同居できないので、この先一緒に赤ちゃんのことを考えていけるか不安がある」と。

1.× 妊娠に伴う母体の変化を説明するより優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは母体の変化についての悩みや不安は聞かれていないため。この先一緒に赤ちゃんのことを考えていけるか?といった不安である。
2.× 妊娠初期の食生活について説明するより優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは現在妊娠8週0日であり、妊娠初期までまだ猶予があるため。まずはAさんから聞かれている悩み・不安を傾聴・解決する。
3.× Aさんに出産のビデオを観てもらうより優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは「パートナーとの関係性」について悩んでいるため。妊婦教室で出産のビデオを観てもらう機会はあるが、「トラウマ」「グロイ」といった感想を持つ人も少なくない。
4.× 他の妊婦と交流できるマタニティクラスの参加を勧めるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは「パートナーとの関係性」について悩んでいるため。マタニティクラス(旧:母親教室)とは、はじめて出産される妊婦さん(妊娠35週まで)とその家族を対象に、妊娠中の過ごし方を含め、お産や授乳、妊娠中の栄養と歯の健康、産後の手続きなどについて講義するものである。 
5.〇 正しい。パートナーとともに妊婦健康診査に来院するよう勧める。定期健診に夫と一緒に行くメリットとして、①先生の説明を一緒に聞ける、②エコーを見ながら夫婦で赤ちゃんの成長ぶりを見れる、③夫が妻の妊娠中の体調変化をより理解できる、④親になる自覚をもちやすい。ただし、健診に夫のつき添いが可能かどうかは病院によっても違うため、事前に確認する必要がある。

 

 

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