第102回(H31) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 Rh式血液型不適合妊娠で胎児水腫が認められた。
 この時、D抗原に対して産生される免疫グロブリンはどれか。

1.IgA
2.IgD
3.IgE
4.IgG
5.IgM

解答

解説

Rh式血液型不適合妊娠とは?

Rh式血液型にはD、E、C、c、eなどいくつかの因子があり、このうち「D」の因子を持つ場合を「Rh(+)」(Rhプラス)、持たない場合を「Rh(-)」(Rhマイナス)という。Rh式血液型にはD、E、C、c、eなどいくつかの因子があり、このうち「D」の因子を持つ場合を「Rh(+)」(Rhプラス)、持たない場合を「Rh(-)」(Rhマイナス)という。Rh式血液型不適合妊娠とは、母親の血液型がRh(-)、父親の血液型がRh(+)で、胎児の血液型がRh(+)のため新生児溶血性黄疸が起きる場合をいう。Rh(-)の女性が初めて妊娠し、分娩時にRh(+)の胎児の血液が母体内へ侵入すると、母体にRh(+)の血球に対する抗体がつくられる。これを母体感作といい、Rh(+)の第2子を妊娠したときには、この母体中のIgG抗体が経胎盤的に胎児に移行し、それが胎児の赤血球を破壊する。しかし、妊娠前にすでにRh(-)の母体がRh(+)の供血者からRh因子不適合輸血を受けていれば、その際にすでに感作が成立しているので、初回妊娠による第1児でも症状が出ることがある。そのため、お母さんが抗D抗体を作らないように、妊娠中や出産後の適切な時期に、お母さんに「抗D人免疫グロブリン製剤」を注射することが勧められている。

1.× IgAは、母乳中に含まれている免疫グロブリンで最も多い。IgAは、新生児ではほとんど産生されていないが、母乳中には母親由来のIgAが豊富に含まれている。母乳とともに摂取されたIgAは、消化管からの微生物侵入の防御に役立っている。
2.× IgDは、扁桃腺および上気道にある抗体を産生する形質細胞から放出され、呼吸器系の免疫に作用していると考えられている。 IgAやIgGと比較しても微量しか存在していない免疫グロブリンであ。
3.× IgEは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。
4.〇 正しい。IgGは、Rh式血液型不適合妊娠で胎児水腫が認められた際に、D抗原に対して産生される免疫グロブリンである。IgGは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgGは、血中で最も多く存在する抗体である。
5.× IgMは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。

胎児水腫とは?

胎児水腫とは、お母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんの全身がむくんでしまっている状態である。むくみはお腹のなかや、胸のなか、皮膚の下、胎盤などあらゆるところでみられ、赤ちゃんの状態がよくないことを意味する。 胎児水腫を発症した際、赤ちゃんの状態は非常に悪く、死産に陥ることもあります。

 

 

 

 

 

17 受精卵(胚)で正しいのはどれか。

1.受精後さらに2回の減数分裂が行われる。
2.受精後2日に前核が形成される。
3.前核が融合したものを桑実胚という。
4.受精後3日に胚盤胞へと変化する。
5.胚盤胞の状態で子宮内膜に着床する。

解答

解説

1.× 受精後さらに「2回」ではなく1回の減数分裂が行われる。 受精卵(胚)とは、精子と卵子が出会って融合したものが受精卵である。減数分裂とは、その名が示す通り、細胞あたりの染色体数を半減させる特殊な分裂様式である。胎生期に一次卵母細胞は、第1減数分裂を開始し前期で休止し、休止したまま出生し成長する。第1減数分裂の再開は排卵時である。その後、受精のときに2回目の減数分裂が起こり、卵子は半分の遺伝子を持つようになり、精子の持ち込んだ半分の遺伝子と一緒になり受精が成立し、赤ちゃんの遺伝子ができる。2回の減数分裂でいらない遺伝子が半分ずつできるが、卵子はそれを極体として卵子の外に出す。それを第1極体、第2極体という。
2.× 前核が形成されるのは、「受精後2日」ではなく受精の際である。核とは、遺伝子の情報が含まれている部分のことで、精子・卵子が融合する前の核、ということで『前核』と呼ばれている。したがって、受精卵の中には、父親の遺伝情報を持った精子由来の前核1つと、母親の遺伝情報を持った卵子由来の前核1つの合計2つの前核が見える。これら2つの前核は、精子が卵子の中に侵入して(受精して)、やがて、1つに融合して消える。
3.× 前核が融合したものを「桑実胚」ではなく前核期胚という。ちなみに、桑実胚は受精卵の割球が8~16個の状態をいう。
4.× 受精後3日に「胚盤胞」ではなく桑実胚へと変化する。ちなみに、胚盤胞へと変化するのは4~6日である。
5.〇 正しい。胚盤胞の状態で子宮内膜に着床する。5日目(採卵後5日後)から着床前の胚を胚盤胞という。ちなみに、胚盤は内胚葉・中胚葉・外胚葉の3層の細胞層からなり、この時期、胚は肥厚した子宮内膜に入り込んでいく。

胚盤胞に関する基礎知識

卵割球
・前核期胚(1日目)
・4分割期胚(2日目)
・8分割期胚(3日目)

桑実胚(4日目):割球が16個から32個の状態を指す。

胚盤胞(5日目):胎盤と胎児になる部分が確認できる状態になっているより成長した胚。

 

 

 

 

18 母体由来の細胞を主体として構成されているのはどれか。

1.羊膜
2.臍帯
3.絨毛
4.脱落膜
5.羊水浮遊細胞

解答

解説

胎児由来

胎児は受精卵から作られるが、胎児付属物胎盤臍帯羊膜)も受精卵の一部から形成される。これらは、胎児が子宮内で母体から栄養や酸素を得て老廃物を母体血に引き渡すために必要な、いわば胎児の生命維持装置である。そのやり取りのために、胎盤、臍帯には母児の血液が多量に潅流しており、その異常の発生は胎児の生命だけでなく、母児の各種トラブルや後遺症と深く関連する。胎児だけでなく、妊娠中の胎児付属物に対する超音波診断も重要である。

1.× 羊膜は、胎児由来の細胞を主体として構成されている。羊膜とは、子宮の中で赤ちゃんを包む卵膜の最内層を覆う厚さ約100~150μmの半透明の膜であり、母体からの胎盤組織への拒絶反応の抑制等、赤ちゃんを保護したり、羊水を分泌する役割があると考えられている。
2.× 臍帯は、胎児由来の細胞を主体として構成されている。臍帯とは、胎児と胎盤とをつなぐ、ひも状の器官。つまりへその緒である。
3.× 絨毛は、胎児由来の細胞を主体として構成されている。絨毛とは、器官の内面または外面をおおう膜から突出した微細な突起のことである。腸の粘膜や胎盤などに存在し、これによって表面積が著しく増大し、吸収などが有効に行われるようになる。
4.〇 正しい。脱落膜は、母体由来の細胞を主体として構成されている。脱落膜とは、子宮内膜が受精卵の着床により肥大・増殖したもので、受精卵の着床によってこの変化が始まり、後にその一部は胎盤の構成にあずかる 。
5.羊水浮遊細胞は、胎児由来の細胞を主体として構成されている。羊水浮遊細胞とは、羊水の中に浮遊しているたくさんの細胞のことをいう。この細胞ひとつひとつに、赤ちゃんの染色体の情報が含まれているため、羊水の一部を採って検査をすることで、赤ちゃんの染色体をくわしく調べることができる。

(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

19 30歳代の女性で行われた場合に、その後に骨粗鬆症のリスクが高まるのはどれか。

1.子宮筋腫の核出
2.両側付属器の切除
3.薬剤を用いた排卵誘発
4.低用量ピルによる避妊
5.尖圭コンジローマの焼灼治療

解答

解説

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。

1.× 子宮筋腫の核出とは、子宮筋腫を子宮から取り除くこと(核出)することにより、子宮を残す手術方法である。子宮筋腫を取り除く必要があるかどうかは、子宮筋腫の大きさや症状によって決まる。また子宮筋腫核出術(子宮を残す)あるいは子宮全摘術(子宮をとる)がどちらがよいかは今後妊娠を希望するかどうかがもっとも大きなポイントである。つまり、メリットは、①将来、妊娠の可能性が残せる。②どの子宮筋腫にも適用できることがあげられる。一方で、デメリットとして、①子宮全摘術に比べて出血量が多いことがある。②再発の可能性がある。③癒着が起こることがあるなどがあげられる。
2.〇 正しい。両側付属器の切除後、30歳代女性の骨粗鬆症のリスクが高まる。骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。両側付属器の切除とは、両方の卵巣と両方の卵管を除去する手術である。したがって、両側付属器の切除後は、女性ホルモンが分泌されないため、骨粗鬆症のリスクが高まる。
3.× 薬剤を用いた排卵誘発による副作用は、主に①急激な体重増加、②尿の量や回数が減少する、③お腹がふくれてくる、④お腹が痛い、⑤呼吸が苦しいなどの症状である。重篤な状態になると、血栓症、脳梗塞、卵巣破裂、卵巣茎捻転、肺水腫が引き起こされることがある。排卵誘発剤により複数の排卵が起こるため、多胎妊娠の可能性が高くなる。
4.× 低用量ピルによる避妊の主な副作用は、①不正出血、②吐き気、③気分の落ち込みや変化、④肌荒れ、⑤乳房の張りなどである。その中でも一番多い症状は不正出血で、服用者の約20%が経験するといわれている。低用量ピルとは、毎日同じ時間に服用できれば99.7%の避妊効果があり、飲み忘れたとしても91%の避妊効果を期待できる。また、ピルに含まれる女性ホルモンを体内に取り入れることで脳をだまし、排卵日に排卵が起こらないようにして妊娠を防ぐ仕組みである。
5.× 尖圭コンジローマとは、性病の一種で、性器にイボのようなぶつぶつができる病気で、主に性行為や性行為に似た行為によって感染する。粘膜が接触することで、傷口などからヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入する。粘膜だけではなく皮膚に傷があれば、そこから感染することもある。ちなみに、電気焼灼法とは、高周波電流のメスで対象物(イボ)を焼く方法である。この治療方法を行うには、手術前に局所麻酔が必要となり、対象物の表面のみを焼杓しても不十分で再発してしまうことが多いため、深く広範囲に焼勺を行う必要がある。そのため、副作用としても腹痛、発熱、出血などがあげられる。

 

 

 

 

20 妊婦の状態とそれに関連して生じやすい新生児への影響の組合せで正しいのはどれか。

1.喫煙習慣:巨大児
2.血小板減少:黄疸
3.不規則抗体陽性:多血症
4.妊娠高血圧腎症:低出生体重児
5.ビタミンB1欠乏:18 トリソミー

解答

解説

1.× 喫煙習慣は、「巨大児」ではなく、流産・早産や未熟児、低出生体重、乳幼児突然死症候群である。妊娠してたばこを吸っていると、ニコチンの影響で赤ちゃんへの血液や酸素が不足し、低酸素状態となるため流産や早産などを起こしやすくなったり、胎児の発育が悪くなるなどの影響がある。小さな体重で生まれる赤ちゃん(低出生体重児)は、身体のさまざまな機能が発達途上のため、いろいろな病気を起こしやすい。ちなみに、巨大児のリスク因子として、母体の耐糖能異常、肥満、妊娠中の過度の体重増加、過期産、巨大児分娩の既往、片親または両親の体格が大きい、頻産婦などである。
2.× 血小板減少は、「黄疸(選択肢3)」ではなく、頭蓋内出血である。血小板数が1万~2万/µL以下に低下すると、口腔内出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血などの重篤な出血症状が出現する。これらの症状を呈した場合は入院の上、副腎皮質ステロイドやガンマクロブリン大量療法に加え、血小板輸血も考慮する。
3.× 不規則抗体陽性は、「多血症」ではなく、黄疸や溶血性疾患である。不規則抗体とは、赤血球に対する抗体のうちABO式血液型の抗A抗体、抗B抗体以外の抗体をしめす。不規則抗体検査の結果が陽性(+)と出た人は、その抗体に反応する血液型を輸血してしまうと、輸血した赤血球が壊される副作用が起こす。不規則抗体の存在に気付かず輸血された赤血球と反応して溶血が起こり、24時間以降にそれに伴う発熱や貧血、黄疸、Hb値の低下、LDH・総ビリルビンの上昇、ヘモグロビン尿などの溶血を伴う症状を示す。稀に、腎不全、DIC(播種性血管内凝固症候群)などによる死亡例もあるが重篤化することは少ない。ちなみに、多血症とは、血液の中の赤血球やヘモグロビンの量が基準値よりも多くなる病気のことをいう。多血症には、①肥満、高血圧、緊張によるストレス多血症、②アルコール多飲や脱水による循環血症量の減少による相対的多血症、③喫煙や肺疾患による低酸素血症による多血症、④JAK2遺伝子の後天的変異による真性多血症や造血ホルモン産生腫瘍による2次性多血症があげられる。
4.〇 正しい。妊娠高血圧腎症の場合、低出生体重児が起こりやすい。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。妊娠高血圧症候群の場合、血流が悪くなるため、おなかの赤ちゃんに十分な栄養や酸素がいきわたらず、発育不全を引き起こすことがある。そのため、早産や死産、新生児仮死、低出生体重児(体重2,500g未満の赤ちゃん)などのリスクも高まる。一方で、肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
5.× ビタミンB1欠乏は、「18トリソミー」ではなく、乳児脚気やWernicke脳症(成人)である。脚気とは、炭水化物の代謝に関わる大切な栄養素(ビタミンB1)が不足し、末梢神経障害や心不全、全身の倦怠感、食欲不振、手足のしびれ・むくみなどの症状が出る病気である。ちなみに、18トリソミー(エドワーズ症候群)とは、余分な18番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種である。通常は知的障害と出生時低身長のほか、重度の小頭症、心奇形、後頭部突出、変形を伴う耳介低位、やつれたような特徴的顔貌などの様々な先天奇形で構成される。

 

 

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