第102回(H31) 助産師国家試験 解説【午後36~40】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(33 歳、初妊婦)。既往歴や生活歴に特記すべきことはなかったが、妊娠28週頃から高血圧を指摘され、内服薬による治療を受けている。妊娠39週5日、経腟分娩で男児を出産した。
 児のApgar<アプガー>スコアは1分後8点、5分後9点。
 児の身体所見:身長49.2cm(50パーセンタイル)
 体重2,515g(3パーセンタイル)
 頭囲33.3cm(50パーセンタイル)

36 児の管理をするにあたり、注意すべき合併症はどれか。

1.高血糖
2.多血症
3.顔面神経麻痺
4.呼吸窮迫症候群
5.高カルシウム血症

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33 歳、初妊婦)
・妊娠28週頃:高血圧、内服薬による治療。
・妊娠39週5日:経腟分娩で男児を出産。
・児のApgar<アプガー>スコアは1分後8点、5分後9点。
・児の身体所見:身長49.2cm、体重2,515g、頭囲33.3cm
→正期産(37~39週)における児の正常な体重の範囲は2,500g以上4,000g未満である。これより軽い場合は低出生体重児、重い場合は巨大児となる。本症例は、ぎりぎりではあるものの体重は正常範囲内といえそうであるが、3パーセンタイルである。3パーセンタイルとは、低い方から高い方に数えて3番目にあたる。したがって、本症例は、胎児発育不全(FGR)が疑われる。胎児発育不全(FGR)と診断されるのは胎児推定体重が「-1.5SD以下」のときである。これを言い換えると「同じ週数の赤ちゃんを体重の小さい順に並べたとき、100人中で7番目以下」が胎児発育不全(FGR)の診断を受けることになる。胎児発育不全(FGR)とは、何らかの理由で子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために、在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態である。出生直後は新生児仮死(呼吸・循環不全)、低体温に陥り易いため適切な蘇生を行い循環の安定をはかる。平行して低体温、低血糖、低カルシウム血症、多血症、感染、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの全身管理を行う。

また、妊娠28週頃から高血圧を指摘されていることから、妊娠高血圧症候群が疑われる。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(血圧140/90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

1.5.× 「高血糖」ではなく低血糖である。「高カルシウム血症」ではなく低カルシウム血症である。胎児発育不全(FGR)とは、何らかの理由で子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために、在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態である。出生直後は新生児仮死(呼吸・循環不全)、低体温に陥り易いため適切な蘇生を行い循環の安定をはかる。平行して低体温、低血糖、低カルシウム血症、多血症、感染、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの全身管理を行う。
2.〇 正しい。多血症は、児の管理をするにあたり注意すべき合併症である。多血症とは、血液の中の赤血球やヘモグロビンの量が基準値よりも多くなる病気(赤血球増多症)をいう。診断基準として、体重1kgあたりの赤血球の量が男性:36mℓ、女性:32mℓ以上の場合である。症状としては、赤血球量の増加が著しい場合には頭痛や赤ら顔、耳鳴りやめまいが起きることがある。
3.× 顔面神経麻痺は注意すべき合併症としての優先度が低い。顔面神経麻痺は鉗子分娩などにより、顔面神経が圧迫されることで損傷することにより生じる。つまり、分娩時の外傷で、骨折・分娩麻痺・出血など(分娩時損傷)で受傷しやすい。好発:巨大児分娩、骨盤位分娩、鉗子分娩、吸引分娩、急遂分娩など。症状:鎖骨骨折が最多であり、次いで顔面神経麻痺、腕神経叢麻痺、頭蓋内出血が多い。
4.× 呼吸窮迫症候群は注意すべき合併症としての優先度が低い。呼吸窮迫症候群(RDS)は、在胎34週未満の早産児で認められ、肺サーファクタント(肺表面活性物質:肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である)産生が不十分で、出生後、肺が虚脱する疾患である。

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(33 歳、初妊婦)。既往歴や生活歴に特記すべきことはなかったが、妊娠28週頃から高血圧を指摘され、内服薬による治療を受けている。妊娠39週5日、経腟分娩で男児を出産した。
 児のApgar<アプガー>スコアは1分後8点、5分後9点。
 児の身体所見:身長49.2 cm(50 パーセンタイル)
 体重2,515 g(パーセンタイル)
 頭囲33.3 cm(50 パーセンタイル)

37 日齢2。児の体重は2,410gで、前日から30g減少している。児は完全母乳栄養で約1〜2時間ごとに哺乳している。児の哺乳力は良好だが、左右の乳房を10分程度哺乳すると眠ってしまい、Aさんは眠った児をそのままコットに寝かせている。児には軽度の腹部膨満が認められる。排便は出生後5回、粘稠性の強い濃緑色の便が認められる。朝、ヨーグルト状の凝乳塊を含む白色物の嘔吐が認められた。
 助産師のAさんへの指導で正しいのはどれか。

1.人工乳の追加
2.哺乳後の排気
3.3時間ごとの定時授乳
4.Aさんの乳製品の摂取制限

解答

解説

本症例のポイント

・日齢2、児の体重:2,410g
・前日から30g減少している。
・児の哺乳:完全母乳栄養で約1〜2時間ごと。
・児の哺乳力:良好だが、左右の乳房を10分程度哺乳すると眠ってしまい、Aさんは眠った児をそのままコットに寝かせている
・児には軽度の腹部膨満が認められる。
・排便は出生後5回、粘稠性の強い濃緑色の便が認められる。
・朝、ヨーグルト状の凝乳塊を含む白色物の嘔吐が認められた。
→正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は,出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。

1.× 人工乳の追加は優先度が低い。なぜなら、児の哺乳は完全母乳栄養で約1〜2時間ごと行えているため。他の理由として、①排便回数は日齢相当である(個人差あり)こと、②体重の減少は生理的体重減少であることから、哺乳量は確保できていると推測できる。人工乳とは、何らかの理由で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。
2.〇 正しい。哺乳後の排気をAさんへ指導する。なぜなら、朝、ヨーグルト状の凝乳塊を含む白色物の嘔吐が認められているため。赤ちゃんの胃はとっくり状になっているため、授乳後そのまま寝かせてしまうと、飲んだものが逆流しやすい状態となってしまう。したがって、哺乳後の排気(げっぷ)をすることで、胃の中の空気が飲んだものを押し上げることにより『吐き戻し』を防ぐことができる。ちなみに、溢乳という単語を用いられることが多く、これは赤ちゃんの生理的な現象である。溢乳とは「授乳後に口から少量の乳がだらだらとはき出されること」であり、病的なものではない。乳を吐き出すことには変わりないが、「吐く」という言葉は病的なニュアンスが含まれがちであるため、溢乳という言葉が古くから使われている。
3~4.× 3時間ごとの定時授乳/Aさんの乳製品の摂取制限は必要ない。授乳のタイミングは、児が「泣く前(自律授乳)」が基本となる。自律授乳とは、児が欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のことである。児に吸われる刺激によって母乳分泌が促されて母乳育児がスムーズになることから、とくに生後1~2か月ぐらいまでの間は自律授乳が推奨されている。自律授乳の場合、新生児期の授乳回数は1日10回以上になることもあるが、たくさん吸うことで飲むことに慣れ、上手に飲めるようになっていく。赤ちゃんの口の動きなどからほしがるサインに早期に気づき、授乳できるよう指導する。

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(33 歳、初妊婦)。既往歴や生活歴に特記すべきことはなかったが、妊娠28週頃から高血圧を指摘され、内服薬による治療を受けている。妊娠39週5日、経腟分娩で男児を出産した。
 児のApgar<アプガー>スコアは1分後8点、5分後9点。
 児の身体所見:身長49.2 cm(50 パーセンタイル)
 体重2,515 g(パーセンタイル)
 頭囲33.3 cm(50 パーセンタイル)

38 日齢4。児の体重は2,490gで、前日から35g増加している。排尿10回/日、排便5回/日、哺乳回数12回/日、哺乳力は良好だが、1日数回の嘔吐が認められる。経皮的黄疸計値9.5。自動聴性脳幹反応<AABR>は両耳とも「パス(反応あり)」であった。
 Aさんからの児に関する訴えで、最も注意すべきなのはどれか。

1.「視線が合わない」
2.「黄色いうんちが出た」
3.「黄緑色のものを吐いた」
4.「白眼が黄色くなってきた」
5.「声をかけても反応してくれない」

解答

解説

本症例のポイント

日齢4、児の体重:2,490g
・前日から35g増加している。
・排尿10回/日、排便5回/日、哺乳回数12回/日、哺乳力は良好だが、1日数回の嘔吐が認められる。
経皮的黄疸計値9.5
・自動聴性脳幹反応<AABR>は両耳とも「パス(反応あり)」であった。

1.× 「視線が合わない」反応は正常で問題ない。なぜなら、赤ちゃんと大体目が合うようになるのは、大体2~4か月ころだといわれているため。このころに、赤ちゃんは形や動くものを認識するようになる。
2.× 「黄色いうんちが出た」反応は正常で問題ない。生後2~4日目頃は、乳汁を飲み始め、黒緑色の胎便と黄色便の入り混ざった便が出て、次第に黄色みが強くなっていく。これを移行便という。その後、胎便がすべて排出され乳汁を十分に飲むようになると、黄色から茶色の顆粒便になり、一時は一日に何度も便が出ることがある。つまり、本症例の日齢4は、胎便から移行便の時期を経て普通便になる時期であるため、便が黄色となる正常な反応を示す。
3.〇 正しい。「黄緑色のものを吐いた」という発言は最も注意すべきである。なぜなら、緑黄色の嘔吐物は胆汁である可能性があり、胆道閉鎖症が疑われるため。胆道閉鎖症とは、生まれて間もない赤ちゃんに発症する肝臓および胆管の病気で、胆汁の通り道である胆管が、生まれつきまたは生後間もなく完全につまってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない状態である。ちなみに、胆汁は肝臓で作られ胆管を通って十二指腸に流れ、ここで食物と混じって栄養素の吸収を助ける働きを持つ。
4.× 「白眼が黄色くなってきた」反応は正常で問題ない。なぜなら、本症例の経皮的黄疸計値9.5であり、生理的黄疸と考えられるため。新生児黄疸(生理的黄疸)とは、生後間もない新生児の大半にみられる黄疸である。黄疸になると、皮膚や白目の色が次第に黄色味を帯びてくるが、新生児でみられる黄疸のほとんどは、生理的におきる新生児黄疸である。この新生児黄疸は、およそ生後3~5日目をピークに自然と治まっていくものなので、過度に心配する必要は必要ない。ちなみに、経皮的黄疸計値の基準値として、黄疸のピーク時(生後4、5日)に成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dl以下であり、かつ1日のビリルビン値の上昇が5mg/dl以下とされている。
5.× 「声をかけても反応してくれない」反応は正常で問題ない。なぜなら、自動聴性脳幹反応<AABR>は両耳とも「パス(反応あり)」であるため。自動聴性脳幹反応<AABR>とは、言語発達に大きく影響する聴覚障害を早期に発見するためのスクリーニング検査で、音が聞えているか確認する検査である。脳幹機能障害や機能性難聴を評価する。

(※写真引用:「胆道閉鎖症カード」)

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 妊婦とパートナーが出産を迎える意欲を高めることを目的として、病院に勤務する助産師が両親学級を開催することとなった。計画の概要を表に示す。

39 この両親学級の開催で適切なのはどれか。

1.開催日時は平日の日中とする。
2.母子健康手帳は持参しなくて良いと伝える。
3.バースプランは事前に用紙に書いてくるよう伝える。
4.分娩経過の講義は妊婦とパートナーを分けて実施する。

解答

解説

1.× 開催日時は「平日」ではなく休日の日中の方が良い。なぜなら、妊婦とパートナーは仕事している可能性が高く、平日より休日の方が参加しやすいため。ちなみに、妊娠中の経過が順調であれば、出産予定日の6週間前の妊娠34週(妊娠9カ月を過ぎた時期)まで働ける。
2.× 母子健康手帳は持参するべきである。なぜなら、母子健康手帳に両親学級の受講を記載する必要があるため。また、妊娠中は不測の事態に備えて母子健康手帳や健康保険証を外出時には携帯することが望ましい。
3.〇 正しい。バースプランは事前に用紙に書いてくるよう伝える。なぜなら、両親学級の内容に、「④パースプランの話し合い(参加者全体のグループワーク)」と決まっているため。事前にバースプランを用紙に書くことにより、話す内容がまとまったり、パートナーと妊婦の考えの共有につながったりするため、両親学級の効果を高める可能性がある。
4.× 分娩経過の講義は妊婦とパートナーを分けて実施する優先度は低い。なぜなら、両親学級の内容に、「④パースプランの話し合い(参加者全体のグループワーク)」と決まっているため。むしろ分けて実施することで、妊婦とパートナーで情報共有の漏れが発生しやすいため一緒に受けた方が良い。

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 妊婦とパートナーが出産を迎える意欲を高めることを目的として、病院に勤務する助産師が両親学級を開催することとなった。計画の概要を表に示す。

40 助産師は計画に従って両親学級を開催した。産痛緩和法の講義と演習で、分娩第1期の産痛緩和法として腰部マッサージの方法を紹介した。助産師は、パートナーに対して、妊婦の背側に座り、手を温めて妊婦の腰部に触れ、妊婦の呼吸に合わせて円を描くように手を動かすよう指導した。実施後、助産師は妊婦とパートナーが記載したアンケートを見て両親学級の効果を評価することにした。
 妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲が高まったと評価できる記載はどれか。

1.立ち会い出産は大変だと感じた。
2.実母の立ち会いについて2人で話し合います。
3.産痛緩和のマッサージは助産師にしてほしい。
4.お腹が張りそうだからマッサージは心配です。
5.自宅でも2人でマッサージの練習をしてみたい。

解答

解説

本症例のポイント

・産痛緩和法の講義と演習:分娩第1期の産痛緩和法として腰部マッサージの方法を紹介した。
・助産師:パートナーに対して、妊婦の背側に座り、手を温めて妊婦の腰部に触れ、妊婦の呼吸に合わせて円を描くように手を動かすよう指導した。
・実施後:助産師は妊婦とパートナーが記載したアンケートを見て両親学級の効果(妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲を評価することにした。
→両親学級とは、妊婦さんとパートナーが一緒に妊娠・出産・育児について学んだり、赤ちゃんのお世話を体験したりする場で、自治体、病院や産院、民間企業などが主催している。 医師、助産師、看護師、保健師、管理栄養士といった専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安なことがあれば相談することもできる。

1.× 「立ち会い出産は大変だと感じた」との発言は、妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲向上と断定することはできない。むしろ、両親学級は、専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安を解決するものであるため、「大変」とどちらかというとマイナスな感情を抱いている。
2.× 「実母の立ち会いについて2人で話し合います」との発言は、妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲向上と断定することはできない。なぜなら、対象は妊婦とパートナーであり、実母の立ち合いの有無は関係性が薄いため。
3.× 「産痛緩和のマッサージは助産師にしてほしい」との発言は、妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲向上と断定することはできない。むしろ他力に頼っている依存的な発言ともとらえられる。
4.× 「お腹が張りそうだからマッサージは心配です」との発言は、妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲向上と断定することはできない。両親学級は、専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安を解決するものであるため、「大変」とどちらかというとマイナスな感情を抱いている。また、マッサージの効果や目的が理解できていないような発言ともとらえられる。
5.〇 正しい。「自宅でも2人でマッサージの練習をしてみたい」との発言は、妊婦とパートナーが出産を迎えるための意欲が高まったと評価できる記載である。出産を迎えるための準備が一緒に行えている。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)