第102回(H31) 助産師国家試験 解説【午前51~55】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み51、52の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、女性、未婚)。妊娠歴なし。コンビニエンスストアでパート勤務をしている。勤務中に突然の腹痛と腟からの中等量の出血があり、早退して職場近くの婦人科クリニックを受診した。半年以上前から月経がないことを自覚していたが、医療機関は受診していなかった。意識は清明で、腹部は膨隆し、心窩部と下腹部に痛みを訴えている。下肢の浮腫著明。身長155cm、体重80kg(非妊時体重60kg)、体温36.5℃、脈拍90/分、血圧178/100mmHg。婦人科の医師が診察すると子宮内から少量の流血があり、経腹超音波検査で妊娠後期と思われる胎児を認めた。胎盤の辺縁に血腫を疑う像があり、子宮収縮に一致して胎児徐脈がみられた。婦人科クリニックの医師は、直ちに産婦人科とNICUのある高次医療施設に救急搬送受け入れを依頼した。

51 搬送依頼を受けた高次医療施設の助産師が、母体救命の観点において搬送元からさらに聞き出す情報で、最も重要なのはどれか。

1.子宮底長
2.最終飲食時間
3.パートナーの連絡先
4.出血中の凝血塊の有無

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(23歳、女性、未婚、妊娠歴なし)
・パート勤務中:突然の腹痛と腟からの中等量の出血し受診した。
・半年以上前から:月経がない。
・意識清明、腹部膨隆、心窩部と下腹部に痛み、下肢の浮腫著明。
・身長155cm、体重80kg(非妊時体重60kg)、体温36.5℃、脈拍90/分、血圧178/100mmHg。
・経腹超音波検査:妊娠後期と思われる胎児を認めた。
・胎盤の辺縁に血腫を疑う像があり、子宮収縮に一致して胎児徐脈がみられた。
・婦人科クリニックの医師は、直ちに産婦人科とNICUのある高次医療施設に救急搬送受け入れを依頼した。
→本設問は常位胎盤早期剥離妊娠高血圧症候群が疑われる。常位胎盤早期剥離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、通常は妊娠20週以降に剥がれてしまうことである。性器出血や激しい腹痛が起こり、ショック状態を起こすこともある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(血圧140/90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。常位胎盤早期剥離の原因には、妊娠高血圧症候群(合併率 25~50%)、子宮内感染、子宮内圧の急激な変化などが挙げられる。

1.× 子宮底長より優先度が高いものが他にある。なぜなら、超音波検査にて確認できるため。ちなみに、子宮底長とは、恥骨の中央から子宮の上の端までの直線距離を計測した数値のことで、子宮がどれくらい大きくなっているかを表したものである。超音波検査がなかったころは、「妊娠何か月だと子宮底長は何cmくらい」という基準値と照らし合わせて、胎児の大きさや羊水の量などが妊娠週数相応に育っているかどうか、ひとつの目安にしていた。
2.× 最終飲食時間より優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例の症状(パート勤務中に突然の腹痛と腟からの中等量の出血)は飲食時間と関係性は乏しいため。本設問は常位胎盤早期剥離妊娠高血圧症候群が疑われるため、今後悪化する可能性を考慮し、母体救命の観点から正確な出血量及び凝固因子の情報を得る必要がある。
3.× パートナーの連絡先より優先度が高いものが他にある。なぜなら、母体救命の観点との関係性は低いため。設問文に「搬送依頼を受けた高次医療施設の助産師が、母体救命の観点において搬送元からさらに聞き出す情報」と記載されており、また、現状の情報では本症例は未婚であることが確認できている。
4.〇 正しい。出血中の凝血塊の有無は最も重要である。本設問は常位胎盤早期剥離妊娠高血圧症候群が疑われる。常位胎盤早期剥離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、通常は妊娠20週以降に剥がれてしまうことである。性器出血や激しい腹痛が起こり、ショック状態を起こすこともある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。常位胎盤早期剥離の原因には、妊娠高血圧症候群(合併率 25~50%)、子宮内感染、子宮内圧の急激な変化などが挙げられる。今後悪化する可能性があるため、母体教命の観点から正確な出血量及び凝固因子の情報を得る必要がある。胎盤の早期剥離によって、ときに血管内の広範な血液凝固(播種性血管内凝固症候群)による重度の失血、 腎不全、子宮壁内への出血が生じることがあり、特に妊娠高血圧腎症もある場合には、こうした状態を起こしやすくなる。また、胎盤が剥がれると胎児への酸素と栄養の供給が少なくなり、胎盤が突然剥がれて酸素供給量が一気に低下すると、胎児が死亡することがある。

 

 

 

 

 

次の文を読み51、52の問いに答えよ。
 Aさん(23歳、女性、未婚)。妊娠歴なし。コンビニエンスストアでパート勤務をしている。勤務中に突然の腹痛と腟からの中等量の出血があり、早退して職場近くの婦人科クリニックを受診した。半年以上前から月経がないことを自覚していたが、医療機関は受診していなかった。意識は清明で、腹部は膨隆し、心窩部と下腹部に痛みを訴えている。下肢の浮腫著明。身長155cm、体重80kg(非妊時体重60kg)、体温36.5℃、脈拍90/分、血圧178/100mmHg。婦人科の医師が診察すると子宮内から少量の流血があり、経腹超音波検査で妊娠後期と思われる胎児を認めた。胎盤の辺縁に血腫を疑う像があり、子宮収縮に一致して胎児徐脈がみられた。婦人科クリニックの医師は、直ちに産婦人科とNICUのある高次医療施設に救急搬送受け入れを依頼した。

52 高次医療施設に搬入された直後に、産科医師がAさんを診察すると、腟分泌物は血性少量、子宮口は1cm開大、経腹超音波検査で約80bpmの胎児徐脈を認め、回復の徴候が認められなかった。救急処置室から直ちに手術室に移送され、全身麻酔下の緊急帝王切開術で2,830gの女児を出産した。Apgar<アプガー>スコアは1分後3点、5分後7点、臍帯動脈血pH値7.02であった。NICU医師によって蘇生処置が行われた。出血量は羊水を含めて800mLであった。Aさんは術後、ICUに収容された。娩出されたAさんの胎盤の写真を下図に示す。
 Aさんの術後に最も注意すべきなのはどれか。

1.肺血栓塞栓症
2.術後出血
3.肺水腫
4.敗血症
5.心不全

解答

解説

本症例のポイント

・搬入直後:腟分泌物血性少量、子宮口1cm開大。
・経腹超音波検査:約80bpm胎児徐脈、回復の徴候が認められなかった。
・緊急帝王切開術:2,830gの女児出産。
・アプガースコア:1分後3点、5分後7点、臍帯動脈血pH値:7.02。
・NICU医師によって蘇生処置が行われた。
・出血量:羊水を含めて800mL
→本設問は常位胎盤早期剥離が疑われており、胎盤写真から見てもより常位胎盤早期剥離の可能性が高いといえる。常位胎盤早期剥離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、通常は妊娠20週以降に剥がれてしまうことである。性器出血や激しい腹痛が起こり、ショック状態を起こすこともある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。常位胎盤早期剥離の原因には、妊娠高血圧症候群(合併率 25~50%)、子宮内感染、子宮内圧の急激な変化などが挙げられる。また、妊娠高血圧症候群性の常位胎盤早期剥離では播種性血管内凝固症候群〈DIC〉を発生することが多い。播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。

1.× 肺血栓塞栓症より優先度が高いものが他にある。肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。
2.〇 正しい。術後出血は術後に最も注意すべきである。なぜなら、本設問は常位胎盤早期剥離が疑われており、胎盤写真から見てもより常位胎盤早期剥離の可能性が高いといえるため。常位胎盤早期剥離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、通常は妊娠20週以降に剥がれてしまうことである。性器出血や激しい腹痛が起こり、ショック状態を起こすこともある。さらに、本症例は緊急帝王切開術を行っている。さらに出血性ショックがきたしやすい状況である。
3.× 肺水腫より優先度が高いものが他にある。肺水腫とは、肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留を伴った重度の急性左室不全である。
4.× 敗血症より優先度が高いものが他にある。敗血症とは、「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」のことをいう。敗血症性ショックはそのなかでも「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される。
5.× 心不全より優先度が高いものが他にある。心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。心拍出量の低下を起こす原因として、①左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの、②右心不全:体循環系にうっ血が著明なものに分けられる。右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

(※図引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

次の文を読み53の問いに答えよ。
 Aさん(31歳、女性、会社員)。28歳で結婚した。2年前に月経困難症のため婦人科を受診し、子宮内膜症と診断された。1年前から基礎体温表をつけて排卵期に性交渉を持つようにしていたが、妊娠しないため婦人科診療所を受診した。Aさんは何度か通院するうちに、助産師に「実は、性交のときに痛くて、性交渉を持つ日を指定されたりすると、とてもストレスになります。自分の仕事が忙しく、休んで病院に来るのも大変だし、不妊治療は受けたくないのです。夫は子どもを欲しがっているので、悪くて言えません。でも、一度きちんと話そうと思っています」と訴えた。

53 助産師の対応で適切なのはどれか。

1.不妊治療を受けないという本人の意思決定を支持する。
2.不妊治療によって痛みは軽減することが多いと伝える。
3.夫には性交痛のことは話さない方がよいと説明する。
4.妊娠すれば痛みの問題は解決すると説明する。
5.心療内科の治療が必要であると伝える。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(31歳、女性、会社員)。
・28歳:結婚。
・2年前:月経困難症、子宮内膜症と診断。
・1年前:基礎体温表をつけて排卵期に性交渉を持つようにしていたが妊娠しない
・Aさん「実は、性交のときに痛くて、性交渉を持つ日を指定されたりすると、とてもストレスになります。自分の仕事が忙しく、休んで病院に来るのも大変だし、不妊治療は受けたくないのです。夫は子どもを欲しがっているので、悪くて言えません。でも、一度きちんと話そうと思っています」と訴えた。

1.〇 正しい。不妊治療を受けないという本人の意思決定を支持する。性生活などの状況は、話しにくい事柄(センシティブな情報)でもある。個人情報保護に関するコンプライアンスプログラムの要求事項では、センシティブ情報の具体的項目に関して、以下の5項目を挙げている。①思想及び信条に関する事項、②政治的権利の行使に関する事項、③労働者の団体交渉に関する事項、④医療、性に関する事項、⑤犯罪の経歴、人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地など社会的差別の原因となる事項である。まずは、Aさん「実は、性交のときに痛くて、性交渉を持つ日を指定されたりすると、とてもストレスになります。自分の仕事が忙しく、休んで病院に来るのも大変だし、不妊治療は受けたくないのです。夫は子どもを欲しがっているので、悪くて言えません。でも、一度きちんと話そうと思っています」という意思を尊重し支持して心の支えになることが大切である。
2.× 不妊治療によって痛みは軽減することが多いと伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんは「自分の仕事が忙しく、休んで病院に来るのも大変だし、不妊治療は受けたくない」と訴えていることから、その意思に対し無視・否定していると受け取りかねないため。また、選択肢の「痛み」に関しては、性交痛なのか他の痛みなのか判断できない。
3.× 夫には性交痛のことは話さない方がよいと説明する必要はない。なぜなら、Aさんは、「一度きちんと話そうと思っています」と解決の方向に自ら進んでいることから、その意思に対し無視・否定していると受け取りかねないため。
4.× 妊娠すれば痛みの問題は「解決する」とは断定できない。なぜなら、選択肢の「痛み」に関しては、性交痛なのか他の痛みなのか判断できないため。またどのタイミングで生じて、どのような痛みなのか、原因がなんであるのか具体的に評価しないと容易に「解決する」と断定することはできない。
5.× 心療内科の治療が必要であると伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんは「「実は、性交のときに痛くて、性交渉を持つ日を指定されたりすると、とてもストレス」とはいっているものの身体に症状が現れているとは判断できないため。心療内科とは、様々なストレスが要因で、身体に症状が現れる症状を扱う診療科である。吐き気や頭痛、強い動悸が続く、下痢・腹痛、血圧が高くなる、ぜんそくなどの身体の不調の背景に、心理的なきっかけやストレスが思い当たる時は心療内科が専門となる。

 

 

 

 

 

次の文を読み54の問いに答えよ。
 開業助産師が、市の乳児家庭全戸訪問事業の委託を受けて、産後3か月のAさん(30歳、初産婦)宅を訪問した。Aさんには訪問に戸惑う様子がみられた。部屋は整理整頓されている。児は体温37.1℃、呼吸数32/分、心拍数110/分。定頸している。オムツかぶれはない。助産師は児の計測時、上腕内側に皮下出血があるのを認めた。児の表情は乏しく、あやしても笑わない。Aさんは落ち着きがなく、計測が終わるとすぐに助産師から児を取り上げた。児の出生体重は2,600g、1か月児健康診査時の体重は3,500gと母子健康手帳に記載があり、本日の児の体重は5,000gであった。助産師が皮下出血の原因をAさんに確認すると、「虫に刺された」と答えた。Aさん夫婦は1年前に転入してきて周囲に知り合いはいない。助産師は継続的な支援が必要だと感じた。児の4か月児健康診査は3週後である。

54 今後の対応で適切なのはどれか。

1.育児グループを紹介する。
2.1週後に助産師が再訪問する。
3.早急に地区担当保健師に連絡する。
4.4か月児健康診査でフォローアップする。

解答

解説

本症例のポイント

・市の乳児家庭全戸訪問事業:Aさん(30歳、初産婦、産後3か月)宅を訪問。
・児:体温37.1℃、呼吸数32/分、心拍数110/分。
・定頸し、オムツかぶれはないが、上腕内側に皮下出血
・児の表情:乏しく、あやしても笑わない。
・児の出生体重:2,600g、1か月児健康診査時:3,500g、本日:5,000g。
・Aさん:落ち着きがなく、計測が終わるとすぐに助産師から児を取り上げた。
・助産師が皮下出血の原因:Aさん「虫に刺された」と。
・Aさん夫婦:1年前に転入してきて周囲に知り合いはいない
・助産師は継続的な支援が必要だと感じた。
・児の4か月児健康診査は3週後である。
→Aさんの行動には何か不可解な点がいくつかあげられる。訪問時に戸惑いが見られた点や落ち着きがない点、また、計測が終わるとすぐに助産師から児を取り上げた点などがあげられる。加えて、児にも、上腕内側に皮下出血が見られたり、児の表情は乏しく、あやしても笑わない点からも「児童虐待」が疑われる。児童虐待は、①貧困、②孤立などが原因で起こりやすい。Aさん夫婦は、1年前に転入してきて周囲に知り合いはいないことから、孤立気味であることが考えられる。今後も周りのサポートは必須である。

1.× 育児グループを紹介する優先度は低い。なぜなら、Aさんから育児に対する不安や協力体制などについての要望が聞かれていないため。一方的に、育児グループを紹介することはお節介と思われかねないため、助産師が必要と考えても慎重に話を傾聴する必要がある。ちなみに、子育てサークルとは、親同士が子育てに関する情報交換や相互協力を、また子どもにとっては友達作りなどを行うサークルのことである。
2.4.× 1週後に助産師が再訪問する/4か月児健康診査でフォローアップする優先度は低い。なぜなら、現在すでに児童虐待が疑われるため。1週後にさらに何か状況が悪化しかねる可能性もあるため何かしらの対応が必要である。
3.〇 正しい。早急に地区担当保健師に連絡する。Aさんの行動には何か不可解な点がいくつかあげられる。訪問時に戸惑いが見られた点や落ち着きがない点、また、計測が終わるとすぐに助産師から児を取り上げた点などがあげられる。加えて、児にも、上腕内側に皮下出血が見られたり、児の表情は乏しく、あやしても笑わない点からも「児童虐待」が疑われる。児童虐待は、①貧困、②孤立などが原因で起こりやすい。Aさん夫婦は、1年前に転入してきて周囲に知り合いはいないことから、孤立気味であることが考えられる。今後も周りのサポート(ハイリスク)は必須であると考えられるため、早急に地区担当保健師への連絡が必要である。

 

 

 

 

次の文を読み55の問いに答えよ。
 自然災害発生後3日。助産師Aは被災地に派遣され、避難所に到着した。産褥2週の褥婦Bさんから「母乳の出が悪くなった気がする。母乳だけで赤ちゃんは大丈夫でしょうか」と相談を受けた。Bさんは妊娠40週0日で3,200gの児を出産し、完全母乳育児をしている。乳房トラブルはない。授乳回数は10〜12回/日。児は体重3,600g、尿8〜10回/日、便3、4回/日で、皮膚の色つやはよい。

55 現時点での助産師の対応で適切なのはどれか。

1.混合栄養を勧める。
2.児をあまり泣かさないよう伝える。
3.現在は母乳で足りていると伝える。
4.授乳回数を1日10回未満にすることを提案する。

解答

解説

本症例のポイント

・自然災害発生後:3日
・褥婦B(産褥2週)「母乳の出が悪くなった気がする。母乳だけで赤ちゃんは大丈夫でしょうか」と。
・褥婦B:妊娠40週0日3,200gの児(正常正期産児)を出産、完全母乳育児。
・乳房トラブルなし。
・授乳回数:10〜12回/日。体重:3,600g、尿:8〜10回/日、便:3、4回/日、皮膚の色つやはよい
→Bさんの児の状況から、正常な範囲から逸脱している項目を探してみる。Bさんの児は正常正期産児であり、体重も異常ない。正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は,出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。また、自然災害後、心理的ストレスが身体反応は母親にも発生する可能性もある。数日で治まることが多いが、発災後3〜7日(発災後数日間)は、動悸・めまい・震え・呼吸が速くなる・血圧上昇・発汗などの身体反応がみられる時期である。精神症状が1か月以上続くと心的外傷後ストレス障害(PTSD)となる。

1.× 混合栄養を勧める優先度が低い。なぜなら、児が十分な母乳を飲んでいるため。これは、授乳回数:10〜12回/日。体重:3,600g、尿:8〜10回/日、便:3、4回/日、皮膚の色つやはよいことからも読み取れる。ちなみに、具体的に児が十分に母乳を飲んでいるサインとしては、「24時間に少なくとも8回は母乳を飲んでいる」「尿がうすい色で、24時間に布おむつを 6〜8枚濡らす」「24時間に3〜8回排便がある」などが挙げられる。
2.× 児をあまり泣かさないよう伝える優先度が低い。なぜなら、自然災害後、Bさんだけでなく児も不安が強い時期である。児が泣くのはコミュニケーションのたった一つの手段である。暑い、寒い、おなかがすいた、眠い、痛い、かゆいなどの生理的な要求を泣いて知らせるため、泣かさないように関わるのは困難である。
3.〇 正しい。現在は母乳で足りていると伝える。なぜなら、児が十分な母乳を飲んでいるため。これは、授乳回数:10〜12回/日。体重:3,600g、尿:8〜10回/日、便:3、4回/日、皮膚の色つやはよいことからも読み取れる。ちなみに、具体的に児が十分に母乳を飲んでいるサインとしては、「24時間に少なくとも8回は母乳を飲んでいる」「尿がうすい色で、24時間に布おむつを 6〜8枚濡らす」「24時間に3〜8回排便がある」などが挙げられる。
4.× 授乳回数を1日10回未満にすることを提案する優先度が低い。なぜなら、10回前後の授乳回数が平均的であるため。あえて10回未満にすることで、Bさんの「母乳の出が悪くなった気がする。母乳だけで赤ちゃんは大丈夫でしょうか」という2つの不安は解決しない。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)