第103回(R2) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 定期予防接種で生後3か月から接種が可能になるのはどれか。

1.肺炎球菌ワクチン
2.ロタウイルスワクチン
3.四種混合<DPT-IPV>ワクチン
4.麻しん風しん混合<MR>ワクチン
5.インフルエンザ菌b型<Hib>ワクチン

解答

解説

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

1.× 肺炎球菌ワクチンは、生後2か月から接種が可能である。肺炎球菌ワクチンとは、肺炎球菌感染症を予防する定期接種の不活化ワクチンである。生後2ヶ月〜満5歳までの間に4回打つ。
2.× ロタウイルスワクチンは、生後2か月から接種が可能である。ロタウイルスワクチンは、乳児に多い急性胃腸炎を予防するワクチンである。令和2(2020)年10月1日から定期接種となる。令和2年8月生まれ以降の乳児が対象で、初回接種の標準的な接種期間は、生後2か月から生後15週未満である。
3.〇 正しい。四種混合<DPT-IPV>ワクチンは、生後3か月から接種が可能である。四種混合〈DPT-IPV〉ワクチンは、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの4種類を予防する定期接種の不活化ワクチンである。生後3ヶ月〜7歳6ヶ月未満のうちに4回打つ。
4.× 麻しん風しん混合<MR>ワクチンは、生後12か月から接種が可能である。麻しん風しん混合〈MR〉ワクチンは、麻しん・風しんを予防する定期接種の生ワクチンである。1歳〜満2歳未満のうちに1回、6歳になる年度(4/1〜翌年3/31)に1回打つ必要がある。
5.× インフルエンザ菌b型<Hib>ワクチンは、生後2か月から接種が可能である。対象年齢は生後2か月から5歳に至るまでである。ちなみに、Hib感染症とは、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型という細菌によって発生する病気で、そのほとんどが5歳未満で発生し、特に乳幼児で発生に注意が必要である。主に気道の分泌物により感染を起こし、症状がないまま菌を保有(保菌)して日常生活を送っている子どもも多くいる。

 

 

 

 

 

17 Aさん(75歳)。性器脱と診断され、ペッサリーの挿入により症状が改善していた。最近、帯下に少量の出血が混じるため産婦人科を受診した。ペッサリーと接する腟壁に浅いびらんがあり、少量出血を認める。超音波検査では子宮、付属器は正常で、子宮頸部の細胞診では異常はない。
 出血の改善に有効な腟錠の成分はどれか。

1.イソコナゾール
2.エストリオール
3.プロゲステロン
4.メトロニダゾール
5.クロラムフェニコール

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(75歳、性器脱)
・ペッサリーの挿入:症状改善。
・最近:帯下に少量の出血が混じる。
・ペッサリーと接する腟壁に浅いびらんがあり、少量出血を認める。
・超音波検査:子宮、付属器は正常
・子宮頸部の細胞診:異常なし
→本症例は、老人性膣炎が疑われる。萎縮性腟炎(老人性腟炎)は、主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するために起こる炎症である。治療は、エストロゲンの補充が第1選択になる。膣の中に入れるエストロゲンの錠剤や飲み薬を使い、性交痛に対しては潤滑ゼリーの併用も効果的である。 また、細菌感染を合併している場合は抗生剤を併用する。本症例は、上記症状と超音波検査や子宮頸部の細胞診が異常がなかったため老人性膣炎が疑われる。ちなみに、ペッサリーとは、ドーム形をしたゴム製のカップで、腟から挿入して子宮頸部にかぶせて使用し、骨盤臓器脱の保存的治療に用いられることが多い。また、避妊用として使われるが、産後6週間以降使用できる。ペッサリーは①体重の増減が4.5キログラム以上あった場合、②1年以上使用している場合、③出産や中絶をした場合には、腟の大きさや形が変化することがあるためサイズを合わせ直す必要がある。

1.× イソコナゾールとは、カンジタに起因する腟炎および外陰腟炎に効果的な抗真菌薬である。
2.〇 正しい。エストリオールは、出血の改善に有効な腟錠の成分である。エストリオールとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)で、更年期障害の症状、腟炎、子宮腟部びらんなどに用いられる。
3.× プロゲステロンとは、黄体ホルモンを補う薬剤であり、生理不順や無月経、機能性子宮出血の治療に用いられる他、乳がんや子宮がんなどのエストロゲン依存性のがん細胞の増殖を抑える。
4.× メトロニダゾールとは、細菌性腟炎やトリコモナス症などの特定の性感染症に用いられる抗菌薬である。
5.× クロラムフェニコールとは、細菌性腟炎に用いられる抗菌薬である。

 

 

 

 

18 Aさん(32歳、初妊婦)。妊娠6週に、四肢と体幹に軽度の隆起を伴う紅色の皮疹が多発しているのが確認された。妊娠前に外陰部の腫瘤を自覚していたが、自然に消失したという。産婦人科で梅毒血清反応と梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>を行ったところ、いずれも陽性であった。
 Aさんへの治療で正しいのはどれか。

1.γ-グロブリンの投与を行う。
2.ペニシリン系抗菌薬を投与する。
3.妊娠12週以降に治療を開始する。
4.陰圧室に隔離して治療を行う必要がある。
5.梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>が陰性となるまで治療を継続する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初妊婦)。
・妊娠6週:四肢と体幹に軽度の隆起を伴う紅色の皮疹が多発。
・妊娠前:外陰部の腫瘤を自覚していたが、自然に消失した。
梅毒血清反応梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>:いずれも陽性
→本症例は、梅毒(第2期:感染後3か月経過)が疑われる。梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータの一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。

【臨床的特徴】
Ⅰ期梅毒:感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒:感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
経過晩期:感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。また、妊婦における梅毒感染は、先天梅毒のみならず、流産及び死産のリスクとなる。(※一部引用:「梅毒」厚生労働省HPより)

1.× γ-グロブリンの投与は「行わない」。γ-グロブリンの投与は血液型不適合妊娠の治療で行う。他にもGuillain-Barré症候群にも大量静注療法として実施される。
2.〇 正しい。ペニシリン系抗菌薬を投与する。梅毒とは、性感染症の一種で、梅毒トレポネーマという細菌が粘膜から感染することによって起こる。感染後3~6週間前後の潜伏期間後に性器、肛門、口などの感染部位にしこり、びらん、潰瘍などが現れるが、治療をしなくても一定期間が過ぎると最初の症状は消える。感染後数ヶ月すると手のひらや足の裏を含めた全身に赤い斑点(バラ疹)が広がる。本症例のように、梅毒血清反応、梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>がいずれも陽性であれば、早期に母体にペニシリン系抗菌薬の投与を開始する。期間は4~6週間である。
3.× 「妊娠12週以降」ではなくできるだけ早期に治療を開始する。梅毒は胎盤を通過して胎児にも感染するリスクや流早産の原因となるため、陽性を発見したら早期の治療が必要である。妊娠4~12週で梅毒検査を行う。本症例のように、梅毒血清反応、梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>がいずれも陽性であれば、早期に母体にペニシリン系抗菌薬の投与を開始する。梅毒トレポネーマは感染後3~4週間で梅毒血清反応が陽性となり、2週間後梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>が陽性となる。梅毒トレポネーマは胎盤を介して児に感染するため、妊娠18週までに治療を始めるのが望ましい。
4.× 陰圧室に隔離して治療を行う必要はない。なぜなら、梅毒は性感染症であり、空気感染ではないため。陰圧室とは、室内の空気や空気感染する可能性のある細菌が外部に流出しないように、気圧を低くしてある病室のことである。空気感染隔離室とも呼ばれる。主に、空気感染力が高い疾患(結核やSARS、水痘、麻疹)の治療室として使用される。
5.× 「梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>」ではなく、梅毒血清反応が陰性となるまで治療を継続する。梅毒トレポネーマ抗体血清検査<TPHA>は治癒後も陽性となる。

(図引用:「梅毒診療ガイド」日本性感染症学会)

 

 

 

 

 

19 Aさん(19歳、初妊婦、飲食店勤務)。20歳の会社員Bさんと同居している。Bさんとの間での妊娠が判明して産婦人科で妊婦健康診査を受けていた。Bさんは妊娠を喜んでいて出産を楽しみにしているが、AさんはBさんの家族との関係が悪く、入籍の予定はないと言う。Aさんは産後に1年の育児休業を予定している。
 出産に向けた準備を進める上で、助産師が確認する情報で最も重要なのはどれか。

1.自宅の広さ
2.Aさんの通勤時間
3.Aさんの家族関係
4.分娩費用の準備状態
5.Aさんの母乳育児の希望

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(19歳、初妊婦、飲食店勤務)
・同居:会社員Bさん(20歳)
・妊婦健康診査:妊娠が判明
・Bさん「妊娠を喜んでいて出産を楽しみにしているが、AさんはBさんの家族との関係が悪く、入籍の予定はない」と。
・Aさん:産後に1年の育児休業を予定。
→Aさんは19歳妊娠が判明した。一般的に「若年の妊婦」で特定妊婦に分類される。特定妊婦とは、妊娠中から家庭環境におけるハイリスク要因を特定でき、出産前の支援が必要な妊婦のことである。ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがある。したがって、Aさんには周りのサポート(特に家族から)が必要であるが「AさんはBさんの家族との関係が悪い」。家族関係は、出産に向けた準備を進める上で、助産師が確認する情報で最も重要にするべきである。

1.× 自宅の広さより優先度が高いものが他にある。なぜなら、設問文から自宅の広さについての記載が読み取れないため。
2.× Aさんの通勤時間より優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは産後1年の育児休業を予定しているため。
3.〇 正しい。Aさんの家族関係は、助産師が確認する情報で最も重要である。なぜなら、AさんはBさんの家族との関係が悪く、Bさんの家族から育児のサポートを受けられない可能性があるため。Aさんの家族関係を確認し、Bさん以外に育児をサポートできる家族がいるのか確認する必要がある。
4.× 分娩費用の準備状態より優先度が高いものが他にある。なぜなら、設問文から金銭面についての記載が読み取れないため。また、AさんBさんともに働いている。
5.× Aさんの母乳育児の希望より優先度が高いものが他にある。なぜなら、現在、妊娠が判明した段階であるため。まずは出産までのサポートの確保を想定し計画を立てる。

 

 

 

 

20 29歳の1回経産婦。妊娠40週1日。陣痛発来で入院となり、その後破水した。破水時の内診所見は子宮口4cm開大、展退度70%、Station-2で、羊水流出が持続的に認められた。胎児心拍数陣痛図の所見で軽度の変動一過性徐脈が認められ、連続モニタリングを行っていたが、破水から2時間後、突然遷延一過性徐脈が出現し、臍帯脱出が疑われた。
 助産師が産婦に対して最初に行うのはどれか。

1.側臥位への体位変換
2.羊水流出量の確認
3.深呼吸の促し
4.血圧測定
5.内診

解答

解説

本症例のポイント

・29歳:1回経産婦(妊娠40週1日)
・陣痛発来:入院、その後破水。
・破水時の内診所見:子宮口4cm開大、展退度70%、Station-2、羊水流出が持続的に認められた。
・胎児心拍数陣痛図:軽度の変動一過性徐脈
・破水から2時間後:突然、遷延一過性徐脈が出現、臍帯脱出が疑われた。
→本症例は、臍帯脱出が疑われた。臍帯脱出は、胎児の状態の急速な悪化を伴うことが多く、緊急に児を娩出しないと児の予後が不良となるため急速遂娩をする。したがって、できるだけ早く臍帯脱出を診断し対応が必要である。臍帯脱出とは、胎児より先に臍帯が腟を通過することである。臍帯脱出が起きると胎児への血液供給が断たれてしまうため、まずは腟鏡診や内診によって臍帯を直接観察し診断する必要がある。ちなみに、遷延一過性徐脈とは、心拍数減少が15bpm以上で、開始から回復まで2分以上10分未満の波形をいう。その心拍数減少は直前の心拍数より算出される。10分以上の心拍数減少の持続は基線の変化とみなす。最下点が80bpm未満のものは高度遷延一過性徐脈と呼ばれる。

1.× 側臥位への体位変換は、主に仰臥位低血圧症候群の予防に対し行う。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際、妊娠子宮や腫瘤が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫し、それにより右心房への静脈還流量が減少するため、心拍出量が減少し低血圧となるものである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。突然にショックとなり、頻脈、悪心・嘔吐、冷汗、顔面蒼白などの症状を呈する。対応としては、患者を仰臥位から左側臥位にし、右心系に血液が戻ってくるようにすることで、症状は速やかに回復する。(※参考:「仰臥位低血圧症候群」日本救急医学会HPより)
2.× 羊水流出量の確認より優先度が高いものが他にある。羊水流出量の確認することにより、羊水過多もしくは過少を評価できる。羊水過多症とは、生理的な羊水量の範囲を大きく超え、これにより子宮が大きくなって圧迫感や子宮収縮、子宮頸管長の短縮などの症状が出現している状態をいう。羊水過多は胎児奇形、多胎妊娠、母体糖尿病、および様々な胎児疾患により起こりうる。 羊水過多は早期子宮収縮、前期破水、母体の呼吸障害、胎位異常または胎児死亡、ならびに陣痛および分娩時の様々な問題のリスクの上昇と関連する。羊水量に問題はないかを判断する目安として、子宮底長を用いられることがあるが、産婦人科ガイドラインでは子宮底長、腹囲の測定の有用性は認められないと報告されている。羊水過多の基準として、AFI24以上のことをいう。ちなみに、羊水過少はAFI5以下をいう。AFI(amniotic fluid index)とは、子宮の各4分の1について羊水深度を垂直に計測した値の合計である。
3.× 深呼吸の促しは優先度が低い。なぜなら、本症例は臍帯脱出が疑われている状態であるため。臍帯脱出は、胎児の状態の急速な悪化を伴うことが多く、緊急に児を娩出しないと児の予後が不良となるため急速遂娩をする。遂娩とは、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術である。正常分娩の場合、深呼吸は陣痛を感じた時に、最初に行う基本的な呼吸方法である。娩出開始から子宮口全開(破水)までの間で行うことが多い。
4.× 血圧測定は優先度が低い。なぜなら、本症例は臍帯脱出が疑われている状態であるため。臍帯脱出と確定診断された場合、胎児への血流が断たれないように帝王切開により分娩する必要があるため、その際には全身状態を把握する。
5.〇 正しい。内診を産婦に対して最初に行う。臍帯脱出とは、胎児より先に臍帯が腟を通過することである。臍帯脱出が起きると胎児への血液供給が断たれてしまうため、まずは腟鏡診や内診によって臍帯を直接観察し診断する必要がある。内診により頭囲か骨盤位であるか確認し、頭囲で臍帯脱出の場合は児頭を内診指で持ち上げて臍帯の圧迫を解除する必要がある。可能ならば医師に連絡し、医師が到着するまで骨盤高位にする。

 

 

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