第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午後11~15】

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11 産婦の状態と、産婦に勧める体位の組合せで適切なのはどれか。

1.前回分娩所要時間が3時間の既往:座位
2.第1期潜伏期に疲労が強い:側臥位
3.第1期活動期に強い腰痛の訴えがある:仰臥位
4.児娩出直後に胎盤剝離出血がみられる:四つん這い

解答

解説

1.× 前回分娩所要時間が3時間の既往に対し、座位は適さない。なぜなら、座位は①産道が広がり、②児が下降しやすく、③分娩時間が短くなるため。経産婦は産道の通過経験があり、初産婦よりもリラックスしやすくいきみ方も上手である場合が多い。一般的に、分娩全体に要する時間は、平均すると初産で約14時間、経産で約8時間である。
2.〇 正しい。第1期潜伏期に疲労が強い場合側臥位が推奨される。第1期潜伏期とは、陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態までの期間である。初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる。児頭の下降はやや遅くなり、疲労が強い場合や眠い時には側臥位を促し、陣痛の間隔が伸びるのでその合間に休むことができる。
3.× 第1期活動期の強い腰痛の訴えに対し、仰臥位は適さない。第1期活動期とは、子宮口が4〜10cmに開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる期間である。初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかり、いきみたくなる。腰痛の訴えがある状態で仰臥位になると、重力により子宮の圧迫で腰に負担がかかりさらに腰痛を悪化させる可能性が高い。したがって、四つ這い側臥位立位を促すことが推奨される。
4.× 児娩出直後の胎盤剝離出血に対し、四つん這いは適さない。なぜなら、四つん這いは介助しにくく胎盤娩出が行えないため。四つん這い分娩座位分娩フリースタイル分娩(立位)も同様である。児娩出直後の胎盤剝離出血していた場合、①介助しやすく、②胎盤娩出、③子宮収縮の状況を確認するためにも仰臥位が推奨される。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

 

12 Aさん(35歳、初産婦)。3,300gの児を正常分娩した。分娩所要時間は15時間30分で出血量は350mL。会陰裂傷はⅡ度で縫合術施行。分娩後1時間経過した時点で「縫ったところが、急にとても痛くなってきた。腟の奥も圧迫されてる感じがする」と訴えがあった。体温37.5 ℃、脈拍84/分、血圧122/66mmHg。出血量は35mL、子宮底は臍高で硬度は良好だった。
 このときの助産師の対応で最も適切なのはどれか。

1.トイレで排尿を促す。
2.会陰および腟部を診察する。
3.鎮痛薬の処方を医師に依頼する。
4.1時間後に出血量を確認すると説明する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、初産婦)
・正常分娩:3,300gの児、15時間30分(分娩所要時間)、350mL(出血量)
・会陰裂傷:Ⅱ度で縫合術施行。
・分娩後1時間経過:「縫ったところが、急にとても痛くなってきた腟の奥も圧迫されてる感じがする」と。
・体温37.5 ℃、脈拍84/分、血圧122/66mmHg。
・出血量:35mL、子宮底:臍高で硬度は良好
→本症例は、外陰部血腫膣壁血腫が考えられる。なぜなら、子宮収縮良好で①縫合部の急な痛み、②膣の圧迫感の訴えがあげられるため。児を娩出したあと、産道の表面は切れていなくても、皮下の血管が破れて出血し、血液が固まってしまうことがある。外陰部に内出血ができた場合は「外陰血腫」、腟に内出血ができた場合は「膣壁血腫」という。医学的治療はガーゼ圧迫や切開による血腫除去である。

1.× トイレで排尿を促す優先度は低い。なぜなら、現在分娩後1時間であり、また尿意がないなどの訴えは聞かれていないため。ちなみに、産後は膀胱の感覚が鈍くなることがあるため、病院のスタッフは母親に少なくとも4時間おきに定期的に排尿するように促す。膀胱に尿がたまりすぎるのを防ぎ、膀胱感染を予防できる。
2.〇 正しい。会陰および腟部を診察する。本症例は、子宮収縮良好で①縫合部の急な痛み、②膣の圧迫感の訴えがあげられるため外陰部血腫膣壁血腫が考えられる。まずは、会陰および腟部を診察し異常の有無を確認する必要がある。医学的治療はガーゼ圧迫や切開による血腫除去を行う。
3.× 鎮痛薬の処方を医師に依頼する優先度は低い。なぜなら、痛みの原因の特定ができていないため。鎮痛薬にもさまざま種類があるため、鎮痛薬の処方を依頼する前に縫合部や腟の状態を確認する必要がある。
4.× 1時間後に出血量を確認すると説明する優先度は低い。なぜなら、現在縫合部の疼痛や腟の圧迫感の訴えがあるため。外陰部血腫や膣壁血腫の症状として、最悪ショック症状になることもある。選択肢2.会陰および腟部を診察することが優先される。

会陰裂傷の重症度

第1度:会陰の皮膚、腟壁粘膜のみに限局し、筋層には達しない裂傷。
第2度:会陰筋層まで及ぶが、肛門括約筋には達しない裂傷。
第3度:肛門括約筋や腟直腸中隔に達する裂傷。
第4度:第3度裂傷に加え、肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴う裂傷。

 

 

 

 

13 早産期の前期破水について正しいのはどれか。

1.発症後分娩まで1週間以上かかることが多い。
2.診断後に頸管縫縮術を行う。
3.抗菌薬の投与を行う。
4.初産婦に多い。

解答

解説

MEMO

早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことである。ちなみに、妊娠22週未満の出産は流産である。

前期破水とは、陣痛開始前のいずれかの時点で胎児の周りの羊水が流れ出ることである。多くの場合、破水後まもなく陣痛が始まる(約70~80%が1週間以内)。破水して6~12時間以内に陣痛が始まらない場合には、妊婦と胎児の感染リスクが上昇する。

1.× 発症後分娩まで1週間以上かかることが「多い」のではなく少ない。多くの場合、破水後まもなく(12~48時間以内)陣痛が始まる(約70~80%が1週間以内)。破水して6~12時間以内に陣痛が始まらない場合には、妊婦と胎児の感染リスクが上昇する。34週より前に破水した場合には陣痛が始まるまで4日以上かかることもあるが、分娩まで1週間以上はかけないことが多い。ちなみに、早産期の前期破水では34週までは分娩を遅らせたいため管理入院が必要となる。
2.× 診断後に頸管縫縮術を行うのは、「早産期の前期破水」ではなく頸管無力症などに適応となる。子宮頸管無力症とは、陣痛などの下腹部痛や性器出血などの症状がないが子宮頸管が開いてきてしまう状態のことを言い、流産や早産の原因となってしまうことがある。頸管縫縮術とは、子宮口を縛る手術で、頸管無力症など主に切迫早産の可能性があり、35週の終わり頃まで妊娠を継続させるために行われる。シロッカー法やマクドナルド法などがある。早産期の前期破水の場合は、感染に配慮する必要があるため行われない。
3.〇 正しい。抗菌薬の投与を行う。なぜなら、早産の絨毛膜羊膜炎は50~70%みられるため、その可能性を考慮して予防的に投与されるため。また、34週未満の早産期による破水は分娩を遅らせたいため、破水が確認された時点から抗菌薬を投与する。陣痛を誘発する可能性のある感染症を治療することにより分娩を遅らせ、新生児の感染症リスクも抑えることができる。エリスロマイシン、アンピシリン、およびアモキシシリンなどの抗菌薬を静脈内投与し、数日間は内服する。
4.× 初産婦に多いとは一概にはいえない。なぜなら、前期破水の原因として、炎症や感染で卵膜が軟らかく変化して破れやすくなった場合や咳や重い荷物を持つなどで急激に腹圧が高まった場合などあるため。

絨毛膜羊膜炎とは?

絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。

 

 

 

 

 

 

14 Aさん(31歳、初産婦)。妊娠30週3日で下腹部痛を訴え、かかりつけ医を受診し、子宮口2cm開大、切迫早産のため周産期医療センターに搬送された。搬送後、分娩が進行し経腟分娩となった。Aさんは、助産師がバースレビューを実施した際に「早く産まれたのでNICUに入院して一緒にいられない。おっぱいは張ってきたけど飲ませてあげられない」と話した。
 助産師の対応で最も適切なのはどれか。

1.「無事に出産できたことを受け入れましょう」
2.「早産になってしまった原因について考えましょう」
3.「直接授乳できなくても搾乳した母乳はあげられます」
4.「お母さんは先に退院できるので、その間に体調を整えましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(31歳、初産婦)。
妊娠30週3日:下腹部痛、子宮口2cm開大、切迫早産のため周産期医療センターに搬送された。
・搬送後:分娩が進行し経腟分娩。
・助産師がバースレビューを実施した。
・Aさん「早く産まれたのでNICUに入院して一緒にいられない。おっぱいは張ってきたけど飲ませてあげられない」と。
→バースレビューとは、分娩後のお母さんに、今回のお産の体験について振り返ってもらい、お産は想像した通りだったのか、どんなことを 感じていたのかなどを、お産をご一緒した助産師と話し合う機会を持つものである。本症例の場合、Aさんが「早く産まれたのでNICUに入院して一緒にいられない。おっぱいは張ってきたけど飲ませてあげられない」と訴えていることから、児がNICUにいて一緒にいられないことが伝えられている可能性が高い。一緒にいられないがゆえにおっぱいを飲ませてあげられないと考えている可能性が高い。

1.4.× 「無事に出産できたことを受け入れましょう」「お母さんは先に退院できるので、その間に体調を整えましょう」と伝えるより優先度が高いものが他にある。無事に出産できたことよりも先に児と一緒にいることができず、母乳もあげられないと思っている今のAさんの心境に寄り添った言動が必要である。
2.× 「早産になってしまった原因について考えましょう」と伝えるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、早産になってしまった原因について考えることは、Aさんに罪悪感や自責、喪失感を持たせることにつながりかねないため。
3.〇 正しい。「直接授乳できなくても搾乳した母乳はあげられます」と伝える。本症例の場合、Aさんが「早く産まれたのでNICUに入院して一緒にいられない。おっぱいは張ってきたけど飲ませてあげられない」と訴えていることから、児がNICUにいて一緒にいられないことが伝えられている可能性が高い。一緒にいられないがゆえにおっぱいを飲ませてあげられないと考えている可能性が高い。直接授乳できなくても搾乳した母乳はあげられることを伝え、またお母さんが退院した後も搾乳した母乳を与えられるように冷凍保存する方法を指導する。

 

 

 

 

 

15 妊産婦のための食事バランスガイドにおいて、母乳栄養を行っている褥婦の主食の1日付加量として適切なのはどれか。

1.うどん1杯分
2.おにぎり1個分
3.もりそば1杯分
4.ロールパン1個分

解答

解説

(※図引用:「妊産婦のための食事バランスガイド」厚生労働省HPより)

1.3.× うどん1杯分/もりそば1杯分は、2つ分の量である。ちなみに、スパゲッティも同様で2つ分の量である。
2.〇 正しい。おにぎり1個分が、母乳栄養を行っている褥婦(妊娠末期と授乳期)の主食の1日付加量である。同様の量はご飯小盛り1杯、食パン1枚、ロールパン2個分である。設問で提示されている「母乳栄養を行っている褥婦」は、授乳期と読み取れ、授乳期は「+1」となっている。
4.× ロールパンは、「1個分」ではなく2個分が、母乳栄養を行っている褥婦(妊娠末期と授乳期)の主食の1日付加量である。

 

 

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