第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午後36~40】

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次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(36歳、会社員)。妊娠歴なし。夫(40歳、会社員)と2年前に結婚した。結婚後なかなか妊娠しないため、不妊専門クリニックを初回受診した。Aさんの月経周期は30日型で規則的、持続期間6〜7日である。半年ほど前から月経時の下腹部痛が強くなっているのを自覚している。次の月経は1週後の予定であるという。夫婦ともに既往歴と家族歴に特記すべきことはない。

36 初回受診時に行う検査で適切なのはどれか。

1.Huhner〈フーナー〉試験
2.経腟超音波検査
3.抗精子抗体検査
4.卵管通色素検査
5.Aさんの染色体検査

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(36歳、会社員、妊娠歴なし)
結婚後なかなか妊娠しない
・2年前結婚:夫(40歳、会社員)
・月経周期:30日型で規則的、持続期間6〜7日。
・半年ほど前:月経時の下腹部痛が強くなっているのを自覚。
・次の月経:1週後の予定。
・夫婦ともに既往歴と家族歴に特記すべきことはない。
→本症例は、「結婚後なかなか妊娠しないため、不妊専門クリニックを初回受診」していることから、挙児希望と考えられる。挙児希望とは、医療現場では来院時に子どもを生むことを希望している場合を呼ぶ。ただし、施設や論文の中で、それぞれ厳密に異なるときがあり、すぐにではなくとも将来的に子どもを望んでいれば 「挙児希望」に含まれることもある。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編 2020 P133」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.× Huhner〈フーナー〉試験(性交後検査)とは、頸管粘液中の精子の数と動きを調べることで、子宮内に十分な精子が侵入しているかどうかを推測する検査である。排卵期の静甲後に、子宮頚管粘液を採取し運動精子を観察する。粘液中に精子が確認できなければ無精子症や抗精子抗体、子宮頸管炎などが疑われる。
2.〇 正しい。経腟超音波検査は、初回受診時に行う検査として優先される。なぜなら、本症例は、「結婚後なかなか妊娠しないため、不妊専門クリニックを初回受診」していることから、挙児希望と考えられるため。経腟超音波検査とは、子宮や卵巣などを観察するための検査である。子宮の形態異常の有無や月経前の子宮内膜の厚さなど得られる。月経痛や過多月経、貧血などの症状が見られる場合は子宮や卵巣の疾患が疑われる。
3.× 抗精子抗体検査とは、抗精子抗体が陽性か調べる血液検査である。抗精子抗体とは、女性側で不妊の原因となる精子を外敵とみなし、精子の動きを妨げる働きがある抗体のことである。上記図「不妊症の原因検索としての一次検査は?」には、抗精子抗体検査は含まれない。
4.× 卵管通色素検査とは、子宮鏡を見ながら、卵管の通過性を評価する検査である。卵管の狭窄・閉塞が疑われる場合に行われる。
5.× Aさんの染色体検査より優先度が高いものが他にある。染色体検査とは、遺伝する病気を発症した家族がいるが、自分が同じ病気を将来発症するかどうかや遺伝子の変異を持つ保因者かどうかを確認するために行われる。流産を繰り返すときなどに実施する。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(36 歳、会社員)。妊娠歴なし。夫(40 歳、会社員)と2年前に結婚した。結婚後なかなか妊娠しないため、不妊専門クリニックを初回受診した。Aさんの月経周期は30 日型で規則的、持続期間6〜7日である。半年ほど前から月経時の下腹部痛が強くなっているのを自覚している。次の月経は1週後の予定であるという。夫婦ともに既往歴と家族歴に特記すべきことはない。

37 初回受診後に、まず不妊原因についてのAさんのスクリーニング検査が開始された。その結果、血清クラミジア抗体検査が陽性であった。クラミジアの治療を行ったことはないという。子宮頸管分泌物の核酸増幅法検査では陰性である。抗菌薬の内服治療後に実施した子宮卵管造影検査の結果、左右卵管の通過性には問題がなかった。
 クリニックの助産師のAさんへの説明で正しいのはどれか。

1.「クラミジアの検査結果は夫に話す必要はありません」
2.「クラミジア感染が不妊の原因です」
3.「妊娠しても流産しやすい状態です」
4.「治療しても抗体は陽性のままです」

解答

解説

本症例のポイント

・不妊原因についてのAさんのスクリーニング検査が開始。
・血清クラミジア抗体検査:陽性
・子宮頸管分泌物の核酸増幅法検査:陰性
・クラミジアの治療を行ったことはない。
・抗菌薬の内服治療後に実施した子宮卵管造影検査の結果、左右卵管の通過性には問題がなかった
→女性のクラミジア性器感染症は、放置すると子宮頚部から腹腔内へと進展し、子宮付属器炎や骨盤内炎症性疾患も発症する。しかし、無症状である場合が多く、卵管障害や卵管性不妊症が判明して、はじめて診断されるケースもある。そういう意味で、女性のクラミジア感染症は、男性に比して症状が軽度である一方で、合併症や後遺症などが深刻な問題になる場合が多いといえる。一般的にクラミジアによる症状は非特異的で、帯下(おりもの)増量、不正出血、下腹痛、性交痛などである。主な合併症:①子宮頸管炎、②子宮付属器炎、③骨盤腹膜炎、④肝周囲炎、⑤咽頭感染などである。クラミジアの検査方法は大きく2種類、①抗体検査と②抗原検査に分けられ、①抗体検査はクラミジアに対する抗体があるか調べる検査で、②抗原検査はクラミジアそのものの存在を調べる検査である。

1.× クラミジアの検査結果を、夫に話す必要がある。なぜなら、クラミジアは性感染症であり、パートナーである男性も抗菌剤で一緒に治療するため。性感染症の特性として、パートナーが存在するので治療行為はその双方に対して同時に行わなければならない。無症状なことが多いセックス・パートナーに対する検査と治療を泌尿器科と連携しながら行うことや性交の中止、コンドームの使用をすすめる必要がある。
2.× 不妊の原因が、クラミジア感染と断言することはできない。なぜなら、本症例は設問より「抗菌薬の内服治療後に実施した子宮卵管造影検査の結果、左右卵管の通過性には問題がなかった」と記載されているため。クラミジア抗体が陽性であっても、すべての方が卵管性不妊というわけではなく自然妊娠する。ただし、頻度はまれであるがクラミジア感染症が悪化すると、子宮頚管炎や骨盤内炎症疾患を生じさせることがあり、これらは不妊の原因となりうる。
3.× 妊娠しても流産しやすい状態と断言することはできない。なぜなら、本症例の子宮頸管分泌物の核酸増幅法検査は陰性であったため。例えば、妊娠中にクラミジアによる頸管炎が起こると絨毛羊膜炎となり、流産・早産の原因となる。クラミジア感染が流産しやすい状態であるわけではない。
4.〇 正しい。治療しても抗体は陽性のままである。クラミジア抗体とは、過去にクラミジアに感染したかがわかるものである。つまり、治療しても抗体は陽性である。ちなみに、抗生物質の服用により、クラミジアの抗原は消失する。

絨毛膜羊膜炎とは?

絨毛膜羊膜炎は、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。 この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。 したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。

抗原、抗体って何者?

抗原とは、感染症における細菌やウイルスそのものを指しますが、 抗原となるものは細菌やウイルスなどの病原体に限りません。花粉症の人に対する花粉や、卵アレルギーの人に対する卵など、生体に入った際に免疫反応を起こす物質の総称を抗原と呼びます。
抗体とは、生体内に侵入した異物(抗原)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する物質です。生体には、異物が侵入した場合に、その異物に合う抗体を作ることができる機能(免疫機能)が備わっています。

(一部引用:「抗原検査と抗体検査」)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(36 歳、会社員)。妊娠歴なし。夫(40 歳、会社員)と2年前に結婚した。結婚後なかなか妊娠しないため、不妊専門クリニックを初回受診した。Aさんの月経周期は30 日型で規則的、持続期間6〜7日である。半年ほど前から月経時の下腹部痛が強くなっているのを自覚している。次の月経は1週後の予定であるという。夫婦ともに既往歴と家族歴に特記すべきことはない。

38 その後、夫の精液検査が行われて、重度の乏精子症であることが確認された。夫婦で夫の検査結果の説明を受けた後、2人ともできるだけ早く効果が期待できる治療に臨みたいと希望している。
 今後の不妊治療で優先されるのはどれか。

1.漢方療法
2.タイミング法
3.顕微授精〈ICSI〉‐胚移植
4.提供精子を用いた人工授精

解答

解説

本症例のポイント

・夫の精液検査:重度の乏精子症
・夫婦で夫の検査結果の説明を受けた後:2人ともできるだけ早く効果が期待できる治療に臨みたいと希望。
→乏精子症とは、精子の数が一般的な数値よりも少ない状態である。乏精子症の程度によって、軽度・中等度・高度に分けられる。正常値:1ccあたり1500万以上。1500万以下:軽度、1000万以下:中等度、500万以下:高度と区分される。

1.× 漢方療法とは、東洋医学の理論に基づいて処方される医薬品(漢方薬)を用いて行う治療のことを指す。漢方療法の特徴として、治療効果はゆっくりで、不妊治療では主に排卵障害に用いられることが多い。多くは排卵を整えるホルモン剤と併用して使用される。本症例の場合は、「2人ともできるだけ早く効果が期待できる治療」を希望している。
2.× タイミング法とは、「最も妊娠しやすいタイミングに性交渉を行う」方法である。基礎体温や超音波検査、尿中黄体形成ホルモン検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的な性交渉のタイミングをアドバイスする。もっとも自然な妊娠に近く、お二人にとって負担の少ない不妊治療のファーストチョイスであるが、本症例の場合は、「2人ともできるだけ早く効果が期待できる治療」を希望している。
3.〇 正しい。顕微授精〈ICSI〉‐胚移植が今後の不妊治療で優先される。顕微授精〈ICSI〉とは、なるべく形がよく運動性も良好な厳選した精子を顕微鏡下で吸引し、直接卵子に注入し受精させる方法である。本症例の乏精子症だけでなく、精子の数が少ない、動きが良くない、奇形精子が多い、精子先体異常などの場合も適応となる。本症例の「2人ともできるだけ早く効果が期待できる治療」にも該当する。
4.× 提供精子を用いた人工授精とは、無精子症など絶対的男性不妊の場合に適用される方法で、第三者からの提供精子を用いた人工授精法を指す。本症例は、重度の乏精子症であるが、妊娠は可能である。

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 Aさん(36歳、初産婦)。祖父と母親が2型糖尿病の治療を受けている。自然妊娠して妊娠初期に、妊娠中の明らかな糖尿病〈overt diabetes in pregnancy〉の診断を受けた。妊娠中は、自己血糖測定の値に応じてインスリン自己注射を行い、食事は6回の分割食で血糖コントロールは良好であった。3,400gの児を正常分娩にて出産し母児同室中である。

39 産褥2日。血糖値は朝食前85 mg/dLで予定通りの量のインスリンを自己注射してから朝食を摂取した。朝食後2時間、助産師が訪室するとAさんは授乳中であったが、気分不快を訴えて冷汗が認められた。授乳を一時中断して、自己血糖測定器で血糖値を測定したところ70mg/dLであった。
 このときのAさんへの対応で適切なのはどれか。

1.授乳を再開して様子を見る。
2.追加のインスリン投与の準備をする。
3.仰臥位で両下肢を挙上した体位とする。
4.ブドウ糖含有の飴をなめるように促す。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(36歳、初産婦)。
・祖父と母親:2型糖尿病
・自然妊娠:妊娠初期、糖尿病
・妊娠中:自己血糖測定の値に応じてインスリン自己注射を行った。
・食事:6回の分割食、血糖コントロール:良好。
・正常分娩:3,400gの児。
→2型糖尿病の原因は、生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

・産褥2日。
・血糖値:朝食前85 mg/dL
・予定通りの量のインスリンを自己注射してから朝食を摂取。
・朝食後2時間:Aさんに気分不快を訴えて冷汗が認められた。
・授乳を一時中断
・血糖値:70mg/dL
→本症例は、糖尿病の低血糖症状が生じていると考えられる。血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう

1.× 授乳を再開して様子を見る必要はない。なぜなら、Aさんに低血糖症状(冷や汗や気分不快など)がみられており、その対応が必要であるため。したがって、血糖を上げることが優先されるため、飴や角砂糖など舐めてもらう必要がある。
2.× 追加のインスリン投与の準備をする必要はない。むしろ、追加のインスリンを投与してしまうと低血糖を悪化させる恐れが高い。ちなみに、インスリンとは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。
3.× 仰臥位で両下肢を挙上した体位とする必要はない。なぜなら、仰臥位で両下肢を挙上した体位は起立性低血圧が起こった時の対処法であるため。Aさんには、低血圧症状ではなく、低血糖症状(冷や汗や気分不快など)がみられている。
4.〇 正しい。ブドウ糖含有の飴をなめるように促す。なぜなら、Aさんに低血糖症状(冷や汗や気分不快など)がみられており、その対応が必要であるため。手軽にできる方法の一つに、ブドウ糖含有の飴をなめるなどで血糖を上げるように促す。また他の対応として、①ブドウ糖10g、②ブドウ糖を含む飲料水(150~200ml)、③砂糖(20g)を摂取するよう促す。

2型糖尿病の知識

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 Aさん(36 歳、初産婦)。祖父と母親が2型糖尿病の治療を受けている。自然妊娠して妊娠初期に、妊娠中の明らかな糖尿病〈overt diabetes in pregnancy〉の診断を受けた。妊娠中は、自己血糖測定の値に応じてインスリン自己注射を行い、食事は6回の分割食で血糖コントロールは良好であった。3,400 gの児を正常分娩にて出産し母児同室中である。

40 産褥6日。インスリン量の調整が行われて、Aさんの血糖値も適切なコントロールとなった。母乳分泌は良好で、授乳は母乳のみで行い、児の体重は3,450gである。1日の摂取エネルギーは1,800kcalで3分食とし、食事直前にインスリンの自己注射を継続することとなった。
 退院指導の内容で適切なのはどれか。

1.「母乳分泌量が増えたら、食事カロリー量を再度検討しましょう」
2.「授乳は30 分程度で切り上げて血糖値の変動を抑えましょう」
3.「母乳育児をすると、糖尿病が悪化しやすくなります」
4.「授乳前には軽い間食を摂るといいですよ」

解答

解説

本症例のポイント

・産褥6日。
・血糖値:適切なコントロール。
・母乳分泌:良好(授乳:母乳のみ)
・児の体重:3,450g
・1日摂取エネルギー:1,800kcalで3分食
食事直前にインスリンの自己注射を継続する。
→出産後は、妊娠中に比べ血糖が下がるため、妊娠中のインスリン量をそのまま続けると低血糖を起こす。授乳が始まるとさらに血糖値は下がる。したがって、血糖値を見ながらインスリンを減量していかなければならない。授乳をしている間は、食事エネルギー量を増やす。目安として、母乳100mLにつき1単位であるが、母体の体重の変化も見ながらエネルギー量を決めていく必要がある。どのような食品をどのタイミングでとるか主治医および栄養士の指導を受ける。(参考:「糖尿病と妊娠に関するQ&A」日本糖尿病・妊娠学会HPより)

1.〇 正しい。「母乳分泌量が増えたら、食事カロリー量を再度検討しましょう」と退院指導する。なぜなら、母乳分泌量が増えると低血糖になる可能性があるため。出産後は、妊娠中に比べ血糖が下がるため、妊娠中のインスリン量をそのまま続けると低血糖を起こす。授乳が始まるとさらに血糖値は下がる。したがって、血糖値を見ながらインスリンを減量していかなければならない。授乳をしている間は、食事エネルギー量を増やす。目安として、母乳100mLにつき1単位であるが、母体の体重の変化も見ながらエネルギー量を決めていく必要がある。どのような食品をどのタイミングでとるか主治医および栄養士の指導を受ける。(参考:「糖尿病と妊娠に関するQ&A」日本糖尿病・妊娠学会HPより)
2.× 「授乳は30分程度で切り上げて血糖値の変動を抑えましょう」と伝える必要はない。なぜなら、血糖値の変動は、授乳時間ではなく「授乳量」に影響を受けやすいため。授乳による血糖値の変動は母乳分泌量に影響しており、時間で授乳を切り上げることで血糖値の変動を抑えられるわけではない。また、授乳時間を短縮することで、血糖値の変動を正確に評価することができなくなる恐れがある。
3.× 「母乳育児をすると、糖尿病が悪化しやすくなります」と伝える必要はない。なぜなら、母乳育児をすると母子ともによい効果が期待され、2型糖尿病の発症予防や妊娠糖尿病からの進行を抑えることが報告されているため。また、糖尿病があっても自身の血糖管理を行うことで授乳は可能である。
4.× 「授乳前には軽い間食を摂るといいですよ」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、医師から「①1日摂取エネルギー:1,800kcalで3分食、②食事直前にインスリンの自己注射を継続する」ことが指示されているため。医師と助産師で異なった退院指導を行わないように注意が必要である。

母乳を飲ませてもいいのですか?

Q.母乳を飲ませてもいいのですか?
A.母乳は飲ませてください。授乳は母親にも子供にも糖尿病によいことが見出されています。
①授乳は2型糖尿病の発症予防につながる。
②1型糖尿病の発生率は母乳を飲んでいた子供で低い。
③妊娠糖尿病だった女性では授乳が糖尿病への進行を抑える。
④糖尿病母体から生まれた子供では母乳を飲んだ子の方が肥満や糖尿病の発生が少ない。
などの研究発表がある。

(参考:「糖尿病と妊娠に関するQ&A」日本糖尿病・妊娠学会HPより)

 

 

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