第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午後31~35】

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31 妊娠末期の妊婦へのLeopold〈レオポルド〉触診法で骨盤位と疑われるのはどれか。2つ選べ。

1.第1段で凹凸のない硬い球形の塊に触れる。
2.第2段で母体側方に均等な板状の抵抗が触れる。
3.第3段で球形の塊が触れる。
4.第3段で最も大きな部分に触れる。
5.第4段は第2段で触れた部分に続く凹凸のある部分に触れる。

解答1・3

解説

(※画像引用:「Leopold触診法」看護roo!イラスト集)

Leopold触診法とは?

レオポルド触診法とは、母体の腹壁に触れることで子宮の収縮状態、子宮底の位置、胎児の数、胎向、胎位、胎勢、先進部、下降度などの観察が目的である。妊娠27週頃から可能で、児頭は固く丸く、四肢は小部分として触れる。

【触診法】
第1段法:子宮底の位置や高さ、形、胎児部分を触診する。
第2段法:一方の手で胎児小部分を確認し、他方の手で胎向を確認する。子宮の形、大きさ、緊張度、羊水量、胎動、胎向をみる。
第3段法:恥骨結合上の胎児部分を触診し、可動性(移動性)をみる。
第4段法:恥骨結合と胎児の下降部に指先を挿入して、下降部と骨盤進入度合いを確認する。

1.〇 正しい。第1段で凹凸のない硬い球形の塊に触れることは骨盤位と疑われる。なぜなら、凹凸のない硬い球形の塊に触れる部分は児頭であるため。第1段法:子宮底の位置や高さ、形、胎児部分を触診する。ちなみに、骨盤位とは、子宮口に対して胎児が下半身を下に向けた体位(いわゆる逆子)である。
2.第2段で母体側方に均等な板状の抵抗が触れるのは、背中である。第2段法では、一方の手で胎児小部分を確認し、他方の手で胎向を確認する。子宮の形、大きさ、緊張度、羊水量、胎動、胎向をみる。
3.〇 正しい。第3段で球形の塊が触れることは骨盤位と疑われる。なぜなら、第3段で球形の塊が触れる部分は児頭であるため。第3段法:恥骨結合上の胎児部分を触診し、可動性(移動性)をみる。ちなみに、骨盤位とは、子宮口に対して胎児が下半身を下に向けた体位(いわゆる逆子)である。
4.第3段で最も大きな部分は、胎児の頭部である。骨盤位が疑われるのは、第1段法で臀部よりも硬い感触で球形の塊のように感じる頭部に触れること、第3段法で臀部に触れることである。
5.第4段において、第2段で触れた部分に続く凹凸のある部分は、胎児の肩や頸部である。そこから骨盤位であるとは断定できない。第4段法では胎児下降度、移動性や浮球度などの骨盤内進入程度を確認できる。主に37週以降の分娩進行中に行われる。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

骨盤位とは?

骨盤位とは、子宮口に対して胎児が下半身を下に向けた体位(いわゆる逆子)である。

 

 

 

 

 

 

32 胎児のwell-beingの評価で異常と判断される所見はどれか。2つ選べ。

1.羊水ポケット4cm
2.30分間で胎動1回
3.胎児心拍数基線140bpm
4.拡張期の臍帯動脈血流の逆流
5.15bpm 以上かつ15秒以上の一過性頻脈が30分間に3回

解答2・4

解説

胎児のwell-beingの評価

胎児のwell-beingの評価には、主にバイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)が用いられることが多い。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)とは、超音波検査とNST(分娩監視装置による胎児心拍の観察)を用いて胎児のwell-beingを評価する方法である。胎児の各状態をチェックして点数評価し合計点で胎児の状態を診断する。

①胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

③筋緊張:【正常な状態(2点)30分間に手足の動きが1回以上】【異常な状態(0点)認めない】

④羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

⑤non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性頻脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

1.× 羊水ポケット4cmは、正常な所見である。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)の④羊水量に、【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】と規定されている。ちなみに、羊水ポケット(AFP)とは、超音波プローブを子宮壁に対して垂直に当て、羊水腔内に胎児部分や臍帯を含まない最大円を描いた直径を指す。一般的に8cm以上を羊水過多とし、2cm未満を羊水過少とされる。
2.〇 正しい。30分間で胎動1回は、異常と判断される所見である。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)の②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】と規定されている。また、胎動10回カウント法では、胎児がはっきりと10回動くのに何分かかるかを測定する方法である。目安としては30分以内であり、30分間で胎動1回は少ないため異常と判断される。
3.× 胎児心拍数基線140bpmは、正常な所見である。胎児心拍数基線は10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現したものである。胎児心拍数基線の正常値は110〜160bpmであり、140 bpmは正常である。また、ノンストレステスト(non-stress test:NST)とは、分娩監視装置を用いて子宮収縮や胎児心拍、胎動の状態で調べ、胎児の健康状態を判定するものである。陣痛(子宮収縮)などのストレスがない状態で妊婦に行う検査である。胎児は、20~40分ごとに睡眠と覚醒を繰り返すため通常40~60分間計測を行う。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。妊娠中、20分間のノンストレステスト< NST >をしている間に、心拍数15bpm以上15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態は「良好な状態:well-being」と判断される。
4.〇 正しい。拡張期の臍帯動脈血流の逆流は、異常と判断される所見である。拡張期の臍帯動脈血流の逆流は臍帯動脈の循環抵抗(RI、PI)の上昇がみられ、子宮胎盤機能不全(慢性低酸素血症)などの疑いがある。
5.× 15bpm 以上かつ15秒以上の一過性頻脈が30分間に3回は、正常な所見である。一過性頻脈は、①心拍数が増加してから30秒未満でピークに達し、ピークまでに15bpm以上増加すること、また②通常の脈拍数に戻るまでに要する時間が15秒以上2分未満のものを指す。20分程度の検査中で2回以上の一過性頻脈が起これば、胎児は健康であると予測される。また、well-beingとは、妊娠中、20分間のノンストレステスト(non-stress test:NST)をしている間に、心拍数15bpm以上15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態は良好と判断される。また、サイナソイダルパターンとは、心拍数曲線が規則的でなめらかなサイン曲線を示すものをいう。持続時間は問わず、1分間に2~6サイクルで振幅は平均5~15bpmで あり、大きくても35bpm以下の波形を称する。

 

 

 

 

33 重症妊娠悪阻の妊婦の注意すべき主な合併症はどれか。2つ選べ。

1.悪性高熱症
2.高蛋白血症
3.静脈血栓塞栓症
4.高ナトリウム血症
5.Wernicke〈ウェルニッケ〉脳症

解答3・5

解説

妊娠悪阻とは?

妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。

1.× 悪性高熱症とは、通常は脱分極性筋弛緩薬と強力な揮発性の吸入全身麻酔薬の併用に対する代謝亢進反応により生じる体温上昇である。全身麻酔薬の使用中に発症し、急激な体温上昇や異常な高熱・頻脈・筋硬直・ミオグロビン尿などを特徴とする。遺伝性があるため、術前に家族歴や既往を聴取することが重要である。治療としては麻酔の中止、ダントロレン投与、全身冷却などを行う。
2.× 高蛋白血症とは、血清総タンパク濃度が8.5g/dL以上の状態であり、多発性骨髄腫やマクログロブリン血症などのタンパク成分であるγグロブリンの産生が異常に進んでいる病態や疾患に多い。重症妊娠悪阻では母体血液の蛋白は減少する。
3.〇 正しい。静脈血栓塞栓症は、重症妊娠悪阻の妊婦の注意すべき主な合併症である。重症妊娠悪阻の合併症には脱水と安静臥床が原因となる静脈血栓塞栓症がある。特に高齢で肥満の場合はリスクが高く、肺塞栓症を起こす可能性がある。塞栓症が起こる機序として、長期臥床や長時間の座位による静脈系のうっ滞と血液粘稠度の上昇で起こりやすくなる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで、下肢の静脈から遊離した血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓(肺血栓塞栓症)を発症するリスクが高くなるため注意が必要である。
4.× 高ナトリウム血症とは、水分の摂取不足、下痢、腎機能障害、利尿薬などの脱水が原因で生じる。糸球体濾過率の増加、Na利尿作用をもつプロゲステロンの増加などによって妊婦の血清Na値は妊娠初期に最も低く、重症妊娠悪阻においても高ナトリウム血症にはならない。
5.〇 正しい。Wernicke〈ウェルニッケ〉脳症は、重症妊娠悪阻の妊婦の注意すべき主な合併症である。妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。

 

 

 

 

 

 

34 サイトメガロウイルス感染症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.母体感染では不顕性感染が多い。
2.胎内感染により児に難聴が生じる。
3.母子感染予防のために帝王切開が有効である。
4.生殖年齢女性の抗体保有率が近年上昇している。
5.妊娠中の初感染時に胎児感染に至る可能性は1% 以下である。

解答1・2

解説

サイトメガロウィルスによりサイトメガロウイルス感染症が生じる。子宮内での発育遅延、早産、小頭症、黄疸、肝臓や脾臓の腫れ、点状出血、脳内の脳室周囲の石灰化、網膜炎、肺炎等が起こりやすく、 このような異常が見られた児では、後に難聴・精神発達遅滞・視力障害といった何らかの神経学的障害が明らかになる場合が多い。

1.〇 正しい。母体感染では不顕性感染が多い。サイトメガロウイルス感染症は、母体感染では不顕性感染が多く、出生時に症状が出ないことがある。また成長するにつれて症状が出る場合もある。ちなみに、感染しても発症しないことを不顕性感染という。主な疾患として、①幼少児期のEBウイルス感染症や、②健常成人のサイトメガロウイルス感染症などが挙げられる。
2.〇 正しい。胎内感染により児に難聴が生じる。妊娠中の母体がサイトメガロウイルスに感染すると、胎盤や血液を通じて胎内感染する。サイトメガロウィルスによりサイトメガロウイルス感染症が生じる。子宮内での発育遅延、早産、小頭症、黄疸、肝臓や脾臓の腫れ、点状出血、脳内の脳室周囲の石灰化、網膜炎、肺炎等が起こりやすく、 このような異常が見られた児では、後に難聴精神発達遅滞視力障害といった何らかの神経学的障害が明らかになる場合が多い。
3.× 母子感染予防のために帝王切開が「有効である」とはいえない。なぜなら、胎盤や血液を通じて胎内感染するため。つまり、経胎盤、経産道、経母乳のすべての感染経路が考えれる。したがって、サイトメガロウイルスは母子感染予防のためには母体が感染しないことであり、手指衛生や周囲の子どもから感染しないようにすることである。
4.× 生殖年齢女性の抗体保有率は、近年「上昇」ではなく低下している。日本人妊婦のCMV抗体保有率は1990年頃には90%台であったが、近年では60〜70%台に低下している。 抗体を持っている方でもサイトメガロウイルスに感染することがあるが、抗体を持っていない方は、サイトメガロウイルスの感染を受けやすいため、特に注意が必要である(※参考「サイトメガロウイルス母子感染に注意しましょう」国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)より)。
5.× 妊娠中の初感染時に胎児感染に至る可能性は、「1%以下」ではなく約40%が胎内感染する報告がある。

(※図引用:「サイトメガロウイルス母子感染に注意しましょう」国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)より)

 

 

 

 

35 産後うつ病の特徴はどれか。2つ選べ。

1.希死念慮を抱く。
2.児との愛着形成に影響する。
3.産後早期に幻覚が出現する。
4.産後2週ころまでに消失する。
5.症状の本質は予期せぬ気分の変化である。

解答1・2

解説

産後うつ病とは?

産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。

1.〇 正しい。希死念慮を抱く。産後うつ病では、不眠や過眠などの睡眠障害や食欲減退や過食などの摂食障害希死念慮を抱く。ちなみに、希死念慮とは、自殺願望と同義であり、うつ病患者によくみられる症状である。
2.〇 正しい。児との愛着形成に影響する。産後の母親の精神状態は児との愛着形成に影響し、母親の対児愛着は産後うつと関連して悪くなるとされている。
3.× 産後早期から、幻覚が出現するとはいない。産後うつ病は症状が進行してくるとうつ病だけでなく、幻覚や幻聴、異常行動など産後精神病になることもある。幻覚が出現するのは産後早期ではない。また、主に幻覚や妄想が主症状で早期に出やすい疾患は統合失調症である。
4.× 産後2週ころまでに消失するものではない。産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。また、産後3ヶ月以内に発症することが多い。マタニティブルーズが通常は1〜2週間で治るのに対し、産後うつの症状は2週間以上持続する。
5.× 症状の本質は、予期せぬ気分の変化ではない。産後うつの症状は気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などである。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

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