第105回(R4) 助産師国家試験 解説【午前46~50】

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次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、初産婦)は妊娠40週3日。胎児心拍数陣痛図で変動一過性徐脈を認め、吸引分娩で3,800gの男児を出生した。出生直後の児は、啼泣がなく、筋緊張は低下し、羊水混濁は認めなかった。直ちに蘇生を行った。バッグ・マスク換気による人工呼吸を継続していたところ、上腹部の腹部膨満を認めたため、胃管を挿入することとした。

46 日齢2。血清ビリルビン値16.5mg/dLとなり光線療法が開始された。
 Aさんへの児についての説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.「沐浴を控えます」
2.「便の排泄を促します」
3.「水分摂取を制限します」
4.「母乳の摂取を制限します」
5.「オムツで性腺を保護します」

解答2・5

解説

本症例のポイント

・血清ビリルビン値:16.5mg/dL
・光線療法が開始
→①生理的黄疸:血中のビリルビン値が、黄疸のピーク時(生後4、5日)に成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dl以下であり、かつ1日のビリルビン値の上昇が5mg/dl以下である。②病的黄疸:血中のビリルビン値が、成熟児で12mg/dl、未熟児で15mg/dlを超える。または、1日のビリルビン値の上昇が5mg/dlを超える。本症例は、病的黄疸(早発黄疸)と考えられ光線療法が開始されている。光線療法とは、新生児に特殊な光線を当てて治療する方法である。光源は450~470nm付近の波長の青色LEDで、その光の作用で毒性の高い間接型ビリルビンを直接型に変え、体外への排出を促す。早ければ治療開始後2~3日で血中ビリルビン値は正常値に戻り、治療が完了する。

1.× 沐浴を控える必要はない。沐浴(読み方:りんよく)は、からだを水で洗い潔めること。
2.〇 正しい。便の排泄を促す。なぜなら、便に含まれるビリルビンは排出されなければ再度肝臓に戻ってしまい、黄疸の改善につながらないため。ちなみに、脂肪の消化、吸収という役目を果たした胆汁は、一部が便や尿として排泄されるが、90〜99%は小腸の下部で吸収され、門脈を通って肝臓に戻る。そして、再び胆汁として分泌され、胆嚢に蓄えられることになる。こうして胆汁がリサイクルされることを腸肝循環という。新生児期は胎児期からの腸肝循環機能が残っている。
3~4.× 水分摂取を制限する/母乳の摂取を制限する必要はない。保育器の中で哺乳を行い、1日8回で3時間おき 又は、赤ちゃんが欲しがった時に授乳する。光線療法が1面になったら、おっぱいを直接飲めるようになる。
5.〇 正しい。オムツで性腺を保護する。なぜなら、光線よる生殖器系や網膜への損傷が懸念されるため。網膜への影響はアイマスクを着用し保護する。現在の機器は、発疹などの副作用がまれに現れるが、現在ではLEDの改良が進み、出現率は低くなっている。

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)は産婦人科病院で妊婦健康診査を受けていた。妊娠32週までの妊娠経過に異常はなかった。妊娠36週以降に血圧の上昇傾向があり、妊娠37週から尿蛋白が確認されたため、妊娠38週日に入院して分娩誘発の予定となった。
 妊娠34週から妊娠38週の妊婦健康診査のデータを表に示す。

47 分娩誘発に関するAさんへの説明で正しいのはどれか。

1.「病棟内を歩いて陣痛を開始しやすくします」
2.「陣痛開始前に人工破膜を行います」
3.「子宮口を開くための処置を行います」
4.「子宮収縮薬の点滴は最大量で投与を開始します」
5.「陣痛が強くなってから分娩監視装置を装着します」

解答

解説

MEMO

・Aさん(40歳、初産婦)
・妊娠32週までの妊娠経過に異常なし。
・妊娠36週以降に血圧の上昇傾向。
・妊娠37週から尿蛋白が確認された。
・妊娠38週日に入院して分娩誘発の予定
→本症例は、「妊娠高血圧腎症」が疑われる。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。2018年からは蛋白尿を認めなくても肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育が不良になれば、妊娠高血圧腎症に分類されるようになっている。妊娠高血圧症とは、妊娠20週以降に新たに発症する高血圧または既存の高血圧の悪化で、過剰な尿タンパク質を伴い、子癇(しかん:ほかに原因がないけいれん発作)、胎盤剥離や早産が起こりやすくなり、出生直後の新生児に問題が生じるリスクが高まっている状態である。

1.× 病棟内を歩いて陣痛を開始しやすくする必要はない。なぜなら、本症例は妊娠高血圧症が疑われるため。妊娠高血圧症は、胎盤剥離や早産が起こりやすくなるため、陣痛を促す必要はない。
2.× 陣痛開始前に人工破膜を行う必要はない。なぜなら、本症例は妊娠高血圧症が疑われるため。妊娠高血圧症は、胎盤剥離や早産が起こりやすくなるため、人口破膜を行う必要はない。人工破膜とは、内診時に内子宮口 から赤ちゃんを包んでいる卵膜を破る処置のことで、人工的に破水させ、陣痛を誘発させることを目的としている。分娩までの時間が長引いた場合は、自然な破水と同様、子宮内感染について注意する必要がある。
3.〇 正しい。子宮口を開くための処置を行う。すぐに経腟分娩が可能な程度に子宮口(子宮頸管)が開いている(開大)場合を除き、分娩時間が最も短い帝王切開で分娩を行う。分娩時間が短ければ、母子に合併症が生じるリスクが低くなる。妊娠34週以上で重度の妊娠高血圧腎症と診断されれば、分娩が推奨され子宮口(子宮頸管)を開くための処置を行う
4.× 子宮収縮薬の点滴は最大量で投与を開始する必要はない。点滴静注法 :オキシトシンとして、通常5~10単位を5%ブドウ糖注射液(500mL)等に混和し、点滴速度を1~2ミリ単位/分 から開始し、陣痛発来状況及び胎児心拍等を観察しながら適宜増減する。なお、点滴速度は20ミリ単位/分を超えないようにすること。(※参考:「医療用医薬品 : オキシトシン」より)
5.× 陣痛が強くなってから分娩監視装置を装着する必要はない。分娩監視装置とは、子宮収縮や胎児心拍、胎動の状態で調べられるものである。したがって、分娩監視装置を装着するのは、「陣痛が強くなってから」ではなく投与前から観察し胎児の状態を評価していかなければならない。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)は産婦人科病院で妊婦健康診査を受けていた。妊娠32週までの妊娠経過に異常はなかった。妊娠36週以降に血圧の上昇傾向があり、妊娠37週から尿蛋白が確認されたため、妊娠38週日に入院して分娩誘発の予定となった。
 妊娠34週から妊娠38週の妊婦健康診査のデータを表に示す。

48 Aさんは予定通り入院した。入院翌日の妊娠38週3日の朝からオキシトシンの点滴静脈内注射が開始され、午前10時に陣痛が発来した。Aさんはやや苦しそうな表情で陣痛に耐えており、助産師は呼吸法の指導を行っていた。午後2時30分、体温37.2℃、脈拍85/分、血圧165/95mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>98%(room air)である。突然胎児心拍数の低下が確認された。内診を行ったところ、子宮口5cm、展退度70%、Station±0、既に破水しており、臍帯脱出はない。このときの胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
 胎児心拍数低下の発生後直ちに実施することで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Aさんに努責を促す。
2.Aさんに酸素投与を行う。
3.内診で児頭を押し上げる。
4.Aさんの両下肢を挙上する。
5.オキシトシンの点滴静脈内注射を中止する。

解答2・5

解説

本症例のポイント

・妊娠38週3日の朝から:オキシトシンの点滴静脈内注射が開始。
・午前10時に陣痛が発来した。
・突然胎児心拍数の低下が確認。
子宮口5cm、展退度70%、Station±0、既に破水しており、臍帯脱出はない。
→本症例は、陣痛、子宮口拡大前であるため、分娩第1期(平均所要時間:初産婦10~12時間、経産婦4~6時間)と考えられる。胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。本症例の胎児の場合、徐脈(高度変動一過性徐脈)が認められる。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。

1.× Aさんに努責を促す必要はない。なぜなら、努責は子宮口が全開大に至ってから促すものである。子宮口が全部開く前にいきむと、産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかる。
2.〇 正しい。Aさんに酸素投与を行う。臍帯脱出が起きた場合には、胎児への血液供給が断たれないよう、直ちに帝王切開により分娩する必要がある。手術が始まるまでの間は、医療関係者は胎児の体を臍帯から離して支えて、脱出した臍帯からの血液供給が途絶えないように支援する。
3.× 内診で児頭を押し上げる必要はない。なぜなら、児頭を押し上げる手段が必要なのは「臍帯脱出」した場合であるため。臍帯脱出とは、破水後、胎児が出てくる前に臍帯が腟内に突出したり、もしくは腟の外に出てくることをいう。つまり、胎児より先に臍帯が腟を通過することである。
4.× Aさんの両下肢を挙上する必要はない。なぜなら、Aさんの両下肢を挙上する手段が必要なのは「肩甲難産」した場合であるため。肩甲難産の対応としては、①産道を広げること、②胎児の肩を狭めることがあげられる。①産道を広げる方法としては、McRoberts位(マックロバーツ位:いわゆるうんこ座り)、導尿、会陰切開を広げることがあげられる。②胎児の肩を狭める方法としては、片方の肩から出す、肩をすくめる、体をひねるなどである。
5.〇 正しい。オキシトシンの点滴静脈内注射を中止する。オキシトシンとは、子宮収縮薬(点滴静注法)である。 胎児が「徐脈(高度変動一過性徐脈)」が疑われるため、早急に胎児のストレス緩和を目的に、子宮収縮薬(オキシトシン)を中止することにより子宮収縮を停止させる必要がある。

高度変動一過性徐脈の対応

【優先順位が高い対応】
①子宮収縮薬使用中:減量あるいは投与中止とする。
②分娩中:増大した子宮による大動脈、下大静脈圧迫による心拍出量低下、それに伴う胎盤循環不全防止のために母体の体位変換、とくに側臥位を試みる。
③母体への酸素投与:非再呼吸式マスク(一方向弁付きリザーバーマスク)を用い、10L/分かそれ以上の酸素流量下で80~100%の酸素濃度を確保する。
④その他:ニトログリセリンや塩酸リトドリン等の緊急子宮弛緩、急速輸液投与等がある。
⑤高度徐脈から胎児心拍数が回復しない場合:急速遂娩(読み:すいべん)を行う。遂娩とは、可能な限り速やかに分娩を完了させる必要がある場合に行われる産科手術である。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)は産婦人科病院で妊婦健康診査を受けていた。妊娠32週までの妊娠経過に異常はなかった。妊娠36週以降に血圧の上昇傾向があり、妊娠37週から尿蛋白が確認されたため、妊娠38週日に入院して分娩誘発の予定となった。
 妊娠34週から妊娠38週の妊婦健康診査のデータを表に示す。

49 胎児心拍数の低下への対応を行ったが改善することはなく、助産師はAさんの状態を確認するために声をかけた。そのとき、Aさんは突然両手を小刻みに震わせており意識レベルが低下していることに助産師は気が付いた。助産師の連絡で産婦人科医が駆け付けた。
 このときに行われることで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.吸引分娩の実施
2.抗痙攣薬の投与
3.硬膜外麻酔の準備
4.硫酸マグネシウムの投与
5.プロスタグランジンF2αの点滴

解答2・4

解説

本症例のポイント

・胎児心拍数の低下への対応を行ったが改善することはなし。
・Aさん:突然両手を小刻みに震わせており意識レベルが低下している
→妊娠高血圧症候群のもっとも重症なものの1つで、意識喪失と反復する全身のけいれんが特徴である。発症の時期によって、妊娠子癇、分娩子癇、産褥子癇の3つに分けられる。子癇は、母体の死亡率が10~15%、胎児の死亡率が25~40%という統計もあり、また治癒しても、さまざまな後遺症を残すことがある非常に危険な病気である。外部からの光、音、振動などの刺激を避けるために、暗くした静かな場所に隔離する必要がある。なぜなら、これらの刺激によって、子癇発作が誘発されることがあるため。また、薬物療法として鎮静薬、降圧薬、利尿薬、強心薬などを使用する。けいれんの救急処置としては、鎮静薬を与え、からだを横むきにし、気道を確保して舌をかむ危険を防ぐようにする。妊娠・分娩子癇で、症状の悪化や胎児仮死のある場合では、分娩を早くすませるために吸引分娩鉗子分娩などの急速遂娩術が行なわれ、場合によっては帝王切開を行なう。

1.× 吸引分娩の実施より優先度が高いものがほかにある。妊娠・分娩子癇で、症状の悪化や胎児仮死のある場合では、分娩を早くすませるために吸引分娩鉗子分娩などの急速遂娩術が行なわれ、場合によっては帝王切開を行なう。
2.4.〇 正しい。抗痙攣薬/硫酸マグネシウムの投与は最も優先度が高い。薬物療法として鎮静薬(抗痙攣薬)、降圧薬、利尿薬、強心薬などを使用する。けいれんの救急処置としては、鎮静薬を与え、からだを横むきにし、気道を確保して舌をかむ危険を防ぐようにする。「硫酸マグネシウムは、米国、独国、仏国、加国、豪州において、子癇の予防の効能・効果で承認されており、また、米国及び欧州のガイドラインにおいても子癇の予防に用いる旨記載されている」(※参考:「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議、公知申請への該当性に係る報告書、硫酸マグネシウム、重症妊娠高血圧症候群における子癇の予防及び治療」より)
3.× 硬膜外麻酔の準備は必要ない。硬膜外麻酔とは、局所麻酔の一つ。 硬膜外腔に局所麻酔薬やオピオイドを投与することにより、鎮痛を得るものである。単独あるいは脊髄くも膜下麻酔、全身麻酔と併用される。手術中の鎮痛の他、カテーテルを留置して術後鎮痛に使用される。帝王切開の際に用いられることが多い。
5.× プロスタグランジンF2αの点滴は必要ない。プロスタグランジンF2αは、陣痛促進剤や人工妊娠中絶剤として使用されている。薬物療法として鎮静薬(抗痙攣薬)、降圧薬、利尿薬、強心薬などを使用する。けいれんの救急処置としては、鎮静薬を与え、からだを横むきにし、気道を確保して舌をかむ危険を防ぐようにする。

 

 

 

 

次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
 Aちゃん(生後4か月0日、女児)は、4か月児健康診査の受診のために母、兄(3歳)とともに来院した。問診では、Aちゃんの出生時に異常の指摘はなく、これまで完全母乳栄養で、ワクチン接種や健康診査以外で医療機関を受診したことはないことがわかった。また母親はAちゃんが嫌がるので、オムツ替えが難しいと話した。来院時の身体計測値は身長63cm、体重7,000g、頭囲47cmであった。

50 Aちゃんの診察時に確認すべきなのはどれか。

1.お座りの可否
2.乳歯萌出の有無
3.ハンカチテスト
4.股関節開排制限の有無

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(生後4か月0日、女児)
・4か月児健康診査の受診のために来院。
→4か月児健康診査のポイントとして、①体重が増えているか?、②首が座っているか?、③目を合わせることができるか?、④目で物を追うことができるか?、⑤先天性股関節脱臼がないかなどがあげられる。デンバー発達判定法には、4ヶ月の項目で、①手をみつめる、②ガラガラを握る、180°追視、両手を合わす、③キャアキャア喜ぶ 90°頭を上げる、両足で体を支えるなどがあげられる。

1.× お座りは、生後9~10か月ごろ観察可能である。
2.× 乳歯萌出は、生後6~10か月ごろ観察可能である。
3.× ハンカチテストは、生後6か月ごろに評価する項目である。ハンカチテストは、背臥位にて乳幼児の顔に厚めの布(光を通さないもの)をかぶせ、自分の手で払いのけることができるかどうかをチェックするものである。布を払いのける動作にて、物を認識して手でつかみ取るという協調運動と、邪魔なものを払いのけるという知能発達を確認するものである。
4.〇 正しい。股関節開排制限の有無は、4か月児健康診査の受診のために確認すべき項目である。4か月児健康診査のポイントとして、①体重が増えているか?、②首が座っているか?、③目を合わせることができるか?、④目で物を追うことができるか?、⑤先天性股関節脱臼がないかなどがあげられる。デンバー発達判定法には、4ヶ月の項目で、①手をみつめる、②ガラガラを握る、180°追視、両手を合わす、③キャアキャア喜ぶ 90°頭を上げる、両足で体を支えるなどがあげられる。

(※図:「日本版デンバー式発達スクリーニング検査」)

 

 

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