第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前86~90】

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86 Aさん(60歳、男性)は、転倒して第5頸椎レベルの脊髄を損傷した。肩を上げることはできるが、上肢はわずかに指先を動かせる程度である。呼吸数22/分、脈拍86/分、血圧100/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)97%であった。Aさんは「息がしづらい」と言っている。
 Aさんの状態で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.低酸素血症がある。
2.胸郭運動がみられる。
3.無気肺を起こしやすい。
4.腹式呼吸を行っている。
5.閉塞性換気障害を起こしている。

解答3/4

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、第5頸椎レベル脊髄損傷
肩を上げることはできるが、上肢はわずかに指先を動かせる程度。
・呼吸数22/分、脈拍86/分、血圧100/70mmHg、SpO2:97%
・「息がしづらい」と。
→本症例では、肩の拳上可能・指先の運動わずかであるため、第6頚髄節以下の麻痺を生じていると考えられる。

1.× 低酸素血症とはいえない。なぜなら、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉は97%であるため。
2.× 胸郭運動はみられない。なぜなら、本症例は第6頚髄節以下の麻痺を生じていると考えられるため。胸郭運動をつかさどる神経は、肋間神経(T1~T11支配)である。
3.〇 正しい。無気肺を起こしやすい。なぜなら、肋間筋が機能せず喀痰が困難となるため。無気肺とは、何らかの原因によって、肺含気量の減少および、これに基づく肺容量減少を呈した病態をいう。無気肺の一般的な原因は、気管支の閉塞である。
4.〇 正しい。腹式呼吸を行っている。なぜなら、本症例は第6頚髄節以下の麻痺を生じていると考えられるため。腹式呼吸にかかわる横隔膜を支配する横隔神経は、第3~4頚髄から出ている。
5.× 「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害を起こしている可能性が高い。脊髄損傷患者の呼吸障害として、①肋間筋麻痺、②呼吸中枢障害などが起こる。つまり、拘束性換気障害に分類される。ちなみに、C4以上の損傷であれば自力での呼吸は困難となるため、気管切開や人工呼吸器が必要となる。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

87 Aさん(35歳、女性、会社員)は、動悸、手指の震え及び体重減少があり、受診したところ、頻脈と眼球突出とを指摘され抗甲状腺薬の内服を開始した。Aさんは看護師に「仕事のストレスは寝る前にビールを飲むことで解消するようにしているが、ちょっとしたことでイライラして眠れない」と話した。
 Aさんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「仕事を休みましょう」
2.「禁酒する必要があります」
3.「積極的に運動しましょう」
4.「発熱したときは受診してください」
5.「病気が原因でイライラしやすくなります」

解答4/5

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、女性、会社員、抗甲状腺薬の内服)
・動悸、手指の震え、体重減少、頻脈、眼球突出。
・Aさん「仕事のストレスは寝る前にビールを飲むことで解消するようにしているが、ちょっとしたことでイライラして眠れない」と。
→本症例は、甲状腺機能亢進症が疑われる。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

1~2.× 仕事を休む/禁酒する必要はない。なぜなら、本症例のイライラ・不眠の原因は、甲状腺機能亢進症の症状であるため。必ずしも、仕事を休む・禁酒することが、直接的な解決につながらない可能性が高い。
3.× 積極的な運動は禁忌である。なぜなら、甲状腺機能が亢進しており全身の代謝も亢進しているため。積極的な運動により、甲状腺機能亢進症の症状(発汗や食欲亢進、体重減少、下痢など)が悪化する恐れがある。
4.〇 正しい。「発熱したときは受診してください」と説明する。なぜなら、抗甲状腺薬の重篤な副作用として、発熱(38℃をこえる高熱)が見られた場合、白血球減少が疑われるため。早期に治療が必要である。
5.〇 正しい。「病気が原因でイライラしやすくなります」と説明する。なぜなら、甲状腺機能が亢進するとイライラして怒りっぽくなるため。

 

 

 

 

 

88 Aさん(42歳、女性)は、2週前から腰痛と坐骨神経痛とを発症し整形外科で処方された鎮痛薬を内服している。帯下が増えて臭いもあるため婦人科を受診し、子宮頸癌と診断された。
 進行期を決めるためにAさんに行われる検査で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.ヒトパピローマウイルス検査
2.小腸内視鏡検査
3.腎盂尿管造影
4.脊髄造影
5.CT

解答3/5

解説

本症例のポイント

・Aさん(42歳、女性、子宮頸癌
・2週前:腰痛と坐骨神経痛
・鎮痛薬を内服。
・帯下が増えて臭いもある。
→本症例は、2週前から腰痛や坐骨神経痛といった症状がみられていることから、子宮頸がんの癌の転移が疑われる。

1.× ヒトパピローマウイルス検査とは、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているかどうかを調べる検査である。Aさんはすでに子宮頚癌と診断されている。ヒトパピローマウイルス検査は、ブラシやヘラで子宮頸部をこすり、細胞を採取する「子宮頸部細胞診」と呼ばれる検査を行う。その採取方法として、医師が直接子宮を見ながら頸部の細胞を採取する「医師採取」が一般的であるが、自分自身で子宮入口(頸部)の細胞を採る「自己採取」による検査方法もある。
2.× 小腸内視鏡検査とは、小腸にある病変を見つけるため検査である。子宮頸がんで多くみられるのは、肺、脳、傍大動脈リンパ節(骨盤より上の大動脈まわりのリンパ節)、骨への転移である。
3.〇 正しい。腎盂尿管造影は、進行期を決めるための検査である。腎盂尿管造影とは、レントゲン写真に尿路(腎盂~尿管~膀胱)を映し出す検査である。ヨード造影剤を静脈内に注入して検査を行う。子宮頸癌において、腎盂尿管造影法による尿管の圧迫・閉塞による水腎症の有無の判定は、進行期を決定する上で必須の項目であり、水腎症が認められれば進行期はⅢb期となる。
4.× 脊髄造影とは、ミエログラフィーともいい、クモ膜下腔に造影剤を注入してX線で撮影する検査である。脊柱管内の神経組織の圧迫や狭窄の位置、その程度を評価する検査(椎間板ヘルニアなどに行われる検査)である。本症例の腰痛は、癌の転移の可能性が高い。
5.〇 正しい。CT検査は、進行期を決めるための検査である。CT検査により、子宮頚癌が肺や肝臓などへ遠隔転移しているかが判断できる。

子宮頸癌とは

子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。

 

 

 

 

 

89 児の免疫に関する説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.胎児期は胎盤を通じて母体からIgGを受け取る。
2.出生後は母乳からIgMを受け取る。
3.生後3か月ころに免疫グロブリンが最も少なくなる。
4.1歳ころから抗体の産生が盛んになる。
5.3歳ころにIgAが成人と同じレベルに達する。

解答1/3

解説

1.〇 正しい。胎児期は、胎盤を通じて母体からIgGを受け取る。IgGとは、新生児や乳児が胎児期に母体から受け取った抗体である。分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgMが生成された後に生成され始める。一般的に抗体検査というとこのIgGを調べることが多い。生後3~6か月には母体由来のIgGは減少・消失し、児のIgG自己産生能も未熟であるため、濃度は最低レベルとなる。5~6歳で成人並みとなる。
2.× 出生後は母乳から、「IgM」ではなくIgAを受け取る。IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。母乳(特に初乳)に多く含まれる。児が自分自身でも生産するため、徐々に濃度が上昇し10歳ごろに成人と同じレベルに達する。ちなみに、IgMとは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。感染の初期に発現し、生体防御の初段階を担うのはこのIgMに属するいずれかの抗体で、それらは症状が進むと再び発現するようになる。
3.〇 正しい。生後3か月ころに免疫グロブリンが最も少なくなる。なぜなら、出生時に十分な母体由来のIgGをもって生まれるが、徐々に消耗し、生後3~6か月頃にかけて母体由来のIgGは減少・消失するため。また、IgGだけでなくIgAやIgMといった免疫グロブリンの自己産生能もまだ十分ではないため、この時期が最も低値となる。ちなみに、免疫グロブリンとは、免疫活性を持つたんぱく質で、B細胞リンパ球より産生される。侵入した異物の排除に働く。
4.× 「1歳ころから」ではなく、乳児期(生後28日未満)から抗体の産生が盛んになる。抗体とは、液性免疫の中心となる存在で、病気の原因となる細菌やウィルスなどが体内に侵入したとき、異物として攻撃したり体外に排除する役割を担うタンパク質のことである。 免疫メカニズムに関与するリンパ球であるB細胞から産生・放出され、免疫グロブリンとも呼ばれる。
5.× 「3歳ころ」ではなく、10歳頃にIgAが成人と同じレベルに達する。IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。母乳(特に初乳)に多く含まれる。児が自分自身でも生産するため、徐々に濃度が上昇し10歳ごろに成人と同じレベルに達する。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

90 500mLの輸液を50滴/分の速度で成人用輸液セットを用いて順調に滴下し、現在80分が経過した。
 このときの輸液の残量を求めよ。
 ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
 解説:①②③mL
① 0~9
② 0~9
③ 0~9

解答①3、②0、③0
(300mL)

解説

輸液の残量を求める。

輸液の残量は、輸液総量(500mL)から滴下した輸液量(何mLか?)を引くことで求められる。

【滴下した輸液量の求め方】
前提知識:輸液セットの1mLあたりの滴下数は20滴(成人用輸液セット)

滴下した輸液量(滴)は、1分あたりの 滴下数 × 時間(分)で求められる。
したがって、設問のように1分あたり50滴の早さで80分滴下すると

50(滴) × 80 = 4000(滴)

つまり、4000滴を滴下したことになる。

 

次に、4000滴は、何mLか?を考える。
前提知識:輸液セットの1mLあたりの滴下数は20滴(成人用輸液セット)

 

4000(滴) ÷ 20(滴) = 200
したがって、4000滴は、200mL。

 

最後に、輸液総量は500mLであるから、ここから滴下量である200mLを引く。
500mL - 200mL = 300mLとなる。
したがって、300mLが輸液残量である。

 

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