6 2010年以降の日本の性感染症の動向はどれか。(※不適切問題:解2つ)
1.10代の梅毒患者数が増加している。
2.HIV感染者の療養期間が短くなっている。
3.新規HIV感染は異性間性的接触が最も多い。
4.性器ヘルペスウイルス感染症の定点報告数が増加している。
解答1・4(複数の選択肢を正解として採点する)
理由:複数の正解があるため。
解説
1.〇 正しい。10代の梅毒患者数が増加している。平成22(2010)年の10歳代の梅毒患者数は9人であったが、平成29(2017)年には189人である。ちなみに、梅毒は、5類感染症の全数把握対象疾患であり、梅毒は、スピロヘータの一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。
2.× HIV感染者の療養期間は、「短く」ではなく長くなっている。なぜなら、現在ではHIVに対する治療薬が著しく進歩し、十分にHIVの増殖を抑えることが可能となったため。生命予後も飛躍的に改善している。逆に、抗HIV薬の副作用やHIVに長期間感染していることによっておこる心臓や腎臓の障害、骨粗鬆症などの慢性的な合併症が問題となってきている。
3.× 新規HIV感染は、「異性間性的接触」ではなく同性間性的接触が最も多い。同性間性的接触が最も多く(71.3%)、次いで異性間性的接触が16.7%となっている(参考データ:「平成30(2018)年エイズ発生動向」厚生労働省エイズ動向委員会より)。
4.〇 正しい。性器ヘルペスウイルス感染症の定点報告数が増加している。平成22(2010)年は8420人であったが、その後、増減を繰り返し平成29(2017)年は9308人と増加している。(参考データ:「性感染症報告数(2004年~2020年)」厚生労働省HPより)
性器ヘルペスウイルス感染症は、5類感染症の定点把握対象疾患である。ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。
7 コミュニティ・アズ・パートナーモデルによって地域アセスメントを行う際に、コミュニティコアに含まれるデータはどれか。
1.失業率
2.緑地面積
3.医療機関数
4.地域の人口
解答4
解説
コミュニティ・アズパートナーモデルとは、アンダーソンと
1.× 失業率は、サブシステムの「④経済と行政」に含まれる
2.× 緑地面積は、サブシステムの「①物理的環境」に含まれる
3.× 医療機関数は、サブシステムの「⑤保健医療と社会福祉サービス」に含まれる
4.〇 正しい。地域の人口は、コミュニティ・アズパートナーモデルのコアに含まれる。地域アセスメントと活動プロセスの2要素か
8 市の保健師は地域アセスメントを行うために量的データの分析を行った。
分析疫学を用いているのはどれか。
1.高齢者の世帯形態別人数表
2.高齢化率の地理的分布を色分けした地図
3.年間出生数の過去10年間の経時的変化の折れ線グラフ
4.出産時の母親の年齢区分別と訪問時のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)の得点分布のクロス集計表
解答4
解説
・目的:地域アセスメントを行う
・「量的データの分析」を行った。
→量的データ(量的変数)とは、枚数、身長、金額など、数値で推し測ることができ、数字の大小に意味をもつデータのことである。研究の種類には、研究者が調査対象集団に対して何らかの働きかけ(介入)を行うか否かで、介入を行う「介入研究」と、介入を行わない「観察研究」とに大きく分類される。介入研究には、「臨床試験・地域研究」などがある。一方、観察研究には、大きく「①記述疫学・②分析疫学」に大別され、①記述疫学には、横断研究・時系列研究などがある。②分析疫学には、生態学的研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究などがある。
1~3.高齢者の世帯形態別人数表/高齢化率の地理的分布を色分けした地図/年間出生数の過去10年間の経時的変化の折れ線グラフは、記述疫学である。なぜなら、それら選択肢は、介入を行っていないため。記述疫学とは、集団における疾病の頻度と分布を人・時間・場所の面から客観的に記述し、疾病の発生要因について仮説を立てる手法である。
4.〇 正しい。出産時の母親の年齢区分別と訪問時のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)の得点分布のクロス集計表は、分析疫学である。出産時の母親の年齢区分別に、「出産時の母親の年齢」(=要因)と「産後うつ病」(=疾病)という2つの関連性に注目している。※ただし、クロス集計表で示すことは記述統計でも用いられる方法である。
9 自治体の保健師が地域の健康課題を解決するために新たな事業を計画・実施していくプロセスで適切なのはどれか。
1.費用対効果を考慮する。
2.評価指標は事業の実施後に決める。
3.自治体の施策体系と独立して位置付ける。
4.住民のニーズは事業を実施しながら把握する。
解答1
解説
・目的:地域の健康課題を解決する。
→新たな事業を計画・実施していくプロセスでは、①優先順位、②達成可能な数値化した目標、③実現可能な段階的計画、③資源(ヒト・モノ・カネ)の確保などが大切である。
1.〇 正しい。費用対効果を考慮する。費用対効果とは、「かけた費用に対してどのくらい効果があるか」を意味する。地方自治体では、限られた財政、人的資源を有効に用いるため、新たな事業を計画する際は考慮が必要である。
2.× 評価指標は、「事業の実施後」ではなく事業の計画策定時に決める。評価・目標は数値化できるのが望ましい。
3.× 自治体の施策体系と「独立して位置付ける」のではなく、地方自治体の施策体系のなかに位置づける。地域の現状を住民と共有し、住民のニーズに即した企画を、住民も参加して進めることができ、また地域の問題点や総合計画、既存の事業計画との整合性を保つことができる。
4.× 住民のニーズは、「事業を実施しながら把握する」のではなく計画段階から把握するよう努める。計画段階から住民参加を促し、住民ニーズを事業の計画に反映させる。
10 市保健センターの健康相談に来所した女性(70 歳)から「最近、おりものに血が混じっている。どこに行けばよいか」と相談があった。閉経は55歳だと言う。
市の保健師がこの女性に勧めるのはどれか。
1.婦人科の受診
2.泌尿器科の受診
3.市の子宮がん検診の受診
4.母子健康包括支援センターへの相談
解答1
解説
・女性(70歳、閉経55歳)
・「最近、おりものに血が混じっている。」
→本症例は、閉経後に不正性器出血がみられていることから、子宮体癌などの疾患の可能性が考えられる。
1.〇 正しい。婦人科の受診を勧める。なぜなら、閉経後に不正性器出血がみられていることから、子宮体癌などの疾患の可能性が考えられるため。既往歴や生活状況をよく確認したうえで、婦人科の受診を勧める。
2.× 泌尿器科の受診は優先度が低い。なぜなら、症状はおりものに関する内容のため。そもそも「おりもの」とは、子宮頚部、子宮内膜、膣から出る酸性の分泌物のことである。 膣内部のうるおいを保って粘膜を守ったり、汚れを排出したり、バイ菌などが子宮内に侵入するのを防ぐ役割がある。血尿や腹部の症状などがある場合に、腎疾患や膀胱の疾患が疑われるため、泌尿器科への受診も検討する。
3.× 市の子宮がん検診の受診は優先度が低い。なぜなら、市の子宮がん検診の受診は、2年に1度定期的に検診を受けるものであるため。設問の女性は、すでに不正性器出血の症状があり、がんは早期発見・早期治療が重要になるため、婦人科の受診を勧めたほうが良い。
4.× 母子健康包括支援センターへの相談は優先度が低い。なぜなら、子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)は、妊娠期か出産・子育て期までのさまざまなニーズに対して、総合的な相談支援をワストップで提供する拠点であるため。
子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。
【主な5つの事業】
①母性・乳幼児の健康の保持増進に関する実情の把握
②母子保健に関する相談への対応
③母性・乳幼児に対する保健指導
④母子保健に関する機関との連絡調整等、健康の保持・増進に関する支援
⑤健康診査、助産その他の母子保健に関する事業
(※「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン 」厚生労働省HPより)