第106回(R5)助産師国家試験 解説【午後31~35】

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31 先天性難聴および新生児聴覚スクリーニングで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.検査は自然睡眠中に行うのが望ましい。
2.初回検査は3か月児健康診査時に実施する。
3.先天性難聴児の出生頻度は約10,000人に1人である。
4.支援が必要な児に対する療育は1歳になったら開始する。
5.妊娠初期の母体の風疹感染は児の先天性難聴のリスク因子となる。

解答1・5

解説

聴覚スクリーニング

新生児聴覚スクリーニング検査は、聴覚障害を早く発見し、早期に援助することを目的に行うものである。精密検査の必要性を判定し、音刺激を与えて反応を得る検査である。生まれて間もない赤ちゃんを対象とした「耳の聞こえ」の検査である。出産した医療機関等で、退院までの間に検査を受けることが一般的である。赤ちゃんが眠っている間に、小さな音を聞かせて、反応を検査機器で確かめる。おおむね生後3日以内に行う。検査は、数分から10分以内で終わり、痛みや赤ちゃんの体への影響のない安全な検査である。

1.〇 正しい。検査は自然睡眠中に行うのが望ましい。なぜなら、検査中の新生児の動きや泣き声が結果に影響を及ぼす可能性があるため。可能な限り静かで落ち着いた状態で検査を行うことが推奨されている
2.× 初回検査は、「3か月児健康診査時」ではなく出生後すぐに実施する。生後24時間以降でおおむね生後3日以内に行う。なぜなら、出産当日は中耳に液体が貯留していることが多いため。
3.× 先天性難聴児の出生頻度は、「約10,000人」ではなく約1000に1人である。先天性難聴は、最も多い先天性障害である。
4.× 支援が必要な児に対する療育は、「1歳」ではなく1歳をまたず早期に開始する。なぜなら、言葉の遅れにつながりかねないため。先天性難聴の治療法として、軽度から中等度までの難聴では補聴器の使用、高度から重度の難聴では人工内耳手術を行なう。 
5.〇 正しい。妊娠初期の母体の風疹感染は児の先天性難聴のリスク因子となる。妊娠中に知らずにかかった可能性のあるウイルス感染が原因で難聴になる。サイトメガロウイルスや風疹ウイルスが難聴のリスク要因となる。また、近年では先天性難聴の原因として難聴をおこす遺伝子も発見されている。

(※図引用:「新生児聴覚スクリーニングマニュアル」一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会より)

 

 

 

 

 

32 母子保健法に基づく産後ケア事業で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.実施主体は都道府県である。
2.出産後1年以内は利用できる。
3.利用できるのは初産婦に限られる。
4.自宅への訪問サービスを申請できる。
5.申請時に医師の診断書が必要である。

解答2・4

解説

母子保健法とは?

母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。

産後ケア事業とは、分娩施設退院後から一定の期間、病院・診療所・助産所・対象者の居宅などにおいて、助産師などの看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的としている。市町村が実施主体である。(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)

1.× 実施主体は、「都道府県」ではなく市町村である。
2.〇 正しい。出産後1年以内は利用できる。母子保健法第17条の2においては、本事業に関する市町村の努力義務の時期について「出産後1年」とされている(※参考:「母子保健法」e-GOV法令検索様)。
3.× 利用できるのは初産婦に限られるわけではない。産後ケア事業は、心身の不調又は育児不安がある者、その他、特に支援が必要と認められる者が対象となる。
4.〇 正しい。自宅への訪問サービスを申請できる。主な内容として、①病院等へ数日宿泊する宿泊型、②助産院等へ通うデイサービス型、③助産師等が家庭訪問するアウトリーチ型がある。
5.× 申請時に医師の診断書は、不必要である。なぜなら、産後ケア事業の対象者は、心身の不調又は育児不安がある者、その他、特に支援が必要と認められる者であるため。申請時の持ち物として、母子健康手帳や印鑑、市民税課税状況の分かる書類、産後ケア事業申請書兼情報提供同意書などが必要となる。申請時に医師の診断書が必要であるのは、身体障害者手帳である。

産後ケア事業の主な事業内容

事業内容として、利用者を短期入所させて産後ケアを行う。利用者は、例えば、産後に家族のサポートが十分受けられない状況にある者、授乳が困難な状況のまま分娩施設を退院した者、不慣れな育児に不安があり専門職のサポートが必要である者等が想定される。なお、分娩施設での延長入院(産褥入院)とは区別する必要がある。
利用期間は、原則として7日以内とし、分割して利用しても差し支えない。市町村が必要と認めた場合は、その期間を延長することができる。実施担当者は、短期入所型の産後ケア事業については、実施場所によらず、1名以上の助産師等の看護職を24時間体制で配置する。市町村の判断により父親、兄姉等の利用者の家族を同伴させることができる。家族の利用の際は他の利用者に十分配慮する必要があり、その旨あらかじめ確認しておく。
【ケアの内容】
① 母親の身体的ケア及び保健指導、栄養指導
② 母親の心理的ケア
③ 適切な授乳が実施できるためのケア(乳房ケアを含む。)
④ 育児の手技についての具体的な指導及び相談
⑤ 生活の相談、支援

(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)

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33 分娩を伴う入院でハイリスク分娩管理加算の対象となるのはどれか。2つ選べ。

1.分娩前のBMIが30
2.妊娠33週の早産
3.糖尿病で治療中
4.39歳の初産婦
5.双胎妊娠

解答3・5

解説

ハイリスク分娩管理加算の対象患者

①妊娠22週から32週未満の早産の患者
②40歳以上の初産婦である患者
③分娩前のBMIが35以上の初産婦である患者
④妊娠高血圧症候群重症の患者
⑤常位胎盤早期剥離の患者
⑥前置胎盤(妊娠28週以降で出血等の症状を伴うものに限る。)の患者双胎間輸血症候群の患者
⑦多胎妊娠の患者
⑧子宮内胎児発育遅延の患者
⑨心疾患、糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、白血病、血友病、出血傾向のある状態の患者、HIV陽性の当該妊娠中に帝王切開術以外の開腹手術を行った患者、又は行う予定のある患者
⑩精神疾患の患者(精神療法が実施されているものに限る。)

1.× 分娩前のBMIが「30」ではなく35が対象となる。
2.× 「妊娠33週」ではなく、妊娠22週から32週未満の早産の患者が対象となる。
3.〇 正しい。糖尿病で治療中は、分娩を伴う入院でハイリスク分娩管理加算の対象となる。他にも、心疾患、特発性血小板減少性紫斑病、白血病、血友病、出血傾向のある状態の患者、HIV陽性の当該妊娠中に帝王切開術以外の開腹手術を行った患者、又は行う予定のある患者が対象となる。
4.× 39歳ではなく「40歳以上」の初産婦である患者が対象となる。
5.〇 正しい。双胎妊娠は、分娩を伴う入院でハイリスク分娩管理加算の対象となる。多胎妊娠の患者が対象である。

 

 

 

 

 

34 双生児を出産した会社員が利用できる制度で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.産後休業は14週間である。
2.1児ごとに出産育児一時金が支給される。
3.子が就学するまで短時間勤務を申請できる。
4.子の看護休暇は1年間に10日まで取得できる。
5.産後2年まで医師の指示による受診に必要な時間を申請できる。

解答2・4

解説

育児介護休業法とは?

育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、育児・介護に携わる労働者について定めた日本の法律である。①労働者の育児休業、②介護休業、③子の看護休暇、④介護休暇などが規定されている。

1.× 産後休業は、「14週間」ではなく8週間である。産前・産後休業とは、母体保護の見地から認められている休業で、労働基準法で定められている。 休業日数は、産前休暇は出産予定日を含む6週間(双子以上は14週間)以内で、出産予定日よりも実際の出産日が後の場合はその差の日数分も産前休業に含まれる。産後休暇は8週間以内(単児・双子以上関係ない)である。
2.〇 正しい。1児ごとに出産育児一時金が支給される。出産育児一時金とは、健康保険法に基づき、日本の公的医療保険制度の被保険者が出産したときに支給される手当金(1児ごとに42万円)である。そもそも正常な出産のときは病気とみなされないため、定期健診や出産のための費用は自費扱いとなる。出産育児一時金は直接支払制度となっている。直接支払制度とは、出産育児一時金42万円が直接医療機関に支払われる制度であり、分娩後、褥婦は医療機関に保険証を提示し、所定の合意書に記載することでこの制度を利用する。出産費用が出産育児一時金の額より少ない場合、その差額を被保険者等に支給する。したがって、日本の公的医療保険に加入していることが条件となる。
3.× 「子が就学する(6歳)」ではなく子が3歳まで短時間勤務を申請できる。短時間勤務制度とは、育児・介護休業法により定められた制度で、従業員から申し出があれば、1日の所定労働時間を6時間とすることが法律で決められている。育児では「子が3歳に達するまで」、介護では「利用開始日から連続する3年以上の期間」取得可能で、利用する期間は個別の対応が求められている。
4.〇 正しい。子の看護休暇は1年間に10日まで取得できる。子の看護休暇とは、小学校就学前の子どもを養育する従業員が、子どもの世話をする目的で、取得できる休暇制度のことである。対象となる子どもが、1人につき5日、2人以上の場合は10日を、有給休暇とは別に取得することができる。

5.× 「産後2年」ではなく産後1年まで医師の指示による受診に必要な時間を申請できる。これは、事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。①妊娠23週までは4週間に1回、②妊娠24週から35週までは2週間に1回、③妊娠36週以後出産までは1週間に1回、④産後(出産後1年以内)医師等の指示に従って必要な時間を確保する。

 

 

 

 

 

35 周産期医療体制で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.周産期医療体制整備計画は都道府県が策定する。
2.母体の救急搬送は妊産婦が居住している都道府県内に限られる。
3.地域周産期母子医療センターの認定には産科と小児科が必要である。
4.総合周産期母子医療センターは常時母子の搬送を受け入れる機能がある。
5.総合周産期母子医療センターのNICUの看護師配置は常時6床に1名である。

解答1・4

解説

(※引用:「周産期医療体制」厚生労働省HPより)

周産期母子医療センターの整備とは?

周産期母子医療センターには、①総合周産期母子医療センターと②地域周産期母子医療センターがある。
①総合周産期母子医療センターとは、母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室(NICU)を備えた医療機関である。常時、母体・新生児搬送受入体制を有し、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療等を担っている。
②地域周産期母子医療センターとは、産科及び小児科(新生児)を備え、周産期に係る比較的高度な医療行為を常時担う医療機関である。

1.〇 正しい。周産期医療体制整備計画は都道府県が策定する。「周産期医療体制整備指針」において、都道府県は、「周産期医療協議会」の意見を聴いて、「周産期医療体制整備 計画」を策定することとされている(※引用:「周産期医療体制整備計画と医療計画の一体化について 」厚生労働省HPより)。
2.× 母体の救急搬送は妊産婦が居住している都道府県内に限られていない。なぜなら、病態地域の必要性に応じて、県境を越えた医療機関との救急搬送ネットワークを構築しているため。広域搬送に際しては、救急医療用ヘリコプターや消防防災ヘリコプター等を活用したシステムを検討している。
3.× 必ずしも、地域周産期母子医療センターの認定には産科と小児科が必要とはいえない。地域周産期母子医療センターとは、産科及び小児科(新生児医療を担当するもの)等を備え、周産期に係る比較的高度な医療行為を行うことができる医療施設を都道府県が認定するものをいう。地域周産期医療関連施設等からの救急搬送や総合周産期母子医療センターその他の地域周産期医療関連施設等との連携を図るものとする。 
4.〇 正しい。総合周産期母子医療センターは常時母子の搬送を受け入れる機能がある。総合周産期母子医療センターとは、母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室(NICU)を備えた医療機関である。常時、母体・新生児搬送受入体制を有し、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療等を担っている。
5.× 総合周産期母子医療センターのNICU(新生児集中治療管理室)の看護師配置は、「常時6床」ではなく常時3床に1名である。ほかにも、24時間体制で常時新生児を担当する医師が勤務していることが要件としてあげられる。

 

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