第106回(R5)助産師国家試験 解説【午後51~55】

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次の文を読み51、52の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、1回経産婦)は既往歴、家族歴ともに特記すべきことはない。妊娠11週0日に妊婦健康診査のため産婦人科を受診した。身長155cm、体重40.3kg(非妊時体重40kg)で2週前から300g増加している。血圧100/68mmHg、下肢の浮腫(-)、尿蛋白(-)、尿糖(-)、尿ケトン体(-)、胎児心拍動を確認している。Aさんは助産師に「何か食べていないと気持ち悪くなります。そうめんとオレンジばかり食べています。水分は無糖の炭酸飲料で摂っています」と話す。

51 このときのAさんのアセスメントで正しいのはどれか。

1.嗜好の変化は生理的である。
2.制吐薬の点滴静脈内注射が必要である。
3.栄養バランスの偏りは胎児の発育に影響する。
4.この時期の体重増加は母体の心臓に過度な負荷をかける。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、1回経産婦)
・既往歴、家族歴:特記なし。
妊娠11週0日:妊婦健康診査のため産婦人科を受診。
・身長155cm、体重40.3kg(非妊時体重40kg
・2週前から300g増加。
・血圧100/68mmHg、下肢の浮腫(-)、尿蛋白(-)、尿糖(-)、尿ケトン体(-)、胎児心拍動を確認。
・Aさん「何か食べていないと気持ち悪くなります。そうめんとオレンジばかり食べています。水分は無糖の炭酸飲料で摂っています」と。
→本症例は、つわりを経験していると考えられる。つわりとは、妊娠によるホルモンバランスの変化によって生じる、悪心(吐き気)、嘔吐、食べ物の好みの変化などの総称である。妊娠12週~14週ころに軽減するが、個人差が大きいため、一概にこの時期とはいいきれない。つわりは妊娠8週目~10週目ごろに症状のピークを迎える場合が多いとされている。

1.〇 正しい。嗜好の変化は生理的である。なぜなら、本症例は、つわりを経験していると考えられるため。つわりとは、妊娠によるホルモンバランスの変化によって生じる、悪心(吐き気)、嘔吐、食べ物の好みの変化などの総称である。ちなみに、生理的とは、からだの機能や組織に関するさまや、理屈ではなく本能的であるさまのことをさす。
2.× 制吐薬の点滴静脈内注射が必要であるのは、つわりがさらに悪化した場合(妊娠悪阻)である。妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。診断基準として、①5%以上の体重減少、②血中・尿中のケトン体の増加が見られる。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。
3.× 栄養バランスの偏りは胎児の発育に影響するとはいいきれない。なぜなら、つわりの時期(妊娠8週目~10週目ごろ)は、まだ児も小さく、母体のもともと備蓄していた栄養で十分成長できるため。
4.× この時期の体重増加は、母体の心臓に過度な負荷をかけるとはいえない。なぜなら、非妊時体重40kgで、現在(妊娠11週0日)の体重40.3kgであるため。非妊時のBMIは16.0(低体重:やせ)である。したがって、妊娠中の体重増加の目安は、12~15kgである。また、1週間に0.5~1kg以上も体重が増加し、むくみがひどくなることが続く場合には、心不全状態にある可能性があるが、本症例はそのどれも当てはまらない。

妊娠悪阻とは?

妊娠悪阻とは、妊娠中にみられる極めて強い吐き気や激しい嘔吐のことである。通常の「つわり」がみられる女性とは異なり、妊娠悪阻の女性は体重が減少し、脱水を起こす。妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で逆行性健忘、記銘力の低下、作話が特徴のコルサコフ症候群という後遺症が残る。 母体死亡に至る症例もあるため、慎重に管理する必要がある。悪心・嘔吐が強く、脱水、3kg以上の体重減少、飢餓によるケトアシドーシスをきたすもの、経口摂取が困難な時、尿ケトン体が陽性の場合は、輸液を行い水分と栄養、ビタミン類を補充する。

 

 

 

 

 

次の文を読み51、52の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、1回経産婦)は既往歴、家族歴ともに特記すべきことはない。妊娠11週0日に妊婦健康診査のため産婦人科を受診した。身長155cm、体重40.3kg(非妊時体重40kg)で2週前から300g増加している。血圧100/68mmHg、下肢の浮腫(-)、尿蛋白(-)、尿糖(-)、尿ケトン体(-)、胎児心拍動を確認している。Aさんは助産師に「何か食べていないと気持ち悪くなります。そうめんとオレンジばかり食べています。水分は無糖の炭酸飲料で摂っています」と話す。

52 妊娠22週6日、Aさんは妊婦健康診査に来院した。体重41.3kg、血圧106/73mmHg、下肢の浮腫(-)、尿蛋白(-)、尿糖(-)、腹囲75cm、子宮底長17cm、推定胎児体重500g。下腹部痛や性器出血はない。Aさんは助産師に「空腹時の気持ち悪さはなくなりました。妊娠前の食生活に戻っています。もともと1日2食でした」と話す。
 今後、Aさんと胎児に考えられる健康のリスクはどれか。

1.胎児貧血
2.羊水過多
3.妊娠糖尿病
4.妊娠高血圧症候群
5.胎児発育不全〈FGR〉

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、1回経産婦)
・身長155cm、体重40.3kg(非妊時体重40kg
妊娠22週6日:妊婦健康診査。
体重41.3kg、血圧106/73mmHg、下肢の浮腫(-)、尿蛋白(-)、尿糖(-)、腹囲75cm、子宮底長17cm推定胎児体重500g
・下腹部痛や性器出血:なし。
・Aさん「空腹時の気持ち悪さはなくなりました。妊娠前の食生活に戻っています。もともと1日2食でした」と。
→①体重の増加具合(体重41.3kg)、②子宮底長の短さ(17cm)、③推定胎児体重の低さ(500g)、④1日2食といった要素から、罹患しやすいものを選択しよう。本症例の妊娠中の体重増加の目安は12~15kgである。また、子宮底長の基準値は、妊娠5ヶ月未満までは「妊娠月数×3cm」、胎児の成長も早くなり、羊水量も増える妊娠6ヶ月以降は「妊娠月数×3cm+3cm」が基準値である。

1.× 胎児貧血よりかかりやすいものが他にある。胎児貧血とは、胎児の赤血球が減少している状態である。原因として、もっとも多いのが血液型不適合妊娠である。血液型不適合妊娠とは、母親と胎児の血液型が異なっている状態で、代表的なものにRh式血液型不適合妊娠やABO式血液型不適合妊娠などである。
2.× 羊水過多よりかかりやすいものが他にある。羊水過多とは、羊水量が800 mLを超える場合であり、母体の糖尿病や児が羊水をうまく飲めない消化管閉鎖などが原因となることが多い。診断方法は超音波検査によるamniotic fluid index(AFI)の計測であり、AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。
3.× 妊娠糖尿病よりかかりやすいものが他にある。なぜなら、本症例の尿糖(-)であるため。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常である。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。診断基準は糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合である。
4.× 妊娠高血圧症候群よりかかりやすいものが他にある。なぜなら、本症例の血圧106/73mmHgであるため。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(血圧140/90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
5.〇 正しい。胎児発育不全〈FGR〉は、今後Aさんと胎児に考えられる健康のリスクである。胎児発育不全とは、子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

 

 

 

 

 

次の文を読み53、54の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、1回経産婦)は無月経に気付き受診し、妊娠8週と診断された。視診で会陰部や腟内に乳頭状の疣贅を認めた。腟鏡診では子宮頸部に病変は認めない。Aさんは「3か月ほど前から外陰部が痒くなりました」と話している。

53 Aさんへの説明で適切なのはどれか。

1.「流産になるリスクが高まります」
2.「いぼを外科的に除去する治療を行います」
3.「赤ちゃんが鵞口瘡になる可能性があります」
4.「いぼはヘルペスウイルスの感染が原因です」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、1回経産婦)
・診断:妊娠8週(無月経に気付き受診)。
・視診:会陰部や腟内に乳頭状の疣贅(いぼ)。
・腟鏡診:子宮頸部に病変なし。
・Aさん「3か月ほど前から外陰部が痒くなりました」と。
→本症例は、尖圭コンジローマが疑われる。尖圭コンジローマとは、性病の一種で、性器にイボのようなぶつぶつができる病気で、主に性行為や性行為に似た行為によって感染する。粘膜が接触することで、傷口などからヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入する。粘膜だけではなく皮膚に傷があれば、そこから感染することもある。

1.× 流産になるリスクが高まるのは、梅毒である。尖圭コンジローマに感染している妊婦が出産するとき、産道で赤ちゃんにウイルスが感染することがあり、その結果、赤ちゃんにも尖圭コンジローマが発症したり、まれに多発性咽頭乳頭腫(のどにイボができる)があらわれることがある。
2.〇 正しい。「いぼを外科的に除去する治療を行います」と説明する。本症例は、尖圭コンジローマが疑われる。尖圭コンジローマの治療方法は、外科療法と薬物療法の2種類がある。外科療法において、電気焼灼法があげられる。電気焼灼法とは、高周波電流のメスで対象物(イボ)を焼く方法である。この治療方法を行うには、手術前に局所麻酔が必要となり、対象物の表面のみを焼杓しても不十分で再発してしまうことが多いため、深く広範囲に焼勺を行う必要がある。そのため、副作用としても腹痛、発熱、出血などがあげられる。
3.× 赤ちゃんは、「鵞口瘡(※読み:がこうそう)」ではなく多発性咽頭乳頭腫になる可能性がある。ちなみに、鵞口瘡とは、乳幼児の口の粘膜にできるカンジダというカビの感染症である。おもに新生児、乳児にみられ、不潔な乳首などを介して感染すると考えられている。そのほか、抗生物質の長期投与を受けた小児や、先天性あるいは後天性に免疫不全状態にある小児にみられる。カンジダ菌は常在菌のため、通常は人の体において増えすぎることなく、ほかの菌とバランスを保って生息している。しかし、新生児や乳幼児は免疫力が低いため、出産時や哺乳の際に感染したカンジダ菌が異常に増殖すると、鵞口瘡を発症しやすくなる。
4.× いぼは、「ヘルペスウイルス」ではなく、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因である。例えば、口唇ヘルペスの場合、ヘルペスウイルスが唇や唇の周りの皮膚に接触して、粘膜に感染することによって起こる。口唇や口唇の周りがむずむずする、ピリピリ、チクチクと痛みを伴う赤みが出る、水ぶくれなどの症状がある。

梅毒とは?

梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。

【臨床的特徴】
Ⅰ期梅毒:感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒:感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
経過晩期:感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。また、妊婦における梅毒感染は、先天梅毒のみならず、流産及び死産のリスクとなる。(※一部引用:「梅毒」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み53、54の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、1回経産婦)は無月経に気付き受診し、妊娠8週と診断された。視診で会陰部や腟内に乳頭状の疣贅を認めた。腟鏡診では子宮頸部に病変は認めない。Aさんは「3か月ほど前から外陰部が痒くなりました」と話している。

54 その後、Aさんの疣贅は消失し、妊娠経過に異常はなかった。妊娠35週で児の推定体重は2,360gであった。妊娠36週3日、1時から陣痛発来し2時に入院した。子宮口6cm開大、展退度80%、Station-1で児頭が先進している。胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。助産師は問診と診療録から、第1子がB群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症であったこと、妊娠35週時のB群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症検査は実施していないことを確認した。
 このときのAさんに適用されるのはどれか。

1.帝王切開分娩
2.尿の細菌培養検査
3.陣痛促進薬の点滴静脈内注射
4.ペニシリン系抗菌薬の点滴静脈内注射

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠経過に異常なし(疣贅消失)
・妊娠35週:児の推定体重は2,360g。
妊娠36週3日:1時から陣痛発来し、2時に入院。
・子宮口6cm開大、展退度80%、Station-1で児頭が先進。
・胎児心拍数陣痛図:reassuring fetal status。
・第1子:B群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症
・妊娠35週時:B群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症検査は実施していない
→reassuring fetal status(RFS)とは、健常な胎児の状態を呼び、安心できない胎児の状態をnon-reassuring fetal status(NRFS)と呼ぶ。

1.× 帝王切開分娩の優先度は低い。なぜなら、帝王切開の主な適応としては、胎児機能不全、臍帯下垂・脱出、前置血管破綻、37週未満の前期破水などであるため。
2.× 「尿」ではなく、腟口や肛門の細菌培養検査を行う。B群溶血性連鎖球菌検査とは、妊娠後期(33~37週頃)において、腟口や肛門の周囲を検査用の綿棒でこすり、検体を培養して、B群溶血性連鎖球菌がいるかどうかを調べるものである。
3.× 陣痛促進薬の点滴静脈内注射の優先度は低い。なぜなら、本症例に陣痛促進が適応とならないため。陣痛誘発は、陣痛促進薬により人工的に子宮収縮を誘発することで、陣痛発来後に微弱陣痛のため分娩進行に問題が認められ子宮収縮の増強を図る場合が陣痛促進である。妊娠高血圧症候群など母体適応による陣痛誘発は、週数によっては胎児成熟を犠牲にせざるを得ない場合があり、NICUとの連携が不可欠となる。
4.〇 正しい。ペニシリン系抗菌薬の点滴静脈内注射が、このときのAさんに適用される。なぜなら、前児がGBS感染症の場合、妊産婦の経腟分娩中あるいは前期破水後,新生児の感染を予防するためにペニシリン系などの抗菌薬を点滴静注するため(※参考:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P297」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P297」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

次の文を読み55の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠12週0日で妊娠の診断を受けた。身長155cm、体重70kg(非妊時体重68kg)、血圧120/80mmHg、血液検査データは随時血糖85mg/dL、HbA1c5.5%であった。その後、妊婦健康診査を受診せず、妊娠33週0日で来院した。来院時、体重82kg、血圧130/80mmHg、尿蛋白(-)、尿糖2+、子宮底長35cm、推定胎児体重2,600g、AFIは23cmであった。

55 このときのAさんの状態のアセスメントで正しいのはどれか。

1.塩分制限が必要である。
2.羊水検査が必要である。
3.耐糖能検査が必要である。
4.腟分泌物の細菌培養検査が必要である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・妊娠12週0日:妊娠。
・身長155cm、体重70kg(非妊時体重68kg)、血圧120/80mmHg
・血液検査データ:随時血糖85mg/dL、HbA1c5.5%。
・妊娠33週0日:体重82kg、血圧130/80mmHg、尿蛋白(-)、尿糖2+、子宮底長35cm、推定胎児体重2,600g、AFIは23cm。
→妊娠時と妊娠33週0日の変化から、異常を判断できるようにしよう。その病気の生活指導も併せて覚えておこう。

1.× 塩分制限が必要であるのは、「妊娠高血圧症候群」である。妊娠高血圧症候群の場合は、すでに全身の血液の循環量が少なくなっており、過剰な塩分制限により症状の悪化を引き起こす可能性があるため、1日7~8gを目安に塩分を摂取する。ちなみに、妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(血圧140/90mmHg以上)を発症した場合をいう。基準値として、収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上(重症では110mmHg以上)になった場合が該当する。
2.× 羊水検査が必要であるのは、「15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常」である。羊水検査とは、羊水穿刺により羊水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査である。15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常に適応となり、ほぼ100%で確定診断が可能である。
3.〇 正しい。耐糖能検査が必要である。なぜなら、本症例の非妊時体重68kgで、BMIを算出すると28.3で肥満(1度)であるため。また、妊娠33週0日:体重82kg尿糖2+になっていることも耐糖能検査が必要である要因である。ちなみに、耐糖能検査とは、朝食抜きで受診し、ブドウ糖75gを飲む前、飲んでから1時間後、2時間後の計3回、血糖値を測る。空腹時100mg/dl以上、1時間値180mg/dl以上、2時間値150mg/dl以上のうち、2項目を満たせば妊娠糖尿病と診断される。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
4.× 腟分泌物の細菌培養検査が必要であるのは、①B群溶血レンサ球菌の保菌者検査、②細菌性膣症の検査、③膣炎の起炎菌検査、④淋菌検査などである。

 

(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

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