第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午前81~85】

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81 精神科病院の閉鎖病棟に入院中の患者宛てに厚みのある封筒が届いた。差出人は記載されていなかった。
 当日の看護師の対応で適切なのはどれか。

1.患者に渡さず破棄する。
2.患者による開封に立ち会う。
3.開封せず患者の家族に転送する。
4.看護師が開封して内容を確認してから患者に渡す。
5.退院まで開封せずにナースステーションで保管する。

解答2

解説

精神保健福祉法 第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準

『精神保健福祉法』での規定には、入院患者に対する信書や通信の発受の制限は禁止されている(第36条)。

1.× 患者に渡さず破棄することは行ってはならない。『精神保健福祉法』での規定には、入院患者に対する信書や通信の発受の制限は禁止されている(第36条)。
2.〇 正しい。患者による開封に立ち会う。なぜなら、封筒の中身に不審なもの(危険物)が同封されているかもしれないため。刃物、薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書について、患者によりこれを開封させ、異物を取り出した上、患者に当該受信信書を渡した場合においては、当該措置を採った旨を診療録に記載するものとする
3.× 開封せず患者の家族に転送することは行ってはならない。なぜなら、閉鎖病棟であったとしても、患者の人権は守られており、信書の自由を侵害することになるため。患者の病状から判断して、家族等からの信書が患者の治療効果を妨げることが考えられる場合には、あらかじめ家族等と十分連絡を保って信書を差し控えさせ、あるいは主治医あてに発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとする。
4.× 看護師が開封して内容を確認してから患者に渡すことは行ってはならない。なぜなら、プライバシーの侵害にあたるため。患者による開封に立ち会う。
5.× 退院まで開封せずにナースステーションで保管することは行ってはならない。なぜなら、信書の内容は、急を要する可能性があるため。勝手に開封時期を遅らせることもまた信書の自由を侵害することになる。

精神保健福祉法とは?

精神保健福祉法とは、①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

82 潰瘍性大腸炎の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.遺伝性である。
2.直腸に好発する。
3.縦走潰瘍が特徴である。
4.大腸癌の危険因子である。
5.大量の水様性下痢が特徴である。

解答2/4

解説

潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。原因不明であるが、遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って発症に関与していると考えられている。

1.× 「遺伝性」と確定したものではなく、現在のところ潰瘍性大腸炎の原因は不明である。
2.〇 正しい。直腸(大腸)に好発する。大腸は、①結腸と②直腸に分かれ、①結腸とは、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に区別される。②直腸とは、大腸の終わりのS状結腸に続く部分から始まり、最後は肛門へと続く管腔である。
3.× 縦走潰瘍(腸の縦方向にできている長い傷)が特徴であるのは、クローン病である。ちなみに、クローン病とは、小腸や大腸などの粘膜に、慢性的な炎症を引き起こす病気のことで、クローン病は10~20歳代で発症するケースが多く、主に小腸や大腸に炎症が現れる。現在のところ、はっきりした発症原因はよく分かっていない。一般的な症状は腹痛と下痢である。しかし、口から肛門まで全ての消化器官に炎症を引き起こす可能性があるため、症状は人によって大きく異なる。栄養の消化吸収障害、炎症による消耗に伴う必要エネルギーの増加などが起こるため、食事・栄養管理は重要である。したがって、クローン病の食事療法は高カロリー・低脂肪食・低残渣食が基本とされている。低残渣食とは、胃腸に負担をかけないように調整した食事のことで、日常の食事で胃腸にもっとも負担をかける成分は食物繊維で、それを制限し負担をかけやすい脂肪の多い物・刺激の強い物・極端に冷たい物などを控えた食事のことである。必要エネルギーの補給のほか、腸管の安静と食事性アレルゲンの除去を目的として栄養療法を行う。治療では小腸や大腸などの炎症や、過剰な免疫作用を抑える薬物療法が中心に行われる。
4.〇 正しい。大腸癌の危険因子である。潰瘍性大腸炎の発症からの期間が長くなると、大腸がんのリスクが高くなる。欧米の報告では、潰瘍性大腸炎患者さんで大腸がんが発生する割合は、診断からの経過年数が10年で1.6%、20年で8.3%、30年で18.4%と、年数が経過するほど高くなる傾向がみられる。ちなみに、大腸癌とは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんである。この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大していてがんによる死亡数でも胃がんを抜いて第2位になっている。生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられる。生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられている。
5.× 大量の「水様性下痢」ではなく粘血便が特徴である。重症例では排便回数は増加し、血性下痢となることもある。ちなみに、粘血便とは、ベタベタとした粘液に加えて、血液がついている便のことである。粘血便は腸からの粘液に加えて、どこかで出血が示唆であるため、粘液便より注意が必要である。

 

 

 

 

 

83 児童相談所について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.国が設置する。
2.児童福祉司が配置されている。
3.母親を一時保護する機能を持つ。
4.知的障害に関する相談を受ける。
5.児童の保健について正しい衛生知識の普及を図る。

解答2/4

解説

1.× 「国」ではなく、都道府県と政令指定都市が設置する。児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。
2.〇 正しい。児童福祉司が配置されている。児童福祉司とは、児童相談所に置かなければならない職員で、児童相談所長が定める担当区域により、児童の保護その他児童の福祉に関する事項について相談に応じ、専門的技術に基づいて必要な指導を行うケースワーカーの一種である。
3.× 「母親」ではなく、児童を一時保護する機能を持つ。
4.〇 正しい。知的障害に関する相談を受ける。児童相談所では、障害や養護などの相談に応じている
5.× 児童の保健について正しい衛生知識の普及を図るのは、保健所である。保健所とは、精神保健福祉・健康・生活衛生など地域保健法に定められた14の事業(主に疾病予防・健康増進・環境衛生などの公衆衛生活動)を中心に行っている。保健所では保健師や精神保健福祉士、医師などが生活面や社会復帰について相談にのってくれる。都道府県、特別区、指定都市、中核市、『地域保健法施行令』で定める市に必置である。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①市町村への援助(市町村相互間の連絡調整、情報提供、研修その他必要な援助)
②児童・その家庭の相談のうち、専門的な知識・技術を必要とする者への対応
③児童・その家庭の必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的、精神保健上の判定
調査、判定に基づいた児童の健康・発達に関する専門的な指導
児童の一時保護
⑥児童福祉施設等への入所措置
⑦一時保護解除後の家庭・その他の環境調整,児童の状況把握・その他の措置による児童の安全確保
⑧里親に関する業務
⑨養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

84 国際生活機能分類<ICF>の構成要素はどれか。2つ選べ。

1.参加
2.休息
3.社会的不利
4.生活関連動作
5.心身機能・構造

解答1/5

解説

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。ICFは、生活機能と障害(①心身機能・身体構造、②活動、③参加)と、背景因子(①環境因子、②個人因子)の2部門で構成されている。

ICFは、生活機能と障害(①心身機能・身体構造、②活動、③参加)と、背景因子(①環境因子、②個人因子)の2部門で構成されている。したがって、選択肢1/5.参加/心身機能・構造がICFの構成要素に含まれる。

2~4.× 休息/社会的不利/生活関連動作は、ICFの構成要素に含まれない。ちなみに、社会的不利は、1980年のICIDHの分類に含まれる。

(※画像引用:Job Medley様HPより)

 

 

 

 

 

85 Aさん(48歳、男性)は、右眼の視野に見えにくい部位があることに気付き眼科を受診した。暗い部屋で見えにくいことはない。頭痛や悪心はない。
 Aさんの疾患を診断するのに必要な検査はどれか。2つ選べ。

1.脳波検査
2.色覚検査
3.眼圧測定
4.眼底検査
5.眼球運動検査

解答3/4

解説

本症例のポイント

・Aさん(48歳、男性)
・右眼の視野に見えにくい部位があることに気付き眼科を受診した。
・暗い部屋で見えにくいことはない。
・頭痛や悪心はない。
→本症例は、右眼だけの視野異常がみられる。この原因として考えられる原因が特定できる検査を選択しよう。主に、右眼の視野に見えにくい部位があるという症状から、緑内障や網膜剥離、網膜動脈閉塞症が疑われる。

1.× 脳波検査は必要ない。なぜなら、脳波検査は、主にてんかんを判断する検査であるため。脳波とは、その電気の波を頭皮上に装着した電極より記録し、大脳の活動状態を調べるものである。脳波検査では一般的に、てんかんなどの発作性意識障害の鑑別、脳腫瘍や脳梗塞・脳出血などの脳血管障害、頭部外傷などで中枢神経系の異常を疑う場合、薬物等による中毒やそれらに伴う意識障害の時などに行われる。
2.× 色覚検査は必要ない。なぜなら、本症例は視野異常を訴えているため。色覚検査とは、色覚異常の有無を調べる検査である。ほかにも、異常の種類や程度を知るために行われる。
3.〇 正しい。眼圧測定は有用である。なぜなら、本症例は緑内障が疑われるため。緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどが生じる。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。
4.〇 正しい。眼底検査は有用である。なぜなら、本症例は網膜剥離網膜動脈閉塞症が疑われるため。眼底検査とは、検視鏡によって網膜、脈絡膜、視神経乳頭を観察する方法である。視野異常につながる視神経の異常、網膜剥離、眼底出血の有無を調べることができる。
5.× 眼球運動検査は必要ない。なぜなら、眼球運動検査は、主に眼筋中枢神経の異常が疑われたときに行う検査であるため。

網膜剥離とは?

網膜剥離とは、眼球の内側にある網膜という膜が剥がれて、視力が低下する病気である。網膜は眼球内の光を感知する部分であり、網膜が物理的に剥がれることで起こる。ちなみに、裂孔原性網膜剝離とは、様々な原因で生じた網膜の裂孔や円孔から液化した硝子体が網膜下へ流入することで、感覚網膜層と網膜色素上皮層との間が剥離した状態をいう。つまり、網膜の一部に裂孔と呼ばれる裂け目ができて、そこから網膜の裏側に水分が流れ込んで剥がれてしまった状態をいう。裂孔原性網膜剥離の手術には、強膜内陥術と硝子体手術がある。

 

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