第107回(R6) 助産師国家試験 解説【午前41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み41~43の問いに答えよ。
 Aさん(48歳、未産婦)は身長160cm、体重45kg、BMI17.6。初経12歳。元来、月経周期は45~60日で不規則である。35歳のときに婦人科医院を受診し多囊胞性卵巣症候群、子宮筋腫と診断されたが、その後は自己判断で通院していない。2年前に甲状腺機能亢進症と診断され、内科医院に通院し内服治療中である。半年前から不正性器出血があり、かかりつけの内科医に相談したところ、子宮体癌の疑いがあると言われた。

41 Aさんの子宮体癌のリスク因子はどれか。2つ選べ。

1.未産婦
2.子宮筋腫
3.BMI17.6
4.甲状腺機能亢進症
5.多囊胞性卵巣症候群

解答1・5

解説

子宮体癌とは?

子宮体癌とは、子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる場所に発生するがんである。主な症状は、生理中ではないのに性器から出血があったり、閉経後に性器から出血があったりするなどの不正出血である。子宮体がんの発生には、卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンが深く関係することが知られている。卵胞ホルモン(エストロゲン)が高いと、子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体がん(子宮内膜がん)が発生することが知られている。

1.〇 正しい。未産婦は、Aさんの子宮体癌のリスク因子である。なぜなら、妊娠や出産によって子宮内膜が脱落し、新しい細胞に置き換わることが子宮体癌の予防に寄与しているため。また、妊娠中は胎盤から大量のプロゲステロンが分泌されるため、エストロゲンの効果を打ち消して子宮体癌になりにくくなるといわれている。

2.× 子宮筋腫は、直接的な子宮体癌のリスク因子ではない。子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。子宮筋腫は切迫流産・早産、前期破水、胎盤の位置異常、妊娠高血圧症候群などのリスクとなる。分娩時または産後に、次回の妊娠を希望する場合や妊娠中の合併症を増加させないために、子宮筋腫核出術を行う場合もある。

3.× BMI17.6(低体重)は、むしろ子宮体癌のリスクを減少させる。一方、高BMI(肥満)が子宮体癌のリスク因子として認められている。なぜなら、エストロゲンは卵巣だけでなく体の脂肪組織でも生成されるため。つまり、肥満になるとエストロゲンの分泌が過剰になる。ちなみに、BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

4.× 甲状腺機能亢進症は、直接的な子宮体癌のリスク因子ではない。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

5.〇 正しい。多囊胞性卵巣症候群は、Aさんの子宮体癌のリスク因子である。多嚢胞性卵巣症候群とは、卵子が入った卵胞の成長に時間がかかり、排卵が起こりにくくなる病気である。長期間にわたってエストロゲンだけが子宮内膜に働きかけ続けることで、子宮体がんのリスクが高くなるといわれている。

 

 

 

 

 

次の文を読み41~43の問いに答えよ。
 Aさん(48歳、未産婦)は身長160cm、体重45kg、BMI17.6。初経12歳。元来、月経周期は45~60日で不規則である。35歳のときに婦人科医院を受診し多囊胞性卵巣症候群、子宮筋腫と診断されたが、その後は自己判断で通院していない。2年前に甲状腺機能亢進症と診断され、内科医院に通院し内服治療中である。半年前から不正性器出血があり、かかりつけの内科医に相談したところ、子宮体癌の疑いがあると言われた。

42 Aさんは子宮体癌の精密検査のために、婦人科医院で経腟超音波断層法と子宮内膜細胞診を受けることになった。
 Aさんへの検査の説明で正しいのはどれか。

1.「検査前は排尿を控えましょう」
2.「子宮の中に内視鏡を入れる検査です」
3.「検査を受けた日はシャワー浴にしましょう」
4.「腟分泌物を採取して顕微鏡で観察する検査です」

解答

解説

MEMO

経腟超音波断層法とは、超音波にて子宮や卵巣などを観察するための検査である。子宮の形態異常の有無や月経前の子宮内膜の厚さなど得られる。経腟超音波検査で見つかる代表的な疾患は、子宮がんや卵巣がん、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣のう腫、子宮内膜ポリープなどである。

子宮内膜細胞診とは、子宮内に細いチューブやブラシ状の器具を挿入して細胞を採取し、顕微鏡で異型細胞(がんの可能性がある細胞)がないか調べる。子宮内膜細胞診で見つかる代表的な疾患は、子宮体がん(子宮内膜がん)である。

1.× 検査前は排尿を、「控える」のではなく促す。なぜなら、経膣超音波検査にあたって、膀胱内を空にすることで子宮や卵巣を観察しやすくするため。経膣超音波検査は、子宮や子宮付属器(卵巣・卵管)をみる検査である。子宮の腹側には膀胱があり、膀胱がふくらんでいることで観察しにくい。そのため原則、検査前に排尿をしてもらうことで、より正確に検査を行うことができる。

2.× 「子宮の中に内視鏡を入れる検査です」は、子宮鏡検査の説明である。子宮鏡検査とは、子宮の入り口から細い内視鏡を挿入し、生理食塩水を流して子宮をふくらませ、子宮鏡に内蔵のカメラで子宮内の様子をテレビモニターに映し出して観察する外来検査である。胃カメラのようなもので、子宮の形状やポリープの有無など子宮内の状態を直接目で観察することができる。

3.〇 正しい。「検査を受けた日はシャワー浴にしましょう」と説明する。なぜなら、本症例の場合、子宮体癌の疑いが強いため。また、子宮頸部細胞診後は、出血がみられる場合があるため、感染予防のためにシャワー浴が推奨される。ただし、出血がみられない場合は、腟内の洗浄は控えるよう指導するが、検査当日からいつも通りに入浴しても基本的に問題ない(※参考:「子宮頸がん検診後の注意事項」人間ドックのミカタ様HPより)。

4.× 「腟分泌物を採取して顕微鏡で観察する検査です」は、膣分泌物検査(おりもの検査)の説明である。膣分泌物検査は、感染症の種類によって検査方法が異なる。顕微鏡検査の場合は、膣分泌物を採取しプレパラートに乗せ顕微鏡で観察する。トリコモナスは特異な形をして動きまわり、カンジダはカビの一種である。培養は数日かけておりものにいる菌を発育させて確認する検査で、顕微鏡よりも精度が高い検査である。

腹部超音波検査の場合

【検査を受ける際の注意点】
①朝ご飯を食べない(お水やお茶は少量なら大丈夫)
②検査前できるだけトイレに行かない。
③お薬は、医師による中止の指示がない限り、通常通り服用する。

 

 

 

 

 

次の文を読み41~43の問いに答えよ。
 Aさん(48歳、未産婦)は身長160cm、体重45kg、BMI17.6。初経12歳。元来、月経周期は45~60日で不規則である。35歳のときに婦人科医院を受診し多囊胞性卵巣症候群、子宮筋腫と診断されたが、その後は自己判断で通院していない。2年前に甲状腺機能亢進症と診断され、内科医院に通院し内服治療中である。半年前から不正性器出血があり、かかりつけの内科医に相談したところ、子宮体癌の疑いがあると言われた。

43 Aさんは子宮体癌と診断され、子宮全摘術と両側付属器切除術を受けた。定期的な経過観察のみで、術後3か月が経過している。
 現時点でAさんに認められる症状で最も考えられるのはどれか。

1.尿失禁
2.ほてり
3.腟の搔痒感
4.記銘力の低下

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(48歳、未産婦、初経12歳)
・診断:子宮体癌(子宮全摘術両側付属器切除術
・定期的な経過観察:術後3か月が経過。
→術後の合併症を抑えておこう。術後3か月経過していることからも手術直後の合併症は起こらなかったと考えられる。本症例の場合、卵巣を一緒に摘出しているため、エストロゲンの減少が生じ、更年期障害に似た症状が起こることが考えられる。

→(広汎)子宮全摘出術とは、卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めた広い範囲で、子宮を摘出する手術である。この手術方法は、手術前の診断で、がんが子宮の頸部に及んでいる場合(Ⅱ期およびⅢ期の一部)に行うことが多い。合併症として、膀胱機能障害(尿意鈍磨、排尿困難)や便秘、下肢の浮腫が起こりやすい。また、卵巣を摘出した場合は、卵巣欠落症状がみられることがある。これはエストロゲンの減少により生じる。

→両側付属器切除術とは、卵巣と卵管を摘出する手術である。子宮全摘を行う際、特に付属器(卵巣や卵管)に異常がなくても両側付属器切除を行うことがある。その目的は、将来的に起こるかもしれない卵巣がんの予防である。

1.× 尿失禁より優先されるものが他にある。なぜなら、手術により泌尿器系への侵襲は考えられないため。ちなみに、尿失禁とは、【定義】自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことであり、大きく2種類に大別される。①器質性尿失禁:排尿機構の障害に起因する。そこから①腹圧性、②切迫性、③溢流性、④反射性などがある。②機能性尿失禁:排尿動作の遅れなどに起因する。

2.〇 正しい。ほてりが、Aさんに認められる症状である。なぜなら、両側付属器切除術(卵巣と卵管の切除)を受けた場合、女性は急激なエストロゲンの低下を経験し、更年期障害のような症状が現れることが多いため。ちなみに、更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

3.× 腟の搔痒感より優先されるものが他にある。なぜなら、腟の搔痒感があれば、術後3か月経たず、Aさんから訴えがあると考えられるため。また、エストロゲンの減少に起こる「ほてり」と比べると、腟の搔痒感の発生頻度は低い。エストロゲンが減少すると、膣壁と膣内膜は非常に乾燥し、薄くなり、柔軟性がなくなり、膣がかゆくなり、ヒリヒリと炎症を起こしやすくなる。

4.× 記銘力の低下(認知機能の低下)は、更年期障害の一部として現れるが、術後3か月という時期においても考えにくい。

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み44~46の問いに答えよ。
 Aさん(39歳、1回経産婦)、妊娠経過は順調で無痛分娩をする予定だった。妊娠37週1日、3時間前から続く腹痛と性器出血を主訴に、午前9時に産婦人科を受診した。意識は清明だが、痛みのため苦悶様の表情で、子宮は硬い。バイタルサインは、体温37.3℃、脈拍69/分、整、血圧114/72mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)。内診所見は、未破水、子宮口3cm開大、展退度50%、Station-1、児頭が触れた。胎児心拍が消失しており胎児死亡と診断された。このときの腹部超音波断層法写真を下に示す。

44 このときの対応で正しいのはどれか。

1.飲水を促す。
2.抗菌薬の準備をする。
3.分娩誘発の準備をする。
4.硬膜外麻酔の準備をする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(39歳、1回経産婦)
・予定:妊娠経過は順調(予定:無痛分娩)
・妊娠37週1日:3時間前から続く腹痛と性器出血
・意識清明、痛みのため苦悶様の表情、子宮は硬い。
・バイタルサイン:体温37.3℃、脈拍69/分、整、血圧114/72mmHg、SpO2:97%。
・内診所見:未破水、子宮口3cm開大、展退度50%、Station-1、児頭が触れた。
・胎児心拍が消失(診断:胎児死亡
・腹部超音波断層法写真:①胎盤が通常より厚い。②内部に血腫(常位胎盤早期剝離の疑い)。
→Aさんの今後の対応を判断しよう。早剥による胎児死亡と判断した場合、DIC評価を行い、経腟誘発促進または緊急帝王切開などで娩出を図る(※参考:「産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 P164」)。

→常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。

1.× 飲水を促す優先度は低い。なぜなら、Aさんの腹痛と性器出血、胎児の死亡が確認されているため、迅速な医療処置が必要であるため。

2.× 抗菌薬の準備をする優先度は低い。なぜなら、Aさんから感染症の疑いは低いため。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

3.〇 正しい。分娩誘発の準備をする。根拠として、「早剝により児が既に死亡している場合、DIC 評価・治療を行いながら、施設の対応能力や患者の状態等を考慮し、経腟分娩誘発・促進、または緊急帝王切開術の実施を推奨する。その際、分娩までの時間より、適切な補液や輸血を行っていたかどうかが母体予後にとって重要とされている。米国や英国では、積極的輸血によっても補えぬほど出血が多い場合以外、人工破膜やオキシトシンを併用した経腟分娩を推奨しており、わが国では添付文書上慎重投与となっているもののオキシトシンとPGF2αが使用可能である」と記載されている(※参考:「産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 P166」)。

4.× 硬膜外麻酔の準備をする優先度は低い。なぜなら、Aさんの胎児は死亡が確認されている状況であり、まず分娩誘発が優先されるため。ちなみに、硬膜外麻酔とは、局所麻酔の一つ。 硬膜外腔に局所麻酔薬やオピオイドを投与することにより、鎮痛を得るものである。単独あるいは脊髄くも膜下麻酔、全身麻酔と併用される。手術中の鎮痛の他、カテーテルを留置して術後鎮痛に使用される。帝王切開の際に用いられることが多い。

(※参考:「産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 P164」)。

 

 

 

 

 

次の文を読み44~46の問いに答えよ。
 Aさん(39歳、1回経産婦)、妊娠経過は順調で無痛分娩をする予定だった。妊娠37週1日、3時間前から続く腹痛と性器出血を主訴に、午前9時に産婦人科を受診した。意識は清明だが、痛みのため苦悶様の表情で、子宮は硬い。バイタルサインは、体温37.3℃、脈拍69/分、整、血圧114/72mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)。内診所見は、未破水、子宮口3cm開大、展退度50%、Station-1、児頭が触れた。胎児心拍が消失しており胎児死亡と診断された。このときの腹部超音波断層法写真を下に示す。

45 Aさんの分娩は進行し、午後1時に子宮口が全開大した。来院後から500mLの性器出血を認めている。意識は清明で、バイタルサインは、体温37.4℃、脈拍88/分、整、血圧103/74mmHg。血液検査所見は、赤血球324万/μL、Hb8.6g/dL、白血球9,700/μL、血小板6.0万/μL、フィブリノゲン92mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、AST18IU/L〈U/L〉、ALT16IU/L〈U/L〉。
 このときのアセスメントで正しいのはどれか。

1.HELLP症候群である。
2.出血性ショックである。
3.弛緩出血を起こしている。
4.凝固能が低下した状態である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(39歳、1回経産婦)
・胎児心拍が消失(診断:胎児死亡
・腹部超音波断層法写真:①胎盤が通常より厚い。②内部に血腫(常位胎盤早期剝離の疑い)。

・Aさんの分娩は進行。
・午後1時:子宮口が全開大。
・来院後から500mLの性器出血。
・バイタルサイン:意識清明、体温37.4℃、脈拍88/分、整、血圧103/74mmHg。
・血液検査所見:赤血球324万/μL、Hb8.6g/dL、白血球9,700/μL、血小板6.0万/μL、フィブリノゲン92mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、AST18IU/L〈U/L〉、ALT16IU/L〈U/L〉。

→本症例の異常所見を読み取れるようにしよう。

1.× HELLP症候群は考えにくい。なぜなら、AさんのASTとALT(基準値:両方とも30IU/L以下)は正常範囲内であるため。ちなみに、HELLP症候群とは、妊娠中あるいは産褥期に溶血(hemolysis)、肝酵素上昇(elevated liver enzymes)、血小板減少(low platelet)を呈し、多臓器障害をきたして母体生命を脅かす重篤な妊産婦救急疾患である。主な症状は上腹部(心窩部あるいは右季肋部)痛であり、嘔気や嘔吐、強い倦怠感を伴うこともある。今回妊娠時に高血圧を発症した妊娠高血圧症候群であり、妊娠高血圧症候群は重症になると血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、HELLP症候群などを引き起こすことがある。直ちに行う検査としては、HELLP症候群の3徴候である①溶血、②肝酵素上昇、③血小板減少を血液検査所見で確認する。

2.× 出血性ショックは考えにくい。なぜなら、Aさんのバイタルサイン(特に血圧103/74mmHg、脈拍88/分)は安定しているため。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。
【ショックの診断】
・心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。

3.× 弛緩出血を起こしているとは考えにくい。なぜなら、Aさんの分娩は進行し、出血が継続している記載はないため。ちなみに、弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。

4.〇 正しい。凝固能が低下した状態である。なぜなら、Aさんの血小板数が6.0万/μLと基準値(15~45万/μL程度)と比較すると低下しているため。また、フィブリノゲンも92mg/dLと基準値(200~400mg/dL)と比較すると低値を示している。これらの所見から凝固機能が低下していると考えられる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)