第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後26~30】

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26 味覚について正しいのはどれか。

1.基本味は5つである。
2.外転神経が支配する。
3.冷たい物ほど味が濃いと感じる。
4.1つの味蕾は1種類の基本味を知覚する。

解答1

解説

1.〇 正しい。基本味は5つ(塩味・酸味・甘味・苦味・うま味)である。味覚は、動物の五感の一つであり、食する物質に応じて認識される感覚である。基本味以外の味は、味蕾を介さないというだけで、これらも立派に食品の品質を表す「味」の要素である。辛味渋味えぐみなどがこのカテゴリーに含まれる。
2.× 「外転神経」ではなく、舌の前2/3は顔面神経(Ⅶ)、舌の後ろ1/3は舌咽神経(Ⅳ)が支配する。ちなみに、外転神経は、外眼筋の外側直筋を支配する脳神経の一つである。
3.× 冷たい物ほど味が濃いと感じるとは一概に言えない。なぜなら、甘味うま味は体温に近い35℃付近で一番強く感じるため。ただし、塩味苦味は、温度が低くなるほど強く感じる。ちなみに、酸味は、あまり温度変化に左右されない。
4.× 1つの味蕾は、「1種類」ではなく、すべての基本味を知覚する。味蕾とは、味細胞の集まりで、味蕾の数は乳幼児で約1万個、成人になるにつれて約7500個まで減少するといわれている。味蕾にある30~70個ある味細胞が味を識別する。

眼球運動の筋と支配神経

【眼球運動:筋】
外側:外直筋
内側:内直筋
外上方:外直筋+上直筋
内上方:内直筋+下斜筋
外下方:外直筋+下直筋
内下方:内直筋+上斜筋

【支配神経】
①動眼神経:内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経:上斜筋
③外転神経:外側直筋

 

 

 

 

 

27 ビタミンと生理作用の組合せで正しいのはどれか。

1.ビタミンA:嗅覚閾値の低下
2.ビタミンD:Fe2+吸収の抑制
3.ビタミンE:脂質の酸化防止
4.ビタミンK:血栓の溶解

解答3

解説

1.× ビタミンAは、「嗅覚閾値の低下」ではなく、視覚や上皮機能の維持にかかわっている。ビタミンA欠乏は、眼球乾燥症・夜盲症を生じる。夜盲症とは、暗いところではたらく網膜の細胞に異常があり暗順応が障害されて、暗いところや夜に見えにくくなる病気である。ちなみに、嗅覚の閾値は加齢によって上昇する。ちなみに、閾値とは、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量である。したがって閾値が高いと(上がると)、 感覚を感じにくくなることをさす。
2.× ビタミンDは、「Fe2+吸収の抑制」ではなく、カルシウム・リンの吸収に関与する。ビタミンDは、くる病の予防につながる。くる病とは、小児期に見られる骨の石灰化不全であり、主に成長障害と骨の弯曲が起こる疾患である。ビタミンDの代謝あるいは感受性の障害により、骨に石灰化が起こらず、強度が不足する病気である。 成人期ではビタミンD依存性骨軟化症と呼ばれる。小児期には成長も障害され、骨X線検査で特徴的な所見を呈し、ビタミンD依存性くる病とも呼ばれる。
3.〇 正しい。ビタミンEは、「脂質の酸化防止」である。ビタミンE欠乏は、溶血性貧血や神経障害の原因となる。溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。
4.× ビタミンKは、「血栓の溶解」ではなく、血液凝固因子の生合成に必須のビタミンである。欠乏症状は出血傾向である。新生児ビタミンK欠乏性出血症とは、出生後7日以内に起きるビタミンK欠乏に基づく出血性疾患である。出血斑や注射・採血など皮膚穿刺部位の止血困難、吐血、下血が認められ、重度の場合は頭蓋内出血など致命的な出血を呈する場合もある。特に第2~4生日に起こることが多いものの出生後24時間以内に発症することもある。合併症をもつ新生児やビタミンK吸収障害をもつ母親から生まれた新生児、妊娠中にワルファリンや抗てんかん薬などの薬剤を服用していた母親から生まれた新生児では、リスクが高くなる。また、新生児でビタミンK欠乏状態に陥るのは、①母乳中のビタミンK含量が少ないこと、②ビタミンKは経胎盤移行性が悪いこと、③出生時の生体内の蓄積量が元々少ないうえ、腸内細菌叢が十分には形成されていないことが理由として考えている。

 

 

 

 

28 呼吸不全について正しいのはどれか。

1.喘息の重積発作によって慢性呼吸不全になる。
2.動脈血酸素分圧(PaO2)で2つの型に分類される。
3.動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が60mmHg 以下をいう。
4.Hugh-Jones(ヒュー・ジョーンズ)分類は呼吸困難の程度を表す。

解答4

解説

呼吸不全の種類

【呼吸不全の定義】PaO2≦60Torrである。

ここから、Ⅰ型呼吸不全かⅡ型呼吸不全か決定する。

【Ⅰ型呼吸不全の場合】PaCO2≦45Torr

【Ⅱ型呼吸不全の場合】PaCO2>45Torr

1.× 喘息の重積発作によって、「慢性呼吸不全」ではなく、急性呼吸不全になる。 重積発作とは、喘息発作が 24時間以上持続するものと定義され、急性呼吸不全につながり人工呼吸管理が必要となる場合が多い。ちなみに、慢性呼吸不全とは、呼吸不全が1か月以上続く状態をいう。
2.× 「動脈血酸素分圧(PaO2)」ではなく、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2で2つの型に分類される。呼吸不全の2つの型として、Ⅰ型とⅡ型があげられる。Ⅰ型呼吸不全の場合は、PaCO2≦45Torrのものをさす。したがって、Ⅱ型呼吸不全の場合は、PaCO2>45Torrのものをさす。
3.× 呼吸不全の定義の定義として、「動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)」ではなく、動脈血酸素分圧(PaO2が60mmHg 以下をいう。
4.〇 正しい。Hugh-Jones(ヒュー・ジョーンズ)分類は呼吸困難の程度を表す。歩行や日常生活動作の遂行状況の観点に基づいた呼吸困難の重症度分類である。

Hugh-Jones 分類

Ⅰ:同年齢の健康者と同様の労作ができ、歩行、階段昇降も健康者並みにできる。
Ⅱ:同年齢の健康者と同様に歩行できるが、坂道・階段は健康者並みにはできない。
Ⅲ:平地でも健康者並みに歩けないが、自分のペースなら1マイル(1.6km)以上歩ける。
Ⅳ:休み休みでなければ50m以上歩けない。
Ⅴ:会話・着替えにも息切れがする。息切れのため外出できない。

 

 

 

 

 

29 薬剤とその副作用(有害事象)の組合せで正しいのはどれか。

1.副腎皮質ステロイド:低血糖
2.ニューキノロン系抗菌薬:髄膜炎
3.アミノグリコシド系抗菌薬:視神経障害
4.スタチン(HMG-CoA 還元酵素阻害薬):横紋筋融解症

解答4

解説

1.× 副腎皮質ステロイドは、「低血糖」ではなく高血糖が副作用である。ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用免疫抑制作用が発揮される。【ステロイドの副作用】軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌、重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)などがある。
2.× ニューキノロン系抗菌薬は、「髄膜炎」ではなく消化器症状(悪心・嘔吐や下痢など)である。ちなみに、副作用の髄膜炎が起こりやすいのは、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)である。
3.× アミノグリコシド系抗菌薬は、「視神経障害」ではなく聴神経障害(聴力低下や前庭機能障害によるめまいなど)である。ちなみに、副作用の視神経障害が起こりやすいのは、抗結核薬抗エストロゲン薬などがある。
4.〇 正しい。スタチン(HMG-CoA 還元酵素阻害薬)の副作用として、横紋筋融解症ミオパチーがあげられる。スタチンとは、高脂血症治療薬としてコレステロールの量を減らすため、高コレステロール血症の治療に用いられる。横紋筋融解症とは、筋肉に傷がついて壊れる病気である。発症時の自覚症状としては、筋痛・しびれ・腫脹が生じ、筋壊死の結果として脱力・赤褐色尿(ミオグロビン尿)が生じ、腎不全症状が加わると 無尿・乏尿・浮腫が生じる。また、ミオパチーとは、筋肉の疾患を総称した言葉である。遺伝的な原因で起こるものとして、2種類あり、①先天性ミオパチー(筋肉の病理像に特徴的がある)、②代謝性ミオパチー(なんらかの代謝の障害によって起こる)がある。 甲状腺や副腎などの内分泌の疾患によって発症するミオパチーも存在する。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

30 Sjögren(シェーグレン)症候群について正しいのはどれか。

1.網膜炎を合併する。
2.男女比は1対1である。
3.主症状は乾燥症状である。
4.抗核抗体の陽性率は30%程度である。

解答3

解説

シューグレン症候群とは?

Sjögren症候群(シューグレン症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。

1.× 「網膜炎」ではなく、乾性角結膜炎(ドライアイ)を合併する。
2.× 男女比は、「1対1」ではなく、1対9女性に多い。特に、40歳代の中年女性に多いとされている。
3.〇 正しい。主症状は乾燥症状である。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。
4.× 抗核抗体の陽性率は、「30%程度」ではなく、70~80%である。抗核抗体とは、主に膠原病など自己免疫疾患のスクリーニング検査として利用される。抗核抗体の陽性率は、全身性エリテマトーデスでは100%近く、シェーグレン症候群では70〜90%である。なお、抗核抗体の数値と病状・病態は一致しないことが多く、病状が軽くなっても陽性のままの症例も複数である。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

 

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