第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午前41~45】

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41 全身麻酔下で食道再建術を受ける患者への術前オリエンテーションで適切なのはどれか。

1.「口から息を吸って鼻から吐く練習をしてください」
2.「手術の直前に下剤を飲んでもらいます」
3.「手術中はコンタクトレンズをつけたままで良いです」
4.「麻酔の際は喉に呼吸用の管を入れます」

解答4

解説

食道再建術とは?

食道再建術とは、食道を切除して胃をつなぎ直す手術である。全身麻酔で行う。適応疾患として、食道がんである。なぜなら、食道がんは、腫瘍部分だけでなく、再発防止のためにも広範囲に食道を切除するケースが多くあるため。主な合併症として、最多は縫合不全で1割程度起こる。他にも無気肺や肺炎、反回神経麻痺などが起こることもあるがまれである。

1.× 逆である。「」から息を吸って、「」から吐く練習を行う。なぜなら、深い呼吸を促すことができるため。食道再建術では、胸部と腹部に手術創ができるため、術後は痛みにより呼吸が浅くなる。鼻呼吸は、吸い込む空気に適当な湿度・温度を与え、空気中の微細なゴミや細菌・ウィルスを鼻腔内の毛や粘膜に吸着して、気管や肺を保護している。さらに、鼻の奥は脳の底部と接しているため、脳の過熱を防ぐ役割もしている。つまり、「鼻」から息を吸って、「口」から吐く呼吸は、生理的であり、深くそして効率よく呼吸が行える。
2.× 下剤を飲むのは、「手術の直前」ではなく、手術前日である。術前には浣腸が行われる。なぜなら、食道再建術は全身麻酔で行われるため。全身麻酔の際は、筋弛緩薬も一緒に使用するが、肛門括約筋が緩み、直腸内に残っている便が排出されてしまう。したがって、便による術野の汚染や術後感染を防止する必要がある。
3.× 手術中は、コンタクトレンズを「つけたまま」ではなく外す。なぜなら、眼球に負担がかかってしまうため。コンタクトレンズを着け、まばたきが無い状態が続くと、乾燥してコンタクトは眼に張り付いてしまう。したがって、角膜は酸欠を起こしてむくみ、ダメージを受けやすい状態になる。 また、汚れなどで雑菌が繁殖しやすい環境になり、感染症になりかねないため、コンタクトは外しておくよう伝える。
4.〇 正しい。「麻酔の際は喉に呼吸用の管を入れます」と説明する。全身麻酔は、通常、点滴から麻酔薬を投与することにより入眠し、意識がなくなる。その後、麻酔薬の影響により呼吸が弱くなるため、最初はマスクを通して口から酸素を送り込むが、 確実に安定して呼吸を補助するために、口から喉の奥の声帯を通して気管の中にチューブを入れて酸素をおくり、人工呼吸を行う(気管内挿管)。

 

 

 

 

 

42 生活習慣が発症に関連している疾患はどれか。

1.肺気腫
2.1型糖尿病
3.肥大型心筋症
4.重症筋無力症

解答1

解説

1.〇 正しい。肺気腫は、生活習慣が発症に関連している疾患である。肺気腫とは、終末細気管支より末梢の気腔が、肺胞壁の破壊を伴いながら異常に拡大し、明らかな線維化は認められない病変を指す。主な原因は喫煙である。
2.× 1型糖尿病とは、原因が自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる糖尿病である。小児~思春期の発症が多く、肥満とは関係ないのが特徴である。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。
3.× 肥大型心筋症とは、肥大心筋の硬化に伴う拡張機能障害(拡張期充満圧の上昇を招く)で、原因は心筋収縮関連蛋白の遺伝子異常といわれている。流出路狭窄により、症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感、血圧低下などを生じる。
4.× 重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

43 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)に基づく医療費助成の対象となる疾患はどれか。

1.中皮腫
2.C型肝炎
3.慢性腎不全
4.再生不良性貧血

解答4

解説

1.× 中皮腫とは、胸膜(胸部にある膜)の中皮細胞(中間層の細胞)ががん化した状態を指す。悪性胸膜中皮腫は、アスベスト(石棉)の長期曝露によって引き起こされることが多いが、他にも遺伝子変異や環境因子、慢性的な感染などが考えられる。症状として、胸水、胸痛、呼吸器系の症状、疲れなどがあり、進行性に重症で、治療は困難であることが多い。早期発見と、アスベスト露出を減らすことが重要である。
2.× C型肝炎とは、主に感染者の血液や体液を介して感染する肝炎である。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染することがある。潜伏期間は2週間から6か月間である。初期感染の後、感染者のおよそ80%は症状なく、感染者の急性症状では、発熱、易疲労性、食欲低下、吐き気、嘔吐、腹痛、暗色尿、灰白色便、関節痛、黄疸などがみられる。
3.× 慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限など実施する。
4.〇 正しい。再生不良性貧血は、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)に基づく医療費助成の対象となる疾患である。再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病全身性エリテマトーデス潰瘍性大腸炎などが指定されている。

『難病法』とは?

『難病法』とは、難病の患者に対する医療などに関する施策を定め、良質・適切な医療の確保、療養生活の質の維持向上を図ることを目的としている。この目的に沿って定められている8つの基本方針は以下のとおりである。

【難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針】
①医療等の推進の基本的な方向
②医療を提供する体制の確保に関する事項
③医療に関する人材の養成に関する事項
④調査及び研究に関する事項
⑤医療のための医薬品及び医療機器に関する研究開発の推進に関する事項
⑥療養生活の環境整備に関する事項
⑦医療等と福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
⑧その他、医療等の推進に関する重要事項

【難病と指定難病の定義】
・発病の機構が明らかでない。
・治療方法が確立していない。
・希少な疾病である。
・長期の療養を必要する。
【指定難病】
・患者数が一定の人数に達しない。
・客観的な診断基準が確立してない。

【医療費助成制度について】
①都道府県・指定都市の窓口に申請する。
②医療費助成の対象者:指定難病に罹患し、重症度分類等による病状の程度が一定以上であるとして認定を受けた者。
③患者の自己負担は2割で、自己負担上限額(月額)が設定されている。
④自己負担上限額は、応能負担(世帯の所得に応じて設定)されている。
⑤医療費助成は、都道府県・指定都市が指定する指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。
⑥特定医療費の支給に要する費用は、都道府県と国が50%ずつ負担している。
(※参考「指定難病の要件について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

44 慢性疾患の患者に対する自己管理の支援で最も適切なのはどれか。

1.患者自身の失敗体験をもとに指導する。
2.病気に関する広範囲な知識を提供する。
3.症状に慣れる方法を身につけるように促す。
4.自分の身体徴候を把握するように指導する。

解答4

解説

慢性期とは?

慢性期とは、病状は比較的安定しているが、治癒が困難で病気の進行は穏やかな状態が続いている時期のことである。したがって、状態の維持・改善のために、患者が疾患や病状に応じた自己管理を行うことが必要になる。

1.× 患者自身の失敗体験をもとに指導する必要はない。なぜなら、失敗体験より成功体験を積み重ねたほうが、自己効力感を向上させるため。自己効力感(セルフエフィカシー)とは、自分が行動しようと思っていること、変えようと思っている生活習慣などに対し、うまく達成できるという自信や確信のこと、自己効力感の理論はライフスタイル改善のプログラムに活用される。自己効力感を高める要因として、①成功体験、②代理的体験、③言語的説得、④生理的・情緒的状態(情緒的高揚)が挙げられる。
2.× 病気に関する「広範囲な知識」を提供する必要はない。なぜなら、広範囲な知識は、重要で優先度が高い情報が埋もれやすく、患者の混乱を招くため。患者が活用できる情報を見極め、個別性を考慮して必要な情報を提供する。
3.× 症状に慣れる方法を身につけるように促す必要はない。なぜなら、症状に慣れると小さな変化や進行も気が付かない可能性があるため。自己管理のため、症状を把握する。
4.〇 正しい。自分の身体徴候を把握するように指導する。なぜなら、いち早い変化に気が付くことで、早期予防・早期発見・早期治療につながるため。

自己効力感とは?

自己効力感(セルフエフィカシー)とは、自分が行動しようと思っていること、変えようと思っている生活習慣などに対し、うまく達成できるという自信や確信のこと、自己効力感の理論はライフスタイル改善のプログラムに活用される。自己効力感を高める要因として、①成功体験、②代理的体験、③言語的説得、④生理的・情緒的状態(情緒的高揚)が挙げられる。

①成功体験:例えば禁煙できた日をカレンダーに一日ずつ×を書いていき、「1週間禁煙できた」と自信をつけること。
②代理的体験:同じような状況にある他者が目標を達成している様子から「自分にもできそうだ」と思うこと。
③言語的説得:自分自身や周囲の人からの言語的な賞賛や励ましのこと。
④生理的・情緒的状態(情緒的高揚):行動の変化を促すような情報に触れ気づきを得ることで行動変容への関心をもつこと。例えば、タバコを吸わなくなってから「イライラしにくくなったきがするな」と気づきをえることで、行動がさらに変わっていくことである。

 

 

 

 

45 Aさん(56歳、男性)は、化学療法後の血液検査にて好中球数300/mm3であった。
 Aさんの状態で正しいのはどれか。

1.入浴を控える必要がある。
2.日和見感染症のリスクが高い。
3.口腔ケアには歯間ブラシを用いる必要がある。
4.化学療法の開始前と比べリンパ球数は増加している。

解答2

解説

好中球とは?

好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。好中球が500/mm3以下になると易感染状態となる。そのため、細菌感染を防ぐ工夫が必要となる。ちなみに、薬を用いたがんの治療に伴って好中球が500/mm3未満に減少している際に、体温が37.5度以上に発熱した状態のことを「発熱性好中球減少症」という。症状として、寒気がする、体が震えるなどを伴う。

1.× 入浴を控える必要はない。なぜなら、感染を防ぐため。むしろ、清潔を保つため、入浴は勧められる。
2.〇 正しい。日和見感染症のリスクが高い。日和見感染症とは、正常の宿主に対しては病原性を発揮しない病原体が、宿主の抵抗力が弱っている時に病原性を発揮しておこる感染症である。日和見感染症は、好中球減少時など免疫能が低下した人に生じやすい。
3.× あえて、口腔ケアに歯間ブラシを用いる必要はない。なぜなら、歯間ブラシは歯茎を傷つけやすいため。むしろ、口腔内に傷があると、口腔内細菌による感染症を引き起こしやすくなるため、歯間ブラシの使用は避けたほうが良い。
4.× 化学療法の開始前と比べリンパ球数は、「増加」ではなく減少している。なぜなら、化学療法によって造血機能が抑制されるため。好中球だけでなく、リンパ球、赤血球、血小板といった全ての血球成分が減少する。ちなみに、がんの化学療法とは、化学療法剤(抗がん剤、化学物質)を使ってがん細胞の増殖を抑えたり、破壊したりする事による治療法で、薬物療法とも呼ばれる。 

 

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