第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午前46~50】

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46 Aさん(35歳、男性)。身長175cm、体重74kg である。1か月前から腰痛と右下肢のしびれが続くため受診した。腰椎椎間板ヘルニアと診断され、保存的療法で経過をみることになった。
 Aさんへの生活指導として適切なのはどれか。

1.「体重を減らしましょう」
2.「痛いときは冷罨法が効果的です」
3.「前かがみの姿勢を控えましょう」
4.「腰の下に枕を入れて寝ると良いですよ」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、男性、腰椎椎間板ヘルニア
・身長175cm、体重74kg である。
・1か月前:腰痛と右下肢のしびれあり。
保存的療法で経過をみる。
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

1.× 体重を減らす必要はない。本症例のBMIは24.16であるため。BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。
2.× 痛いときに効果があるのは、「冷罨法」ではなく温罨法である。温罨法の作用(局所)の効果として、血管拡張、循環促進、細胞の新陳代謝促進、筋の緊張緩和、鎮痛などがあげられる。設問文から、本症例は1か月前に腰痛と右下肢のしびれが認められる。痛みやしびれが持続的に発生していると、筋肉が緊張し、血液循環も不良となり痛みが発生することがある。
3.〇 正しい。「前かがみの姿勢を控えましょう」と指導する。なぜなら、前かがみの姿勢は、上体の重さが腰にかかり、筋肉や髄核に負担がかかるため。また、椎間板ヘルニアでは、髄核が後方ないし後側方に突出することにより疼痛を悪化させる。つまり、前かがみの姿勢では、この椎間板の突出(脱出)を助長するおそれがある。
4.× 「腰」ではなくの下に枕を入れて寝るように指導する。なぜなら、股・膝関節が屈曲することで、骨盤も後傾し、腰椎にかかる負担が軽減するため。ちなみに、腰の下に枕を入れると、背中が反り返るような姿勢となり、骨盤が前傾し、腰椎にかかる負担が増大し、疼痛を助長しやすい。

寒冷療法の生理作用

寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。

(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)

 

 

 

 

 

47 老年期の心理社会的藤を「統合」対「絶望」と表現した人物はどれか。

1.ペック,R.C.
2.バトラー,R.N.
3.エリクソン,E.H.
4.ハヴィガースト,R.J.

解答3

解説

エリクソン発達理論

乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
児童期・学童期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
前成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
成人期(結婚から子供が生まれる時期):生殖性vs自己没頭
壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望

1.× ペック,R.C.とは、老年期における心理・社会的発達課題として、定年退職、子どもの独立といった役割の喪失という危機があるなかで、①新たに人生の価値を見いだすこと(自我の分化)、②身体的健康の危機を超越して快適に生きること、③死への危機に立ち向かうこと(自我の超越)の3つを挙げている。これらは社会的・生物学的・存在論的存在としての人間の危機を表しており、この時期に直面する問題の複雑さを推測することができる。
2.× バトラー,R.N.とは、年齢差別を意味する「エイジズム」を提唱した医師であり、高齢者への「回想法」の意義について述べた。高齢者のこれまでの人生経験を思い出す行為(追憶)は、人格の再統合を図り、死への準備をするという意味の心理過程であると指摘している。ちなみに、エイジズムとは、年齢による差別、特に高齢者に対する偏見や差別をいう。具体的には、年齢が高いというだけで高齢者を画一的集団としてとらえ、役に立たない、能力が低下しているなどの否定的な考えのもと、高齢者を差別することである。
3.〇 正しい。エリクソン,E.H.は、老年期の心理社会的藤を「統合」対「絶望」と表現した。エリクソンとは、人間のライフサイクルを乳児期~老年期の8段階に分け、各段階の発達課題と心理・社会的危機があるとする発達理論を提唱した。
4.× ハヴィガースト,R.J.とは、発達段階に対応する発達課題の概念を最初に提唱したとされるアメリカの教育学者である。ライフサイクルを6つの段階に分け、それぞれの時期において乗り越えなければならない代表的な課題を発達課題として示した。発達課題とは、「発達段階に対応する発達課題(能力・役割)」である。つまり、「発達課題とは人生の各段階の時期に生じる課題で、それを達成すれば人は幸福になり、次の発達段階の課題の達成も容易になるが、失敗した場合にはその人は不幸になり、社会から承認されず、次の発達段階の課題を成し遂げることが困難となる課題」とし、人間が健全で幸福な発達を遂げるために各発達段階で達成しておかなければならない課題を提唱した。

 

 

 

 

48 平成26年(2014年)の国民生活基礎調査における65歳以上の高齢者がいる世帯について正しいのはどれか。

1.単独世帯は1割である。
2.三世代世帯は3割である。
3.夫婦のみの世帯は4割である。
4.親と未婚の子のみの世帯は2割である。

解答4

解説

(※図引用:「Ⅰ 世帯数と世帯人員数の状況」厚生労働省HPより)

65歳以上の者のいる世帯の状況

65歳以上の者のいる世帯は2357万2千世帯(全世帯の46.7%)となっている。世帯構造をみると、「夫婦のみの世帯」が724万2千世帯(65 歳以上の者のいる世帯の30.7%)で最も多く、次いで「単独世帯」が595万9千世帯(同25.3%)、「親と未婚の子のみの世帯」が474万3千世帯(同20.1%)となっている。(※引用:「Ⅰ 世帯数と世帯人員数の状況」厚生労働省HPより)

1.× 単独世帯は、「1割」ではなく約2.5割(25.3%)である。
2.× 三世代世帯は、「3割」ではなく約1.3割(13.2%)ある。
3.× 夫婦のみの世帯は、「4割」ではなく約3割(30.7%)である。
4.〇 正しい。親と未婚の子のみの世帯は、2割(20.1%)である

 

 

 

 

 

49 Aさん(66歳、男性)は、Lewy(レビー)小体型認知症であるが、日常生活動作(ADL)は自立している。介護老人保健施設の短期入所(ショートステイ)を初めて利用することとなった。施設の看護師は、同居している家族から「以前、入院したときに、ご飯にかかっているゴマを虫だと言って騒いだことがあったが、自宅ではそのような様子はみられない」と聞いた。
 入所当日の夜間の対応で適切なのはどれか。

1.虫はいないと説明する。
2.部屋の照明をつけたままにする。
3.細かい模様のある物は片付ける。
4.窓のカーテンは開けたままにする。

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(66歳、男性、レビー小体型認知症
・ADL:自立
・ショートステイを初めて利用予定。
・家族から「以前、入院したときに、ご飯にかかっているゴマを虫だと言って騒いだことがあったが、自宅ではそのような様子はみられない」と聞いた。
→レビー小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異常症、自律神経障害などが特徴である。実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴的である。頭がはっきりしたり、ボーッとしたり、日によって変動することもある。レビー小体型認知症そのものを治す治療はなく、現状では症状に対する薬を使用して効果をみる。抗精神薬による精神症状のコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどがある。

1.× 「虫はいない」と説明する必要はない。設問文からは、レビー小体型認知症による幻視か、せん妄による幻視かは特定することはできないが、幻覚や不穏、興奮などが認められる場合、本人の言うことを否定してもそれが理解できないだけでなく、さらに興奮を助長することがある。幻覚がみられた際は、否定することなくその人の世界に付き合うことが大切である。
2.× 部屋の照明をつけたままにする必要はない。なぜなら、昼夜の生活リズムを崩す(昼夜逆転)ことにつながるため。夜間は、部屋の電気を消して概日リズムを作るようにする。
3.〇 正しい。細かい模様のある物は片付ける。なぜなら、細かい模様は、幻視を誘発しやすいため。これは、家族から「ご飯にかかっているゴマを虫だと言って騒いだことがあった」ということからも選択できる項目である。
4.× 窓のカーテンは開けたままにする必要はない。なぜなら、カーテンを開けたままにしておくと、窓ガラスに映った影などで、幻視を誘発しかねないため。ただし、睡眠-覚醒のリズムを整えるためには、朝にはカーテンを開けて日光を取り込むことで覚醒を促す必要がある。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

50 Aさん(70歳、女性)。夫(72歳)と2人暮らし。慢性腎不全のため腹膜透析を行うことになった。認知機能や身体機能の障害はない。腹膜透析について説明を受けた後、Aさんは「私のように高齢でも自分で腹膜透析をできるのか心配です。毎日続けられるでしょうか」と話した。
 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.「誰でも簡単にできます」
2.「ご家族に操作をしてもらいましょう」
3.「訪問看護師に毎日見守ってもらいましょう」
4.「同年代で腹膜透析をしている人の体験を聞いてみましょう」

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(70歳、女性)
・2人暮らし:夫(72歳)
・慢性腎不全:腹膜透析を行う。
認知機能や身体機能:障害なし
・Aさん「私のように高齢でも自分で腹膜透析をできるのか心配です。毎日続けられるでしょうか」と。
→慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限などがある。

1.× 「誰でも簡単にできます」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんは説明を一通り聞いた上で不安を訴えていることため。Aさんの訴えに対し、傾聴や共感、受容ができていない態度である。具体的に、何がどの手順が不安なのか?傾聴しながら寄り添いながら解決していくことが大切である。
2~3.× 「ご家族に操作をしてもらいましょう」「訪問看護師に毎日見守ってもらいましょう」と伝える必要はない。なぜなら、腹膜透析は自身で行うことが原則であるため。また、家族が用事や留守の時は行えなくなってしまう。Aさんは認知機能や身体機能に障害はないため、一方的に家族・訪問看護師にやってもらう必要はない。ちなみに、訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。
4.〇 正しい。「同年代で腹膜透析をしている人の体験を聞いてみましょう」と伝える。なぜなら、Aさんは説明を一通り聞いた上で不安を訴えているが、同世代の腹膜透析患者の体験談を聞くことで腹膜透析のイメージがつきやすくなり、不安の軽減につながると考えられるため。

連続携行式腹膜透析とは?

腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分を透析液に移行させた後、その液を体外に取り出して血液を浄化する。透析液の交換はご自身で6時間~8時間ごと、1日2~4回程度行う。月1〜2回程度の通院が必要である。

 

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