第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午前61~65】

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61 Aさん(83歳、男性)は、脳梗塞の後遺症で右片麻痺があり、在宅療養中である。嚥下障害のため胃瘻を造設している。義歯を装着しているが、自分の歯が数本残っている。
 Aさんの口腔ケアについて、介護者への指導で適切なのはどれか。

1.義歯を装着したまま歯を磨く。
2.経管栄養直後に実施する。
3.ペースト状の歯磨剤を使用する。
4.歯垢の除去には歯ブラシを用いる。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(83歳、男性、脳梗塞後遺症:右片麻痺)
・在宅療養中。
・嚥下障害:胃瘻を造設中。
・義歯:装着(自分の歯が数本残存)
→本症例は胃瘻であるが、①誤嚥(肺炎)を防ぐ、②細菌繁殖の予防ため口腔ケアが大切である。手順としては、①口腔内に保湿剤を塗り、数分間放置、痂皮や剥離した粘膜の死骸が餅状になったものをふやかす。②吸引器を用意して、吸引器つきのブラシで痂皮や剥離した粘膜の死骸が餅状になったものを後方から前方に向けて掻きだす。③吸引機能つきの歯ブラシで歯の汚れを取る。④歯と歯の間は、歯間ブラシを使い清掃する。

1.× 義歯を「装着したまま」ではなく、外した状態で歯を磨く。なぜなら、義歯を装着したままだと、義歯の金具がかかっている部分などに歯ブラシが届かないため。また、義歯の下の粘膜に安静と回復を与えるため、1日1回(就寝時など)一定時間は義歯を外すようにする。装着したままだと、粘膜へ圧迫を受け、虚血状態や炎症が起こりやすい。
2.× 経管栄養直後は口腔ケアを行わない。なぜなら、栄養注入後すぐに口腔ケアを行うと、口腔ケアの刺激が原因で嘔吐や逆流を起こしてしまう可能性があるため。できるだけ食後は、30分ほどの時間を空ける。
3.× ペースト状の歯磨剤を使用しない。なぜなら、ペースト状の研磨剤入りの歯磨剤は泡立ち、何度も口をゆすぐ必要があるため。したがって、誤嚥のリスクが高くなる。歯ブラシのみでも十分である。
4.〇 正しい。歯垢の除去には歯ブラシを用いる。プラーク(歯垢)とは、う蝕や歯周病の原因となる歯に付着した細菌が繁殖したかたまりのことである。 プラーク(歯垢)を除去するには、毎日の歯みがきが重要である。よく磨いたつもりでも、歯と歯の間は磨き残しが多く、大部分にプラーク(歯垢)が残っている。健常者の歯であれば、プラーク(歯垢)を除去するため、ハブラシに加えて、歯間クリーナー(歯間ブラシやデンタルフロス)の使用が効果的と言われている。

 

 

 

 

 

62 特別訪問看護指示書による訪問看護について正しいのはどれか。

1.提供できる頻度は週に3回までである。
2.提供できる期間は最大6か月である。
3.対象に指定難病は含まない。
4.医療保険が適用される。

解答4

解説

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

訪問看護の指示書には、①訪問看護指示書、②特別訪問看護指示書、③精神科訪問看護指示書などがある。
①訪問看護指示書とは、訪問看護ステーションなど指定訪問看護事業者が利用者に対して訪問看護を提供する際に、主治の医師(主治医)から指示を受けるために交付してもらう文書で、頻度は週3回まで、期間は最大6か月と決まっている。
特別訪問看護指示書とは、「厚生労働大臣が定める疾病等」の療養者や指定された医療処置・管理が必要であると主治医が認める者などに交付される。医療保険が適用され、交付は原則として月1回まで、有効期間は14日である。
③精神科訪問看護指示書とは、精神疾患のある利用者とその家族を対象とし、地域や家庭で療養上の援助・指導が必要であると主治医が認める場合に交付される。有効期間は6か月以内で、介護保険対象者であっても医療保険によるサービス提供となる。

1.× 提供できる頻度は週に3回までであるのは、「特別訪問看護指示書」ではなく訪問看護指示書の規定である。ちなみに、特別訪問看護指示書による訪問看護には、訪問頻度の制限はない
2.× 提供できる期間は最大6か月であるのは、「特別訪問看護指示書」ではなく訪問看護指示書の規定である。特別訪問看護指示書による訪問看護には、訪問期間の制限はない
3.× 対象に指定難病は含まれる。特別訪問看護指示書とは、「厚生労働大臣が定める疾病等」の療養者や指定された医療処置・管理が必要であると主治医が認める者などに交付される。医療保険が適用され、交付は原則として月1回まで、有効期間は14日である。
4.〇 正しい。医療保険が適用される特別訪問看護指示書とは、「厚生労働大臣が定める疾病等」の療養者や指定された医療処置・管理が必要であると主治医が認める者などに交付される。医療保険が適用され、交付は原則として月1回まで、有効期間は14日である。ちなみに、訪問看護指示書で介護保険証を持っている患者の場合は、介護保険が適応となる。介護保険証を持っていない場合は、医療保険が適応となる。

厚生労働大臣が定める疾病等

末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)
多系統萎縮症・線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群
プリオン病
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態

 

 

 

 

63 要介護2と認定された高齢者の在宅療養支援において、支援に関与する者とその役割の組合せで適切なのはどれか。

1.介護支援専門員:家事の援助
2.市町村保健師:居宅サービス計画書の作成
3.訪問看護師:日常生活動作(ADL)の向上のための訓練
4.訪問介護員:運動機能の評価

解答3

解説

1.× 介護支援専門員(ケアマネジャー)とは、介護保険法等を根拠に、ケアマネジメントを実施することのできる公用資格、また有資格者のことをいう。免許という位置づけではなく、要支援・要介護認定者およびその家族からの相談を受け、介護サービスの給付計画を作成し、自治体や他の介護サービス事業者との連絡、調整等を行う。ちなみに、家事の援助を主に行うのは、訪問介護員(ホームヘルパー)である。訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を訪問して身体介護や調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスである。
2.× 市町村保健師とは、市町村に所属する保健師のことで、主に保健福祉事業、業務連絡・事務、コーディネートを行う。具体的には、病気の予防や重症化の予防、高齢者や障害者の生活環境の整備、地域住民全体の健康を推進、個人の健康に関する相談に対してアドバイスなどである。ちなみに、居宅サービス計画書(ケアプラン)の作成は、介護支援専門員(ケアマネジャー)が行う。ちなみに、居宅サービス計画書(ケアプラン)とは、介護保険の被保険者が要介護認定を受けたのち、介護保険サービスのうちの主に居宅サービスを利用する際に必要な書類でのことである。
3.〇 正しい。訪問看護師は、日常生活動作(ADL)の向上のための訓練を実施する。訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。したがって、日常生活動作の向上のための訓練などのリハビリテーションも含まれる。
4.× 訪問介護員とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を訪問して身体介護や調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスである。ちなみに、運動機能の評価は、訪問看護師や理学療法士が行う。理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。

地域における保健師の保健活動に関する指針

地域における保健師の保健活動に関する指針
①地域診断に基づくPDCAサイクルの実施
②個別課題から地域課題への視点及び活動の展開
③予防的介入の重視
④地区活動に立脚した活動の強化
⑤地区担当制の推進
⑥地域特性に応じた健康なまちづくりの推進
⑦部署横断的な保健活動の連携及び協働
⑧地域のケアシステムの構築
⑨各種保健医療福祉計画の策定及び実施
⑩人材育成

【活動領域に応じた保健活動の推進】
~都道府県保健所等~
都道府県保健所等に所属する保健師は、所属内の他職種と協働し、管内市町村及び医療機関等の協力を得て広域的に健康課題を把握し、その解決に取り組むこと。また、生活習慣病対策、精神保健福祉対策、自殺予防対策、難病対策、結核・感染症対策、エイズ対策、肝炎対策、母子保健対策、虐待防止対策等において広域的、専門的な保健サービス等を提供するほか、災害を含めた健康危機への迅速かつ的確な対応が可能になるような体制づくりを行い、新たな健康課題に対して、先駆的な保健活動を実施し、その事業化及び普及を図ること。加えて、生活衛生及び食品衛生対策についても、関連する健康課題の解決を図り、医療施設等に対する指導等を行うこと。さらに、地域の健康情報の収集、分析及び提供を行うとともに調査研究を実施して、各種保健医療福祉計画の策定に参画し、広域的に関係機関との調整を図りながら、管内市町村と重層的な連携体制を構築しつつ、保健、医療、福祉、介護等の包括的なシステムの構築に努め、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの推進を図ること。市町村に対しては、広域的及び専門的な立場から、技術的な助言、支援及び連絡調整を積極的に行うよう努めること。

~市町村~
市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていることから、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等との連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。

(一部抜粋:「地域における保健師の保健活動に関する指針」厚生労働省HPより)」

 

 

 

 

 

64 日本の医療保険制度について正しいのはどれか。

1.健康診断は医療保険が適用される。
2.75歳以上の者は医療費の自己負担はない。
3.医療保険適用者の約3割が国民健康保険に加入している。
4.健康保険の種類によって1つのサービスに対する診療報酬の点数が異なる。

解答3

解説

医療保険とは?

(公的)医療保険とは、私たちやその家族が、病気やケガをしたときに医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことである。日本では「国民皆保険」といって、すべての人が何らかの公的医療保険に加入している

1.× 健康診断は、医療保険が適用されない。なぜなら、健康診断は自由診療であるため。健康診断とは、診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものである。健診、健康診査とも呼ばれる。ちなみに、医療保険は、疾病・負傷の治療が対象である。
2.× 75歳以上の者の医療費の自己負担は、「自己負担はない」のではなく、原則1割(一定額以上収入者は3割)である。なぜなら、後期高齢者医療制度の対象(75歳以上の者)となるため。
3.〇 正しい。医療保険適用者の約3割が国民健康保険に加入している。国民皆保険制度には、主に①社会保険(健康保険)と②国民健康保険がある。①社会保険(健康保険)は、企業に勤めている会社員や条件を満たしている短時間労働者(アルバイトやパートなど)が加入する保険である。一方、②国民健康保険は、自営業者や年金受給者などが加入する保険である。市町村国保が3.182万人(25.2%)、国保組合が286万人(2.3%)で、合わせて全体の27.5%が国民健康保険加入者である(※参考:「日本の医療保険制度について」厚生労働省HPより)。
4.× 1つのサービスに対する診療報酬の点数は、加入する医療保険の種類にかかわらず同じである。診療報酬の点数は、全国一律である。健康保険法に定められ、厚生労働大臣の告示により、点数で定められている。これを診療報酬点数表といい、原則として2年ごとに改定される。

 

 

 

 

65 日本の医療提供施設について正しいのはどれか。

1.病院数は1995年から増加傾向である。
2.2013年の人口対病床数は先進国の中で最も多い。
3.介護老人保健施設数は2000年から減少傾向である。
4.精神科の平均在院日数は1990年から先進国で最短である。

解答2

解説

 

(※図引用:「医療施設調査 」厚生労働省HPより)

1.× 日本の病院数は、1990年をピークとして減少傾向にある。全国の医療施設は179,090施設で、前年に比べ598施設増加している。「病院」は8,372施設で、前年に比べ40施設減少しており、「一般診療所」は102,105施設で634施設増加、「歯科診療所」は68,613施設で4施設増加している(※参考:「医療施設調査 」厚生労働省HPより)。
2.〇 正しい。2013年の人口対病床数は先進国の中で最も多い。下記に2006年の医療提供体制の各国比較を記載する。
3.× 介護老人保健施設数は2000年から「減少傾向」ではなく増加傾向である。介護老人保健施設は、2012年の3931施設から2020年の4304施設と増加傾向である。介護老人保健施設とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護・医学的管理のもと、介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設である。
4.× 精神科の平均在院日数は1990年から先進国で、「最短」ではなく長い。日本の精神病床の平均在院日数は、1990年以降、毎年短くなってはいるが、2016年でも約270日であり、先進諸国に比べて著しく長いといわれている。退院患者の平均在院日数を傷病分類別にみると、長い順に「精神及び行動の障害」277.1日、「神経系の疾患」81.2日、「循環器系の疾患」38.1日となっている(※参考:「3 退院患者の平均在院日数等」厚生労働省HPより)。

(※図引用:「医療提供体制の各国比較(2006年)」厚生労働省HPより)

 

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