第108回(R4)保健師国家試験 解説【午前1~5】

 

問題の引用:第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験、第111回看護師国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

 

1 平成25年(2013年)に改正された「地域における保健師の保健活動に関する指針」に示された市町村に所属する保健師の活動はどれか。

1.医療施設等に対する指導
2.防災計画の策定への参画
3.健康危機管理の体制づくり
4.広域的、専門的な保健サービスの提供

解答

解説

地域における保健師の保健活動に関する指針

地域における保健師の保健活動に関する指針
①地域診断に基づくPDCAサイクルの実施
②個別課題から地域課題への視点及び活動の展開
③予防的介入の重視
④地区活動に立脚した活動の強化
⑤地区担当制の推進
⑥地域特性に応じた健康なまちづくりの推進
⑦部署横断的な保健活動の連携及び協働
⑧地域のケアシステムの構築
⑨各種保健医療福祉計画の策定及び実施
⑩人材育成

【活動領域に応じた保健活動の推進】
~都道府県保健所等~
都道府県保健所等に所属する保健師は、所属内の他職種と協働し、管内市町村及び医療機関等の協力を得て広域的に健康課題を把握し、その解決に取り組むこと。また、生活習慣病対策、精神保健福祉対策、自殺予防対策、難病対策、結核・感染症対策、エイズ対策、肝炎対策、母子保健対策、虐待防止対策等において広域的、専門的な保健サービス等を提供するほか、災害を含めた健康危機への迅速かつ的確な対応が可能になるような体制づくりを行い、新たな健康課題に対して、先駆的な保健活動を実施し、その事業化及び普及を図ること。加えて、生活衛生及び食品衛生対策についても、関連する健康課題の解決を図り、医療施設等に対する指導等を行うこと。さらに、地域の健康情報の収集、分析及び提供を行うとともに調査研究を実施して、各種保健医療福祉計画の策定に参画し、広域的に関係機関との調整を図りながら、管内市町村と重層的な連携体制を構築しつつ、保健、医療、福祉、介護等の包括的なシステムの構築に努め、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの推進を図ること。市町村に対しては、広域的及び専門的な立場から、技術的な助言、支援及び連絡調整を積極的に行うよう努めること。

~市町村~
市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていることから、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等との連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。

(一部抜粋:「地域における保健師の保健活動に関する指針」厚生労働省HPより)」

1.3.4.× 医療施設等に対する指導/健康危機管理の体制づくり/広域的、専門的な保健サービスの提供/は、活動領域に応じた保健活動の推進(都道府県保健所等に所属する保健師)の活動として示されている。
2.〇 正しい。防災計画の策定への参画は、平成25年(2013年)に改正された「地域における保健師の保健活動に関する指針」に示された市町村に所属する保健師の活動である。市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていることから、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等との連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。平成25年(2013年)に改正された「地域における保健師の保健活動に関する指針(引用:厚生労働省HPより)」

 

 




 

 

 

2 平成30年度(2018年度)の保健師活動領域調査で正しいのはどれか。

1.保健師の就業場所で最も多いのは市町村である。
2.保健所設置市で働く常勤保健師は地方自治体における保健師全体の3割を超えている。
3.都道府県保健所に所属する保健師の活動項目別の活動時間割合は「保健福祉事業」が最も多い。
4.市町村保健師の活動項目別の保健師1人当たりの平均時間数は「コーディネート」が最も長い。

解答

解説

保健師活動領域調査とは?

「保健師活動領域調査」は、地方自治体に勤務する保健師の活動領域を把握し、今後の施策の基礎データとすることを目的に、平成 21 年度から実施している。調査は、保健師の所属や職位などを調査する「領域調査」(毎年実施)と、活動内容や活動時間などを調査する「活動調査」(3年毎実施)からなり、平成 30 年度は両調査を実施した。 (参考:「平成30年度(2018年度)の保健師活動領域調査」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。保健師の就業場所で最も多いのは市町村である。平成30(2018)年度における常勤保健師の就業場所は、1位:市町村(58.1%)、2位:保健所設置市(23.7%)、3位:都道府県(14.5%)、4位:特別区(3.7%)となっている。
2.× 保健所設置市で働く常勤保健師は地方自治体における保健師全体の3割は、「超えている」のではなく「超えていない」。保健師全体の23.7%である。
3.× 都道府県保健所に所属する保健師の活動項目別の活動時間割合は、「保健福祉事業」ではなく「業務連絡・事務」が最も多い。ちなみに、1位:業務連絡・事務(26.5%)、2位:保健福祉事業(20.0%)である。
4.× 市町村保健師の活動項目別の保健師1人当たりの平均時間数は、「コーディネート」ではなく「保健福祉事業」が最も長い。ちなみに、1位:保健福祉事業(69.9時間)、2位:業務連絡・事務(40.0時間)、3位:コーディネート(18.4時間)である。

(引用データ:「平成30年度(2018年度)の保健師活動領域調査」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

3 Aさん(33歳)は第1子を県外の実家で里帰り出産した。Aさんは、産後30日で自宅に戻り、翌週、地区担当保健師の家庭訪問を受けた。訪問時に児の発育発達に問題はなかったが、その後、時々Aさんは地区担当保健師に電話をかけ、日々の育児で生じた悩みを保健師に話した。Aさんは「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」と話した。
 Aさんに対する保健師の対応で最も適切なのはどれか。

1.週末を利用して実家に帰ることを勧める。
2.地区で行われている子育て教室への参加を促す。
3.出産した産婦人科医院で相談することを勧める。
4.母子保健推進員の訪問を依頼することを勧める。

解答

解説
1.× 週末を利用して実家に帰ることを勧める優先度は低い。なぜなら、週末を利用して実家に帰ったとしても根本的な解決にはつながらないため。設問から、Aさんは「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」と話している。つまり、Aさんが求めていることは、身近な育児の話し相手である。したがって、居住地区における育児仲間を作ることを優先したほうが良い。
2.〇 正しい。地区で行われている子育て教室への参加を促す。子育て教室(育児教室)とは、はじめて育児をする親や育児に自信がない若い親を対象に、育児の方法を教える教室のことである。設問から、Aさんは「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」と話しているため、Aさんに対する保健師の対応で最も適切といえる。また、地区で行われている子育て教室は、育児方法はもちろん、育児の仲間づくりを支援する場としての活用が期待される。
3.× 出産した産婦人科医院で相談することを勧める優先度は低い。なぜなら、出産した産婦人科医院(医療機関)は、基本的に健康上の問題がある場合に促すべきであるため。
4.× 母子保健推進員の訪問を依頼することを勧める優先度は低い。なぜなら、母子保健推進員とは、地域の妊産婦さんやお子さんの健康を見守るサポーター役として、市長より委嘱をうけて活動している。①母子保健に関する知識の普及、②母性および乳幼児の保険に関する問題の把握および情報提供、③健康診査、保健指導等の勧奨などの役割を持つ。つまり、住民と行政をつなぐパイプの役割が大きい。設問から、Aさんは「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」と話している。つまり、Aさんが求めていることは、身近な育児の話し相手である。また、児の発育発達に問題はないと記載があることからも、「母子保健推進員の訪問」は誇大な対応と考える。

 

 




 

 

 

4 A地区では市主催の両親学級に参加した父親が有志でグループを結成し、「パパの会」として自主的な活動を行っている。地区担当保健師は、会のリーダーから「会の活動を市の広報紙に掲載して参加者を増やしたいという意見と、今のメンバーで活動していきたいという意見に分かれている。どうしたらよいか」と相談を受けた。
 地区担当保健師が優先して行う対応として適切なのはどれか。

1.「保健師が運営を担当します」
2.「パパの会に一度参加させてください」
3.「リーダーの考えで活動を進めていいですよ」
4.「意見が分かれているのでメンバーを分けて活動しましょう」

解答

解説

地域組織活動に対する保健師の支援

地域組織活動に対する保健師の支援として、会の主体性や自主性を尊重しながら、あくまで調整役である。住民自らが課題解決に向けて活動できるように支援する役割を担う。

1.× 「保健師が運営を担当します」と伝える必要はない。むしろ、主体性を損ねる結果につながる。
2.〇 正しい。「パパの会に一度参加させてください」と伝えることは、地区担当保健師が優先して行う対応である。地域組織活動に対する保健師の支援として、会の主体性や自主性を尊重しながら、あくまで調整役である。住民自らが課題解決に向けて活動できるように支援する役割を担う。そのため、保健師が運営を担うことや活動方針を決めることはしない。実際にパパの会の活動に参加することで、保健師は具体的な状況を把握できる。
3~4.× 「リーダーの考えで活動を進めていいですよ」・「意見が分かれているのでメンバーを分けて活動しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、ほかのメンバーから反感が出たり、主体性を損ねたりする結果につながりかねないため。また地域組織活動に対する保健師の支援として、会の主体性や自主性を尊重しながら、あくまで調整役である。保健師が決定権をもっているわけではない。

 

 

 

 

 

 

5 Aさん(43歳、女性)は定期健康診断を毎年受けている。今年は血液検査で中性脂肪が基準値を超えており、医師から運動を勧められた。1か月後の受診日に、2週前から1日15分のジョギングを始めたことを医師に話したところ、医師は「2週間続けられたのだから、あなたならこれからもできると思います」と話した。Aさんは「はい。頑張って続けてみようと思います」と話した。
 Aさんの自己効力感を高めたのはどれか。

1.代理体験
2.意識の高揚
3.言語的説得
4.自己の再評価

解答

解説

自己効力感とは?

自己効力感(セルフエフィカシー)とは、自分が行動しようと思っていること、変えようと思っている生活習慣などに対し、うまく達成できるという自信や確信のこと、自己効力感の理論はライフスタイル改善のプログラムに活用される。自己効力感を高める要因として、①成功体験、②代理的体験、③言語的説得、④生理的・情緒的状態(情緒的高揚)が挙げられる。

①成功体験:例えば禁煙できた日をカレンダーに一日ずつ×を書いていき、「1週間禁煙できた」と自信をつけること。
②代理的体験:同じような状況にある他者が目標を達成している様子から「自分にもできそうだ」と思うこと。
③言語的説得:自分自身や周囲の人からの言語的な賞賛や励ましのこと。
④生理的・情緒的状態(情緒的高揚):行動の変化を促すような情報に触れ気づきを得ることで行動変容への関心をもつこと。例えば、タバコを吸わなくなってから「イライラしにくくなったきがするな」と気づきをえることで、行動がさらに変わっていくことである。

1.× 代理体験とは、自分以外の他人が達成したり成功したりするのを見聞きする体験のことである。同じような状況にある他者が目標を達成している様子から「自分にもできそうだ」と思うことである。
2.× 意識の高揚とは、行動の変化を促すような情報に触れ気づきを得ることで行動変容への関心をもつことである。歓喜・期待などや軽度の中枢興奮薬の影響で精神的活動性が高まった、ほぼ生理的な興奮状態を「高揚」という。例えば、タバコを吸わなくなってから「イライラしにくくなったきがするな」と気づきを得ることで、行動がさらに変わっていくことである。
3.〇 正しい。言語的説得がAさんの自己効力感を高めた。言語的説得とは、「自分も成功できる」と思えるような言葉を他者からもらうこと」である。つまり、自分自身や周囲の人からの言語的な賞賛や励ましのことである。Aさんがジョギングを2週間継続できたことに対して、医師から肯定的な声かけがされたことで、Aさんの自己効力感が高められたと考えられる。
4.× 自己の再評価とは、行動変容によって生まれ変わった新しい自分をイメージし、行動変容の重要性を認識することである。行動変容によって、自分自身にどんな恩恵があったのかを評価(自己再評価)する。

 

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