第108回(R7) 助産師国家試験 解説【午前16~20】

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16 正期産の正常新生児と分娩後の母親に対して早期母子接触を行う。母子ともに状態は安定している。
 母子の体位を図に示す。
 望ましいのはどれか。

解答

解説

早期母子接触の実施方法

<実施方法>
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

1.× 図1は、ベッドが完全にフラット(0°)となっている。より安全に行うため、上体挙上する(30 度前後が望ましい)

2.〇 正しい。図2は、母親が上体挙上(30 度前後が望ましい)、新生児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできている。

3.× 図3は、新生児の顔が正面を向いており、呼吸が苦しくなる可能性が高い。

4.× 図4は、母親が横向きであるため、母親がうとうとした際に、新生児をつぶしてしまう可能性がある。

早期母子接触の適応基準、中止基準

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

 

 

 

 

17 身体発育や神経発達に異常のない乳幼児の月齢と睡眠パターンの組合せで適切なのはどれか。

1.生後1か月:昼夜の区別なく睡眠と覚醒を繰り返す。
2.生後4か月:1日の睡眠回数が8回になる。
3.生後7か月:夜間2時間おきに目を覚ます。
4.生後12か月:1日の睡眠時間が7時間になる。

解答

解説
1.〇 正しい。生後1か月:昼夜の区別なく睡眠と覚醒を繰り返す。生後1ヶ月の睡眠サイクルは、1日に16~20時間ほど眠り、1~3時間眠っては45分ほど起きて、また眠るという短いサイクルを繰り返す。

2.× 1日の睡眠回数が8回になるのは、「生後4か月」ではなく生後1か月である。生後4ヶ月になると、赤ちゃんの睡眠リズムはより整い、1日の睡眠回数は、新生児期に比べて減少し、日中のお昼寝は2~4回程度になるのが一般的である。

3.× 夜間2時間おきに目を覚ますのは、生後7か月に限ったことではない。むしろ、夜泣きが始まる生後6か月を過ぎると、多くの乳幼児で夜間の睡眠がより安定し、続けて眠れる時間が長くなる。2時間おきに頻繁に目を覚ますのは、生後1ヶ月に一般的に該当する。

4.× 1日の睡眠時間が7時間になるのは、「生後12か月」ではなく成人である。文献によってさまざまであるが、1~2歳児は11~14時間、3~5歳児(就学前児)は10~13時間、小学生(6~12歳)は9~12時間の睡眠時間が推奨されている。

 

 

 

 

 

18 Aちゃん(6か月、男児)は、救急外来に搬送された。母親は「Aちゃんが泣き止まないため、父親があやすつもりで強く揺さぶったところ、しばらくしたらぐったりした」と話している。Aちゃんは、CT検査の結果、硬膜下血腫が確認された。
外見上の外傷は認められなかった。
 このときAちゃんに生じている可能性が高いのはどれか。

1.下血
2.眼底出血
3.鼓膜穿孔
4.股関節の脱臼

解答

解説

ポイント

・Aちゃん(6か月、男児、硬膜下血腫)。
・母親「Aちゃんが泣き止まないため、父親があやすつもりで強く揺さぶったところ、しばらくしたらぐったりした」と話している。
・外見上の外傷は認められなかった。
→本症例は、乳幼児揺さぶられ症候群が疑われる。乳幼児揺さぶられ症候群とは、赤ちゃんを激しく揺さぶることで、表面的な外傷はないものの、赤ちゃんの脳に重度の損傷が生じることをいう。硬膜下血腫、眼底出血がみられることが多い

1.× 下血より優先されるものが他にある。なぜなら、下血と硬膜下血腫の関連性は低いため。
・下血とは、肛門から黒い血が出ることである。血便と下血は別のものであり、血便とは、赤い血が混じっている便である。一方、下血は黒い血が混じっている便のことをいう。赤い便(血便)は、下部消化管、すなわち回腸や大腸・肛門からの出血が原因である。一方、黒い便(下血)の原因は、上部消化管、つまり食道、胃、十二指腸などの上部小腸からの出血である。

2.〇 正しい。眼底出血が、Aちゃんに生じている可能性が高い。なぜなら、乳幼児揺さぶられ症候群の典型的な症状の一つであるため。本症例は、乳幼児揺さぶられ症候群が疑われる。乳幼児揺さぶられ症候群とは、赤ちゃんを激しく揺さぶることで、表面的な外傷はないものの、赤ちゃんの脳に重度の損傷が生じることをいう。硬膜下血腫、眼底出血がみられることが多い

3.× 鼓膜穿孔より優先されるものが他にある。なぜなら、鼓膜穿孔の原因は、耳への直接的な外力(平手打ちなど)や、中耳炎などの炎症によって生じることが一般的であるため。
鼓膜穿孔とは、鼓膜に穴が開いている状態である。音が効率的に内耳に伝わりにくくなるため、伝音性難聴の原因となる。

4.× 股関節の脱臼より優先されるものが他にある。なぜなら、股関節の脱臼の原因は、股関節に直接的な強い牽引力や捻転力が加わった場合に生じやすいため。

硬膜下血腫とは?

硬膜下血腫とは、①急性と②慢性に大きく分類される。①急性硬膜下血腫とは、短時間のうちに硬膜と脳の間に血腫が形成された状態のことであり、頭部外傷としては重症に分類される。ほとんどが頭部外傷によるもので、児童虐待の死因として最も多い。一方、②慢性硬膜下血腫とは、軽度の外傷により軽微な出血が起こり、経時的に血腫が増大し、やがて症状が現れる。症状として、認知障害、頭痛、尿失禁、歩行障害、片麻痺などである。CT画像から、急性硬膜下血腫に特徴的な①三日月状の高吸収域、②左側脳室体部の圧排変形、③midlineの偏位がみられる。

 

 

 

 

19 地域周産期母子医療センターであるA病院は、B市の事業委託を受けて産科病棟内で短期入所(ショートステイ)型の産後ケア事業を実施することになった。
 新規事業のPDCAサイクルで計画にあたるのはどれか。

1.利用者の募集
2.1日の利用人数の設定
3.食事メニューの見直し
4.利用者へのアンケート調査

解答

解説

MEMO

医療・介護過程の展開において、PDCAサイクルを用いることが多い。PDCAサイクルは、計画(Plan)→実施(Do)→再評価(Check)→対策・改善(Action)というサイクルのことを指す。

1.× 利用者の募集は、PDCAサイクルの「Do(実行)」に該当する。なぜなら、募集は、計画されたサービスを実際に開始する目的の具体的な行動であるため。

2.〇 正しい。1日の利用人数の設定は、PDCAサイクルの「Plan(計画)」に該当する。Plan(計画)は、目標達成のために「何を」「いつまでに」「どのように」行うかを具体的に決定する段階である。

3.× 食事メニューの見直しは、PDCAサイクルの「Act(改善)」に該当する。見直しは、すでに実施されていることに対する改善活動である。

4.× 利用者へのアンケート調査は、PDCAサイクルの「Check(評価)」に該当する。なぜなら、アンケート調査は、利用者の満足度や意見を収集し、サービスの効果や課題を把握する目的の具体的な評価活動であるため。

 

 

 

 

 

20 妊婦健康診査の公費負担について正しいのはどれか。

1.国が全額公費負担している。
2.妊婦1人当たりの公費負担額は全国一律である。
3.多胎と単胎の妊婦健康診査の公費負担額は同じである。
4.全市区町村で妊婦1人当たり14回以上の公費負担をしている。

解答

解説

MEMO

妊婦健康診査とは、妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために行うものである。妊婦健康診査の費用は、妊娠・出産は正常な経過であれば、保険適用されず自費診療となる。保険が適用されない妊婦健診費用の一部を自治体(市区町村)が負担している。

妊婦検診の費用は、14回のすべてが負担対象となっているが、1回あたり平均で約5,000円である。妊婦健康診査の費用助成は、全自治体で行われている。ただし、96市区町村は、公費負担額が明示されていない(※参考:「妊婦健康診査の公費負担の状況について」厚生労働省HPより)。

1.× 国が全額公費負担「していない」。国が地方交付税などで財源の一部を支援し、最終的には各自治体が独自の基準で助成を行っている。

2.× 妊婦1人当たりの公費負担額は、「全国一律」ではない。なぜなら、自治体によって異なるため。ちなみに、国から自治体に妊婦ひとりあたり約12万円が助成されている。

3.× 多胎と単胎の妊婦健康診査の公費負担額は、「同じ」とはいえない。なぜなら、多胎妊娠は、単胎妊娠に比べて合併症のリスクが高く、より頻繁で慎重な健康診査が必要となるため。例えば、単胎が14回であるのに対し、多胎では15回以上などと設定されることが多い。

4.〇 正しい。全市区町村で妊婦1人当たり14回以上の公費負担をしている。厚生労働省は、妊娠期間を通じて合計14回の妊婦健康診査の受診が推奨されるとしているため。妊婦健診の受診間隔は、妊娠23週までは4週間に1回だが、24週から35週は2週間に1回に変わる。

妊婦健康診査の望ましい基準

①妊娠23週まで:4週間に1回
②24週~35週:2週間に1回
③36週~出産まで:1週間に1回

(※図引用:「妊婦健康診査の公費負担の状況について」厚生労働省HPより)。

 

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