第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前31~35】

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31 手の写真を下図に示す。
 写真の斜線部分で、正中神経の圧迫によって知覚異常を生じる部位を示しているのはどれか。


1.A
2.B
3.C
4.D

解答3

解説

1.× A:尺骨神経である。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
2.× B:存在しない。手掌の感覚領域は、正中神経(母指から薬指の橈側半分まで)と尺骨神経(小指と薬指の橈側半分まで)に分かれている。
3.〇 正しい。C:正中神経である。正中神経損傷の低位型では、母指球筋が萎縮し、母指の掌側外転麻痺が生じ、猿手となる。短対立装具を用いる。ちなみに、高位型では、母指対立不能、母・示指の屈曲障害、前腕の回内障害が加わる。そのため、長対立装具を用いる。
4.× D:橈骨神経である。橈骨神経麻痺の症状として下垂手を生じる。

 

 

 

 

 

32 疫学的因果関係があると判断できるのはどれか。

1.要因と疾病の関係が生物学的研究で得られた事実と異なる。
2.特定の要因と疾病の関係に特異的な関連が存在する。
3.要因と疾病の関係でオッズ比が1である。
4.要因と疾病の関係が散発的である。

解答2

解説

疫学的因果関係とは?

疫学的因果関係とは、疫学的方法により証明された法的因果関係のことをいう。

【疫学的因果関係の判定基準】
①時間性:暴露が疾患の発生よりも前に存在する。
②一致性:複数の同様の関連性がみられる。
③強固性:相対危険比が高い。
④特異性:要因と結果に特異的な関係を認める。
⑤整合性:生物学的に矛盾なく説明できる。

1.× 要因と疾病の関係が生物学的研究で得られた事実と、「異なる」のではなく一致すれば、疫学的因果関係があると判断できる。これは、⑤整合性:生物学的に矛盾なく説明できることに基づく。
2.〇 正しい。特定の要因と疾病の関係に特異的な関連が存在することで、疫学的因果関係があると判断できる。これは、④特異性:要因と結果に特異的な関係を認めることに基づく。
3.× 要因と疾病の関係でオッズ比が、「1である」のではなく、「1以下である」ことで、疫学的因果関係があると判断できる。これは、③強固性:相対危険比が高いことに基づく。オッズ比が「1」であれば2群間に差がないと判断する。もし、オッズ比が1以上であれば、リスクに晒された患者でイベントが起こりやすいことを示す。 逆に、1以下であれば、イベントが起こりにくいということである。ちなみに、オッズ比とは、「ある事象の起こりやすさを示す尺度」である。つまり、「ある事象が起こる確率を起こらない確率で割ったもの」である。オッズが大きいほどその事象は起こりやすく、小さいほどその事象が起こりにくいことがわかる。
4.× 要因と疾病の関係が、「散発的」ではなく「連発的もしくは頻発的」であることで、疫学的因果関係があると判断できる。これは、②一致性:複数の同様の関連性がみられることに基づく。ちなみに、散発的とは、物事が連続・集中せず、間をおいて起こるさま(時々起こるさま)である。

 

 

 

 

33 平成27年(2015年)の日本の結核対策で増加が問題とされているのはどれか。(※不適切問題:解答2つ)

1.新登録結核患者数
2.菌喀痰塗抹陽性の肺結核患者数
3.外国生まれの新登録結核患者数
4.新登録結核患者における20歳代の割合

解答3・4
理由:設問が不明確で複数の選択肢が正解と考えられるため。

解説

(※図引用:「平成27年結核登録者情報調査年報集計結果について」厚生労働省HPより)

1~2.× 新登録結核患者数/菌喀痰塗抹陽性の肺結核患者数は、平成12年以降、減少し続けている。平成27年に新たに結核患者として登録された者(新登録結核患者)の数は18,280人で、前年から1,335人減少した。減少率は、平成25年から平成26年にかけては4.3%、平成26年から平成27年にかけては6.8%となり、減少幅は2.5ポイント大きくなっている。 
3.〇 正しい。外国生まれの新登録結核患者数は、平成26年以降、増加し続けている。特に20歳代で外国生まれの新登録結核患者数の増加が目立つ。
4.〇 正しい。新登録結核患者における20歳代の割合は、平成26年以降、わずかに増加し続けている。新登録結核患者における20歳代の割合は、日本生まれの患者では減少しているが、外国生まれの患者で増加している。(上記データ引用:「平成27年結核登録者情報調査年報集計結果について」厚生労働省HPより)

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

 

 

 

 

 

34 トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)で実施されるのはどれか。

1.がん検診
2.健康測定
3.一般健康診断
4.特定健康診査

解答2

解説

(図引用:「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」厚生労働省HPより)

トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)

 「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(厚生労働省HPより)」に基づき、トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)が推進されている。トータル・ヘルスプロモーション・プランとは、①健康測定→②健康指導→③実践活動→④生活習慣改善と職場の活性化→⑤健康づくり計画→①健康測定へ戻るというPlan→Do→Check→Act(PDCA)サイクルの形をとっている。

1.× がん検診は、『健康増進法』に基づく健康増進事業として、市町村が住民に対して行うがんの早期発見・早期治療のための検診である。ちなみに、健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。
2.〇 正しい。健康測定は、トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)実施の第1段階で実施される。トータル・ヘルスプロモーション・プランとは、①健康測定→②健康指導→③実践活動→④生活習慣改善と職場の活性化→⑤健康づくり計画→①健康測定へ戻るというPlan→Do→Check→Act(PDCA)サイクルの形をとっている。
3.× 一般健康診断は、『労働安全衛生法』に規定され、事業主が実施するものである。労働安全衛生法とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。
4.× 特定健康診査は、『高齢者の医療の確保に関する法律』に規定され、医療保険者が40歳から74歳までの被保険者・被扶養者に対して行う生活習慣病の早期発見・予防のための健診である。高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)とは、国民保健の向上および高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする法律である。特定健康診査は、40~74歳の者を対象に実施される。特定健康診査(健診)は、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行う。メタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的である。

ヘルスプロモーションとは?

ヘルスプロモーション(健康教育)は、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義される。①健康な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地域活動の強化、④個人技術の開発、⑤ヘルスサービスの方向転換などが挙げられる。保健部門だけの責任にとどまらず、人々のライフスタイルや生活の質(QOL)にかかわるものであり、個人の能力だけでなく環境の整備も含まれる。オタワ憲章(1986年)で提唱され、日本では、健康日本21(2000年)で基本理念に取り入れられている。

①健康的な公共政策づくり:健康は、人々の暮らしを支えている公共政策(道や諸施設、衛生上欠かせない上下水道の整備など)によって保証されるため、公共政策そのものを健康的なものにする必要がある。
②健康を支援する環境づくり:環境(ハード・ソフト面)を整備することで、住民一人ひとり健康づくりを支援する。
③地域活動の強化:住民組織を活性化することで健康づくりを地域での住民活動を強化するような働きかけを行う。
④個人技術の開発:住民一人ひとり、そして専門家が、健康づくりに取り組むために必要な技術を身につけられるような働きかけや取り組みを行う。
⑤ヘルスサービスの方向転換:これまで疾病対策として実施されてきた事業(ヘルスサービス)を、より積極的に健康づくりの場としてとらえ見直しを行う。

 

 

 

 

35 健康寿命の説明で適切なのはどれか。

1.生活習慣病の予防は健康寿命を伸ばす。
2.2013年の健康寿命は2011年よりも短い。
3.2013年の健康寿命は女性より男性のほうが長い。
4.平均寿命と健康寿命の差は健康上の問題なく日常生活ができる期間である。

解答1

解説

平均寿命とは?

平均寿命とは、生まれたばかりの子どもが平均して何年生きるかを示したものであり、0歳の平均余命のことである。ちなみに、健康寿命とは日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指す。

1.〇 正しい。生活習慣病の予防は、健康寿命を伸ばす。生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。
2.× 2013年の健康寿命は2011年よりも、「短い」のではなく長い。健康寿命は、男性が70.42年(2011年)→71.19年(2013年)、女性が73.62年(2011年)→74.21年(2013年)である。健康寿命は、男女ともに2013年のほうが長い。
3.× 2013年の健康寿命は女性より男性のほうが、「長い」のではなく短い。2013年の健康寿命は、男性:71.19年女性:74.21年である。(※参考データ:「厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会」厚生労働省HPより)
4.× 平均寿命と健康寿命の差は、「健康上の問題なく日常生活ができる期間である」ではなく、「不健康で日常生活に制限のある期間」である。平均寿命とは、生まれたばかりの子どもが平均して何年生きるかを示したものであり、0歳の平均余命のことである。一方、健康寿命とは日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指す。したがって、「平均寿命」ー「健康寿命」=「不健康で日常生活に制限のある期間」となる。

(※図引用:「健康寿命と平均寿命の推移」内閣府HPより)

 

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