第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後46~50】

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46 慢性副鼻腔炎の手術を受けた患者に対する説明で適切なのはどれか。

1.咽頭にたまった分泌物は飲んでも良い。
2.臥床時は頭部を低く保つ。
3.手術当日から入浴が可能である。
4.物が二重に見えるときは看護師に伝える。

解答4

解説

慢性副鼻腔炎とは?

慢性副鼻腔炎とは、いわゆる蓄膿症のことで、副鼻腔の中のいくつかが慢性的な粘膜の炎症を起こしている状態をいう。一般的には感冒などの急性炎症から始まり、インフルエンザウイルスやその他の細菌の感染を繰り返すことによって慢性化することが多く、アレルギー性鼻炎からの移行もみられる。主な症状として、①鼻水、②鼻づまり、③頭が重い、④鼻の中に悪臭を感じる、⑤嗅覚低下などがあげられる。

1.× 咽頭にたまった分泌物は、「飲み込んでも良い」のではなく「飲み込まないほうが良い」。後鼻漏とは、鼻水がのどにおりてくることをいう。後鼻漏の中の成分がのどの粘膜を傷めることがあり、後鼻漏が原因で咽頭痛や咽頭違和感が起こることもある。
2.× 臥床時は、頭部を「低く」ではなく高く保つ。なぜなら、臥床時に頭部を高くすることで、分泌物が鼻腔内に停滞・逆流するのを防ぐことができるため。また、手術部は炎症に対する処置が必要である。疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上(Elevation)することが基本である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
3.× 入浴が可能であるのは、「手術当日から」ではなく翌日か翌々日からである。術後の出血や腫れ、滲出液、疼痛などを考慮して、医師の判断により決定する。とはいえ、術後出血や疼痛増悪の可能性があるため手術当日は入浴出来ない。
4.〇 正しい。物が二重に見えるときは、看護師に伝える。なぜなら、手術により、眼窩壁を傷つけてしまった場合、複視(ものが二重に見える)や視力低下、目の周囲に皮下出血がおこる可能性があるため。上記症状がある場合は、手術による外眼筋の損傷や眼窩内感染などの可能性もある。

 

 

 

 

 

47 サクセスフルエイジングの説明で適切なのはどれか。

1.老化の過程にうまく適応する。
2.権威のある者によって一方的に守られる。
3.生命あるものに共通して起こる現象である。
4.社会的な役割から離脱することで自由になる。

解答1

解説

サクセスフル・エイジングとは?

サクセスフル・エイジング(幸福な老い)とは、アメリカで生まれた言葉であり、「日本語で正確に言い表す和訳はない」とされています。 サクセスフル・エイジングの持つ意味とは「良い人生を送り、天寿を全うすること」とされており、日本に元々ある言葉では「生きがい」や「幸福な老い」がその意味に最も近いものではないかと考えられています。(※引用:「サクセスフル・エイジングとは?」健康長寿ネット様HPより)

1.〇 正しい。老化の過程にうまく適応することは、サクセスフルエイジングの説明である。サクセスフル・エイジング(幸福な老い)とは、アメリカで生まれた言葉であり、「日本語で正確に言い表す和訳はない」とされています。 サクセスフル・エイジングの持つ意味とは「良い人生を送り、天寿を全うすること」とされており、日本に元々ある言葉では「生きがい」や「幸福な老い」がその意味に最も近いものではないかと考えられています。(※引用:「サクセスフル・エイジングとは?」健康長寿ネット様HPより)
2〜3.× 権威のある者によって一方的に守られる/生命あるものに共通して起こる現象であることは、サクセスフルエイジングの定義とは異なる。
4.× 社会的な役割から離脱することで自由になるとはいいにくい。なぜなら、サクセスフルエイジングの構成要素に、社会貢献(有償労働、無償労働、相互扶助、ボランティア活動、保健行動)があるため。

 

 

 

 

48 判断能力が不十分な認知症高齢者の権利擁護を目的とするのはどれか。

1.公的年金制度
2.生活保護制度
3.後期高齢者医療制度
4.日常生活自立支援事業

解答4

解説

権利擁護とは?

権利擁護(アドボカシー)とは、自己の権利を十分に表明することができない者の人権を尊重し、当事者の権利を代弁者として擁護し、当事者の自己決定を支え、その人らしく生活すること(自己実現)を支援することである。アドボカシーは、「擁護」、「支持」、「唱道」などの意味をもつ言葉で、保鍵師の役割において、「代弁者」として用いられることが多い。患者や家族が自身の権利や利益を守るための自己決定ができるように、看護師は、患者や家族を保護し、情報を伝え、支えることでエンパワーメント(患者・家族を強引に説得したりするのではなく、自己決定できるように働きかけること)すること、さらに医療従事者との仲裁を行い、医療者間の調整をすることであると定義づけられている。

1.× 公的年金制度とは、高齢者世帯の生活を支えるための社会保障で20歳以上の全国民が強制加入する制度である。現役世代が納めた保険料を、そのときの年金受給者への支払いに充てる方式(賦課方式)を採用している。公的年金は、現役時代から考えて、45年から60年後といった老後までの長い期間に、経済社会がどのように変わろうとも、その社会で従前の生活と大きく変わらない暮らしのできる年金を保障することを目的としており、賃金や物価の水準の上昇に応じて年金の水準を改定する仕組みである。
2.× 生活保護制度とは、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。
3.× 後期高齢者医療制度とは、2008年施行の「高齢者の医療の確保に関する法律」を根拠法とする日本の医療保険制度である。①75歳以上または②65~74歳で一定の障害があると認定された人である。高齢者の医療について国民共同連帯の理念等に基づき、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行う制度を設けることにより、国民健康の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とするものである。
4.〇 正しい。日常生活自立支援事業は、判断能力が不十分な認知症高齢者の権利擁護を目的とする。日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものである。『社会福祉法』の福祉サービス利用援助事業の一環として都道府県社会福祉協議会などが行うものである。

生活保護制度とは?

生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。

①生活扶助:日常生活に必要な費用
②住宅扶助:アパート等の家賃
③教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
④医療扶助:医療サービスの費用
⑤介護扶助:介護サービスの費用
⑥出産扶助:出産費用
⑦生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
⑧葬祭扶助:葬祭費用

【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。

【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。

(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)

 

 

 

 

 

49 Aさん(76歳、女性)は、ステージ2の慢性腎臓病と診断された。身長146cm、体重50kg。日常生活は自立し、毎日家事をしている。週2回、ビールをグラス1杯程度飲んでいる。
 Aさんへの生活指導の内容で優先されるのはどれか。

1.安静
2.禁酒
3.減塩
4.体重の減量

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(76歳、女性、ステージ2の慢性腎臓病
・身長146cm、体重50kg(BMI:23.5)。
・日常生活:自立(毎日家事)
週2回、ビールをグラス1杯程度飲んでいる。
→慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.× 「安静」ではなく、適度な定期的な運動が推奨されている。慢性腎不全患者に対する運動療法の効果として、最大酸素摂取量の増加、左心室収縮機能の亢進(安静時・運動時)、心臓副交感神経系の活性化、心臓交感神経緊張の改善、栄養低下、炎症複合症候群の改善、貧血の改善、不安・うつ・QOLの改善、ADLの改善、死亡率の低下、前腕静脈サイズの増加、透析効率の増加などがあげられる。
2.× 「禁酒」ではなく、適度な飲酒を許可する。なぜなら、健康日本21において、死亡リスクを高めない飲酒量は一般的に1日20g程度(ビール500mL)とされている。本症例のように、週2回、ビールをグラス1杯程度であれば許容範囲内と考えられ、さらに他の選択肢において、より優先度が高いものが他にある。ただし、タバコに関しては禁煙が望まれる。
3.〇 正しい。減塩を行う。慢性腎臓病患者において、高血圧・尿蛋白の抑制と心血管病変の予防のため、6g/日未満の食塩摂取制限が推奨されている。慢性腎臓病(CKD)では、ステージを問わず、高血圧や浮腫の予防と治療のために食塩の制限が必要である。
4.× 体重の減量は必要ない。なぜなら、AさんのBMIは23.5(普通)であるため。BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

 

 

 

 

50 認知症高齢者との対話で適切なのはどれか。

1.表情を見せながら話す。
2.高齢者の横から話しかける。
3.会話の内容を記憶しているか確認する。
4.言葉が出てこない時は思い出すまで待ち続ける。

解答1

解説

認知症の対応

認知症の患者に対する対応では、バリデーション(本人の思いを肯定し、共感的・受容的態度で安心感を与えることを基本とし、信頼関係を構築すること)という考え方を用いると良いとされている。
【バリデーションを構成する要素】
・傾聴する(相手の言葉を聞いて、反複する。)
・共感する(表情や姿勢で感情を汲み取り、声のトーンを合わせる)
・誘導しない(患者にペースを合わせる。)
・受容する(強制しない、否定しない)
・嘘をつかない、ごまかさない

1.〇 正しい。表情を見せながら話す。なぜなら、認知症患者では、言葉の理解力が低下しているため。表情を見せることで、相手の理解を促すことができ、話し手が笑顔であるだけでも安心できる。また、非言語コミュニケーション(姿勢、表情、声の調子、目や手足の動きなど)にも注意を払うことが大切である。
2.× 高齢者の「横」ではなく、正面から話しかける。なぜなら、正面の方が口の動き表情が見やすいため。
3.× 会話の内容を記憶しているか確認する必要はない。なぜなら、それが認知症高齢者に不安やストレスを与える結果となるため。
4.× 言葉が出てこない時は、思い出すまで待ち続ける必要はない。認知症高齢者と話しているとき、言葉がうまく出てこない時は、話したいことを推測して、引き出すように語りかける。

 

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