第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前66~70】

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66 入院患者のせん妄に対する予防的介入で適切なのはどれか。

1.可能な限り離床を促す。
2.昼間は部屋を薄暗くする。
3.家族や知人の面会は必要最低限にする。
4.夕方に短時間の睡眠をとることを勧める。

解答1

解説

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

1.〇 正しい。可能な限り離床を促す。なぜなら、過度の臥床はせん妄を誘発する因子になるため。昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
2.× 昼間は部屋を、「薄暗く」ではなく明るくする。なぜなら、覚醒を促し、夜間に十分な睡眠ができるようリズムを整えるため。
3.× 家族や知人の面会は、「必要最低限」ではなく積極的にする。なぜなら、家族や知人の面会は脳の賦活にもつながるだけでなく、面会などを通して覚醒を促し、不安を軽減させるため。入院による環境の変化、不安感などでもせん妄の要因となり得る。
4.× あえて、「夕方に」短時間の睡眠をとることを勧める必要はない。また「短時間」と記載されているが、短時間の定義があいまいなため選択しにくい。夜間の睡眠周期は約90分であるため、30分程度の昼寝は、深いノンレム睡眠に至らないので夜の睡眠に影響はない。むしろ一般的な高齢者は夜間の睡眠効率が低下するため、短時間の昼寝で夜間の睡眠不足を補う必要がある。

高齢者の睡眠の特徴

高齢者は、社会的な刺激が少ない状況におかれ、身体的・精神的活動能力が低下しているため、日中の活動量は減り、熟睡が困難になる。また、身体的要因や疾患のために夜間睡眠が妨げられやすくなる。さらに、加齢や脳の器質的障害に伴うサーカディアンリズムの変化が生じる。

 

 

 

 

 

67 注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状はどれか。

1.音声チックが出現する。
2.計算を習得することが困難である。
3.課題や活動に必要なものをしばしば失くしてしまう。
4.読んでいるものの意味を理解することが困難である。

解答3

解説

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは?

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。対人関係面で周囲との軋轢を生じやすく、大人からの叱責や子どもからのいじめにあうことがある。このため、二次障害として、自信喪失、自己嫌悪、自己評価の低下がみられることがある。そのため、患児の行動特徴を周囲が理解し、適切に支援をしていくことが重要である。①まず、行動療法を行う。𠮟責せずに、個別に近い対応で作業を粘り強く支援していく。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

1.× 音声チックの出現が特徴的な疾患は、トゥレット症候群である。音声チックとは、チック症の一種であり、不明瞭な叫び声・反復的な発声・咳払い・ブツブツ言うなどの症状である。チック障害(チック症)とは、本人の意思とは関係なく(不随意)・急に(突発的に)運動や発声が反復して起こる病態で、それぞれ運動性チック、音声チックと呼ばれる。 複数のタイプの症状が長期間続く場合は、トゥレット症候群と呼ぶ。
2.4.× 計算を習得することが困難である/読んでいるものの意味を理解することが困難であるのは、発達障害の一つである学習障害である。学習障害とは、読む、書く、話すなどのある特定の学習能力が同じ年齢・知能の者と比較したときに期待される水準に達しない状態を指す。
3.〇 正しい。課題や活動に必要なものをしばしば失くしてしまうのは、注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状の「不注意」である。

 

 

 

 

68 精神医療審査会で審査を行うのはどれか。

1.精神保健指定医の認定
2.入院患者からの退院請求
3.退院後生活環境相談員の選任
4.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇の要否

解答2

解説

精神医療審査会とは?

精神医療審査会は、『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)』により、都道府県・指定都市に設置されるものである。精神医療審査会とは、精神科病院に入院中の患者家族等から退院請求や処遇改善請求があったときに、入院の必要性や処遇の妥当性について審査を行う機関である。

1.× 精神保健指定医の「認定」ではなく指定は、厚生労働大臣が行う。指定は、認定を含むが、認定されてもそれに指定されるとは限らない。ちなみに、精神保健指定医とは、「精神保健福祉法」に基づいて、精神障害者の措置入院・医療保護入院・行動制限の要否判断などの職務を行う精神科医のことである。原則として、精神科病院では、常勤の指定医を置かなければならない。臨床経験・研修などの要件を満たす医師の申請に基づいて厚生労働大臣が指定する。
2.〇 正しい。入院患者からの退院請求は、精神医療審査会で審査を行い決定する。精神医療審査会とは、精神科病院に入院中の患者家族等から退院請求や処遇改善請求があったときに、入院の必要性や処遇の妥当性について審査を行う機関である。
3.× 退院後生活環境相談員の選任は、精神科病院の管理者である。これは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)の33条4項に「医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者は、精神保健福祉士その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、退院後生活環境相談員を選任し、その者に医療保護入院者の退院後の生活環境に関し、医療保護入院者及びその家族等からの相談に応じさせ、及びこれらの者を指導させなければならない」と規定されている(※一部引用:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、退院後生活環境相談員になれるのは、精神保健福祉士の資格を有する者等である。精神保健福祉士とは、『精神保健福祉士法』に基づき、精神障害者に対する相談援助などの社会福祉業務に携わる専門職である。また、その家族に対しても相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な援助を行う。
4.× 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇の要否は、裁判官と精神保健審判員の各1名からなる合議体による審判で行われる。これは医療観察法の11条に規定されている。医療観察法とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ぎ社会復帰の促進が目的である。平成15年に制定され、平成17年施行した。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)とは?

①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

69 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律で、平成25年(2013年)に改正された内容はどれか。

1.保護者制度の廃止
2.自立支援医療の新設
3.精神保健指定医制度の導入
4.精神分裂病から統合失調症への呼称変更

解答1

解説

(※図引用:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律の概要」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。保護者制度の廃止は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)で、平成25年(2013年)に改正された。平成25年(2013年)の改正では、精神障害者の地域生活への移行を促進するため、①精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)の策定、②保護者制度の廃止、③医療保護入院の見直し、④精神医療審査会に関する見直しが行われた(※参考:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律の概要」厚生労働省HPより)。
2.× 自立支援医療の新設は、平成17年(2005年)の障害者総合支援法(現)で規定された。ちなみに、自立支援医療とは、『障害者総合支援法』に定められている。更生医療(自立支援医療)・育成医療(軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行うもの)・精神通院医療(精神疾患の治療に掛かる医療費を軽減する公的な制度)がある。
3.× 精神保健指定医制度の導入は、昭和62年(1987年)に精神保健福祉法(現)で規定された。精神保健福祉法とは、①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)
4.× 精神分裂病から統合失調症への呼称変更の契機は、平成14年(2002年)である。日本精神神経学会は平成14年(2002年)8月、1937年から使われてきた「精神分裂病」という病名を「統合失調症」に変更することに決めた。 それに伴い、厚生労働省は精神保健福祉法に関わる公的文書や診療報酬のレセプト病名に「統合失調症」を使用することを認め、同年8月に各都道府県・政令都市にその旨を通知した。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

 

 

 

70 平成28年(2016年)の国民生活基礎調査において、要介護者等のいる世帯に同居している主な介護者全数の特徴で正しいのはどれか。

1.性別は女性が多い。
2.続柄は子が最も多い。
3.年齢は70〜79歳が最も多い。
4.介護時間は「ほとんど終日」が最も多い。

解答1

解説

主な介護者の状況

主な介護者(熊本県を除く。)をみると、要介護者等と「同居」が58.7%で最も多く、次いで「事業者」が13.0%となっている。「同居」の主な介護者の要介護者等との続柄をみると、「配偶者」が25.2%で最も多く、次いで「子」が21.8%、「子の配偶者」が9.7%となっている。また、「同居」の主な介護者を性別にみると、男34.0%、女66.0%で女が多く、これを年齢階級別にみると、男女とも「60~69歳」が28.5%、33.1%と最も多くなっている。(※引用:「平成28年 国民生活基礎調査の概況」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。性別は女性が多い。同居の主な介護者は、女性:66.0%、男性:34.0%である。
2.× 続柄は、「子」ではなく配偶者が最も多い。同居の主な介護者は、配偶者:25.2%、子:21.8%、子の配偶者:9.7%、父母:0.6%である。
3.× 年齢は、「70〜79歳」ではなく、60〜69歳(男女とも)が最も多い。同居している主な介護者の年齢別構成割合は、60~69歳:31.5%、70~79歳:22.3%、50~59歳:21.2%、80歳以上:16.1%である。
4.× 介護時間は、「ほとんど終日」ではなく、「必要な時に手をかす程度」が最も多い。主な介護者の介護時間は、必要な時に手をかす程度:44.5%、ほとんど終日:22.1%、半日程度:10.9%、2~3時間程度:10.7%である。しかし、要介護5では、「ほとんど終日」が54.6%となる。

(※引用:「平成28年 国民生活基礎調査の概況」厚生労働省HPより)

国民生活基礎調査とは?

国民生活基礎調査とは、保健、医療、福祉、年金、所得など国民生活の基礎的事項を調査し、厚生労働行政の企画及び運営に必要な基礎資料を得るとともに、各種調査の調査客体を抽出するための親標本を設定することを目的とした厚生労働省が行う基幹統計調査である。

 

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