第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前61~65】

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61 新生児の養育者に対する看護師の指導で正しいのはどれか。

1.「脂漏性湿疹は石けんで洗いましょう」
2.「臍帯はおむつで覆いましょう」
3.「うつぶせ寝にしましょう」
4.「日光浴をしましょう」

解答1

解説

新生児とは?

「新生児」とは、生まれた日を0日とカウントして、生後28日未満までの赤ちゃんのことを指す。 また、それ以降は「乳児」と呼ばれ、満1歳からは「幼児」と呼ばれる。

1.〇 正しい。「脂漏性湿疹は石けんで洗いましょう」と指導する。脂漏性湿疹とは、生後2~4週間頃に皮脂分泌の活発な部位に出現する湿疹性病変である。新生児期は皮脂分泌が最も盛んな時期であることから、顔面や頭部に脂漏性湿疹を引き起こすことがある。そのため、ガーゼやタオルでこすると児の皮膚に小さな傷をつけるので、指の腹に石けんをつけて洗うと良い。
2.× 臍帯はおむつで覆う必要はない。なぜなら、尿による汚染を防ぎ、臍を乾燥させるため。感染予防と早期臍帯脱落のために、臍を乾燥させることが大切である。おむつは臍を隠さないように折り曲げて留めておく。
3.× 「うつぶせ寝」ではなく仰臥位(1歳まで)にする。なぜなら、うつぶせ寝(腹臥位)は、乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)を発症する危険性が高まるため。乳幼児突然死症候群とは、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然死亡してしまう病気である。何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なる。日本での発症頻度はおよそ出生6,000~7,000人に1人と推定され、生後2か月から6か月に多いとされている。予防のために厚生労働省は①1歳になるまでは仰臥位で寝かせる、②できるだけ母乳で育てる、③禁煙するという3つのポイントをあげている。(※参考:「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」厚生労働省HPより)
4.× 日光浴は積極的に行わない。なぜなら、新生児期の皮膚は弱く、紫外線の影響が考えられるため。また、熱中症になった乳幼児は体温調節機能が未熟なために、大人より外気の影響を受けやすくない。そのため、炎天下や直射日光の下にいなくても高温多湿な環境で長時間過ごすと、熱が体内にこもったり、水分不足になって熱中症を起こしやすくなる。日光浴を行う場合は、生後1か月頃より日当たりのよい部屋や縁側で、最初は1回に5分くらいが目安で行う。

 

 

 

 

 

62 先天異常で正しいのはどれか。

1.軟骨無形成症は低身長になる。
2.Turner(ターナー)症候群は高身長になる。
3.Klinefelter(クラインフェルター)症候群は低身長になる。
4.Pierre Robin(ピエール・ロバン)症候群は巨舌症がある。

解答1

解説

1.〇 正しい。軟骨無形成症は、低身長になる。軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。
2.× Turner(ターナー)症候群は、「高身長」ではなく低身長になる。Turner症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。つまり、女性特有の染色体異常である。
3.× Klinefelter(クラインフェルター)症候群は、「低身長」ではなく高身長になる。Klinefelter症候群とは、男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる疾患の総称である。 性腺機能不全を主病態としている。性染色体異常により生じる先天異常で、高身長・精子形成不全・無精子症などの性腺機能不全、言語発達遅延、女性化乳房が特徴である。
4.× Pierre Robin(ピエール・ロバン)症候群は、「巨舌症」ではなく舌骨沈下がある。Pierre Robin症候群とは、先天異常(常染色体劣性遺伝)で、三徴候(小顎症、舌根沈下、気道閉塞)のほか、随伴症状には軟口蓋裂、脳障害、小頭症、緑内障、耳介奇形、摂食障害、運動障害などがみられる。ちなみに、巨舌症がみられるのはダウン症である。巨舌症とは、舌が異常に大きくなったもので、口の中に収まらないような状態のものである。

ダウン症候群とは?

 ダウン症候群(Down症候群)とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

 乳児期の特徴としては、全身の筋緊張が低く、発達の遅れを伴う。理学療法では、バランスボールなどダウン症児の興味関心を抱きやすい環境で筋緊張を高められる運動(主に体幹筋群)を提供する。スカーフ徴候陽性や、シャフリング移動がみられる。スカーフ徴候の正常(陰性)の場合、腕を首に巻きつけるようにすると抵抗するが、陽性の場合は抵抗がみられない。シャフリング移動とは、お座り姿勢のまま移動する(いざり)ことである。脚の動かし方、手の使い方のバリエーションが少なかったり、下半身の筋肉の張りが弱く、筋肉量も少ないために行うことがある。Down症候群の子供では、立位歩行の獲得が遅れるため、シャフリング移動がみられる。正常発達の乳児期前半では、背臥位にて手で足をつかむ動作を行うようになるが、ダウン症乳児の場合、全身の筋緊張が低下しているため、背臥位では股関節外転・外旋した「蛙様肢位(蛙状肢位)」となり、足の持ち上げが難しくなる。読み方は、そのまま「カエルヨウ肢位、カエルジョウ肢位、カエル肢位」などと読む。

 

 

 

 

63 平成16年(2004年)に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が施行され、戸籍上の性別を変更することが可能になった。
 その変更の条件で正しいのはどれか。

1.15歳以上であること
2.うつ症状を呈していること
3.現に未成年の子がいないこと
4.両親の同意が得られていること

解答3

解説

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

この法律によって、性同一性障害者のうち一定の要件を満たす者について、家庭裁判所の審判により、戸籍上の性別を変更することが認められるようになった。この法律では、性別変更の要件として5つを掲げて、これらをすべて満たす必要があると規定している。

(定義)
第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

(※参考:「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)

1.× 「15歳以上」ではなく、18歳以上であることが、戸籍上の性別の変更の条件として求められる。
2.× うつ症状を呈していることは、戸籍上の性別の変更の条件として求められていない
3.〇 正しい。現に未成年の子がいないことが、戸籍上の性別の変更の条件として求められる。
4.× 両親の同意が得られていることは、戸籍上の性別の変更の条件として求められていない

 

 

 

 

 

64 日本における母の年齢階級別出生率の推移を図に示す。
 図の矢印で示してある年齢階級はどれか。

1.20〜24歳
2.25〜29歳
3.30〜34歳
4.35〜39歳

解答3

解説

(※図引用:「母の年齢別出生率の推移」厚生労働省HPより)

1~2.× 20〜24歳/25〜29歳の母親の出生率は、年々減少している。
3.〇 正しい。図の矢印は、30〜34歳である。上昇傾向である。
4.× 35〜39歳の母親の出生率は、上昇傾向である。ちなみに、出生率とは、一定人口に対するその年の出生数の割合をいう。一般的には、人口1,000人当たりにおける出生数を指し、単位はパーミルである。パーミル(‰)は1000分の1を1とする単位(千分率)であり、1‰は0.1%となる。

 

 

 

 

65 女性を中心としたケア(Women centered care)の概念で適切なのはどれか。

1.父権主義を否定している。
2.周産期にある女性を対象とする。
3.全人的な女性という視点を重視する。
4.女性特有の疾患に関する看護を行う。

解答3

解説

女性を中心としたケアとは?

女性を中心にしたケアとは、女性の身体的・精神的・社会的な健康状態を高めることを目的とする概念である。それぞれの女性が自ら定義する健康を志向する権利の保障のもと女性が持つ力を十分に発揮できるよう支援する。中心概念は「尊重」「安全」「意思決定」「エンパワー」などの要素を核とする。

1.× 父権主義の否定ではない。パターナリズム(父権主義)とは、弱い立場の者の意思・判断に関係なく強い立場の者が介入・干渉し、それに従うべきだとする考えのことである。医療において、患者の意思にかかわらず、医師などの専門家に任せた治療を進めることを指す。女性を中心としたケアは、女性の意思決定を促し、その決定を尊重するということが特徴のひとつである。
2.4.× 「周産期のみ」「女性特有の疾患」の女性を対象としたものではない。なぜなら、女性を中心にしたケアは、女性の健康支援のすべての時期に共通する概念であるため。また特有の疾患にかかわらず、それぞれの女性が自ら定義する健康を志向する権利の保障のもと女性が持つ力を十分に発揮できるよう支援する概念である。
3.〇 正しい。全人的な女性という視点を重視する

 

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