第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前91~95】

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次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(20歳、男性、大学生)は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。
 受診時のバイタルサインは、体温37.0 ℃、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)98%。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb 16.0g/dL、Ht 55%、白血球8,900/μL、CRP 0.3 mg/dLであった。尿検査は尿潜血(-)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。

91 Aさんの状態をアセスメントするために、救急外来受診時に優先して観察すべき項目はどれか。

1.尿の性状
2.腸蠕動音
3.脈拍数
4.体温

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(20歳、男性、大学生)
・炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。
・胸部・腹部・下肢のエックス線写真:異常なし。
・胸腹部CT:脾臓損傷を否定できなかった。
・左半月板損傷と外傷性脾臓損傷の疑い。
→本症例は、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷が疑われている。外傷性脾臓損傷に限らず、腹部外傷で最も気にかけるべきなのは出血である。出血により出血性ショックに発展しかねないため、その徴候を観察することが重要である。ちなみに、ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

【ショックの診断】
心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。

1.× 尿の性状より優先度が高いものが他にある。尿の性状(尿の色調や浮遊物の有無など)は、尿路感染症の有無や出血の有無などがわかる。
2.× 腸蠕動音より優先度が高いものが他にある。腸蠕動音とは、消化管内を内容物やガスが移動するときに発生する音のことで、聴診によって腸管の状態を知ることができる。正常な場合は5~15秒間ごとに「コポコポ」「キュルキュル」などのやわらかな音が聞こえる。高音で12回/分以上の腸蠕動音が継続する場合は、腸蠕動音亢進といい下痢や機械的イレウスなどを疑う。低音で1~3回/分の場合は、腸蠕動音微弱といい、便秘などが示唆される。
3.〇 正しい。脈拍数は、救急外来受診時に優先して観察すべき項目である。本症例は、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷が疑われている。外傷性脾臓損傷に限らず、腹部外傷で最も気にかけるべきなのは出血である。出血により出血性ショックに発展しかねないため、その徴候を観察することが重要である。ショックの診断として、「心拍数:100回/分以上」があげられる。ちなみに、ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。
4.× 体温より優先度が高いものが他にある。なぜなら、受診時のバイタルサインは、体温37.0 ℃と記載されており、再度測定する必要性が低いため。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(20歳、男性、大学生)は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。
 受診時のバイタルサインは、体温37.0 ℃、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)98%。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb 16.0g/dL、Ht 55%、白血球8,900/μL、CRP 0.3mg/dLであった。尿検査は尿潜血(-)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。

92 入院後3日、腹部CTの再検査で脾臓損傷は否定された。また、左膝のMRI検査では、左半月板損傷と確定診断され、自宅療養することとなった。退院準備中のAさんから「ベッドから立ち上がろうとしたら、左膝が曲がったままで伸びない。痛みはそれほどでもないです」と訴えがあった。
 この時、医師への連絡と同時に看護師が実施することで適切なのはどれか。

1.作業療法士へ相談する。
2.下肢の関節可動域を確認する。
3.処方された鎮痛薬を服用させる。
4.下肢の徒手筋力テストを実施する。

解答2

解説

本症例のポイント

・入院後3日:脾臓損傷は否定。
・左膝のMRI検査:左半月板損傷と確定診断。
自宅療養予定:退院準備中
・「ベッドから立ち上がろうとしたら、左膝が曲がったままで伸びない。痛みはそれほどでもないです」。
→本症例は、半月板損傷と診断されている。半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある板で、内側・外側にそれぞれがある。役割として衝撃吸収と安定化をはたす。損傷した場合、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりが起こる。重度の場合は、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」が起こり、歩けなくなるほど痛みが生じる。

1.× 作業療法士へ相談することの優先度は。なぜなら、作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職であるため。つまり、食事動作等、日常生活動作の回復が役割である。
2.〇 正しい。下肢の関節可動域を確認する。本症例は、半月板損傷と診断されている。重度の場合は、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」が起こり、歩けなくなるほど痛みが生じる。本症例の「左膝が曲がったままで伸びない」という現象は、まさにロッキングの可能性がある。したがって、どこまで膝が曲げられるか?痛みは発生するか?など医師に報告する必要がある。
3.× 処方された鎮痛薬を服用させることの優先度は低い。なぜなら、本症例は「痛みはそれほどでもないです」といっているため。
4.× 下肢の徒手筋力テストを実施することの優先度は低い。なぜなら、本症例は半月板損傷し3日目(炎症期)であるため。より症状が悪化する恐れがある。また、半月板損傷している患者に対し、再発防止という観点から下肢筋力トレーニングも実施するが、関節の損傷や痛みの誘発につながるため、まずは膝関節を動かさずに膝周りの筋力を鍛えられる「大腿四頭筋セッティング」から行うことが多い。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(20歳、男性、大学生)は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。
 受診時のバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)98 %。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb 16.0g/dL、Ht 55%、白血球8,900/μL、CRP 0.3mg/dLであった。尿検査は尿潜血(-)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。

93 医師による診察の結果、退院は中止になり、入院後5日に膝関節鏡を用いた手術を受けた。手術後1週の診察で退院が決まり、医師から「取り外し可能なギプスを装着し、次の受診まで松葉杖を使い左足には負荷をかけないで生活をしてください」と説明された。
 看護師がAさんに行う退院指導で、正しいのはどれか。

1.「負荷をかけない」とは痛くない程度に体重をかけることである。
2.患側膝関節の屈曲伸展を繰り返す運動をしてよい。
3.患側下肢の等尺性運動を実施する。
4.松葉杖は腋窩に密着させる。

解答3

解説

本症例のポイント

・退院:中止
・入院後5日:膝関節鏡を用いた手術。
・手術後1週の診察:退院決定。
・医師から「取り外し可能なギプスを装着し、次の受診まで松葉杖を使い左足には負荷をかけないで生活をしてください」と。
→本症例は、松葉杖を処方されている。2本の松葉杖で身体を支えることができるため、体重をかけないようにする事が目的である。

1.× 「負荷をかけない」とは、「痛くない程度に体重をかけることである」と看護師が自己判断してはならない。基本的には、それぞれ施設にスケジュールやプロトコルが作成されているが、分からないこと曖昧なことがあれば必ず医師に報告・相談する。ちなみに、体重をかけるスケジュールとして、「体重の1/3」もしくは「体重の1/2」など体重の割合で許可されることがほとんどである。松葉杖を処方されていることからも、医師から具体的に「痛くない程度に体重をかけて良い」と指示されない限り控えるべきである。
2.× 患側膝関節の屈曲伸展を繰り返す運動は行えない。なぜなら、本症例の膝関節は、取り外し可能なギプスが処方されているため。患側膝関節の屈曲伸展を繰り返す運動を行ったら、何のためのギプスだかわからなくなる。また、医師から「関節の安静を図るように」指示されていることが多いので、膝関節を動かす許可が下りるまで運動を行えない。
3.〇 正しい。患側下肢の等尺性運動を実施する。等尺性運動とは、関節を動かさない筋肉の収縮で、筋の長さは一定である特徴を持つ。ギプス固定している間の筋の廃用予防のための筋力トレーニングとして重要である。また、半月板損傷している患者に対し、再発防止という観点から下肢筋力トレーニングも実施するが、関節の損傷や痛みの誘発につながるため、まずは膝関節を動かさずに膝周りの筋力を鍛えられる「大腿四頭筋セッティング」から行うことが多い。
4.× 松葉杖は、腋窩に密着させない。なぜなら、腋窩に密着すると、体重が腋窩にかかり、接触(圧迫)性の腕神経麻痺を起こすため(よく腋窩神経麻痺と書かれていることがあるが、腋窩神経を圧迫することはない)。松葉杖は、手部と腋窩下(体幹)で支持して使用する。目安として、松葉杖の脇当て位置は、腋窩から2.5~5 cm(2~3横指分)下方とする。

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、女性、会社員)は、夫(38歳)と2人暮らし。身長155cm、体重57kg。Aさんは、入浴中に右胸のしこりに気づき、病院を受診した。乳房超音波検査で右乳房外側下部に、直径約3cmの腫瘤が認められた。医師から乳癌の可能性が高いと説明され、検査を受けたところ、右乳癌と診断された。

94 確定診断のため、Aさんに行われた検査はどれか。

1.MRI
2.針生検
3.PET-CT
4.マンモグラフィ

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、女性、会社員、身長155cm、体重57kg)
・2人暮らし:夫(38歳)
・入浴中:右胸のしこりに気づく。
・乳房超音波検査:右乳房外側下部に、直径約3cmの腫瘤。 
・右乳癌と診断。
→乳がんとは、乳腺や乳管にできたがんであり、乳がんの発生や成長には女性ホルモンのエストロゲンが関与する。乳がん細胞にはエストロゲン受容体というものがあり、この受容体にエストロゲンが作用し乳がんが進行しやすくなる。乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行う。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定する。したがって、確定診断には、細胞診や組織診(針生検)が用いられる。

1.× MRI検査(核磁気共鳴画像法)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。
2.〇 正しい。針生検は、確定診断のため、Aさんに行われた検査である。針生検とは、症状の原因を調べるための組織診(生検)の一種である。針生検では、細胞診よりも太い針を病変部に刺し、その中に組織の一部を入れて、からだの外に取り出し検査する。ちなみに、乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査を行う。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞組織を顕微鏡で調べて診断を確定する。ちなみに、超音波検査やマンモグラフィなどの画像診断で、良性か?悪性か?、はっきりしないしこりや癌の可能性があるしこりに対して行われる。
3.× PET-CTとは、がん細胞が正常細胞に比べて3~8倍ブドウ糖を取り込む性質を利用した検査である。がん細胞がグルコースを取り込みやすいという代謝上の特徴を利用した検査である。
4.× マンモグラフィとは、乳房のX線撮影のことで、乳房撮影専用X線装置を用いて乳房を圧迫し、乳房内の組織の差を写し出す画像検査である。マンモグラフィでは、「しこり」や「石灰化」のように触れることの出来ない小さな病変を写し出すことが出来るため、早期乳がんや乳がん以外の病変を見つけ出すことに非常に有効である。

乳がんの検診について

乳がん検診(一次)は、国の指針によりますと、対象は40歳以上で、問診、乳房X線検査(マンモグラフィ)が基本になっています。視触診の推奨はされていませんが、実施する場合はマンモグラフィ検査と併用します。乳がん検診はマンモグラフィ検査が国際基準ですが、乳腺の密度が高い40代の検診精度が低くなるという課題があり、近年、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を組み合わせたり、単独で用いたりする方法を採用しているところもあります。約7万6千人の40代の女性を、マンモグラフィ検査を受けたグループと、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えたグループに無作為に分けて比較する大規模な臨床研究の結果、がんの発見率が、超音波検査を加えたグループの方が1.5倍高かったという報告があります。(※一部抜粋:「乳がんの検診について」日本対がん協会HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、女性、会社員)は、夫(38歳)と2人暮らし。身長155cm、体重57kg。Aさんは、入浴中に右胸のしこりに気づき、病院を受診した。乳房超音波検査で右乳房外側下部に、直径約3cmの腫瘤が認められた。医師から乳癌の可能性が高いと説明され、検査を受けたところ、右乳癌と診断された。

95 Aさんは、乳房温存療法を希望したが、腫瘤が大きいため手術前に化学療法を受けることになった。術前化学療法としてEC療法(エピルビシン、シクロホスファミド)を3週ごとに、サイクル受ける予定である。
 Aさんに起こりやすい障害はどれか。

1.嗅覚障害
2.リンパ浮腫
3.卵巣機能不全
4.末梢神経障害

解答3

解説

本症例のポイント

・希望:乳房温存療法
・腫瘤が大きいため手術前に化学療法を受ける。
・術前化学療法:EC療法(エピルビシン、シクロホスファミド)
・3週ごとに、サイクル受ける予定。
→EC療法の「EC」とは、エピルビシンとシクロホスファミドの2種類の抗がん剤の頭文字をとった療法のことである。

1.× 嗅覚障害は、フルオロウラシルを用いた化学療法で起こりやすい。
2.× リンパ浮腫は、リンパ節の郭清放射線治療リンパ節転移を調べるセンチネルリンパ節生検が原因で起こることがある。
3.〇 正しい。卵巣機能不全が起こりやすい。細胞毒性がある抗がん剤(シクロホスファミド)には、卵巣機能障害の副作用がある。シクロホスファミドの副作用として、骨髄抑制や吐き気・嘔吐、発熱、脱毛、出血性膀胱炎などが生じる。脱毛は治療が終わり薬の使用をやめれば自然に回復する。女性は無月経、男性では精子生産の停止が起こることもある。大量投与や長期投与によりめまいや動悸・息切れが生じ、骨髄抑制も増強することがある。
4.× 末梢神経障害をきたしやすい抗がん薬は、パクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン系抗がん薬である。(※参考:「末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤について」静岡県立静岡がんセンターHPより)

 

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