6 A市では子どもが健やかに成長できることを政策に掲げている。乳幼児の死傷原因を調べ家庭内事故が多いことが分かった。家庭内事故防止に向けた親の取り組みを促進することを目標とし、乳幼児の家庭内事故にてついて親の認識調査を行うことにした。
この調査はプリシード・プロシードモデルにおけるアセスメントの段階のどれか。
1.疫学アセスメント
2.社会アセスメント
3.運営・政策アセスメント
4.教育/エコロジカル・アセスメント
解答4
解説
プリシード・プロシードモデルとは、グリーン(Green LW)とクルーター(Kreuter MW)によって開発されたヘルスプロモーション活動を展開するためのモデルの1つである。プリシード・プロシードモデルの目的は、人々の生活の質の向上であり、目的を達成するためには行動と環境をより良く変化させる必要がある。さまざまな健康行動理論を戦略的に配置し、保健活動を計画・実施・評価していく統合モデルである。住民のニーズを把握し、設定したテーマに関して地域全体を包括的に診断するプリシード(第1~4段階)部分と、診断に従って実施と評価を行うプロシード(第5~8段階)部分からなる。
(参考:「PRECEDE-PROCEEDモデル」広島山口ヘルスプロモーション様HPより)
1.× 疫学アセスメントとは、対象にとってどの健康問題が最も切実で重要かを明確にする段階である。プリシード・プロシードモデルの第2段階に該当する。
2.× 社会アセスメントとは、対象が自分自身のニーズやQOLをどう考えているのかを知る段階である。プリシード・プロシードモデルの第1段階に該当する。
3.× 運営・政策アセスメントは、事業に対応できるよう組織内での介入調整を行う段階である。プリシード・プロシードモデルの第4段階に該当する。
4.〇 正しい。教育/エコロジカル・アセスメントが、アセスメントの段階である。教育/エコロジカル・アセスメントとは、保健行動に影響を及ぼす3つの要因(①準備要因、②強化要因、③実現要因)を把握する段階である。プリシード・プロシードモデルの第3段階に該当する。
・A市の政策:子どもが健やかに成長できること。
・乳幼児の死傷原因:家庭内事故。
・目標:家庭内事故防止に向けた親の取り組みを促進すること。
・具体的方法:親の認識調査を行う。
→親の認識については、教育/エコロジカル・アセスメントの①準備要因に該当する。前提要因(準備要因)とは、行動を起こす前の知識・態度、信念、価値観のことである。ちなみに、②強化因子とは、周りの人のサポート、行動後の満足感をいう。③実現要因とは、行動の実現を助ける受け皿や身近の設備である。保健行動を実現するための地域資源の利便性や入手可能性、近接性などの環境条件が含まれる。
7 A市では住民の健康づくりを促進していくため、小学校区ごとに健康推進員を育成して組織化している。来月、B小学校区に組織された健康推進員を参加者とする初めての会合が開かれることになった。
この会合においてB小学校区を担当する保健師が行うことで適切なのはどれか。
1.組織のリーダーを指名する。
2.参加者個人の健康課題の発表を促す。
3.参加者間で活動目標を設定することを促す。
4.B小学校区の健康推進員組織の年間計画を作成する。
解答3
解説
・A市:住民の健康づくりを促進していく。
・小学校区ごとに健康推進員を育成して組織化している。
・来月:B小学校区に組織された健康推進員を参加者とする初めての会合が開かれる。
→グループの発達過程としては「準備期」に該当する。準備期とは、初めて顔を合わせる前に準備する段階であるため、保健師はグループを作る計画や準備を行う。【支援役割】①ニーズを探り援助対象を決定する。②組織のバックアップを受けて、メンバーは固定グループか開放グループか検討し、援助期間や頻度も決めておく。③メンバーの情報を集め理解をしておく。④記録用紙の様式も検討しておく。
1.× 組織のリーダーを指名する優先度は低い。なぜなら、まだ参加者の性格や特徴、能力などの未知であるため。また、グループの主体性を尊重するためにも、保健師がリーダーを指名するのではなく、グループの参加者が話し合ってリーダーを決めたほうが良い。
2.× 参加者個人の健康課題の発表を促す優先度は低い。なぜなら、現時点では参加者の関係性が構築されていない時期であるため。また、開始期の参加者は緊張している。ちなみに、開始期とは、メンバーが集まってグループとして動き出すまでの段階である。支援役割として、①メンバーは緊張しているため、ワーカー自身が受容的な雰囲気を作っていく。②グループワークを実施する目的・意義・理由・背景等の説明する。③基本的なルールや民主的な態度でグループ運営を行っていく。
3.〇 正しい。参加者間で活動目標を設定することを促す。準備期とは、初めて顔を合わせる前に準備する段階であるため、保健師はグループを作る計画や準備を行う。【支援役割】①ニーズを探り援助対象を決定する。②組織のバックアップを受けて、メンバーは固定グループか開放グループか検討し、援助期間や頻度も決めておく。③メンバーの情報を集め理解をしておく。④記録用紙の様式も検討しておく。
4.× B小学校区の健康推進員組織の年間計画を作成する優先度は低い。なぜなら、そもそも健康推進員組織の年間計画の作成は、「保健師」ではなく健康推進員が行うものであるため。健康推進員とは、地域の健康づくり(母子保健や高齢者保健、生活習慣病予防活動なども含む)を推進するボランティアである。各行政区のリーダーとして地域に根ざした活動を行うことで、住民相互の健康づくり活動が実現し、地域に波及する。
①準備期:初めて顔を合わせる前に準備する段階である。
【支援役割】①ニーズを探り援助対象を決定する。②組織のバックアップを受けて、メンバーは固定グループか開放グループか検討し、援助期間や頻度も決めておく。③メンバーの情報を集め理解をしておく。④記録用紙の様式も検討しておく。
②開始期:メンバーが集まってグループとして動き出すまでの段階である。
【支援役割】①メンバーは緊張しているため、ワーカー自身が受容的な雰囲気を作っていく。②グループワークを実施する目的・意義・理由・背景等の説明する。③基本的なルールや民主的な態度でグループ運営を行っていく。
③作業期:メンバーとグループ全体が、自分たちの課題に取り組み、目的達成のために成果が出るよう進めていく段階である。【支援役割】①メンバー個別に信頼関係を得ていく。②メンバーのプログラム参加の動機づけを高めるよう意見を反映する。③プログラム活動の目的を共有し、仲間意識を高める。④孤立するメンバーやサブグループが現われたら適切に対応する。⑤相互援助システムを形成する。
④終結期:グループ援助を終わりにする段階である。
【支援役割】①今まで共有した時間を振り返り、共に経験した感情を分かち合い、グループワークの成果を今後どのように生かしていくか考える。②必要に応じてメンバー個別に援助を行っていく。③各メンバーのグループ経験を評価する。
(※参考「ループの発達段階@本八幡」就労移行支援事業所リバーサル本八幡様HPより)
8 保健師は統合失調症で1年入院していた成人期のAさんへの退院支援を行った。
Aさんは地域でつながりを持ちながら生活することを望んでいる。
退院直後のAさんへの保健師の対応で適切なのはどれか。
1.就労定着支援を行う。
2.近隣住民に見守りを依頼する。
3.地域活動支援センターを紹介する。
4.ピアサポーターとしての就労を勧める。
解答3
解説
・Aさん(成人期、退院指導)
・1年入院:統合失調症。
・Aさんの希望:地域でつながりを持ちながら生活すること。
→統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
1.× 就労定着支援を行う優先度は低い。なぜなら、Aさんの希望は、「地域でつながりを持ちながら生活する」ことであって、就労の希望は聞かれていないため。就労定着支援とは、就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする。就労に伴う環境変化などの課題解決(①生活リズム、②家計や体調の管理など)に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。
2.× 近隣住民に見守りを依頼する優先度は低い。なぜなら、Aさんの希望は、「地域でつながりを持ちながら生活する」ことであって、見守りを希望していないため。統合失調症は、幻覚や妄想がみられる病気である。見守られ(監視)され続けることで、統合失調症の増悪につながりかねない。また、プライバシー保護の観点からも、住民に一方的に依頼することは望ましくない。
3.〇 正しい。地域活動支援センターを紹介する。地域活動支援センターとは、『障害者総合支援法』によって定められた障害によって働くことが困難な障害者の日中の活動をサポートする福祉施設である。地域で生活している身体障害者、精神障害者、知的障害者などが利用できる通所施設で、社会適応訓練も行っている。創作的活動または生産活動の機会の提供および社会との交流などの支援を行う施設である。
4.× ピアサポーターとしての就労を勧める優先度は低い。なぜなら、Aさんの希望は、「地域でつながりを持ちながら生活する」ことであって、就労の希望は聞かれていないため。また、退院指導としても時期尚早である。ピアサポーターとは、障害や疾病など同じような境遇にある人が、自身の体験をもとに相談や同じ仲間として社会参加や地域交流など問題の解決を支援する活動を行う。同じ立場の当事者同士が体験を語り合うことで支え合うことをいいその当事者のことである。
9 障害者(児)の日常生活や社会生活を支える福祉サービスのうち、介護給付の申請窓口で正しいのはどれか。
1.地域包括支援センター
2.社会福祉協議会
3.都道府県
4.市町村
解答4
解説
1.× 地域包括支援センターとは、介護保険法に基づき各市町村によって設置されており、地域の高齢者の医療・福祉・介護・虐待など様々な事柄に関する相談窓口となっている。地域包括支援センターの人員基準は、「第1号被保険者(65歳以上の高齢者)3000人~6000人ごとに、保健師、社会福祉士及び主任介護支援専門員(準ずる者を含む)を最低限それぞれ各1人」である。介護保険の市町村への申請支援も担う。
2.× 社会福祉協議会とは、地域の実情に応じた住民の福祉の増進を目的とする民間の自主的団体である。高齢者を対象にすることが多い。主な活動として、ボランティア団体の支援やボランティア活動に関する相談、情報提供だけでなく、全国の福祉関係者や福祉施設等事業者の連絡・調整や、社会福祉のさまざまな制度改善に向けた取り組みなども行っている。日常生活自立支援事業の実施・申請窓口も担う。
3.× 都道府県は、障害者総合支援法に基づき、①市町村が行う自立支援給付と地域生活支援事業が適正かつ順調に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供などの援助を行うこと。②市町村と連携を図りながら、必要な自立支援医療費の支給と地域生活支援事業を総合的に行うこと。③障害者等に関する相談と指導のうち、専門的な知識と技術を必要とするものを行うことなどを行う。
4.〇 正しい。市町村が、障害者(児)の日常生活や社会生活を支える福祉サービスのうち、介護給付の申請窓口である。「(申請)第二十条 支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない」と規定されている(※引用:「障害者総合支援法」e-GOV法令検索様HPより)。
障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。
①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。
10 令和元年(2019年)における五類感染症で、週単位で報告される定点把握疾患のうち、インフルエンザ、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、突発性発しんの各週の定点当たり報告数の図を示す。
インフルエンザの報告数はどれか。
1.A
2.B
3.C
4.D
解答1
解説
1.〇 正しい。Aは、インフルエンザの報告数である。特徴として、①ほかの疾患より圧倒的に報告数が多い、②49週以降(冬季)から報告が増加することがあげられる。ちなみに、インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。
2.× Bは、感染性胃腸炎の報告数である。特徴として、①冬季に増加すること、②一年を通して一定数の報告があることがあげられる。ちなみに、感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体による感染症である。病原体により異なるが、潜伏期間は1~3日程度である。ノロウイルスによる胃腸炎では、主な症状は吐き気、おう吐、下痢、発熱、腹痛であり、小児ではおう吐、成人では下痢が多い。ロタウイルスによる胃腸炎では、おう吐、下痢、発熱がみられ、乳児ではけいれんを起こすこともある。
3.× Cは、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告数である。特徴として、①夏季、冬季に緩やかに増加すること、②一年を通して報告があることがあげられる。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、A群レンサ球菌による上気道の感染症である。レンサ球菌は、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こす。日常よくみられる疾患として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂巣織炎などがある。
4.× Dは、突発性発しんの報告数である。特徴として、①ほかの感染症と比較すると圧倒的に報告数が少ないことがあげられる。突発性発疹とは、ヒトヘルペスウイルスに感染することで、突然高熱が出る病気である。2歳頃までの子どもにほとんどに感染するといわれている。原因は、ヒトヘルペスウイルス6型、ヒトヘルペスウイルス7型と呼ばれるウイルスの感染で、感染者の唾液を通して感染すると考えられている。初めて感染したときに症状が現れるが、症状が治った後も体の中にとどまって唾液とともに出てくることがある。また、免疫力が落ちたときに再活性化し、何らかの症状が現れることがある。感染しても症状が現れない方もいる。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。
【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)
②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置
③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・品管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置
④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置
⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供